板谷由夏の“今日から、もっと。アップデート”
「里山十帖」オーナー・岩佐十良さんと語る
地方の底力、地方の魅力
「里山十帖」があるのは、豊かな自然に囲まれた大沢山温泉。
皆さん、お久しぶりです! お元気ですか? おこもり生活が続いた春、私もいろんなことを考えました。世の中が目まぐるしく変わる中で感じていたのが、「あ、みんな、すごく“自分の頭で考えて、自分の行動を決めたい”って思ってる」ということ。今まで以上に敏感なアンテナを立てよう! そんな気持ちが高まったタイミングでお話を聞けたのは、新潟県南魚沼市で「里山十帖」という注目のお宿を営む岩佐十良(とおる)さんです。
東京・池袋出身で、雑誌『自遊人』の編集長である岩佐さんが、編集部ごと南魚沼に移住したのは16年前のこと。はじめはお米づくりの見習いから始め、2012年に経営難の旅館を引き継ぎ、改修して営業を再開したのだとか。「東京にいる頃はずっと、世の中は東京中心で回っていると思っていた。でも、本当は違う。人が育ち、海や山の恵みや産業を生むのは地方であり、社会を支えている基盤は地方なのだと気づいてから、その魅力を伝えることに没頭してきました」。
「いい宿だね」より「いい町だね」と言って帰ってほしい
豊かな自然風景の中で、その地域ならではの風土・文化・歴史が詰まった非日常体験を通じて「生き方を感じられる場所」を提供したいという岩佐さん。その姿勢に共感する熱烈ファンも多く、コロナの影響で営業の危機に直面するや、クラウドファンディングでの支援が集まったのだそう。「一時は結末が見えないパニック映画の主人公になったかのような絶望の淵にいましたが、皆さんの応援がありがたく、地方の宿ができる“真のSDGs”について考える機会が増えました」。
そこを訪れた人が「いい宿だね」と喜ぶよりも、「いい町だね」と地域の魅力を知って帰ってくれるほうがずっと嬉しいのだと語ってくれた岩佐さん。「どんな時でも旅人のために開けるのが宿屋の役割」と考え、緊急事態宣言後に予約のキャンセルが相次いだ時期にも、ご飯を炊き、お風呂を整えることを続けたのだそう。
「実はお一人、38日連泊してくださったお客様がいたんです。食事の献立を毎日変えて提供しましたら、喜んでいただけました」。さらりと話してくださったこのエピソード一つとっても、並々ならぬ思いが伝わってきました。
印象に残ったのは「バランスが大切」という言葉。地方なのか、都会なのか。どちらかに偏るのではなくて、「それぞれの良さや価値を見直せる時間を持つことが大事」と岩佐さんは教えてくれました。
私もつい日常に振り回されがちだけれど、宝物を置き去りにしないようにしなきゃ。故郷・福岡の旅館も応援したくなりました!
(取材:宮本恵理子/写真提供:里山十帖)
板谷 由夏 さん

いたや・ゆか 女優。ファッションブランド「SINME」のディレクター。福岡県出身。2児の母。
