家が建てられてから取り壊されるまでの年数を考えたことはあるだろうか。国土交通省の資料によると、日本の場合は平均年数が38年と欧米よりも格段に短い。授業の冒頭、先生からこの事実が示されると教室には「そんなに短いの?」と驚きの声があがった。対してアメリカは55年、イギリスは68年だという。
欧米では、家は自分や家族だけでなく「みんなで住み継ぐもの」と考えられているが、日本では「自分たちが住むもの」と捉えて新築する文化が根強い。日本には「もったいない(MOTTAINAI)」という、物を大切にする価値観がある一方で、家に関しては必ずしも生かされてこなかったのだ。
これは地球環境にも大きな影響を与える。日本で家を1軒取り壊して新しく建てる場合、約3万5000㌔グラムものCO2が排出されるという。 「これは100人が1年間の生活で排出する量に相当します」と先生が説明すると、子どもたちは一斉に身を乗り出した。「そんなにたくさん?」「知らなかった!」という反応からも、住まいと環境問題が直結していることは、子どもたちにとって新鮮な学びだったようだ。
出所:第4回日本LCA学会研究発表会講演要旨集(2009年3月)、住宅金融支援機構資料、EICネットより算出
では、家を長く使い続けるためには何が必要なのか。先生からは三つの視点が示された。一つ目は「よいものをつくる」ことだという。災害に強く、暑い夏でも寒い冬でも快適に過ごせる家は、住む人の命と健康を守る。先生は「耐震性に加えて、断熱性能がカギになります」と述べ、熱中症が屋外よりも家の中で多く発生しているというデータを紹介した。
「家の中なら安全だと思っていた」と驚く子どもたち。さらに先生からは、家の断熱性を高めることは、冷暖房に使うエネルギーを減らし、環境負荷の軽減にもつながると解説された。子どもたちは、先生が準備した断熱性能の異なる建築材に触れて違いを実感。「ほんとだ、熱を全然通さない」と目を丸くした。
二つ目は「手入れをして守る」ことだ。定期的な点検やメンテナンスをすれば、家は長持ちする。HEBEL HAUSでは家を長く使ってもらうために、顧客へ60年間の無料点検を実施しているという。そして三つ目が「古い家を生かす」こと。建て替えだけでなく、修繕やリフォームなどの選択肢を持つことが、持続可能な暮らしにつながるのである。
授業の後半は、「理想の家や街」を考えるグループワークが行われた。子どもたちからは「地震の被害を受けにくい、空に浮く家」や「みんなでバーベキューができるような、広い屋上のある家」など、自由な発想による理想の家が発表された。イラストや間取り図など、多彩な表現方法も多く見られた。
締めくくりに先生が伝えたのは、「物を大切に使い続けることは、実はとてもかっこいい」というメッセージである。先生が以前おこなった授業の後に、「これまで姉のおさがりのTシャツを着るのが嫌だったけれど、先生の話を聞いて、物を大切にすることはとてもかっこいいことだと気が付いた」と感想を述べた子どもがいたという。家だけでなく身近な物を長く使うことも、地球環境を守る大きな一歩につながるのだ。
家をどう使い続けるかは家庭の価値観が色濃く表れるテーマである。授業後は、「今日聞いた話を家族に伝えたい」と話す子どももいた。家の話題から始まった学びから地球環境に思いをはせ、自分にできることを考えて実践する機会となった。
本校では、探究的な学びの授業「STEAMS TIME」に取り組んでいます。今回のような外部の有識者による授業で、子どもたちが熱心にノートをとりグループワークに取り組む姿が印象的でした。今後も環境に対する学びを深め、日々の行動につなげてほしいです。
国語や社会などの授業で、環境について学んでいます。今回の授業で企業が実践する内容を知り、子どもたちの学びが深まったと感じます。データを具体的に示してくれるのがとても良いですね。「かんきょう新聞」づくりにも、この後取り組む予定です。
HEBEL HAUSの取り組みの一つ「よいものをつくる」で紹介された高断熱の壁。外の気温を伝えにくい家は、猛暑時の熱中症リスクを減らし、快適な住空間を実現する。会場に設置されたHEBEL HAUSブースでは、実際に片面を温めた壁材を使い、反対側にどのくらい熱が伝わるのか触って確かめられるコーナーもあった。
河合慎一郎さん