がん、心疾患、脳血管疾患…歳を取るといわゆる3大疾病を気にしがちですが、介護が必要になる原因の4分の1は骨や関節の病気だということをご存じですか。 骨粗鬆(そしょう)症からの骨折で、ある日突然、寝たきりになってしまうことも珍しくありません。 80代になっても元気に出かけられる「80GO(ハチマルゴー)」を実現する方法と、キーワード、「フレイル・ロコモ」について、中島康晴先生に伺いました。
1990年九州大学医学部卒業、1992年同大学大学院入学、1994年米国スタンフォード大学整形外科リサーチフェロー、 1997年北九州市立医療センター、1998年九州大学医学部附属病院整形外科助手、2016年より現職。 九州大学病院副院長、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会指導医ほか。
骨や関節の障害から、寝たきり生活に
日本の高齢化率は世界一で、いまや約3人に1人が65歳以上になろうとしています1)。 人生100年時代といわれ素晴らしいことですが、一方で、自立した生活を送ることができる「健康寿命」は平均寿命と比べて短く、 平均して男性で約9年間、女性では約12年間、何らかの介助を必要とし、悪くすれば寝たきりで過ごしています2)。 その原因の約4分の1を占めるのが、骨、関節、筋肉、神経など、身体を動かす「運動器」の障害です。 具体的には、骨粗鬆(そしょう)症による骨折、膝・股関節の変形性関節症、脊柱管狭窄(きょうさく)症などで3)、 65歳以降で急激に増え、多くの方がそのうちのいくつかに同時にかかっています4)。 「このような病気にならないように、なったとしても介護が必要にならないようにしましょう」という考えのもと、「フレイル・ロコモ」という言葉が生まれました。
※ 運動器の障害:骨折・転倒・関節疾患・脊髄損傷の合計
厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」より作成
低下した活動性を努力で
元に戻せる状態が
「フレイル・ロコモ」
「フレイル・ロコモ」とは、生活機能が低下して、介護が必要になる危険が高まった状態です。
老化に伴い、身体能力が衰えたり、外出が減って社会とのつながりが希薄になったり、認知機能の低下や抑うつ状態がみられたりする「フレイル」と、運動器の機能が低下して移動が不自由になる「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」。
ロコモが進行して社会参加に支障をきたしている「ロコモ度3」は、運動器が原因の身体的フレイルに相当します。
気付かないうちに進行していることが多い「フレイル・ロコモ」ですが、低下した活動性を努力で元に戻せる状態でもあります。
次の7つの「ロコチェック」で、ロコモの可能性をチェックしてみましょう。
1つでも該当すれば、あなたもロコモの心配があります。
さらに、より的確にロコモ度を測定する方法として、「立ち上がりテスト」と、歩幅から測定する「2ステップテスト」をご紹介します。「ロコモ年齢*2」を簡易判定できるアプリもリリースされましたので、試してみてもいいでしょう。

80GO運動でフレイル・ロコモを克服!
運動習慣が何より重要
対策の要は運動習慣です。 年齢とともに骨も筋肉も衰えますが、筋肉は歳をとっても鍛えることができます。お勧めはスクワット。 1セット5~6回を1日3セット、難しい場合は机に手をついて立ち上がる動作で構いません。 片脚立ちも有効で、左右とも1セット1分間を1日3セット行うことで、バランス感覚が鍛えられます。 痛みがあるときは、早めに病院で治療を受けるとよいでしょう。 骨粗鬆(そしょう)症や関節、脊椎の病気でも、多くの場合、リハビリテーションや薬などで治療できます。 コロナ禍で、高齢者では外出自粛を厳守して運動する方が減ったことが分かりました5)。 週2~3回程度のウオーキングでもロコモ予防の効果はありますので6)、生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。 また、働く世代では、第二波以降はコロナ以前より運動しなくなった傾向があります5)。 いつまでも自分の足で歩くために、若い頃から運動習慣を継続しましょう。 2022年4月、「80歳でも元気に出かけよう」をスローガンに『80GO』運動がスタートしました。 医療関係の様々な学会・団体が参加して、多方面から対策が図られています。 『80GO』運動の主役は皆さん。 フレイル・ロコモにならないことを、なってしまった場合は治すことを心がけて、いつまでも楽しい時間を過ごしてください。
*1 日本整形外科学会公式ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモオンライン https://locomo-joa.jp/locomo/
*2 ロコモ年齢 https://locomo-joa.jp/locomo-age( スマートフォンでのみご使用いただけます)
1)総務省統計局 人口推計(令和4年5月1日確定値)(令和4年10月20日)
2)厚生労働省 第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料 3-1 健康寿命の令和元年値について
3)厚生労働省 2019年国民生活基礎調査の概況
4)厚生労働省 令和2年度患者調査
5)日本臨床整形外科学会/NPO法人 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会
コロナ自粛後身体の変化に関するアンケート結果2021年(第2報)
https://jcoa.gr.jp/wp-content/uploads/2021/08/2nd-corona-anket-houkoku.pdf
6) YamadaK, et al. BMC Geriatr. 2021; 21(1): 651.