知っていますか?
乳がんのこと
~早期発見から治療、仕事との両立~

乳がんは、日本人女性に一番多いがん。そして、他のがんに比べて若い年齢でかかる可能性が高いがんです。子育てが一段落して仕事や趣味が充実してきた方、重要なポジションについた方が、ある日乳がんと診断されるということが起こり得ます。万一、あなたがそんな状況になったとしても冷静な判断ができるように、普段から知っておくとよいことを、佐治重衡先生に教えていただきました。

今日のポイント

  • ■ 日頃から乳房の変化に気をつけよう
  • ■ 2年に一度、マンモグラフィを
  • ■ 仕事と治療の両立支援サポートもある

福島県立医科大学
医学部 腫瘍内科学講座 主任教授
佐治 重衡 先生

1992年岐阜大学医学部卒業、2004年東京都立駒込病院医長、2009年埼玉医科大学国際医療センター腫瘍内科准教授、2011年京都大学大学院標的治療腫瘍学講座特定准教授を経て、2014年より現職。日本臨床腫瘍学会 理事、日本乳癌学会 理事。

Q 乳がんの特徴は?
自分で気づくことはできる?

若い女性に多く、
治療で良くなる可能性が高い。
普段から乳房チェックを!

乳がんは、比較的若い世代に多く発症するという特徴があります。日本の女性では、35歳くらいから増えはじめ、40代から60代にピークがみられます。近年、患者数が増えており、女性の9人に1人が生涯に乳がんを経験する計算になります※1。原因は生活の欧米化と言われていますが、明確にはわかっていません。もう1つの特徴は、早期発見された場合の予後が良い、つまり治療により良くなる可能性が高く、乳がんとわかった後の生存率が高い点です。

自覚症状で一番気づきやすいのは乳房のしこりです。乳房にえくぼができたり、乳頭に血がにじんだりすることもあります。ただし、しこりは自分で見つけるのは難しい場合も多く、“乳房がいつもとちょっと違うかな”と感じたときは、迷わず乳腺クリニックや病院の乳腺外科か乳腺科を受診してください。まずは、日頃から乳房の様子をよく観察して、正常な状態を知っておくようにしましょう。

Q 乳がんでは、なぜ検診が
重要なの?

40歳からの2年に一度の
マンモグラフィで、早期診断

一般に「早期に発見された乳がん」、「増殖力の強い悪性度の高いタイプではない乳がん」は、生存率が高いといわれています。しかし、がんが進行してリンパ節や他の臓器に転移すると長期間にわたり薬物療法や放射線治療などを組み合わせて治療する必要がでてくるため、身体的負担だけでなく 経済的な負担も大きくなってしまいます。したがって、40歳を過ぎた方には、2年に一度のマンモグラフィをお勧めします。検診などで超音波検査も併せて受けることができる場合は、マンモグラフィに追加してもよいと思います。また、祖母、母親、おば、姉妹などの親族に乳がんに罹患した方がいる場合、遺伝の不安もあるかと思います。検診の頻度などについて、最寄りの乳腺クリニックや病院の乳腺科を受診して相談してみるとよいでしょう。


この数年、コロナ禍で検診を控えたことにより、乳がんが進行してしまったという残念なケースがみられました。今もまだ流行は収まっていませんが、医療機関では感染防止対策を徹底していますので、ためらわず検診を受けていただきたいと思います。

Q 乳がんになったらどうすればよい?
仕事や趣味は続けられる?

公共の支援制度をうまく活用して
治療と仕事の両立も


検診で「要精密検査」の結果を受けたら、必ず再検査を受けてください。そこで乳がんと診断されると、実際に治療を受ける専門病院を医師と相談して決めることになります。自宅や職場から近い施設が勧められますが、病院によっては、放射線治療や乳房再建術を行っていないこともあるので、自分が希望する治療をしっかり伝えることが大切です。

乳がん治療の基本は手術で、通常1~2週間の入院が必要です。がんのタイプや状況に応じて、手術前後の治療が選択されます。たとえば前後3~6ヵ月程度の通院による抗がん剤治療、再発予防に向けた術後5週間位の通院による放射線治療、術後5~10年のホルモン療法薬の服用、などです。放射線治療は週5日行われるのが一般的ですが、1回の治療は短時間で済みます。抗がん剤治療は脱毛や吐き気などの副作用を伴いますが、最近は副作用を抑える治療も充実しています。



乳がんと診断された直後に仕事を辞めてしまう方も多いのですが、治療と仕事を両立するための支援がたくさんあります。 治療は長期にわたりますので、まず主治医と治療計画を立てたうえで、最寄りのがん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」などに相談するとよいでしょう。 そこで仕事の種類や利用できそうな制度に基づいて対策を考え、会社勤務の方は人事部などに具体的に配慮してほしい事柄を示して相談などをしていきます。 同センターは電話での対応も可能で、経済面での支援制度の相談も含め、どなたでも利用できます。もし、がんと診断されても落ち着いて対応できるように、様々な支援制度が用意されていることを覚えておいてください。

※1:国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス 累積がん罹患リスク(2019年データに基づく)
※2:公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2022」年齢階級別がん罹患率推移 (1980年、2000年、2018年) 乳がん(女性)
https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2022_fig_J.pdf

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