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朝日新聞社メディアビジネス局
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みらい E-us イーアス プロジェクト特集インタビュー 01 りそなホールディングス(前編)

格差は努力だけでは埋まらない
~ある大手金融機関の知られざる挑戦~

金融大手のりそなグループは、2015年から経済的に苦しい家庭の子どもたちの進学を後押ししようと、奨学金制度をはじめとする支援に取り組んできた。個人の努力では埋められないほど広がる「格差」に対し、民間でできることはないか。「社会への恩返し」を合言葉に社員の声からプロジェクトは立ち上がった。グループ担当者に話を聞くと同時に、慶応大学大学院メディアデザイン研究科の岸博幸教授に教育格差の問題点について解説していただいた。

社員の声で始まった高校生向け奨学金制度

りそなグループが教育支援をはじめたきっかけは、「社会への恩返しをしたい」という、グループ全体の思いからだった。2015年には「一般財団法人りそな未来財団」(現在は公益財団法人)が設立され、中心となって活動を動かしてきた。そこに至るまでの経緯と活動内容について、事務局長の口田憲治さんが説明してくれた。

「弊社グループは3兆円を超える公的資金が注入されていた歴史があります。2015年にようやく完済できたのを機に、社会に恩返しをしたいということで、どういう社会貢献活動をすべきか社員にアンケートを取りました。そこでいちばん多かったのが、経済的な支援を必要とする子どもたちが(大学に)進学できるような奨学金制度を作るべきではないか、という声でした」

支援を検討するなかで特に注目したのは、高校生向けの奨学金制度が足りていないという実態だったという。公立高校でも年間40万円~50万円の教育費が必要とされ、経済的に苦しい家庭にとっては、大きな負担がのしかかっていた。「厚生労働省の調べ※によると、児童がいる世帯の平均所得は年707万円と言われています。それが母子家庭だと平均所得が年270万円になり、かなり開きがあります。相対的貧困率についても厚労省が調べていますが、子どものいる世帯が13%弱なのに対して、ひとり親世帯では50%を超える。これをなんとかしたいという思いで、奨学金制度を作り、財団を立ち上げました」(口田さん)

※厚生労働省「国民生活基礎調査(平成28年)

世界が力を合わせれば、世界はもっとよくなるはず。
「みらいE-usプロジェクト」

拡大する格差。努力だけでは克服できない時代に

昨今では大学入試改革の問題もあり、こうした教育格差の問題があらためて取りざたされている。問題の本質と解決策はどこにあるのか。慶応大学大学院メディアデザイン研究科の岸博幸教授が説明する。「残念ながら一億総中流と言われたようないい時代は終わりました。グローバル化、デジタル化という構造変化が進んで雇用に影響し、格差は拡大しつつあります。親にしても子どもにしても、自分の努力だけではなかなか克服できない状況になっている」

親の所得は子どもの学力に影響し、それが教育格差となって連鎖が続いていく。
「教育格差、階層の固定化は社会の活力をそぎます。社会の損失であり、何とかしないとまずいんですが、本気で是正するには政治の側がかなり思い切った対応して社会システムを変えないといけない。でも世界的に政治の質が落ちてしまっている今、取り組んでいる国はほとんどありません。財政に余裕がなく、教育に対する政府の支出も少ない。富裕層にもっと課税をしてそれを財源にするという手がありますが、税収が増えても将来の世代のために使われるかどうかはわかりません。なぜなら今の日本は投票に行く人の大半が高齢者だから。高齢者のための社会保障にばかりお金が回ってしまうリスクもあります」(岸教授)

家庭の収入増へ。母親のキャリアアップも支援

八方塞がりにも見えるこの状況で、解決の一助となり得るのは、民間の力だ。りそな未来財団では、これまで延べ180人に合計5,500万円を超える奨学金を給付してきたほか、ひとり親家庭の貧困の連鎖を断つという視点から、ひとり親、主に母親へのキャリアアップ支援の取り組みもしている。

「奨学金ももちろん重要ですが、お母さんの収入を上げるのもやっぱり重要なこと。収入が増えないことには、根本的な解決にはなりません。就労アドバイザーによる継続的な面談や資格取得などの費用支援を通じて、キャリアアップをサポートしています」(口田さん)

理想の未来をつくるために。
「みらいE-usプロジェクト」

収益の一部を寄付。次世代の架け橋になる投資信託

岸教授によると、アメリカではNPOや民間企業がこうした問題に草の根的に取り組む事例も多いという。民間の取り組みで将来を担う世代の教育の充実にお金が回るようにするのは、日本にも合っているやり方だと岸教授は評価する。

さらに2019年10月からは、りそな未来財団と、公益財団法人みなと銀行育英会を寄付先として、投資信託の収益の一部を寄付する「みらいE-usプロジェクト」もスタートさせた。対象となるのはSDGsファンドと呼ばれる4ファンド。「教育」「環境」「健康・福祉」「経済成長・事業支援」にフォーカスしたファンドだ。各分野を支える優良企業に投資するだけでなく、対象ファンドを通じて得られた販売会社と委託会社の収益の一部が寄付される。

プロジェクトを担当するりそな銀行コンシューマービジネス部の石田耀子さんが説明する。「対象の投資信託を通じて、社会の課題に向けて取り組む企業に投資していただくことで、社会課題の解決に貢献できます。さらに収益の寄付を通じて、奨学金等の形で教育機会を提供することができる。2段階の構造で、お客様の将来だけでなく次の世代への架け橋になる、そういう取り組みだと思っています。当初は他の寄付団体やNPOを交付先にする案もありましたが、運営にりそなグループ社員が携わっているりそな未来財団とみなと銀行育英会を寄付先にすることで、お金の流れがクリアに見える仕組みになっています」

必要な先にお金が流れるように。民間の力に期待

岸教授は同プロジェクトがふるさと納税に近い機能を果たしていくのではと期待を寄せる。「ふるさと納税の趣旨は、地方の活性化です。国を通さないでお金が回る仕組みを作った。このプロジェクトでは、投資する人のお金が、ひとり親家庭に奨学金として回る。必要とされる方向に正しくお金が流れるようにすることは非常に意味があること。こういった活動は民間の側でどんどん拡大してほしいと思います」

経済産業省の元官僚でもある岸教授は、2001年から経済財政政策担当大臣補佐官、金融担当大臣補佐官などを務めた経験がある。

「2003年当時、りそなグループに公的資金を入れた張本人は私です。完済が終わればそれで終わりでいいのに、公的資金でよみがえった恩義を社会に還元しようとしている。この姿勢は素晴らしいと思います。欲を言えばもっと規模を大きくして、金融業界全体で取り組んでほしい。不良債権処理の段階で、銀行は様々な優遇を受けていた、という過去もあるので、他の金融機関もこうした事業に積極的に参加してほしいと思いますね。参加する金融機関やファンドを増やして、これ自体がりそなのビジネスの柱になるぐらい、頑張ってほしいです」

だれかを応援するために、“投資”をする、という選択。
りそなグループが進める、「みらいE-usプロジェクト」についてはこちら

みらい E-us プロジェクトとは?