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みらい E-us イーアス プロジェクト特集インタビュー 03 グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
代表理事 有馬利男さん

誰一人取り残さない世界をめざす
グローバルな時代を生き抜く経営戦略

社会に求められる企業のあり方を考える上で、いまや欠かせないキーワードとなった国連のSDGs(持続可能な開発目標)。りそなグループで2019年10月からスタートした「みらいE-us(イーアス)プロジェクト」でも、SDGsに関連する商品を取り扱っている。これからの企業経営では、なぜSDGsが大切で、どう関わっていくべきなのか。富士ゼロックスの元社長でキリンホールディングスやりそなホールディングスの取締役などを歴任し、現在は持続可能な発展に向けて企業などが連携する「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」代表理事、アムンディ・ジャパンのアドバイザリー・ボードメンバー、責任投資諮問委員長を務める有馬利男さんに話を伺った。

実は日本も深刻……貧困率やジェンダーの世界順位

——SDGsでは、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓い、実現をめざしています。そもそも今、誰がどこに取り残されているのでしょうか? 日本にも取り残されている人はいるのでしょうか?

日本の場合は、安全な水がなかったり、子どもが小学校にも通えなかったりといった、いわゆる発展途上国の事情とは少し違うかもしれません。それでも取り残されている人たちはいます。そこには大きく分けて二つのセクターがあるとみています。一つは貧困、もう一つがジェンダーの問題です。日本の貧困は、相対的貧困率という所得格差を表す指標で見ると、1985年は12.0%でした。それが2015年は15.7%と、3.7ポイントも増えている(厚生労働省調査、2015年は熊本県を除く)。6~7人に1人が相対的貧困といわれています。これはまさに「取り残された人がいる」ということになりますよね。

——他の先進国と比べてどんな状況でしょうか。

子どもを抱えるひとり親世帯の相対的貧困率は、経済協力開発機構(OECD)34カ国の中で日本は33番目です(※2014年OECD発表データ)。2019年に世界経済フォーラムで発表された「ジェンダー・ギャップ指数」も日本は世界153カ国中121位。その前年は110位でしたから、一気に落ちている。特に問題なのは、女性の政治参加度の低さです。評価時の女性閣僚が1人だったこともあり、世界153カ国中でワースト10の144位でした。ジェンダー・ギャップは、政治の世界だけでなく、企業の中でもいえることだと思います。

——「誰一人取り残さない」という取り組みを国連が進める中、国内で特に注目している問題はなんでしょうか?

私自身が気になっている問題は、やはり外国人労働者、特に技能実習生の問題です。いま外国人労働者は約146万人(厚労省、2018年10月末現在)。そのうち技能実習生が31万人ぐらい。技能実習生が働く事業場の約7割で、長時間労働などの法令違反があるといわれています。これは非常に深刻な人権問題です。労働力不足は各国で起きていて、どの国も優秀な人材を求めています。日本では東南アジアの労働者が多いですが、この問題を放置していると日本はだんだん見向きもされなくなっていく。戦略的な意味でも深刻だと思います。

日本の未来を、ともに考える。
「みらいe-USプロジェクト」

経済発展の陰で広がった地球規模の課題

——そもそもSDGsは、どのような経緯で生まれたものなのでしょうか?

きっかけは1999年の世界経済フォーラム(ダボス会議)です。当時のコフィ・アナン国連事務総長が、世界のビジネスリーダーたちに、深刻化する貧困や環境問題について問題提起をしたんですね。当時の世界は、ベルリンの壁の崩壊とソ連の崩壊、冷戦終結があり、そして1990年代の半ばから後半にかけて、ものすごい勢いでグローバルな市場が発展を遂げていました。だが、その発展には影もあった。児童労働、過酷な労働環境、大規模な自然破壊、海洋汚染などです。アナンさんは、ビジネスリーダーと一緒に健全なグローバル市場の発展を進めようと提案をしたのです。
——そのビジョンをもとに、国連と企業などが協力して経済の持続的発展をめざす「グローバル・コンパクト」が合意され、MDGs(ミレニアム開発目標)が掲げられました。これがSDGsの前身となりました。
MDGsでは貧困、飢餓、妊産婦の健康など8分野が取り上げられました。MDGsの数値目標は、2015年が期限だったので、次をどうしようかということで、SDGsのベースとなる議論が始まりました。そこであがったたくさんの声の中から最終的に17分野の目標を定めたのです。

SDGsの目標に貢献し、
よりよい明日をともに目指す。
「みらいe-USプロジェクト」

世界の課題解決は、企業の「守り」と「攻め」に

——SDGsは先進国の課題も多く加えられました。これらを解決していくためには、国はもちろん、企業の参加も不可欠です。

SDGsが掲げる17の目標の下には169の具体的な目標(ターゲット)があり、先進国の企業が貢献できるテーマがたくさんあります。最近の企業は何らかの形でグローバルな広がりを持っています。
例えば、日本企業でも中国や東南アジアのサプライヤーと一緒に仕事をしている。仮に、取引先の部品メーカーが労働者の人権を侵害したり、子どもを働かせたりしていたとしたら、問題が明るみに出た時点で、その部品を使った商品全体が世界で売れなくなります。そういうことがないように取引先をよくチェックする。これはどちらかというと企業にとって「守り」の取り組みです。
一方、「攻め」の観点からみれば、例えばエネルギー消費を削減する、CO2の排出を減らすことをビジネスの付加価値、あるいは差別化の要因に組み込むこともできます。企業はいろいろな形でSDGsに取り組み、商品・サービスに反映していくことができるのです。

財務情報だけでは企業の持続可能性は判断できない

——投資の世界では「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」もキーワードになっています。有馬さんが諮問委員長を務める「アムンディ」は欧州最大の運用会社ですが、ESG投資を積極的に推進してきました。これはなぜ大事なのでしょうか。

投資をする側から見ると、その企業が本当に持続的に発展する能力を持っているかどうかを見ないといけなくなりました。従来は、企業の四半期の財務諸表を見て判断していた。でも財務情報だけを見ていては、その企業の将来にわたる持続可能性は見えてきません。一番端的な事例が気候変動ですよね。どんなに財務的に賢くやっていても、気候変動によって市場が変わるということが起こりうるんです。国連のイニシアチブ「責任投資原則(PRI)」には、「投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込む」と書かれていて、ヨーロッパの投資機関を中心に、参加する企業・組織がだんだん増えてきました。アメリカの経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」も、株主のためだけの経営はやめた、と言っていますからね。企業が何を考えてビジネスをやっているか、それを判断するための切り口がE、S、Gなのだと考えます。

健全な社会をつくるための経営哲学

——個人のお客さまがSDGs実現にむけて参加できる取り組みとして、「みらいE-us(イーアス)プロジェクト」では、SDGsの目標に貢献する投資方針のファンドが選定されています。

これは非常にうまい構造になっていると思います。投資先の選定に目的をきちっと定めているファンドを投入することによって、その企業が取り組むエネルギーや教育や自然、そういう課題に対する効果を生み出すことができます。それがまず1段階ですよね。2段階目として、その商品を販売する銀行では、収益から一定の比率で奨学金に回していく。新しいビジネスモデルですよね。堅実に運用できる、ESG投資の要素を持っていると思いますよ。

——このプロジェクトは、お客様にとっては、お金の流れを選ぶ新しい選択肢になります。同時に、企業にとっても経営戦略上の新しい選択肢と言えます。

CSR(企業の社会的責任)という言葉がありますが、これは企業としての基本的な生き方・在り方そのものだと思うんですね。経営者によっては経営哲学だという人もいます。取締役をやった経験から言えば、企業が健全な社会や世界、あるいは将来の世代のために必要なことをきちんとやる、そういう経営哲学を持っているということは、社員にとっても、誇らしく、納得感のあることです。E-us(イーアス)、つまり「いい明日」は、お客さま、投資先にとってもそうですが、りそなグループにとっても当てはまる。新しいビジネスモデルではないでしょうか。

お金の流れを選ぶ、という新しい選択肢。
「みらいe-USプロジェクト」

みらい E-us プロジェクトとは?