2009年12月15日14時23分
「家で犬のタッチとタクト、フェレットのクックと過ごす時間が一番幸せです」=福留庸友撮影
プロ6年目で念願の賞金女王になりました。24歳になって強まる結婚願望や、父・良郎さんへの思いも話してくれました。
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武内 賞金女王が決まった瞬間はどんな気持ちでした?
横峯 全然、信じられなかった。もしかしたらプレーオフがあるかも、と思って練習していた。キャディーのジョン(・ベネットさん)から「You win!」って言われて、えっ、勝ったの? っていう感じで、びっくりしました。
武内 周りはずいぶん変わったんじゃないですか。
横峯 私自身は全く変わってないんですけど、周りからは「賞金女王おめでとう」って声をかけていただきます。
武内 今季は「賞金女王になる」と宣言しました。あえて宣言した理由は。
横峯 エッセイストの浅見帆帆子(ほほこ)さんの「あなたは絶対!運がいい」という本を読んで、すごく前向きな気持ちになったんです。プラスなことはどんどん口にして、マイナスなことは口にしないなどの内容だった。私はすごく単純なので、口にしようかと。
武内 プレッシャーにならなかった?
横峯 最初はポンポンと勝ったので、良いプレッシャーにできていたので、うまく持っていけたかな、と。
武内 その後に苦しい時期がありました。
横峯 (9月のマンシングウェアレディース東海クラシックで)口に出していたことを、まずやめようと思って。賞金女王をあきらめるという言い方は変だったかもしれませんが、とりあえず自分のプレーに徹し、ベストを尽くすということを心がけました。周りには、それまでは毎週毎週「賞金女王に近づきましたね」とか「トップとはこれだけの差ですね」とか聞かれたんですが、途端にサーッと引いていってくれたので、すごく気持ちが楽になった。
武内 最大4千万円以上の差がありました。
横峯 人のことを考えすぎてしまって、自分のプレーができてなかった。自分はプレッシャーに弱いんだな、と気付いて、気持ちを切り替えられたのが良かったのかな、と。
武内 プレッシャーに弱い?
横峯 弱いんです。とても弱いんです。良いときは、プレッシャーを集中力に変えることができるんですが、自分のスイングやストロークができなくなるときがあります。
●支えられて栄冠
武内 今季は平均パット数(3位)やリカバリー率(1位)が上がりました。
横峯 毎週毎週毎日毎日、練習してきたことの積み重ねです。昨日よりは今日という感じで、少しずつ少しずつ自信を持てるようになってきたというのが良かったと思う。パッティングはまだまだ下手ですが。
武内 色んな練習方法を取り入れていますよね。
横峯 リカバリー率に関しては、オフに結構トラブルショットの練習をした。私はフェード系(少し右に曲がる)の球を打つんですが、ドロー(少し左に曲がる)とかスライスとか、林の中からピンを狙うという練習をした。充実したオフが過ごせたと思います。
武内 パットの練習は。
横峯 今年やっていたのは、ティーを1メートル間隔で4本さして、当てればクリアという練習ですね。ヒントは父との勝負。父はカップに入れるのでは勝負にならないと気付いたらしく、ティーに当てるという勝負を考え出したんです。最初は全然当たらなかったんですけど、それを練習代わりにやっていたら、これは良い練習だな、と気付いたんです。
武内 そのお父さんをどう思いますか。
横峯 本音で言っていいですか? ハハハ。本当に外面(そとづら)が良い。もうちょっと家族に愛情を注いでほしい。ゴルフのことになると一生懸命で、練習させるのが大好きなんですが、ゴルフ以外のことでも愛情を注いでほしい。もうちょっと家族のために時間を割いてくれてもいいんじゃないかなと思います。
武内 以前より一緒にいる時間は減りましたね。
横峯 3、4年前までは二人三脚で毎日、一緒だった。最近は毎週末に来て、少しアドバイスをもらう程度ですが、そういう関係も良いと思います。
武内 キャディーのジョンさんとの会話は英語?
横峯 そう言いたいですね。ハハハ。片言の日本語と片言の英語です。ゴルフ用語は英語で話すように心がけています。お互いが語学の先生みたいな感じ。最初は英語を話せるようになりたいと思って、勉強のために外国人のキャディーを探していたんです。キャディーの技術も良ければいいなというくらいに思っていたんですが、昨年からバッグをかついでもらっているうちに信頼関係が生まれてきた。今季の最終戦(LPGAツアー選手権リコーカップ)の最終日の18番でパーパットの意見が一致したのが印象的。約2メートルの上りのスライスラインで、私はボール1個分読んでいたら、ジョンが「自分もそう思うよ」と言ってくれて。その一言でプレッシャーを感じながらも自信を持って打てたんです。それが入って結果的に優勝できた。信頼できる良いパートナーに恵まれたと思います。
武内 昔から、試合会場にキャンピングカーを持ち込んでいます。
横峯 今は、朝と夜の食事を車で食べています。2、3年前から栄養士の人につくってもらっています。1年間疲れない体づくりに気を付けて、玄米を主食に、野菜中心のメニュー。おかずは魚が多い。食事をしっかり取ることで1年間を乗り切れる。キャンピングカーは、なくてはならない存在です。
●ただいま婚活中
武内 13日に24歳になりました。
横峯 もう立派な大人なので、3、4年後には結婚したいと思うんですが、相手がいないので、そこからですよね。ハハハ。出会う機会があまりないので。
武内 ゴルフは何歳まで続けますか。
横峯 18歳のときは24、25歳と言っていたんですが、もうきちゃった。うーん、30歳くらいまで続けるかな、と思います。女性としての幸せは結婚かな、と思うので、そこまでに相手をみつけて計画通りに進んでほしいと思います。
武内 賞金で一番買いたい物は。
横峯 あまり買いたいものはないんです。家族に何かプレゼントできたらいいな、と思ってます。
武内 来年の目標は。
横峯 今年、賞金女王になったから、来年もっていうんじゃなく、ゴルフ自体を楽しむ、というのが来年の目標です。今年は海外の4大大会のうち3大会に出ていないので、来年は出られる試合は出て、良い成績が残せるように頑張りたい。
武内 来年は難しくなる?
横峯 周りを気にしてしまったら難しくなると思うけど、自分は自分、としっかり自分を持っていれば、楽しくプレーできると思う。
武内 自身をゴルフのクラブに例えると?
横峯 マイペースなので、ドライバーはない。7番アイアンは一番練習しているクラブで正確なショットを打てるイメージなので、それもない。サンドウエッジかな。今、バリエーションを増やすために練習している。私も成長しないといけないので、選んでみました。
お父さんの話になると一変
〈後記〉 インタビュー中は、ドライバーを振りかぶったときのような勇ましさは影を潜め、まん丸な目にアイシャドーが輝く24歳の女性でした。しかし、お父さんの話になると表情が一変、いえ、「戻った」と言う方が正しいでしょう。けんかしながら二人三脚でプレーしていた当時の面影がかいま見えました。そのときばかりは、父を語る1人の娘でした。「賞金で父以外にプレゼントを買いたい」と冗談めかして言いましたが、お父さんへの最大のプレゼントは、一回でも多い優勝なのでしょう。(テレビ朝日アナウンサー)
■インタビューは、16日の「報道ステーション」でも放送予定です。
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よこみね・さくら 鹿児島県鹿屋市生まれ。2004年にプロ入りし、翌年にツアー初優勝。今季6勝を含め通算15勝。生涯獲得賞金は5億7623万6705円。155センチ、51キロ。