パネルディスカッション

コロナはもう大丈夫?
新興感染症に対する正しい備え

ヨーロッパの事例から
学ぶべき教訓は


── 先ほどの講演で英・独・仏のコロナ対応に関するお話を聞いて、国によって状況がこれほど違っていたということに驚きました。

森井混乱が特に大きかったのは、イギリスとフランスです。イギリスは、国家の危機対応プログラムにのっとって対応した結果、かかりつけ医にはコロナ患者を診る機会が与えられず、病院の医療体制だけが逼迫しました。第1波までのフランスもよく似た状況で、非常時の行動計画を発動した結果、病院の救急外来だけに患者が集中してしまうという事態が起こりました。

比較的うまくいったといえるのがドイツです。ドイツでは、コロナを「危機対応として」ではなく、可能な限り「日常の医療提供体制で」扱うという方針をとりました。コロナ診療の95%を開業医が担ったことで、病院の集中治療機能を守ることにつながったのだと思います。


── 日本が学ぶべき教訓は、どんなことでしょうか。

森井フランスは、第1波と第2波以降で対応を大きく変えました。こうした「状況に応じたギアチェンジ」が、日本でも必要だったと思います。例えば第1波の際、日本では、軽症で治療の必要のない患者が、感染症指定医療機関の病床を埋めているという状況がありました。感染拡大の状況に応じて迅速に対策を切り替えていれば、貴重な医療資源をより有効に活用できたと思います。

また、感染症に対応する医療機関を限定することは、かえって医療体制の逼迫を引き起こすということも見えてきました。つまり感染症対策も、平時の医療の延長線上で考えていくべきであり、これはすなわち、全ての医療機関が一定の感染対策を担うことが求められるということです。我々医療者はこのことを肝に銘じないといけないですし、国民の皆さんにも、平時から信頼のできるかかりつけ医をもっておいてほしいと思います。

政府や日本医師会の変革 
その中身とは


── 日本のコロナ対応については、一定の評価をしつつも、多くの課題が挙げられていました。その後、政府はどのような対応をとっているのでしょうか。

大曲一つは、先ほどの講演でも触れた、指揮命令系統の見直しです。社会に大きな影響を与える感染症に対しては、政府レベルでの対応が必要であるということで、法律を改正し、「内閣感染症危機管理統括庁」を創設しました。ここが司令塔の役割を果たします。更に厚生労働省には、あらゆる行政的な部分を担う「感染症対策部」ができました。また、政府の適切な判断・実行のために、質の高い科学的知見を提供する専門家組織「国立健康危機管理研究機構」の創設も進めています。

加えて、コロナの際にも使われた「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」について、コロナ禍での様々な課題を踏まえて、改定に向けた議論が始まっています。今年の夏までには改定を終えられる予定です。

── 日本医師会では、どのような取り組みを進めていますか。

釜萢地域の診療所などでは、スペースの問題もありますので、感染症の患者さんへの対応がなかなか難しいということがあると思います。しかし発熱外来の対応やワクチン接種の支援など、協力して頂けることは色々あるわけです。日本医師会では、医療関係者に対して感染症対応についての研修を提供し、更にその知識を定期的に更新して頂けるような仕組みを準備しているところです。できるだけ幅広い医療機関が感染症に対応していくことが求められていると思っています。

国民の「情報リテラシー」も
問われている


── コロナ禍においては、医療従事者らへの誹謗中傷という問題も起きました。

釜萢日本医師会が都道府県医師会の協力のもと実施したアンケート調査でも、医療従事者やその関係者が「いわれのない差別や中傷を受けた」「自宅に帰れずホテルに宿泊せざるを得なかった」などの声がありました。今後決してこうしたことが起こらないよう、日本医師会公式YouTubeチャンネルなども活用し、正しい情報発信に努めたいと思います。

森井それとも関連しますが、医療機関で院内感染やクラスターが発生した際に、メディアも含めてその医療機関を批判するといったことが起こりました。こうした動きは、感染症対応にあたる医療機関を萎縮させ、国民の皆さんにとって不都合な事態を招くことになりかねません。情報を発信する側も、情報を受け取る側も、より常識ある対応をとるべきだろうと思います。

── 私たち一人ひとりが、情報リテラシーを高めていくことが大切というわけですね。

釜萢その通りだと思います。インターネット上にあふれる情報の中には、根拠が不十分なものや偽の情報も混ざっています。冷静に判断をしてほしいですし、厚生労働省や日本医師会など、信頼できるところから発信される正確な情報にぜひ触れてほしいと思います。「正しく知り、正しく恐れる」という姿勢が大切です。

大曲今回のコロナを経て、「適切な情報提供は、適切な行動変容を起こせる」ということを実感しました。いまは各自治体でも感染症に関する情報を積極的に発信していますから、ぜひ多くの方に触れて頂きたいと思います。また、今後注力したいのが「教育」です。子どもたち向けの「防災教育」があるように、「感染症教育」というものにも取り組んでいけたらと思います。

被災地・能登での感染症対策 
気をつけることは


── 今年1月1日に発生した能登半島地震についても伺います。いまも多くの方が避難所生活を強いられています。感染症対策について気をつけることはありますか。

大曲避難所というのは、限られた空間の中でどうしても人が密集しますから、感染症にかかりやすい環境であることは間違いないと思います。特に、インフルエンザやコロナ、普通の風邪のような呼吸器感染症や、ノロウイルス感染症にかかりやすい状況ですので、なるべくこまめに手洗い・うがいをする、換気をするなど、基本的な対策に取り組んで頂きたいと思います。また、食中毒を起こさないよう、調理の仕方にも気をつけましょう。

免疫低下、ワクチン、後遺症…
様々な疑問に回答


司会進行を務めた、フリーアナウンサーの住吉美紀さん

── 最近は、風邪をひいたり、扁桃炎や副鼻腔炎、中耳炎などの治りにくさを感じたりしている人が増えていると聞きました。

大曲子どもから大人まで、こんなに多くの人々が様々な感染症にかかるという事態は、これまであまりなかったと思います。逆説的な言い方になりますが、これはコロナ対策による影響といえるでしょう。

私たちは普段、色々な細菌やウイルスにさらされており、そこに免疫システムが働くことで体が守られています。ところがコロナ禍の間は、マスク着用やソーシャルディスタンスの確保、外出自粛などによって、細菌やウイルスからある程度“隔離”されることになりました。それによって、免疫の働きが一定程度弱まったと考えられます。そんな中で、コロナ前の生活に戻したことによって、一気に色々な細菌やウイルスに触れることとなり、様々な症状が出てきているというのが、いまの状況だと思います。

釜萢コロナ禍の間は、これまで経験したことのない、細菌やウイルスからの“隔離”の期間でしたから、それが明けたいま一斉に色々な病気が流行してしまっているという状況ですね。ですが、日頃の体調管理ができていれば、それほど重症化することはありません。バランスの良い食事や適度な睡眠・運動といったことを心掛けてもらえれば、十分乗り切れると思います。

── ここからは、事前に一般の方々から頂いた質問への回答をお願いします。まずワクチンについて、「同じメーカーのものを継続して打つべきか」「インフルエンザワクチンとの混合ワクチンはできないのか」などの質問が寄せられています。

釜萢新型コロナウイルスのワクチンについては、日本で承認されているものであれば、メーカーが変わっても効果は十分期待できますし、安全性に問題はありません。それから、季節性インフルエンザワクチンとの混合ワクチンは、日本ではまだ承認されていませんが、同時に接種することも別の機会に打つということも可能です。

また、体質のためワクチンを接種できないという方は、基本的な感染対策を続けるとともに、極端に体力が落ちないよう、日頃から体調を整えておくことを心掛けて頂きたいと思います。


── 「コロナの後遺症の症状や期間を知りたい」との声も寄せられています。

大曲コロナの後遺症として特に多いのは、咳が長く続くといった呼吸器の症状ですね。それから、だるさや倦怠感が続くという方も多くみられます。また、子どもはコロナ自体の症状が軽く済むことが多いですが、後遺症が出る頻度も大人の4〜5分の1とかなり低くなっています。

後遺症の症状が続く期間は、個人差がありますが、2カ月経ってもまだ症状があるという方が10〜20%ほどはいます。いつまで続くのかと不安に思われるでしょうが、多くの場合、3〜4カ月ほど経てば症状は消えていきます。ただ、「非常に強い倦怠感」「頭がぼんやりする」などの症状が取れないという方は、医療機関を受診することをお勧めします。

── 「妊活中や妊娠中にコロナにかかった場合の影響は」という質問も寄せられました。

釜萢コロナの感染によって、妊娠しにくくなるというはっきりしたデータはありません。一方で、妊娠中に罹患すると、妊婦自身のコロナの症状が重症化しやすくなるといったケースは見られます。妊娠というのは身体が大きく変化する状態ですから、免疫の状態も変わり、コロナの症状が強く出るということはあり得るかと思います。ただ、赤ちゃんに重篤な問題が生じるというケースはいまのところありませんので、そこまで不安を感じる必要はないと思います。

── 最後の質問です。「新型コロナウイルスは今後、人類と共存していくことになるのか」という問いについてはいかがでしょうか。

大曲新型コロナウイルスは、今後も消えてなくなるということはないでしょう。インフルエンザや他のウイルスによる風邪と同じように、身近な病気になっていくだろうと思います。なお、皆さんもご存知の通り、このウイルスはかなり頻回に遺伝子変異を起こす性質があります。ですから今後、例えば「病原性が高まって重症度が上がる」「人から人に移りやすい状態になる」といった変異が起こる可能性もあります。そうした事態に備えて、今回のコロナでの様々な教訓も生かして、しっかりとした対策に皆で取り組んでいけたらと思っています。

── 本日はありがとうございました。

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