特別講演
“天然水の森”100年先を見据えた水源涵養
風間 茂明
サントリーホールディングス
執行役員 サステナビリティ経営推進本部 副本部長
「水と生きる」を実現するため、水源保全に取り組む

サントリーグループは、ウイスキーやビールといった事業から成長を続けてきました。近年は飲料も成長の基盤となり、我々の商品には水が欠かせない存在と考えています。
私どもは「水と生きる」というスローガンを掲げています。このスローガンは我々の企業理念の本質であり、社会と共生することを意味する大事な言葉です。「水と生きる」を実現するために、我々は日々活動しています。
サントリーグループの水理念は、4つの活動を柱にしています。1つ目は、科学的なアプローチによって「水循環を知る」。2つ目は、日頃の生産活動を中心として、節水に努め「水を大切に使う」です。3つ目は「水源を守る」で、今日は主にこの水源保全についてお話しします。4つ目は、水源を守る活動を通じて「地域社会と共に取り組む」も実施しています。
4つの活動のうち「水循環を知る」は、自然全体の健全な循環を理解することです。最終的には私どもが使用した水を、それ以上の形で地域や自然に返していくことで、ネットポジティブの実現に向けて取り組みます。「水を大切に使う」という意味では、原料の産地や商品を製造する工場において、水を使う量の削減に取り組んでいます。
「ふかふかの土」を回復させる全国21カ所の「天然水の森」

「天然水の森」の活動は2003年からスタートし、国内21カ所で計1万2000ヘクタールの森を涵養(かんよう:森林を育てることで水源を守る)しています。雨が降り河川に届いて海に流れていくという水の循環の中でも、私どもは森に降る雨について、より効果的に地下水に浸透する活動を支援しています。
我々の工場は、山に降った雨が土壌を通じて岩盤層に入り、約20年かけて深層まで到達した地下水を使用しています。通常は雨が降った後に表層水となって、河川などに直接流れますが、商品に使う天然水は、岩盤層にあるミネラルの溶け込むメカニズムが非常に重要です。
水の循環のサイクルの中で最も重要なのは、表層の土壌です。「ふかふかの土」は水を保ち、さらに地下へと浸透するための重要な役割を担っています。人の手が入っていない森は暗くて下草が生えておらず、土壌も非常に硬い状態になるため、地下水の浸透が進みません。そのため我々は、「天然水の森」を間伐して明るい森にし、下草が生えるような健全な土壌を回復させることを日々実施しています。土壌の中で微生物や小動物が増え、それを食べるシカやウサギ、さらに生態系の上位にいるクマやキツネなど、森全体の生態系を回復させることが、まさに水を守る活動だと考えています。
「天然水の森」の活動は、土壌、水脈、地下水の専門家や、計算シミュレーションをする専門家などの方々と連携しています。学術研究(Research)に基づく科学的な知見を生かした「R-PDCAサイクル」によって、森を守る活動を組み立てています。
「人と自然と響きあう」を使命に掲げて国内外で活動
具体的な活動をいくつか紹介します。「サントリー水科学研究所」の所員をはじめ、学術研究者や専門家の方々のアドバイスを頂きまして、地下水のシミュレーションモデルを開発しました。このモデルによって、どのような森林涵養をするべきか、どの地下水の流れについて考慮すべきかを理解できます。
「天然水の森 南アルプス」では、森が崩れた状態の斜面に柵を作り、その柵の中に植物を植えました。結果として約10年かかりましたが、生えた木の根によって斜面が守られています。森の生態系を回復させた事例の一つが、2001年に稼働した「天然水の森 北アルプス」です。この森の生態系の頂点にいる猛禽類(もうきんるい)のオオタカが適切な巣を作れるように、間伐を実施して環境を準備しました。実際にオオタカが巣を作り、生まれた3羽の雛は無事に今年巣立ちをしました。
我々は海外でも、水源を守る活動を展開しています。英国のスコットランドでは、ウイスキーの香りに不可欠な原料のピート(泥炭)を守るために、近年採掘や開発によって荒れてしまった泥炭地を、地域の方々と共同で水を回復させる活動を実施しています。この活動を「Peatland Water Sanctuary」と名付け、約1300ヘクタールの泥炭地を2030年までに復元することを目指しています。
サントリーは社会との約束である「水と生きる」を実現するために、「人と自然と響きあう」を使命に掲げ、日々活動を続けていきます 。
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