未来へ、若い世代へ伝えたい―― 。
世界中の各界リーダーたちからのメッセージ
ウーマンズ パビリオン2階の「WA」スペースは、多様なアイデアや価値観が交わる“アゴラ”として、対話と行動を生み出す場となった。 会期中、この空間ではカルティエ インターナショナルが主催するプログラム「WAダイアローグ」をはじめ、さまざまなトークセッションを展開。半年間で200のセッションに1万9千人が参加した。また、1千人を超える世界各国のリーダー、チェンジメーカー、専門家が集い、現代のグローバル課題について未来を見据えて議論を交わした。「WA」スペースで実施されたセッションの中から、いくつかの内容と登壇者のメッセージを紹介する。(文中敬称略)
#ジェンダー #女性活躍
「ジェンダー平等についての
アイスランド-日本の観点」
登壇:ハトラ・トーマスドッティル
(アイスランド大統領)
ハトラ・トーマスドッティルは2024年8月にアイスランドで2人目の女性大統領に就任した。アイスランドは、1980年に世界で初めて女性大統領が誕生した国で、現在は大統領のほか、閣僚は11人のうち6人を女性が占めている。世界経済フォーラムが発行する「ジェンダーギャップ報告書(2025年版)」では、16年連続で1位になるなど、ジェンダーの平等が進んでいる国として知られている。
トーマスドッティルは、女性起業家を支援する国際プログラム「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ(CWI)」で2009年度のフェローに選ばれた経験があり、16年の時を経てウーマンズ パビリオンの「WA」スペースから行動喚起の声をあげる機会となった。
トーマスドッティルは、ジェンダー平等を実現する上で文化が最も重要だと語り、「大統領がどうあるべきか、誰が起業家になれるのか、誰が家庭の仕事をすべきか、そうした規範や固定観念を変えることが、本当の意味でジェンダー平等な国をつくることにつながる」と強調した。
女性の活躍にも触れ、「大切なのは、性別や世代を超えて、すべての人が自分の光を輝かせることができる社会を作ること。これは女性の権利の話であると同時に、私にとっては最も賢明な経済・社会政策であり、国連のグローバルゴールの中で最も重要な目標(ジェンダー平等を実現しよう)だと思う」と語った。また、自身のキャリアを振り返りながら「私は自分らしく生きることに一歩一歩近づこうとしてきた。若い人たちには、人生のあらゆる経験を通じて、自分らしさに近づいていってほしい」とエールを送った。
#宇宙 #女性活躍 #地球環境
「新たな地平へ:宇宙探査から
考える地球の未来」
登壇:山崎 直子
(宇宙飛行士)
山崎直子は、日本で2人目の女性宇宙飛行士。2010年にスペースシャトル「ディスカバリー号」に乗り、国際宇宙ステーションISSの組み立てに携わった。
この日のセッションでは、宇宙から見た景色を紹介しながら「真っ暗な宇宙の中で、昼間の地球は青く輝いていて、それを見たとき、地球を守らないといけないという思いを強くした」と話し、国際社会で環境課題に取り組む必要性を強調した。また、宇宙を夢見る若い人たちに向けて「みなさんが想像する以上に世界は広い。可能性は広い。宇宙飛行士になる道は一つでない。自分が歩んでいくところを自分の道にしてほしい」と言葉を贈った。
#ジェンダー #職業差別 #インクルージョン
「夢を現実に:障壁を撤廃し、
子どもの憧れを叶える」
登壇:熊川 哲也(バレエダンサー)
かつて世界では、特定の職業に対して「女性の仕事」「男性の仕事」といった性別による固定観念が今より強く存在していた。この日のセッションには、クラシックバレエ界で世界の第一線に立ってきた熊川哲也、「日本初の女性機長」となった藤明里、すし職人の三好史恵が登壇。
熊川は、ロンドンのバレエ教室で言葉の壁に直面しながらも、アジア人として負けん気を発揮してきた経験や、バレエの「美しさ」について自身の考えを話した。そのうえで、「時代は変わる。かつて“Yes”だったものが“No”になることもある。大切なのは挑戦する気持ちと、最終的に自分がどう思うかだ」とメッセージを送り、挑戦し続ける姿勢の重要性を強調した。
#アスリート #社会課題 #災害支援
「アスリートが挑む社会変革」
登壇:中田 英寿
(元サッカー日本代表、HEROsプロジェクト発起人)
トップアスリートが社会貢献活動を通して、社会課題の解決などをめざすプロジェクト「HEROs Sportsmanship for the future」とのコラボレーションで開催されたセッションには、元サッカー日本代表で、HEROsプロジェクト発起人の中田英寿が登壇した。
この日は、日本財団専務理事としてHEROsプロジェクト拡大の立役者となった笹川順平専務理事(当時)、女性アスリートが抱える生理の課題について取り組む元五輪競泳選手の伊藤華英と共に、アスリートの影響力を活かして、ジェンダー平等や災害支援、コミュニティ活性化に取り組むことの意義ついて語り合った。中田は「自分たちの意識を変えるのも大変なように、多くの人の意識を変えて、文化を変えていくというのは、簡単じゃない。でも、誰かがどこかで始めないと変わらない」と思いを語った。
#ジェンダー #貧困 #変革
「ジェンダーバイアスを打破する:
アートとメディアで平等な社会をデザイン」
登壇:宮田 裕章 (大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサー・慶應義塾大学教授)、SHELLY(タレント)
周囲の雰囲気に合わせて共鳴することを得意としてきた日本社会だが、現代では異質性を排除せず、多様性を尊重する姿勢が求められている。この日のセッションには、慶応大教授の宮田裕章とタレントのSHELLYが登壇し、多様性を認め合う社会をつくるうえで欠かせないキーワードとして、共感力と想像力の重要性が語られた。
宮田は「これまで見えなかったものがデジタルによって可視化できる今、多様性に寄り添った社会の仕組みをつくることが可能になっている」と自身の経験を踏まえて述べた。SHELLYは「日々少しずつ気づきを持つことで想像力は広がり、人の痛みや感情、考え方に寄り添う共感力を育むことができる」と語り、日常の積み重ねの大切さを強調した。
ほかにも、
各分野で活躍する人たちが
未来に向けて思いを語りました。
そのメッセージの一部を
ご紹介します
人間関係の本質:
つながりがもたらす永続的な価値とは
登壇:河瀬直美(映画監督)ほか
社会での孤独感が深まるにつれ、リアルな人と人とのつながりの必要性が、これまで以上に切実になっている。このセッションは、ウーマンズ パビリオン内の展示「YOUR HAND」に登場する作家のJJ・ボラによる詩の朗読で始まり、JJ・ボラと「THREE WOMEN」のショートフィルムを手掛けた映画監督の河瀨直美が、その半生と創作活動の中で、いかに人とのつながりを培ってきたのかを振り返った。
パワーバランスの再構築:
女性リーダーシップの促進
登壇:ラムラ・アリ
(プロボクサー・人権活動家・UNICEF UK大使)ほか
プロボクサーであり、人権活動家でUNICEF UK大使をつとめるラムラ・アリが、女性がリーダーシップをより多く担い、成功を収めるために何が必要かを、自身の経験や気づきを交えて紹介。半生を振り返りながら、女性がリーダーになるための障壁を取り除く具体的な方法を説明し、リーダーシップへ着実なステップを築く上で教育、メンターシップ、アクセスが重要であることを強調した。
変わりゆく家庭のかたち:
社会変化とジェンダーの役割を考える
登壇:坂東眞理子(昭和女子大総長)ほか
昭和女子大学総長である坂東眞理子が登壇。ジェンダーの役割の変化に伴い、キャリアと家庭生活における女性の立ち位置はどのように変わっていくのか。さらに、より多くの女性が働き、リーダーシップを担うことで、どのような経済的、社会的メリットが生まれるのかなど、本セッションでは、現代社会における男女の役割の変化とともに輝ける未来について掘り下げた。
大胆に創造すること:
アートが未来を形づくる時
登壇:森万里子ほか
世界のアート界を牽引するアーティストの森万里子と、香港故宮文化博物館 副館長でコレクションやプログラムのキュレーションを手掛けるデイジー・イーヨウ・ワンによる貴重なセッションが実現。不確実性が高い世界において、アーティストやキュレーターは単に文化を解釈するのではなく、未来を見通して新しい可能性を形づくる役割を担う。二人の活発な対話を通して、本セッションは、私たちが変化する世界に立ち向かい、他者とつながり、新しい未来を考える上で、テクノロジーの力を借りたクリエイティビティがいかに役立つのかを探った。
永遠にグリーンな製品:
ライフサイクルの価値創出を見直す
登壇:ガブリエラ・ハースト(デザイナー・起業家)ほか
デザイナーで起業家のガブリエラ・ハースト、株式会社 細尾 代表取締役 細尾 真孝、US版『ハーパーズ バザー』編集長 サミラ・ナスル、カルティエ カルチャー&フィランソロピー会長シリル・ヴィニュロンが登壇し、モデレーターのアナ・カルカーニ・ロールドの進行のもと、「永遠にグリーンな製品:ライフサイクルの価値創出を見直す」をテーマに、それぞれのビジョンを共有した。このセッションでは、職人技、伝統、現代性を題材に議論を展開。伝統的な職人技と最先端のイノベーションは、持続可能性をどのように再定義できるのか。職人技術を維持しながら効率性を高めるためにテクノロジーがどのような役割を果たすのか。こうした問いに対し、伝統を守りながら自然との共生を模索する、デザインの未来に対し希望とインスピレーションに満ちた対話が繰り広げられた。