気ぜわしいときこそ、相棒にしてみませんか?
クラシックは"ながら"で聴いていい!

どこからともなく心地よい音楽が耳に入ってくると、その瞬間に、心が解きほぐされたり前向きになったりしませんか?中でもクラシックは、音環境の専門家・齋藤寛さんによると、「人の心を動かす仕掛けがあらゆる部分に隠されています」とのこと。ヴァイオリニストの宮本笑里さんは「クラシックは盛装して静かに聴くものと決めつけないで。"ながら"で聴いてもきちんと心に届きます」と語ります。クラシックをBGMにして、忙しい年末年始も心豊かに!
(イラスト/ソリマチアキラ、構成・取材/酒井亜希子・赤木さと子(スタッフ・オン))
本特集でご紹介している一部楽曲を収載した「ボンマルシェオリジナルプレイリスト」は、音楽配信サービス「Spotify」で視聴可能です!
音環境の専門家に教えていただきました!
齋藤 寛 さん
音環境コンサルタント

さいとう・ひろし 音楽心理学者。フェルモンド代表。新潟大学教育学部芸術科で音や音楽が人の感情に及ぼす影響について研究。現在は飲食店やオフィスのBGMのコンサルティングなどを行う。著書に『心を動かす音の心理学~行動を支配する音楽の力』(ヤマハミュージックメディア)。
心に届くクラシックを、生活シーンのBGMに
クラシックが何百年も聴き継がれてきたのは、何度聴いても新たな発見や感動があるから。うんちくを学ぶ楽しみもありますが、「きれいな曲だな」と感じるだけでも、その魅力は十分に味わえます。また、聴覚からの刺激はスピーディーに脳内に伝わるため、たとえ"ながら聴き"であっても、音楽の力を借りることで気持ちは瞬時に切り替わり、行動が促されることが科学的にもわかっています。
たとえば、拭いたり磨いたり……といった反復作業の大掃除では、ハチャトゥリアン「組曲『仮面舞踏会』よりワルツ」(ページ下のリスト②・以下同)のように、3拍子で体が自然に動いてしまうようなリズムの曲をかけると作業効率が上がります。整理整頓や不用品の見極めなど頭を使う作業には、複数の旋律が絡み合って最終的にはスッキリ着地するバッハ「『フーガの技法』 BWV 1080 コントラプンクトゥス 1」③がおすすめです。大切な人を思い浮かべながら季節の挨拶(あいさつ)状を書くときは、平和な時間が流れるヴィヴァルディ「『四季』より冬 第2楽章」⑤を。久しぶりに会う家族との時間には、息をのむ美しい旋律のベートーヴェン「ロマンス 第2番 へ長調作品50」⑨が心を通わせてくれるでしょう。大きく包み込んでくれるようなエルガー「『エニグマ変奏曲』 作品36より第9変奏 ニムロッド」⑪を聴くと、うまくいかないこともちっぽけなことに思え、新しい目標に向かう気力がわいてきます。そのほか、"やる気"のスイッチを入れてくれるモーツァルト「オーボエ協奏曲 ハ長調」、格別の癒やしを与えてくれるラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」や、夜の澄んだ空気の中で散歩をしているような美しいメロディーのドビュッシー「アラベスク」が年末年始の気分に寄り添ってくれます。
齋藤寛さんの選曲tips
- 体を動かすときはテンポが速め、くつろぎたいときはゆっくりめの曲をセレクトする。
- テンションを上げたいときは音量を少し大きめに。

私たちが"ながら"で聴きたい曲は……
「安心したい」ときにかけるひっそりとしたクラシック
江國 香織 さん
作家
昔から、心をかき乱されない控え目な音楽が好きです。かけると部屋が"自分だけのいつもの場所"に感じられます。掃除には、気持ちが明晰(めいせき)になって元気が出るベートーヴェン「ピアノソナタ 第17番ニ短調 作品31-2『テンペスト』第3楽章」①を。12月の晴れた戸外の空気にも似合う曲なので散歩にもいいです。大みそか、やっとひとりになれたら、ヨーヨー・マが演奏するバッハ「無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 プレリュード」⑩を。彼が弾くこの曲は本当に情感豊かで、たちまち心をさらわれます。年賀状やクリスマスカードは、アルベルト・デ・クレルク「小さなオルガンのための貴重な作品集」を聴きながら書きます。

えくに・かおり 直木賞受賞作『号泣する準備はできていた』(新潮社)をはじめ著書多数。『ひとりぼっちのもみの木』(ビーエル出版)など、絵本や児童書の翻訳も数多く手がける。両親が聴いていたジャズやシャンソン、ロックにも親しむ。
家族の時間も、ひとりの時間も"ながらクラシック"でより味わい深くなる
宮本 笑里 さん
ヴァイオリニスト

小学生の娘にも音楽を身近に感じてもらおうと、家の中ではクラシックを流しています。食事中や料理中によく聴くのはモーツァルト「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 第1楽章」⑦。優雅で軽やかで、聴いているだけで気持ちが温まるので12月には特に合います。読書にはヴィターリ「シャコンヌ」⑥。20もの変奏が繰り広げられるドラマチックな曲です。美しいメロディーに心洗われる「カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲」はひと息入れたいときに。

みやもと・えみり 7歳からヴァイオリンを始め、14歳でドイツ学生音楽コンクールデュッセルドルフ第1位入賞後、小澤征爾音楽塾、NHK交響楽団などに参加。テレビの歌番組でも多くのアーティストとコラボし、ヴァイオリンの魅力を発信している。
人類最強!?の歌声はクラシック初心者もグッとくる
宝槻 泰伸 さん
探究学舎代表

ウイスキーを片手に集中して聴くのも好きですが、"ながら"で聴くなら、始まってすぐ感動できる短い曲がいい! ポップスと融合したジャンルの「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」④や、プッチーニ「歌劇『トゥーランドット』より第3幕 誰も寝てはならぬ」⑧は、サラ・ブライトマンやルチアーノ・パヴァロッティの圧倒的な歌唱力に10回くらい繰り返しかけてしまいます(笑)。特に朝に聴くと、世界が美しく見えますよ。子どもと一緒のときは、ジブリ音楽のオーケストラ演奏バージョンを。「ヴァイオリンの音ってきれい!」などとクラシックに興味をもつようになります。

ほうつき・やすのぶ 子どもの探究心に火をつける興味開発型の学び舎(や)「探究学舎」を主宰。「探究学舎」の音楽編の授業では、クイズや謎解きなどを用いてクラシック音楽の世界を探究。両親がクラシック好きで自身もピアノを習っていた。
BGMの専門家と音楽をこよなく愛する著名人がセレクト!
ボンマルシェオリジナル
年末年始に"ながら"で聴きたい「クラシック」
①大掃除をしながら
ベートーヴェン「ピアノソナタ 第17番 ニ短調
作品31-2『テンペスト』第3楽章」
『Beethoven: Complete Piano Sonatas & Concertos』
アルフレッド・ブレンデル(ユニバーサル ミュージック)

②大掃除をしながら/体をリズミカルに動かしたい単純作業
ハチャトゥリアン「組曲『仮面舞踏会』よりワルツ」
『クラシック人気曲ランキングTOP50!』(Naxos Japan)※配信のみ

③整理整頓など頭を使う作業
バッハ「『フーガの技法』 BWV 1080 コントラプンクトゥス 1」
『Bach: The Art of Fugue』 ピエール=ロラン・エマール(ユニバーサル ミュージック)

④ウォーキングやジョギングをしながら
フランチェスコ・サルトーリ、ルーチョ・クアラントット 「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」
『アヴェ・マリア~サラ・ブライトマン・クラシックス~ / CLASSICS』
サラ・ブライトマン(ユニバーサル ミュージック)

⑤季節の挨拶状を書きながら
ヴィヴァルディ「『四季』より冬 第2楽章」
『Vivaldi:The Four Seasons』 イツァーク・パールマン(ワーナーミュージック・ジャパン)

⑥読書をしながら
ヴィターリ「シャコンヌ」
『tears』 宮本笑里(ソニーミュージック)

⑦クリスマスのごちそうやおせち料理を作りながら
モーツァルト「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調 第1楽章」
『モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 他』 五嶋みどり(ソニーミュージック)

⑧ドライブしながら
プッチーニ「歌劇『トゥーランドット』より第3幕 誰も寝てはならぬ」
『誰も寝てはならぬ〜パヴァロッティ/プッチーニ・アリア集』
ルチアーノ・パヴァロッティ(ユニバーサル ミュージック)

⑨久しぶりに会った家族と食事をしながら
ベートーヴェン「ロマンス 第2番 へ長調 作品50」
『フォーシーズン』 千住真理子(ビクターエンタテインメント)

⑩大みそか、部屋でひとりゆっくりしながら
バッハ「無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 プレリュード」
『バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)[2017年録音]』ヨーヨー・マ(ソニーミュージック)

⑪一年を振り返り、新年の目標をたてながら
エルガー「『エニグマ変奏曲』 作品36より第9変奏 ニムロッド」
『エルガー:エニグマ変奏曲、序曲「南国にて」』
指揮:ウラディーミル・アシュケナージ、シドニー交響楽団(エクストン)

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齋藤薫さんのエッセーに登場する曲目も一部、収載!
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