楽しい"半径2メートルの食の循環"
今、コンポスト生活始めどき!
「コンポスト」とは、調理くずや食べ残しの生ゴミを分解させて、堆肥(たいひ)に変えることです。できた堆肥を家庭菜園やガーデニングの肥料に使い、育った野菜を食べれば、生ゴミが減るだけでなく、環境保護に役立つ"食の循環"にもつながります。毎日の生ゴミの臭いがいっそう気になるこれからの季節こそ、「コンポスト生活」の始めどき! 蒸し暑い外気が幸いして、分解もよく進みます。
(イラスト:斎藤俊行/写真協力:ローカルフードサイクリング、NPO法人循環生活研究所/取材・文:角田奈穂子/構成:ボンマルシェ編集部)
教えてくださったのは……
たいら 由以子 さん
ローカルフードサイクリング代表

たいら・ゆいこ 大学では栄養学を専攻。証券会社勤務を経て、平成9年にコンポスト活動開始、平成16年、NPO法人循環生活研究所を設立。生ごみ資源化100研究会を主宰、循環生活研究所理事、コンポストトレーナー、NPO法人日本環境保全ボランティアネットワーク理事。コミュニティーガーデンの運営も手がけ、コンポストを中心にした「食の循環」に尽力。
コンポストで生ゴミが"宝物"に変わる!
たいら由以子さんは、家庭の生ゴミから堆肥を作るバッグ型コンポスト「LFCコンポスト」の開発者。できた堆肥を使っての野菜作りを推奨する活動に力を入れています。
たいらさんがコンポストに注目したのは、父親の闘病がきっかけでした。「28年前、末期がんの父のために食養生を始めたんです。有機野菜を使い、玄米食にすると体力が戻り、2年も延命できました。でも、当初は無農薬野菜がなかなか見つからず……。私たちの暮らしは大地の恩恵を受けているのに、健康な土壌で作られた野菜があまりに少ないことにがくぜんとしました。人の活動が自然破壊に直結していること、とくに土の健康とゴミの廃棄に関心を持つようになったんです」(たいらさん・以下同)
微生物の働きを利用し、生ゴミなどの有機物を分解させて堆肥化。その堆肥を野菜づくりの肥料に使えば、土を養い、環境を破壊することのない"食の循環"が取り戻せます。そう考えたたいらさんは、母親がやっていたコンポストをヒントに、家庭で気軽に使えるコンポストの開発に取り組みました。
「化学肥料がない時代は、コンポストで作った堆肥で作物を育てていました。江戸時代の日本は食の循環型社会だったのです。私はその循環を取り戻したい」
多くの家庭でコンポストを使えば、環境保護の大きな力になります。「なにより、コンポストで生ゴミから堆肥を作り、野菜を育てるのは、とても楽しい作業です。まるでペットを育てているような感覚があります。そして、健康な堆肥で育てた野菜はとってもおいしいんですよ」
たいらさんいわく、「まずはおいしく食べ切ることを心がけたいですね。その上で、どうしても使い切れなかった食品やしなびてしまった野菜はコンポストへ」。キッチンとコンポスト。家庭内でできる、いわば"半径2メートルの食の循環"の始めどきです。
知っておきたいこと 1
なんと、日本のゴミ焼却量は世界一!
リサイクルが盛んな欧米に比べ、「ゴミは燃やす」意識が強いのが日本。焼却量は、世界1位※1。日本のゴミ処理の79.4%は焼却※2されています。2008年のOECDのデータによれば、焼却炉も世界の半分以上が日本にあるとか。そして、「燃やすゴミのうち、40%前後が実は生ゴミで、その生ゴミの約80%は水分なんです」。つまり、私たちは水分を燃やすために多額の焼却費をかけ、大量の二酸化炭素(CO₂)を排出しているのです。「コンポストで生ゴミを捨てる量を減らして、CO₂排出量の削減に貢献したいですね」
※1:OECD, Municipal waste disposal and recovery shares, 2013 or latest
※2:2021年3月環境省発表
知っておきたいこと 2
コンポストにはさまざまな方法があります
コンポストには設置型、回転型、密閉型、段ボール型などさまざまな種類があります。悪臭や虫の発生など、初心者には管理が難しいものもありますが、段ボール型やバッグ型なら手軽に始められます。

人気のトートバッグ型コンポスト「LFCコンポスト」は、開発者のたいらさんと仲間たちで「実際に使いながら、二十数回の改良を加えました」。集合住宅のベランダでも簡単に使えて、臭いや虫の心配が少なく、使い勝手がいいのが特長。「キャンプに持参するという人もいますよ」
使い方(LFCコンポストの場合)は、まずバッグのなかに生ゴミの分解を早め、悪臭の発生を抑える基材を入れます。そして生ゴミを投入し、スコップなどでよく混ぜ、バッグのファスナーをしっかり閉めます。

知っておきたいこと 3
堆肥はまるで生き物のよう。
毎日、観察していると いとおしくなる
生ゴミを毎日、コンポストに投入して、混ぜて……を繰り返すこと1カ月半から2カ月で、生ゴミが堆肥に育っていきます。この間、投入する生ゴミの種類で堆肥の温度が上がって湯気が出たり、分解が早くなったり、さまざまな変化が表れます。「まるで生き物のようで、生ゴミの価値が変わりますよ。観察日記のように、わが家の生ゴミの量や、堆肥の温度変化を記録しておくのもおすすめです」。完成した堆肥は、植物の生育に必要な栄養が豊富で、土に混ぜると保水性や排水性、通気性がよくなります。


知っておきたいこと 4
ガーデニングや家庭菜園がグッと身近に!
できた堆肥は花にも使えますが、たいらさんがすすめるのは、野菜作り。「コンポスト生活は、やらなくてはならないと思うとなかなか続かないかもしれませんが、自分で作った堆肥でおいしい野菜を育てるためと思うとワクワクして、一気に自分事に思えます。家庭菜園をやりたくてコンポストを始めた人もいますよ。そして、野菜は自分が食べたいものを育てるのがポイントです」

また、たいらさんの会社では、家庭菜園の講座を設けたり、ユーザーが作った堆肥を定期的に集め、契約する有機農家の肥料にしてもらう活動なども行っています。
「余った堆肥を友人にあげるのもいいですし、地域でコミュニティーガーデンを作るきっかけにもなります。子どもと一緒に取り組めば、化学や生物を家庭で学ぶ時間にも。コンポストは、社会とつながるツールにもなるんですよ」

編集部とアンバサダー3名が「LFCコンポスト」を使って「コンポスト生活」を始めました
市民農園を始めたり、理系大学への進学を目指すお子さんがコンポストを使った食の循環に興味を持ったり、英国滞在の経験から日本でもコンポストを使いたいと思っていたり、とアンバサダーさんのスタート動機はさまざま。それぞれのご家庭でコンポストがどのように活用されていくのか、取り組みの様子はボンマルシェオンラインで紹介してまいります。
