座談会・インタビュー記事

ハルノヒ スマイルプロジェクト特別シンポジウムWeb採録

専門家と考える“女性のライフステージ”
~女性の更年期 日々の笑顔を取り戻す~

Q & Aトークセッション

小宮ひろみ先生、甲賀かをり先生、稲葉可奈子先生、寺内公一先生 進行:町 亞聖さん

診療シーンや更年期かも?な時
自分でできるアクションは

 ここからは寄せられた質問を紹介して先生方に回答していただきます。まず、仕事でミスが増えたことへの不安で受診した女性からです。パソコンばかり見ている医師が「更年期ですね、薬を出しておきます」と数分で診察を終えてしまったと。ゆっくり相談することは不可能なのでしょうか。

稲葉 ゆっくりの度合いにもよるものの、全ての方の悩みを心ゆくまで聞くと医療提供システムが成り立たないという現実はあります。このケースは患者さんが、いい相性だと感じる医師を見つけることが重要ですね。医師にも様々な性格の先生がいて、こういう淡々とした対応を好ましく思う患者さんもいるので。長い付き合いになりますから、相性がいい婦人科医を見つけると親子2代での相談などもできて、長期的なメリットがあります。

 親子で通われる患者さんがいるんですか。

稲葉 そうですね。更年期に入る前からかかりつけの婦人科医を見つけられるのが理想だと思います。

甲賀 先ほどもお話ししましたが、やはりメモにまとめることは有効だと思います。そうやって少し時間を短縮しながら、ゆっくり話すところはゆっくりと。

 続いて高校受験を来年に控える息子さんがいる女性、更年期のせいかイライラして子どもや夫と関係がうまく構築できず困っているということです。

小宮 甲状腺などの病気が否定できる場合のイライラは更年期症状の一つですので、婦人科の受診をお勧めします。母親の更年期が思春期の子のメンタルヘルスに影響するというデータもありますね。HRTや漢方などの対処は効果が期待できると思います。

フリーアナウンサー 町 亞聖さん
更年期障害の「診療のモヤモヤ」
医師が感じている現在の課題

 高血圧の夫が医師から食事や運動について丁寧な指導を受けているという女性、自身の更年期障害の診療は薬の処方程度で、将来のリスクである骨や血管の病気について相談できていないそうです。国がもっとしっかり管理すべき病気では?というお尋ねです。

甲賀 この医師は薬の処方で将来のリスクに対処しているとも考えられます。ただ、現実には予防的な対応について国の管理やサポートが高血圧に対するものほど充実していないかもしれませんね。病気の性質としては、高血圧といった生活習慣病のようなものと考えていいと思います。

寺内 更年期障害もれっきとした病気ですからね。私はよく「更年期ゲートウェイ」と言って、人生100年時代の後半生の健康を維持するための重要なチェックポイントだとお話ししています。医療者は将来の健康を考えたケアをしていくべきですね。

 続いては、更年期に対する医療体制などについての質問です。女性活躍推進や女性の健康支援に関する政策が強化されても、なかなか満足できる治療に巡り合えないことがある中、診療体制や教育、地域連携など医師目線で感じる課題とは。いかがでしょう。

甲賀 更年期診療は、産婦人科の医療提供者側から見てもお産やがん治療などよりは後回しにされてきたという時代背景があります。このお声のようなニーズに気づいたり、政策が強化されたことで専門医をつくろうという取り組みもあったりするので、改善方向にはあると思います。

寺内 私ども日本女性医学学会は女性ヘルスケア専門医を認定しており、診療体制をウェブサイトで公開しています。とは言え、地域格差の問題は小さくありませんし、公的な助成や国からの支援も必要だろうと考えているところです。「ハルノヒ スマイルプロジェクト」は女性の健康に関連する三つの学会が一緒に動かしているのですが、一丸となって進めていくことが大事だと思っています。昨年12月にはこの3団体で丁寧な問診や継続的な管理を行うための医療構造改革を求める「ホルモン補充療法治療管理料の新設に関する要望書」を、高市早苗内閣総理大臣、上野賢一郎厚生労働大臣、仁木博文厚生労働副大臣宛に提出しました。

 次の質問は地域格差に関する質問です。複数の病院を受診しましたが、医師によって話の内容が大きく異なっています。更年期障害について熱心に教えてくれる医師もいれば、詳しくない医師も。地域差なく同レベルの治療が受けられるようにならないのでしょうか。

小宮 国の基準が非常に重要です。確かに更年期診療は産婦人科が中心ではあるものの、その女性が更年期障害か他の疾患か判断できない場合は内科を受診することもあります。現在はこの診療科を超えた連携システムが十分ではないというのは課題で、全国的な均てん化も必要です。

寺内 女性ヘルスケア専門医は現在1400人※8ほどです。そして都市部に集中している状況なので、他の診療科との連携はおっしゃる通りだと思います。

 海外との比較についてのお尋ねです。インターネットで英国は国を挙げて更年期世代をサポートしていると知りました。日本では必死に情報を集めて自分に合う病院を運任せで探すしかありません。これは国が更年期をないがしろにしているということでしょうか。

寺内 各国課題はありますが、英国は5年ほど前に職場での更年期ケアに関する法案が通過しました。これは一般の方が署名を集めて実現したものです。最終的に20万筆ほどになったと聞いています。皆さんが今日これを聴いてくださっているのも何かの縁です。困りごとはぜひ声を上げていただき、ムーブメントを起こしていけるよう力を貸していただければと思います。
※8 2026年3月31日現在

働く女性の更年期障害を支える
企業がサポートするポイント

 人事部門の管理職の方からです。働く更年期世代が増える中で従業員支援を進めたいのですが、支援がハラスメントと見なされるのではないかという懸念があります。理想の支援方法や注意点は。

小宮 経済産業省は職場環境へのアプローチとして、更年期理解に関する研修や柔軟な働き方の提案、健康支援サービスの導入などを推進しています。厚生労働省は正しい知識の普及に注力した広報活動をしています。そういうものに目を向けていただきつつ、「働く女性の心とからだの応援サイト」や「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」といったウェブサイトの活用も良いでしょう。自治体によるサービスの案内なども検討されては。

稲葉 企業研修で、更年期当事者である女性管理職と婦人科専門医による座談会に参加しました。バリバリ働く先輩が「実は更年期障害で困っていた」と語ることで、部下の従業員は親近感と心強さを感じることができます。同じ社内での経験談を聞く効果は大きく、更年期ハラスメントへの懸念も和らぎます。とても良い雰囲気でした。

 最後に、一言ずつメッセージをお願いします。

寺内 更年期の問題は私たちだけではなく、医療従事者も患者さんもみんなが力を合わせていく必要があります。状況を少しでも前に進めたいと思いますので、ぜひ今後ともよろしくお願いします。

稲葉 婦人科は怖いところではありません。ちょっとした悩みもどんどん相談していただいて大丈夫です。更年期に限らず、月経や尿もれについても話してください。婦人科医は女性の生涯をサポートする人生の伴走者だと考えて、頼っていただければと思います。

甲賀 「知識は力」だと思います。来場の方は女性が多く、きっと当事者の方ですね。違うジェンダーの方、違う世代の方に更年期の問題を知っていただくことが大事です。生物学的な特性なのだと知識が底上げされていれば、当事者の女性が社会で孤立せずに、きちんと支えられるようになるはずです。

小宮 がまんしないことが一番大事だと思います。思春期、出産期や産前産後、更年期……と女性はずいぶん耐えてきているのですから。つらい時、何かあった時にはぜひ医療機関につながるというのを、考えていただきたいです。

 先生方、今日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

閉会のごあいさつ

更年期障害は女性のQOLを
低下させ経済損失ももたらす

新百合ヶ丘総合病院 がんセンター長
日本産婦人科医会 常務理事
鈴木光明先生

本日はハルノヒ スマイルプロジェクトのシンポジウムへのご参集、ありがとうございます。更年期障害は直接命に関わる疾患ではありません。しかし、女性のQOL(生活の質)を著しく低下させ、社会においても多大な経済損失をもたらす重要な健康課題です。この講演で、この疾患を取り巻いている多くの問題点と改善点が明らかになるはずです。私どもはプロジェクトを通じて、さらなる疾患啓発と国への働きかけの強化を進めていきます。そして何より、患者さん一人ひとりに寄り添い、安心して相談できる医療体制の構築を目指していきます。この集いが、女性のライフステージを支える新たな一歩となり、女性が日々の笑顔を取り戻す力につながることを願ってやみません。

特別シンポジウム アーカイブ動画

TOP