Interview with Old Parr
Interview with Old Parr

能楽師大藏流狂言方 大藏基誠
Vol.01

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オールドパーと語ろう。

酒は人を饒舌(じょうぜつ)にする。それが、旨(うま)いウイスキーであるならなおのこと。
重なり合う言葉と言葉の間に、黄金の雫(しずく)と透明な氷が、カラカラと合の手を入れる。
今宵(こよい)、語るのは狂言界の革命児である。

能楽師大藏流狂言方 大藏基誠

AERA STYLE MAGAZINEエグゼクティブエディター 山本晃弘

Interview

狂言を初めて見て、その楽しさに
「これコントだ」と思う人もいる・・・

山本渋谷セルリアンタワー能楽堂で行われている「KYOGEN LOUNGE」を拝見しました。狂言の舞台が始まる前に、お酒と金田中さんの料理をいただいて、とても楽しかったです。

大藏2011年にスタートして、今回で55回目。それまでは、狂言を見たお客さまに「学ばせていただきました」と言われる機会が多くて。それが嫌で、もっと気軽に狂言を楽しんでくれればいいのにという気持ちがあって始めたんです。それと、出会いのツールになればいいかなと。ヨーロッパの演劇って、社交場的な意味合いもあるじゃないですか。開演時間が30分押すっていう。

山本ウェルカムドリンクがいちばん長い(笑)。「KYOGEN LOUNGE」では、舞台の座長の役割に加えて、パーティーのプロデュースもされているわけですよね。

大藏好きなんですよ、新しいことを始めるのが。パワーが要りますけどね。

山本基誠さんは宗家の次男なので、「俺の役割は開いていくこと」といった自覚があって、新しい挑戦をやってみようと思われたんですか?

大藏僕にしかできない、現代にあわせた新しい狂言の形があるんじゃないかなと。それが欲しかったんでしょうね。

山本お客さまにおキレイな女性がたくさんいらっしゃって、びっくりしました(笑)。

大藏おキレイな方!そこ、大事ですよね(笑)。

山本やっぱり、楽しいところに、すてきな女性も男性も集まるんです。そして、そういうところでも、お酒は大切なツールになります。

山本お酒も狂言も、クラシックなものって、ずっと知っている人にはクラシックだけど、若い人、新しい人にとっては新鮮ですよね。

大藏昔を知っていて新しいものを見たときの感動と、新しいものを知っていて昔のものを見たときの感動って、似ていると思います。僕らもコントを見て、「これ狂言だ」って思うんですよ。だけど狂言を初めて見た人は、「これコントだ」ってなる。

山本「KYOGEN LOUNGE」で拝見した「末広がり」は室町時代につくられたお話ですよね。いやぁ、面白くてびっくりしました。ビジネスマンの上司と部下のやり取りを題材にしたコントに見えたり、喜劇に見えたり、いろいろな芸能のエキスがギュッと詰まっている。

大藏狂言を今のライフスタイルに落とし込んで見てもらえたら、楽しいですよね。

山本狂言は、武士が明日の戦(いくさ)で死ぬかもしれないような状況で見られていたものだから、明るく前向きな内容の演目が多いと言います。「末広がり」でも最後は笑って許してしまうストーリーでしたね。

大藏そうなんです。狂言約700年の歴史の中で、人が死ぬ演目はひとつもないんです。喜劇ばかり。しかも、織田信長にしても、豊臣秀吉にしても、見るだけじゃなくて、自分で演じることもあったそうですから。いまと同じ狂言を、彼らも見ていた、そして演じていたという。

山本その頃から比べると、狂言の脚本や動きに変わってきているところはあるんですか?

大藏あると思います。大藏流の流祖は、14世紀に後醍醐天皇の家庭教師役を務めていた比叡山天台宗の学僧、玄恵法印という方なんです。それを、口伝と稽古で次の世代に残してきました。いまでは、ひとつの足を出す引く、といった演じ方まで全部決まっています。ただ、最初から形が決まっていたわけではなくて、伝えていくために途中から様式がついてきたんです。

山本なるほど。「KYOGEN LOUNGE」の舞台で、演者もお客さまも楽しむために、ちょっと違う動きを仕掛けてみたと言われていたじゃないですか。そういった大藏さんがやられていることは、新しいことに見えて、もしかしたら源流に戻ることかもしれません。

大藏そうかもしれないですね。

舞台が終わって、
ウイスキーに向き合う時間が好き

山本大藏さんは普段は、どういったときにお酒を飲むんですか?

大藏毎日飲みます。舞台が終わったら、毎日オールドパーを飲む。ひとり部屋に戻って、ウイスキーに向き合う時間が好きなんですよ。

山本ウイスキーに向き合う?

大藏ひとりで、淡々と飲むのが好きですよ。

山本それは、真剣に舞台のこととかを考えたりするためなんですか?

大藏はい。酒を飲むと、いいアイデアもらえるんです。

山本それは、幸せな時間ですね。

大藏自分の時間なんですよね、それは。ひとりでお酒飲んでいるときって、幸せですね。

山本人と一緒に飲むときは、どういうスタイルなんですか?

大藏いいお酒を飲みながら人と話すのも面白いですね。そういうことをオールドパーが教えてくれました。ここ何年か、「The Factory」という舞台をやらせてもらっていて、必ず夜にミーティングをするのですが、みんなでああしよう、こうしよう、というときに必ずオールドパーがあります。

山本どんな時にも大藏さんに欠かせないお酒になりましたね。

After Interview取材を終えて

狂言とはなんぞや? そんな大きなお題を持ってインタビューに臨んだ私だったが、大藏基誠さんの優しい語り口にすっかり引き込まれた。基誠さんからさかのぼること、約700年。「流祖の玄恵法印は、戦の続く武士の時代に、人格の養成と人としての生きる道を説くために狂言を創始した」というのだ。言い換えれば、人生を楽しむための知恵。そこには、いまを生きるビジネスパーソンにも学べる、いや、楽しめる何かが詰まっている。
オールドパーを飲みながら、インタビューはどこまでも続いた。大藏基誠さんから感じられる余裕、話を進めていくときの楽しい間合い。それは、まるで狂言の舞台を見ているように感じられた。狂言界の革命児。彼が挑んでいる新しい取り組みは、本物だけが持っている懐の深さなのかもしれない。
王道だけど、ユーモアがある。古いけれど、新しさもある。思えば、オールドパーも同じだろう。150歳を越えるまで生きた、ウエストミンスター寺院に眠るというトーマス・パー爺(じい)さんの名を由来に持つお酒。いまもボトルのラベルには、パー爺さんの肖像画が描かれている。この酒を飲むたびに、それを見て、クスリと笑って楽しくなる。
大藏さんは、その時間が愛(いと)おしくて、毎夜オールドパーと向き合っている。

取材を終えて

Profile

  • Motonari Okura

    Motonari Okura

    1979年、東京生まれ。狂言方の2大流派のひとつ「大藏流」宗家25世大藏彌右衛門の次男。700年余続く伝統を重んじながら、狂言とパーティーを融合させた「Kyogen Lounge」を企画するなど、柔軟な姿勢で普及活動を展開。さまざまなジャンルとのコラボレーションで、伝統文化の新境地を開拓している。

  • Teruhiro Yamamoto

    Teruhiro Yamamoto

    1963年、岡山生まれ。「AERA STYLE MAGAZINE」のエグゼクティブエディター兼WEB編集長。「MEN’S CLUB」や「GQ JAPAN」などを手掛けたのち、2008年に編集長として「AERA STYLE MAGAZINE」(朝日新聞出版)を創刊。ビジネスパーソンのリアルな声に応えるコンテンツを作りつづけている。

時代を超えて愛され続ける
スコッチウイスキー、オールドパー

152歳9ヶ月の長寿を全うしたという伝説の人物トーマス・パー。彼の叡智になぞらえて名づけられたスコッチウイスキー「オールドパー」は、20世紀初頭の最先端技術と文化教養を象徴するブランドとして渡来。日本の近代化に邁進する偉人たちの社交の場から現代に至るまで100年以上、変わらぬ味わいと風格で愛され続けています。また、斜めに立つことができるユニークなボトルは、「決して倒れない」「右肩上がり」と、縁起が良いと親しまれています。

オールドパー 12年

調和のとれた柔らかな味わいが魅力。奥行きのある香りと長い余韻は、和食とも好相性。時代を超えて日本人に愛され続けている スコッチウイスキーです。ブラッドオレンジや金柑のすっきりした甘さと、ほのかな蜂蜜の香り。柔らかな舌触りの先に、暖かみのある余韻が続きます。ストレートやロックの他に、ウイスキー1:水2の水割りや、ウイスキー1:ソーダ2~3のハイボールスタイルがおすすめです。

オールドパー ウェブサイト

Photograph: Kentaro Kase,Tetsuya Niikura(SIGNO)
Styling: Akihiro Mizumoto
Intervew & Text: Teruhiro Yamamoto(AERA STYLE MAGAZINE)
Edit: Ai Yoshida(AERA STYLE MAGAZINE)
Web design: Yuki Umemoto(ADLAY)

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