SDGsを「知る」から
「行動する」教育デザイン
東京都立武蔵高校教諭/Think the Earth/
未来教育デザインConfeito
山藤 旅聞氏
教科と地球課題を組み合わせ
自分と世界のつながりに気づく
1部は山藤さんの講演からスタートしました。「社会が地球規模で劇的に変化しているのに対して、日本の教育の世界は、あまり大きく変わっていない現状に触れ、「これからは日本の労働人口の約50%がAI(人工知能)化するだろうと言われる時代。子どもたちのどんな力を育てることが必要か。僕たち教育に携わる者は、時流を読み、社会の中で教育のあり方を考えるべきではないでしょうか」と提起しました。
学習指導要領の改訂や大学入試制度改革などが話題にのぼる中、「まず何のために教育があるのかという教育理念と授業スタイルを明確にすることを大切にしたいですね」と山藤さん。「僕の場合、教育理念は“Design for All”です。ここでいうデザインは、人間が思考をして形にしていくその過程を意味します。誰のためのデザインか。それは地球市民全体、そして次の世代、さらに動植物や環境を含めて、地球に生きるすべての命のためでありたい。貧困や教育、環境など、17分野にわたる目標を掲げるSDGsを組み合わせると、より魅力的な授業ができます」と力を込めます。
さらに山藤さんは続けます。「こうした授業はProject-Based Learning(PBL:課題解決型学習)やActive Learning(AL:主体的・対話的で深い学習)など、いま関心を集める教育手法の開発にもつながっていくと確信します。それぞれの教科の学習の先に、世界の実際の社会課題があることを生徒たちが知ると、やる気を持ち、本気で取り組みます。自分が興味を持つ特定の分野が、実は色々な課題とつながっていることにも気付くのです」
SDGsのスローガンは「誰も置き去りにしない」。決議書のトップページには「Transforming our world」とあり、「世界をダイナミックに変えよう」と書かれています。50年、100年後を見据えて持続可能な社会に向けて企業が取り組みを始めている今、教育に携わる者もSDGsを通して教育を考え、子供たち1人ひとりが社会をトランスフォームできる一員であることに、自覚と自信を持つことができる教育を届けることの大切さを訴えました。

ゲームを通じてSDGsを楽しく学ぶ
一人ひとりが社会動かすこと実感
後半は、2030年の世界を模擬体験できるカードゲーム「2030 SDGs」に参加者全員が挑戦しました。2~3人で1チームになり、与えられた「お金」と「時間」を使ってプロジェクトに取り組み、それぞれのチームに示されたゴールを目指すカードゲームで、ゴールには「大いなる富」、「悠々自適」など実際に世界の人の夢を分類した5種類が用意されています。
プロジェクトには「世界の状況メーターの変化」として「経済」、「環境」、「社会」の指標を明示。例えば「交通インフラの整備」プロジェクトの場合、各分野に与える影響をふまえ、社会に対しては1点プラス、環境に対しては1点マイナスといった具合に加減点を繰り返します。この指標をホワイトボード上に表すことで、世界の「経済」「環境」「社会」の状況が刻々と変化する様子がわかるように工夫されています。
ゲームは前半、後半で各7分間。参加者はチームの目標を達成するため、他のチームと交渉しながら、必要なお金、時間などを手に入れていきました。時間が経つにつれてチーム内の議論が白熱。足りないものを探して他のチームの人たちと交渉する人も目立ち、大いに盛り上がりました。前半は「経済」ばかりが伸びるチームが多く、格差の激しい世界でしたが、後半はバランスを考えて取り組み、「環境」や「社会」も伸び、SDGsが掲げる「持続可能な世界」に近づきました。
山藤さんは「プロジェクトによって社会が動くことを、このゲームで感じていただけたと思います。一人ひとりの行動が社会を変えるのです。この感覚を子どもたちに伝えるために、SDGsをツールとして活用することが大事だと思います。」と締めくくりました。

さんとう・りょぶん/ 9年前のブータン渡航を機に、生徒自らが疑問を生み出してその解決のために行動する力を引き出すことを目的とした教育デザインに取り組む。 最近はSDGsを活用し社会と教育をつなぎ、社会課題の解決に向けて様々なステークホルダーとパートナーシップを組み様々なプロジェクトを展開。
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