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相続手続き

最終更新日:2022.03.28

【認知症の親の財産管理】
成年後見制度を利用する
メリット・デメリットとは

このコンテンツでわかること

  • ■ 成年後見制度の仕組みがわかる
  • ■ 成年後見制度のメリットとデメリットがわかる
  • ■ 認知症の親に成年後見制度を利用するべき事例がわかる
  • ■ 成年後見制度を利用する手続きの流れや費用がわかる
  • ■ 成年後見制度以外の財産管理方法がわかる

内閣府が公表する「令和3年版高齢社会白書」によると、65歳以上の人口割合は28.8%(3,619万人)となっており、3人に1人が高齢者という状況です。さらに認知症の有病率は6人に1人といわれており、程度の差はあるものの、何らかの支援を必要とする方は600万人を超えています。

すでに認知症は「我が家のこと」として捉えるべき状況ですが、認知症になった方の生活支援とともに、財産管理も考えておかなければなりません。そこで今回は、認知症対策に有効な成年後見制度について、仕組みやメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。制度利用の手続きや必要書類についても解説していますので、認知症リスクに不安のある方はぜひ参考にしてください。

令和3年版高齢社会白書(内閣府)

成年後見制度とは

判断力が低下した人の支援制度が「成年後見制度」であり、以下の2種類に分かれています。

  • 任意後見制度(判断力が十分なうちに後見人を指定する)

  • 法定後見制度(すでに認知症になっている場合に利用できる)

成年後見人の職務には身上監護があり、入院や施設等への入所手続き、介護保険契約など、被後見人(認知症になった人)の法律行為を代行します。なお、介護や看護とは異なるため、入浴や着替えの補助など、いわゆる「身の回りのお世話」には対応していないので注意しましょう。

任意後見制度では親族を後見人にすることもできますが、すでに認知症を発症している場合は法定後見制度しか利用できないことに注意が必要です

成年後見制度を利用するメリット・デメリット

成年後見制度を利用する際は、メリット・デメリットの双方を比較しながら検討しましょう。

成年後見制度を利用するメリット

成年後見制度には以下のメリットがあります。

  • 身上監護の適任者が成年後見人に選任される

  • 生活に必要な法律行為を代行してもらえる

  • 被後見人の財産を適切に管理できる

  • 不要な契約を結ぶことがなくなる

認知症になると詐欺などの被害に遭いやすく、経済的に不利な状況に陥る場合があります。しかし成年後見制度では後見人が間に入るため、必要な法律行為だけを代行し、不要な契約は解消も可能です。また、成年後見人は家庭裁判所によって選任されるので、被後見人は身上監護の適任者によってサポートされます。

成年後見制度を利用するデメリット

成年後見制度の利用には以下のデメリットもあります。

  • 柔軟な財産管理ができない

  • 導入コストやランニングコストがかかる

  • 相続税対策ができなくなる

  • 後見人は家庭裁判所が決めるため、被後見人との相性があらかじめわからない

被後見人の財産は保全対象になるため、運用や活用・処分(売却)はできなくなり、相続税対策としての生前贈与も認められません。また、5万~10万円程度の導入費用がかかり、毎月の後見人報酬も発生します。任意後見では後見人の候補者を指定できますが、最終判断は家庭裁判所が行うため、相性が合わない後見人が選任される可能性もあるでしょう。

認知症の親に成年後見制度を利用するケース

親の認知症リスクに備えたい、またはすでに親が認知症になっている場合、次のようなケースで成年後見制度が利用されています。

預貯金の管理をしたい

親が認知症になった場合、家族であっても預貯金の引き出しや口座解約はできません。しかし成年後見人は銀行手続きを代行できるため、親の預貯金を引き出し、入院費や介護施設等の入居費に充てることができます。本人にとって必要な用途しか認められませんが、家族の金銭負担はかなり軽くなるでしょう。

身上監護をお願いしたい

親の認知症レベルによっては施設への入居も必要ですが、入居手続きの代行は成年後見人しかできません。実際の現場では家族が入居手続きを行う場面も多いのですが、成年後見人がいればさらに手続きはスムーズに進められます。また、成年後見人は要介護認定の申請や入院手続きも代行できるので、身上監護の必要性が高い場合に利用するとよいでしょう。

施設入所のために介護保険契約したい

介護保険契約も成年後見人しか代行できないため、介護施設への入居予定がある場合は成年後見制度の利用がおすすめです。

親の自宅を売却したい

施設等への入居で親の自宅が空き家になる場合、売却して入居費用に充てたいケースもあります。不動産売却の代行も成年後見人しかできないため、将来的に住む人がいないようであれば成年後見制度を利用して売却しましょう。ただし、成年後見人による居住用財産の処分には家庭裁判所の許可が必要なので、必ず売却できるとは限りません。

遺産分割を進めたい

父親の相続が発生した時点で母親(妻)が認知症になっていた場合、子供だけでは遺産分割協議が成立しません。しかし成年後見人は母親の代理人になるため、全員参加による遺産分割協議が成立します。遺産の行き先も決着するので、名義変更などの相続手続きも進めやすくなるでしょう。

成年後見制度を利用する手続きの流れ・費用

実際に成年後見制度を利用する場合、手続きの流れは次のようになります。費用についても具体的に解説しますので、成年後見制度を検討している方はぜひ参考にしてください。

家庭裁判所や専門家に相談する

成年後見制度を利用する場合は必要かどうかの判断も含め、以下の機関等へ事前に相談することも検討してみてください。

  • 家庭裁判所(制度概要や手続きの案内)

  • 法テラス(日本司法支援センター)

  • 各自治体の相談窓口(地域包括支援センターなど)

  • 弁護士会または司法書士会

  • 弁護士事務所または司法書士事務所

法テラスは電話による無料相談も可能で、弁護士費用などの分割払いにも対応しています。近くに相談できる専門家がいない場合は、弁護士会や司法書士会に相談してもよいでしょう。

法テラス(日本司法支援センター)
全国の弁護士会(日本弁護士連合会)
全国司法書士会一覧(日本司法書士連合会)

必要書類を準備する

成年後見制度は必要書類が大変多いため、代表的なものを紹介します。

【申立書類】

  • 後見・保佐・補助開始等申立書

  • 申立事情説明書

  • 親族関係図

  • 親族の意見書・記載例・親族の意見書について

  • 後見人等候補者事情説明書

  • 財産目録

  • 相続財産目録

  • 収支予定表

【添付書類】

  • 本人や後見人候補者の戸籍謄本(発行後3カ月以内)

  • 本人や後見人候補者の住民票など(発行後3カ月以内)

  • 本人の診断書(発行後3カ月以内)

  • 本人情報シート写し

  • 本人の健康状態に関する資料

  • 介護保険認定書または療育手帳など

  • 本人が成年被後見人として登記されていないことの証明書(発行後3カ月以内)

  • 本人の財産や収支関係資料(預貯金通帳の写しや確定申告書など)

申立書類の詳細は裁判所ホームページを参照してください。

申立に必要な書類(裁判所)

家庭裁判所へ申し立てる

必要書類が揃えば家庭裁判所へ申し立てますが、申立人は以下のいずれかに該当しなければなりません。

  • 本人(被後見人となる人)

  • 配偶者

  • 四親等内の親族

  • 未成年後見人または未成年後見監督人

  • 後見人等または後見人等監督人

  • 検察官

すでに任意後見人や、任意後見監督人として登記されている場合も申立は可能です。なお、身寄りのない方は市区町村長が申立人になるケースもあります。

成年後見制度に必要な費用一覧

成年後見制度を利用する際は、以下の費用が必要となります。

  • 申立手数料:800円

  • 医師の診断書:5,000円~1万円程度

  • 戸籍謄本:450円(本人分)

  • 住民票または戸籍附票:300円(本人分)

  • 本人が成年被後見人として登記されていないことの証明書:300円

  • 後見登記手数料:2,600円

  • 郵便切手:3,200~3,500円程度

  • 後見人候補者の住民票または戸籍附票:300円

  • 後見人候補者の商業登記事項全部証明書:600円(後見人候補者が法人の場合)

  • 不動産の登記事項全部証明書:600円

  • 不動産の固定資産評価証明書:400円

  • 医師の鑑定費用:5万~10万円程度(必要な場合のみ)

  • 専門家への申立て報酬:10万~30万円程度(専門家へ依頼した場合のみ)

費用は基本的に申立人の負担ですが、場合によっては本人(親など)負担になることもあります。

成年後見制度以外の財産管理方法

成年後見制度を利用すると被後見人の財産は保全されますが、管理面については硬直的といえます。柔軟性のある財産管理をしたい、または別の形で財産管理したい場合は、次の方法も検討してください

任意後見制度を利用する

任意後見制度では本人の希望に沿った代理権限を設定できるため、法定後見制度よりも柔軟に財産管理できます。たとえば子供や孫にお小遣いを渡すなど、生活支援としての贈与も可能になるため、身近に適任者がいれば後見人として推薦しておくことをおすすめします。

日常生活自立支援事業を利用する

各市町村の社会福祉協議会では日常生活自立支援事業を行なっており、預金通帳や印鑑などを預かってくれます。預金の出し入れや医療費・公共料金等の支払い、日用品購入の支払いも代行してくれるので、認知症になっても適切に財産管理できます。料金は各自治体によって異なりますが、1回あたり1,000~1,500円程度が相場のため、成年後見制度よりも金銭負担は軽くなることが期待できます。

貸付自粛制度の利用で借入れ抑制する

判断力の低下によって不要な借金をつくってしまい、返済のために新たな借金を繰り返すなど、本人の自制が利かないようであれば、貸付自粛制度も利用できます。金融機関からの借入が5年間制限されるので、本人が保佐や補助を拒否する場合は、貸付自粛制度を使うように説得してみましょう。

家族信託を活用する

財産管理の柔軟性を重視したい場合は、家族信託も検討することをおすすめします。本人が委託者となり、家族を受託者として財産管理を任せるため、第三者に制限されることがありません。信託内容も自由に設計できるので、受託者判断による運用はもちろん処分も可能です。次世代や次世代以降の相続を指定するなど、遺言書では実現できない財産承継も可能になるため、一族で守りたい財産がある場合にも有利です。

ただし、本人が元気なうちしか契約できず、身上監護の機能はないため、任意後見制度との併用を検討しておくとよいでしょう

まとめ

認知症になった親の財産を守りたい場合、成年後見制度は有効な手段といえます。成年後見人がしっかり財産を保全してくれるため、判断力が低下した親による浪費なども防止できます。親の身上監護も保障されるため、家族の不安も解消されることが期待できます。

しかし財産管理の自由度は低いため、成年後見制度以外の方法、または併用も検討しておくことをおすすめします。また、ベストな認知症対策は各家庭によって異なるため、様々な事例に詳しい専門家の意見も参考にしておくとよいでしょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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