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相続手続き

最終更新日:2022.04.27

留分侵害額請求(遺留分減殺請求)の
時効はいつまで?
止める方法と手続きの流れ

このコンテンツでわかること

  • ■ 遺留分侵害額請求権(遺留分減殺請求権)の概要がわかる
  • ■ 遺留分侵害額請求権の時効がわかる
  • ■ 遺留分侵害額請求権の時効の止め方がわかる
  • ■ 遺留分侵害額請求の手続きの流れがわかる

遺言書は相続人にとって重要な書類ですが、「全額寄付する」など予想外の内容になっているケースもしばしばあります。しかし、一定要件を満たした遺言書は法的効力を持つため、「愛人にすべて譲る」といった内容でも、原則として従わなければなりません。

もしこのような遺言書があった場合、家族は何も相続できなくなりますが、遺留分(いりゅうぶん)だけは保障されているため、一定額までは取り戻し可能です。

今回は遺留分侵害額請求権をテーマに、時効成立や時効の止め方、請求手続きの流れなどをわかりやすく解説します。遺言書によってわだかまりが残る状況になってしまった方は、ぜひ参考にしてください。

遺留分侵害額請求権(遺留分減殺請求権)とは

遺留分侵害額請求権とは、民法により保障された最低限の遺産取得分について、侵害している相手に返還請求できる権利です。かつては遺留分減殺請求権と呼ばれていましたが、2019年7月の法改正で名称が変わり、旧法では現物返還が原則だったところ、現在は金銭返還が原則となっています。

遺留分は被相続人の兄弟姉妹や甥・姪以外の相続人が有しており、侵害されるケースには遺贈(遺言書による遺産承継)や生前贈与、死因贈与があります。

遺留分侵害額請求権の時効は1年もしくは10年

遺留分侵害額請求権の時効(請求できる期間)は2種類あり、遺留分の侵害を知っていれば1年、知らない場合は10年となります。具体的には、「相続開始および遺留分を侵害する遺贈などがあったことを知ったとき」から1年を経過すると、遺留分侵害額請求権は時効消滅します。

また、遺留分の侵害を知らないまま10年経過すると請求権は消滅しますが、この場合は時効というより除斥(じょせき)期間を経過したための権利消滅です。1年の時効期間については、催告などによる時効の中断(時効の完成猶予)もありますが、除斥期間には中断の概念がありません。つまり、遺留分の侵害を知ったタイミングが相続開始から10年後であれば、すでに除斥期間を経過しているため、返還請求はできないということです。

遺留分侵害額請求権の時効の止め方

遺留分侵害額請求権を行使しても、相手がすんなり応じてくれるとは限らないため、時効の止め方も知っておくとよいでしょう。

配達証明付きの内容証明郵便を使う

遺留分侵害額請求権の行使は口頭でも可能ですが、内容証明郵便を使えば請求権を行使した事実を証拠として残せます。配達証明付きであれば相手が受け取ったことも証明できますが、受取拒否した場合でもその通知が添付されて差出人(請求者)へ戻ります。

また、内容証明郵便によって遺留分侵害額請求権を行使すると催告による時効の中断となり、時効成立までの期限を最大6カ月間延長できます。なお、内容証明郵便を取り扱う郵便局は限られているので、事前に公式ホームページで検索するか、最寄りの郵便局へ問い合わせることをおすすめします。近隣に取扱郵便局がない場合は、インターネットサービスの「e内容証明」を利用してみましょう。

郵便局検索(日本郵政グループ)
e内容証明(郵便局)

金銭支払請求権の時効は5年

遺留分侵害額請求権を行使した場合は、「金銭支払請求権」も発生します。遺留分侵害額請求権とは異なる権利ですが、5年で時効消滅してしまうため、内容証明郵便を送付したからといって安心はできません。旧法は現物返還が原則であったため、金銭支払請求権を意識する必要性は低かったのですが、現在は金銭返還が原則のため5年間何もしなければ時効が成立します。

また、金銭支払請求権の時効には2020年4月1日の法改正も影響しており、改正前・改正後では以下のような違いがあります。

  • 2020年3月31日までに遺留分侵害額請求権を行使した場合は10年

  • 2020年4月1日以降に遺留分侵害額請求権を行使した場合は5年

2つの権利があるため少々複雑にはなりますが、金銭支払請求権にも時効の止め方があるので、次に解説する方法を参考にしてください。

金銭支払請求権の時効の止め方

遺留分侵害額請求権とは異なる権利であるため、内容証明郵便を送付しても時効中断にはなりません。金銭支払請求権の時効については、遺留分侵害額請求権にもとづく金銭支払いの訴訟提起によって中断となります。

なお、相手方が金銭支払いを承諾した場合は、承諾したタイミングで時効はリセットされ、一度振り出しに戻ります。ただし、その後5年間経過すると時効消滅になるため、請求権を行使した日付(時効の起算日)はきちんと管理しておかなければなりません。

遺留分侵害額請求の手続きの流れ

遺留分侵害額を請求する場合、まずは当事者間の解決を目指して内容証明郵便を送付します。遺留分侵害額請求書の文例も紹介しますので、必要事項を網羅した文面にしておきましょう。相手が応じてくれない場合は調停の可能性もあるため、申立ての方法や費用なども把握しておくことをおすすめします。

①内容証明郵便の送付

内容証明郵便を送付する場合、以下の例を参考に遺留分侵害額請求書を作成しましょう。作成は手書き・PCどちらでも構いません。

【必要項目】

  • 表題(遺留分侵害額請求書)

  • 請求年月日

  • 被相続人氏名

  • 請求者本人と相手方の氏名

  • 請求することとなった原因(遺贈など)

  • 遺留分侵害額および金銭支払い請求する旨

【文例】

私は令和○年○月○日に死亡した相続一郎の法定相続人です。相続一郎による令和○年○月○日付の遺言書により、すべての財産を貴殿が相続したため、私の遺留分対象財産4分の1が侵害されています。ついては遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求しますので、速やかにご協力ください。なお、本請求書を受領後、○カ月以内に協力いただけない場合は、遺留分侵害額請求にかかる訴訟提起を行いますので、ご了解ください。

②裁判外の交渉を行う

配達証明付きであれば内容証明郵便を送付した後に配達完了のハガキが届くので、タイミングを見計って相手との交渉を始めましょう。直接対峙での交渉、または電話による交渉が多いので、後で「言った・言わない」のやりとりにならないよう、相手の了解をとって録音することをおすすめします。

交渉に自信がないという方もおられますが、相手方も訴訟への発展は望んでいないケースが多いため、交渉成立となる可能性は十分にあります。

③-1和解契約書(合意書)の作成

裁判外の交渉が決着したら、できるだけ早く和解契約書(合意書)を作成し、相手方と取り交わしておきましょう。ただし、私文書のままではトラブルが再発した際の対抗力が弱いため、和解契約書は公正証書にしておくことをおすすめします。公正証書は法律の専門家である公証人が作成してくれるので、法的効力のある公文書となります。

なお、「役場」とありますが市町村役場とは異なるため、場所や連絡先がわからない場合は日本公証人連合会のホームページを参照してください。

公証役場一覧(日本公証人連合会)

③-2家庭裁判所へ調停を申し立てる

当事者同士の交渉が決裂した場合は、家庭裁判所へ「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てます。申立て先は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所になりますが、双方の合意があれば別の裁判所に申し立てることもできます。また、調停では裁判官を通じて話し合いを進めるため、基本的に双方が顔を合わせることはありません

調停を申し立てる際には以下の書類も必要なので、漏れがないように準備しておきましょう。

  • 申立書原本と相手方人数分の写し

  • 収入印紙1,200円分

  • 連絡用の郵便切手(裁判所によって異なるため要確認)

  • 被相続人の出生から死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍含む)

  • 相続人全員の戸籍謄本

  • 登記事項証明書(不動産の場合)

  • 遺言書の写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し

遺留分侵害額の請求調停(裁判所)

遺留分侵害額請求をする際の注意点

遺留分侵害額請求権は、内容証明郵便の送付など時効の中断となる行為によって消滅時効を引き延ばすことができます。しかし、次のようなケースには時効の中断がないため、十分に注意してください。

遺言を無効とする調停などがあった場合

遺留分を侵害している遺言内容であった場合、遺言書そのものが無効だと主張し、遺言無効確認の調停や訴訟を起こすケースがあります。しかし遺留分侵害額請求権の時効中断にはならないため、請求権を行使した事実を残しておく必要があります。遺言書の無効を主張する場合でも、内容証明郵便は必ず送付しておきましょう

贈与や遺贈の無効を主張する場合

贈与や遺贈についても無効を主張するケースがあります。主張する側としては、無効である以上、遺留分侵害も発生していないという考えになりますが、こちらもやはり遺留分侵害額請求権の時効中断にはなりません

このような場合も内容証明郵便を送付して、請求権行使の事実を残しておくとよいでしょう

まとめ

遺留分侵害額請求権を行使する場合、権利が消滅しないよう時効までのカウントが重要となります。時効消滅になると何も相続できない可能性があるため、権利を行使した日付、相手方の反応があった日付など、すべて正確に記録しておきましょう。いつが時効のタイミングになるか、正確に理解しておくことも重要ですね。

また、相手が支払いに応じてくれず、調停でも決着しなかった場合は、訴訟の提起も必要になります。訴状作成や証拠収集が必要となり、時間・労力ともに消耗するため、不慣れな方にとっては相当なストレスになるでしょう。さらに遺留分対象が不動産であった場合、遺留分相当額の算出が難しい上、相手方もすぐに金銭を用意できない場合があります。

遺留分侵害額の請求は想像以上にハードルが高いため、自分1人の対応に限界を感じた場合は、早めに専門家へ相談しておきましょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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