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相続手続き

最終更新日:2022.04.27

弟姉妹に遺留分が認められない理由
―遺産を受け取る方法はないの?

このコンテンツでわかること

  • ■ 兄弟姉妹に遺留分が認められていない理由がわかる
  • ■ 配偶者や子供がもらえる遺留分の割合がわかる
  • ■ 遺留分のない兄弟姉妹が遺産を受け取る方法がわかる

民法では一定範囲の相続人に遺留分(いりゅうぶん)を認めており、偏った内容の遺言書があったとしても、ある程度の財産は取り戻せます。たとえば「愛人に全額相続させる」といった遺言書の場合、相続人は愛人に対して遺留分の返還を請求できるわけです。

ただし、遺留分が認められているのは配偶者と子供や孫、または父母や祖父母であり、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありません。したがって、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、遺言書に「全額寄付する」や「すべて愛人に譲る」と書かれていた場合、もらえる財産はまったくなくなってしまいます。

今回は、兄弟姉妹に遺留分が認められない理由をわかりやすく解説します。また、遺産配分がなかった場合の対策も解説していますので、不公平な遺産相続で困っている方はぜひ参考にしてください。

兄弟姉妹に遺留分は認められていない

民法では法定相続分の1/2または1/3を遺留分としていますが、兄弟姉妹には認められていないため、遺言書の内容次第ではまったく財産をもらえない可能性があります。また、兄弟姉妹が相続人になるケースは様々ですが、「配偶者+被相続人の兄弟姉妹」が相続人の場合、法定相続分は配偶者3/4、兄弟姉妹1/4となります。

つまり、1億円の遺産があった場合、兄弟姉妹にも遺留分があれば1,250万円は保障されていたというわけです。
※計算は1億円×1/4×1/2となります。

不公平な法律に思えますが、兄弟姉妹の遺留分を認めない理由には合理性もあり、遺贈(遺言による財産承継)の本質的な部分も関係しています。

では、遺留分についてもう少し詳しくみていきましょう。

兄弟姉妹に遺留分が認められない理由

遺留分に関する法律は民法1042条であり、「兄弟姉妹以外の相続人は(中略)それぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける」となっています。冒頭から兄弟姉妹に遺留分がないことを示していますが、決して公平性を欠いているわけではなく、次のような理由が根拠となっています。

被相続人と遠い関係にあるため

被相続人の兄弟姉妹は「近い関係」と思われるかもしれませんが、相続順位からみると子供や親よりも遠い関係になります。相続順位は民法によって第1順位は子供、第2順位が父母、被相続人の兄弟姉妹は第3順位の相続人と定められています。

また、相続順位は次世代への資産承継が基本であり、子供の次は孫、孫の次はひ孫と、直系の子孫がいない場合に限り、父母や祖父母が相続人となります。つまり、直系血族による相続を大前提としているため、優先度の低い兄弟姉妹は相続割合(法定相続分)も低く、遺留分もないという考え方です。

なお、被相続人の配偶者は常に相続人となります。

経済的に自立していると考えられるため

兄弟姉妹と被相続人は別生計であり、経済的にも自立しているケースが一般的です。したがって、お互いの財産を相続できなくても生活に影響はないことから、遺留分も必要ないという考え方があるようです。

もちろん例外はありますが、法律が対応していないため、兄弟姉妹が確実に財産を相続したい場合は生前の対策が必要となります。

兄弟姉妹には代襲相続があるため

代襲相続とは、直系による相続権の承継であり、被相続人よりも先に亡くなった子供に孫がいた場合、孫が第1順位の相続人に繰り上がる仕組みです。代襲相続は傍系血族(被相続人からみた横繋がりの血族)にも発生するので、兄弟姉妹がすでに亡くなっていた場合は甥や姪が代襲相続人となります。

もし兄弟姉妹の遺留分を認めた場合、代襲相続人となる甥や姪の遺留分も認めることになるため、遺言書の効力が損なわれる可能性が出てきます。つまり、生前にお世話になった方へ財産を多く渡したくても、兄弟姉妹や甥姪の遺留分によって遺言書の効力が一部否定されてしまうという考え方です。

配偶者・子供がもらえる遺留分の割合

直系血族のみ認められている遺留分ですが、相続時の状況によって割合が変わります。実際に遺留分が侵害されている場合はどれだけ返還請求できるか知っておく必要もあるため、パターン別の遺留分割合を解説します。

配偶者だけの場合

相続人が配偶者だけの場合、法定相続分の1/2が遺留分となります。

  • 遺産総額:1億円

  • 計算式

  • 遺留分:1億円×1/2×1/2=2,500万円(1/4)

配偶者と子供だけの場合

相続人が配偶者と子供1人の場合、法定相続分はそれぞれ1/2であり、遺留分は以下のようになります。

  • 遺産総額:1億円

  • 計算式

  • 配偶者の遺留分:1億円×1/2×1/2=2,500万円(1/4)

  • 計算式

  • 子供の遺留分:1億円×1/2×1/2×=2,500万円(1/4)

子供が複数いる場合は法定相続分1/2を人数割りします。

  • 遺産総額:9,000万円

  • 計算式

  • 配偶者の遺留分:9,000万円×1/2×1/2=2,250万円(1/4)

  • 計算式

  • 子供Aの遺留分:9,000万円×1/2×1/3×1/2=750万円(1/12)

  • 計算式

  • 子供Bの遺留分:9,000万円×1/2×1/3×1/2=750万円(1/12)

  • 計算式

  • 子供Cの遺留分:9,000万円×1/2×1/3×1/2=750万円(1/12)

配偶者と直系尊属の場合

相続人が配偶者と直系尊属の場合、法定相続分は配偶者2/3、直系尊属(父母など)1/3であり、遺留分は以下のようになります。

  • 遺産総額:9,000万円

  • 計算式

  • 配偶者の遺留分:9,000万円×2/3×1/2=3,000万円(1/3)

  • 計算式

  • 直系尊属の遺留分:9,000万円×1/3×1/2=1,500万円(1/6)

父母ともに健在の場合は1/2で人数割りします。

直系尊属だけの場合

相続人が直系尊属だけの場合、遺留分は以下のようになります

  • 遺産総額:9,000万円

  • 計算式

  • 直系尊属の遺留分:9,000万円×1/3=3,000万円(1/3)

父母ともに健在の場合は1/2で人数割りします。

配偶者と兄弟姉妹の場合

相続人が配偶者と兄弟姉妹だけの場合、法定相続分は配偶者3/4、兄弟姉妹1/4であり、遺留分は以下のようになります。

  • 遺産総額:1億円

  • 計算式

  • 配偶者の遺留分:1億円×1/2=5,000万円(1/2)

  • 兄弟姉妹の遺留分:なし

配偶者の遺留分は「1億円×3/4×1/2」と思われそうですが、兄弟姉妹と遺留分の権利を分ける必要がないため、全体の1/2が遺留分となります。

遺留分のない兄弟姉妹が遺産を受け取る方法

相続人の多くは、法定相続分を目安に「これくらいはもらえるだろう」と予測していますが、遺言書によって覆されるケースもあります。遺留分のない兄弟姉妹にとってかなり酷な状況になりますが、被相続人への貢献度によってはある程度の取り分を主張できます。また、遺留分を知らずに遺言書を作成する方もおられるため、被相続人が生前のうちに対策しておけば遺産を受け取れる可能性も高くなるでしょう。具体的には次のような方法があるので、ぜひ参考にしてください。

遺留分に配慮した遺言書を作成してもらう

遺留分を知らなかったために偏った遺産配分にしてしまう遺言者も少なくないため、相続や遺留分について、一度は兄弟姉妹で話し合ってみることをおすすめします。生前にしかできない対策ですが、兄弟姉妹に遺留分がないとわかれば、遺産配分を考え直してもらえる可能性があります。

遺言書の無効を主張する

相続人や受遺者(遺言によって財産をもらう人)全員の同意があれば、遺言書を無効として遺産分割協議に移行できます。第三者が関係している場合は難しいかもしれませんが、あまりに一方的な遺言内容であれば、関係者の理解を得られる可能性もあります。

また、法的効力のない遺言書もあるので、以下のような場合は無効を主張してみるべきです

  • 遺言書の要件を満たしていない

  • 判断力が低下した状態で書かれている

  • 偽造や変造が認められる

遺言書の有効・無効については難しい判断になるケースもあるため、専門家にも相談しておくとよいでしょう。

寄与分を主張する

被相続人の財産維持や増加に貢献していた場合は、寄与分が認められる可能性もあります。体が不自由な被相続人を無償で介護していた、または無償で事業を手伝っていた場合は、財産の維持・増加に貢献したとみなされるでしょう。

ただし、どれだけの寄与であったか証明する必要があり、寄与分が遺言内容と相反する場合は遺言書が優先されます。また、相続人同士の協議では寄与分が決定せず、家庭裁判所へ調停を申し立てるケースもあるので、専門家に関与してもらった方がよいでしょう。

まとめ

遺留分については「聞いたことはあるが詳しく知らない」という方が多く、兄弟姉妹にも認められていると思われがちです。また、相続関係の法律・制度上、兄弟姉妹はあまり優遇されていないため、仮に高額な財産を相続できたとしても、相続税対策が限られてしまいます。

法律上は遠い関係とされていますが、もともと血を分けた兄弟姉妹ですから、残念な気持ちが残る遺産相続にならないよう、対応策も知っておきたいところですね。生前の対策がもっとも効果的なので、兄弟姉妹の関係が疎遠にならないよう、日頃のコミュニケーションも意識しておくことが大切です。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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