弔慰金は原則として非課税になる
国税庁の法令解釈通達では弔慰金の取扱いを定めており、原則として相続税や贈与税、所得税のいずれも非課税になります。弔慰金は被相続人が保有していた財産ではないため、相続税法上の相続財産でもありません。
ただし、一定額を超えた部分は死亡退職金として扱われるので注意が必要です。死亡退職金も被相続人が保有していた財産ではありませんが、相続税の課税対象となる「みなし相続財産」なので、一定額を超えると相続税がかかります。
では、どのような状況で課税されるのか、具体的な条件をみていきましょう。
弔慰金が相続税の課税対象になるケース
弔慰金には、課税・非課税のボーダーラインになる非課税枠(限度額)があり、業務上の死亡、または業務外の死亡によって以下のように変わります。
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計算式
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業務上の死亡:給与月額×36カ月
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計算式
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業務外の死亡:給与月額×6カ月分
非課税枠を超える部分が死亡退職金として扱われ、相続税の課税対象になりますが、給与月額に賞与(ボーナス)は含まないので注意してください。
では、業務上の死亡と業務外の死亡について、具体例から相続税を計算してみましょう。
業務上の理由で亡くなったときの相続税
被相続人が業務上の理由で亡くなったと仮定し、以下の条件で相続税を計算してみましょう。
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給与月額:35万円
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弔慰金:500万円
業務上の理由であれば、弔慰金の非課税枠と相続税の課税額は以下のようになります。
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計算式
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弔慰金の非課税枠:35万円×36カ月=1,260万円
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計算式
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相続税の課税額:500万円-1,260万円=▲760万円(0円)
弔慰金500万円が非課税枠1,260万円に収まっているので、課税額がマイナスになり、相続税はかかりません。
業務外の理由で亡くなったときの相続税
では次に、被相続人が業務外の理由で亡くなった場合、相続税がいくらになるか計算してみます。
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給与月額:50万円
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弔慰金:400万円
業務外の理由であれば、弔慰金の非課税枠や、相続税の課税額は以下のようになります。
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計算式
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弔慰金の非課税枠:50万円×6カ月=300万円
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計算式
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相続税の課税額:400万円-300万円=100万円(死亡退職金の扱い)
上記の例では100万円に相続税がかかりますが、死亡退職金にも以下の非課税枠があります。
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計算式
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死亡退職金の非課税枠:500万円×法定相続人の数
死亡退職金の非課税枠は最低でも500万円(500万円×1人)になるため、100万円-500万円=▲400万円となり、相続税はかかりません。
弔慰金と死亡退職金を受け取ったときの相続税
弔慰金と死亡退職金の両方を受け取った場合、相続税は以下の手順で計算します。
- 弔慰金の非課税枠を計算
- 弔慰金の非課税枠を超える部分に死亡退職金を加算
- 死亡退職金の非課税枠を計算
- (2)>(3)になれば相続税の課税額が発生(1,000円未満は切り捨て)
では、業務上の死亡のケースで相続税を計算してみます。
【条件】
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給与月額:40万円
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弔慰金:1,500万
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死亡退職金:2,000万円
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相続人:2人
【計算手順】
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計算式
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(1)弔慰金の非課税枠:40万円×36=1,440万円
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計算式
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(2)非課税枠の超過部分に死亡退職金を加算:(1,500万円-1,440万円)+2,000万円=2,060万円
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計算式
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(3)死亡退職金の非課税枠:500万円×2人=1,000万円
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計算式
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(4)2,060万円-1,000万円=1,060万円
上記の計算例では、1,060万円が相続税の課税対象になります。
弔慰金を相続税申告する方法・書き方
相続税申告書は第1表から第15表までありますが、弔慰金に相続税がかかる場合は第10表を作成する必要があります。
相続税申告書の様式は税務署窓口でもらえますが、国税庁ホームページからダウンロードもできるので、以下のリンク先を参照してください。
相続税申告書第10表の書き方
相続税申告書の第10表は上下の2部構成になっており、上部には弔慰金や死亡退職金などを別々に記入し、下部には受取人別の課税金額を記入します。
【上部の書き方】
それぞれ一段(一行)ずつ使って記入します。
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弔慰金:非課税枠を超えた部分の金額のみ記入
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死亡退職金:実際に受け取った金額をそのまま記入
【下部の書き方】
受取人別に記入するので、弔慰金と死亡退職金の受取人が同じ人であれば一段(一行)にまとめますが、死亡退職金は非課税枠の超過部分のみ反映させます。
なお、死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)については、基本的に下部の課税金額と同額になります。
相続税の申告方法
相続税が発生するときは相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に申告しますが、申告先は被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署になります。申告先の税務署や所在地がわからないときは、国税庁ホームページで確認してください。
弔慰金を受け取るときの注意点
前述したように、弔慰金には民間企業から支払われるものと、国や都道府県から支払われるものがあり、基本的には非課税ですが次のようなケースでは所得税がかかります。
弔慰金が一時所得になるケース
以下のようなパターンで弔慰金が支払われた場合は、所得税が課税されます。
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A社を退職
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再就職先のB社在職中に死亡
A社・B社両方から弔慰金が支払われたときは、それぞれ以下のような扱いになります。
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A社からの弔慰金:相続人(受取人)の一時所得となる
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B社からの弔慰金:みなし相続財産となる(非課税枠を超えた部分のみ課税)
すでに勤務していないA社からの弔慰金については、法律で定める退職手当金等に該当しないため、相続人の一時所得になります。
B社からの弔慰金に所得税は課税されず、非課税枠を超えない限り相続税もかかりません。
公的な弔慰金も原則として非課税扱い
弔慰金には公的なものがあり、被相続人が自然災害によって亡くなった場合は、遺族に対して災害弔慰金が支払われます。生計維持者の死亡、または生計維持者以外の死亡によって金額が異なり、国が1/2、都道府県や市町村が1/4ずつ費用負担することになっています。
他にも、国会議員が死亡した場合の弔慰金や、戦没者遺族への特別弔慰金などがあり、いずれも原則として非課税扱いになります。
まとめ
遺族に支払われる弔慰金は基本的に非課税ですが、一定額を超えると相続税がかかるので、課税される部分があるかどうかは正確に計算しなければなりません。申告書を作成するときも、弔慰金の非課税枠や、非課税策を超える部分の計算が前提になっており、受取額をそのまま記入すると税金の払い過ぎになります。
税額の計算上、業務上・業務外どちらの死亡になるか、弔慰金・死亡退職金のどちらになるのか判断が必要なため、不慣れな方には少し荷が重いかもしれません。
高額な弔慰金は相続税に大きく影響するので、不安のある方は相続専門の税理士に相談しておきましょう。



