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相続手続き

最終更新日:2022.12.28

続手続きをしなかったらどうなる?
放置のリスクやデメリットについて

相続手続きをしなかったらどうなる?放置のリスクやデメリットについて

このコンテンツでわかること

  • ■ 相続手続きをしなかった場合のリスクとデメリットがわかる
  • ■ 期限がある相続手続き一覧と手続きの概要がわかる

相続手続きの多くは期限付きですが、仕事や家事の合間を縫って対応しなければならず、膨大な量の書類収集や作成も必要です。仕事が落ち着いたら手続きを始めよう、法事を終えてからにしよう、などの理由で先送りしがちですが、そのまま忘れてしまう可能性があるので注意が必要です。

では、相続手続きをしなかったらどうなるでしょう?「財産を自由に使えないだけ」、「今は困っていないから大丈夫」と考える方もいるようですが、権利が消滅するリスクや、高額な税金を納めるデメリットもあります。権利関係の複雑化で手続き不能になる恐れもあるので、相続手続きはスケジュール管理も重要です。

今回は、相続手続きをしなかったときのリスクやデメリット、期限がある手続きの概要をわかりやすく解説します。

相続手続きをしなかった場合のリスク・デメリット

相続手続きをしなかった場合、以下のリスクやデメリットが発生します。

  • 高額な借金の返済義務を負ってしまう

  • 相続税に延滞税などが加算される

  • 預貯金の権利が消滅する

  • 株式の権利が消滅する

  • 遺留分侵害額請求ができなくなる

  • 相続回復請求権や取戻権が消滅する

  • 相続登記が困難になる

具体的な内容は以下のとおりですが、親が遺してくれた財産を失う可能性もあるので、十分に注意してください。

高額な借金の返済義務を負ってしまう

被相続人(亡くなった方)の借金はマイナスの相続財産になるため、法定相続分に応じて各相続人が引き継がなければなりません。プラスの相続財産(預貯金や現金など)で返済できれば問題ありませんが、借金の方がはるかに大きな額であれば、相続放棄や限定承認を選択するべきです。

相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになり、限定承認はプラスの財産の範囲内で借金を返済する方法です。ただし、どちらも家庭裁判所へ申述する必要があり、相続開始を知った日から3カ月以内が期限となっています。期限を過ぎるとどちらも認められなくなるので、借金も含めた相続財産を短期間で調査する必要があります。

相続税に延滞税などが加算される

相続税が発生しているときは、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に申告と納税が必要です。一見すると余裕があるように思えますが、申告期限までに遺産分割協議や財産調査、相続税評価額の計算をすべて完了させなければなりません。相続税申告書も自分で作成しなくてはならないため、不慣れな方にはかなりハードルの高い作業でしょう。

申告・納税期限に間に合わなかった場合、相続税の本税に延滞税や無申告加算税が加算され、財産評価を間違えると、過少申告加算税が加算される可能性もあります。納税を先延ばしにすると財産を差し押さえられるリスクもあるので、相続が発生した後はできるだけ早めに対応しておきましょう。

預貯金の権利が消滅する

被相続人の預貯金は解約や名義変更の手続きが必要となりますが、入出金などの取引きがなく5年を経過したときは払い戻し請求権が消滅します。預金債権の時効となるためですが、払い戻し請求権が消滅すると解約や引き出しはできなくなるので注意してください。

また、相続手続きをしないまま10年経過すると、休眠預金等活用法が適用されてしまい、休眠口座の残高は預金保険機構へ移管されます。移管後は民間の公益活動などに活用されるので、高額な残高があるときは早めに相続手続きを済ませた方がよいでしょう。

株式の権利が消滅する

相続財産に上場株式があるときは、ひとまず相続人名義の証券口座へ移し、そのまま保有するか売却するかを選択することになります。ただし、相続手続きをしないまま長期間経過すると、株主所在不明と判断した発行会社が買い取る、あるいは売却される可能性があります。

相続手続きが完了していなければ発行会社から通知を受け取れないため、売却代金があっても受け取れない状況になるでしょう。時効が成立すると売却代金を受け取る権利も消滅します。

相続手続きをしなければ配当金も受け取れず、株主の権利も行使できないため、できるだけ早めに相続を完了させておく必要があります。

※売却代金の支払請求の時効については、各証券会社にお問い合わせください。

遺留分侵害額請求ができなくなる

確実に相続できる遺産の取得割合を遺留分といい、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められています。遺留分が侵害された場合、侵害している相手に対して返還請求できますが、相続開始と遺留分の侵害を知った日から1年以内が請求期限です。また、遺留分の侵害を知らなかったとしても、相続開始日から10年後には時効となります。

遺留分侵害請求権を行使しても、実際に支払請求しなければ5年で金銭債権の請求権が消滅するため、具体的な請求額も計算しておかなければなりません。遺留分は法定相続分の1/2(親は1/3)となるので、遺産総額を正確に把握しなければ、侵害額も計算できないので注意してください。

相続回復請求権や取戻権が消滅する

他の相続人や第三者に相続権を侵害された場合、相続回復請求権を行使して侵害された財産を取り戻すことができます。ただし、相続権の侵害から5年で時効となり、相続権の侵害を知らなかった場合でも20年で請求権は時効となります。

また、譲渡された相続分を取り戻したいときは、相続分の取戻権を行使できますが、譲受人に対して1カ月以内に取り戻しを請求しなければなりません。期間経過で権利が消滅した場合、対立関係にあるような譲受人でも共同相続人として受け入れることになり、一族の財産が流出する可能性もあります。

相続登記が困難になる

現在の法律では相続登記の期限を定めていないため、数世代に渡って相続登記を放置している事例が多数あります。相続登記を放置したまま世代交代が起きると、権利関係者が2倍や3倍に増えるため、相続登記は事実上困難となります。

相続登記が放置された不動産は管理も行き届いていないケースが多く、ブロック塀の倒壊などで被害者が出た場合、損害賠償請求される可能性があります。また、住んでいない家屋があると固定資産税が高くなり、倒壊の恐れがあれば行政代執行により解体されるリスクもあるので注意が必要です。

なお、相続登記が放置されていれば、権利関係者全員に持分に応じた解体費用を請求される可能性もあります。

期限がある相続手続き一覧

期限付きの相続手続きには、以下の種類があります。

  • 3カ月以内: 相続放棄と限定承認

  • 4カ月以内:被相続人の準確定申告

  • 10カ月以内:相続税の申告と納税

  • 1年以内:遺留分侵害額請求

  • 2年以内:葬儀代や埋葬料の受給手続き

  • 3年以内:死亡保険金の受け取り

  • 3年以内:相続登記(2024年4月1日以降)

  • 5年以内:相続回復請求権

次に各手続きの概要を解説しますので、自分に関係あるものは早めに対応してください。

3カ月以内:相続放棄と限定承認

相続放棄と限定承認は家庭裁判所に申述する必要があり、相続開始を知った日から3カ月以内が期限です。申述先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になるので、所在地等がわからないときは以下のリンクを参照してください。なお、相続放棄は単独でも手続きできますが、限定承認は相続人全員の同意が必要となります。準備期間はかなり短いので、葬儀や初七日法要などが落ち着いたら、すぐにでも財産調査に取り掛かりましょう。

各地の裁判所一覧(裁判所)

4カ月以内:被相続人の準確定申告

被相続人が死亡した年に事業所得があったときは、本人の代わりに相続人が確定申告(準確定申告)しなければなりません。給与所得も2,000万円以上あれば申告が必要ですが、所得が400万円以下の公的年金のみであり、源泉徴収されていれば申告不要です。

申告先は被相続人の最後の住所地を管轄する税務署となりますが、申告期限を過ぎると延滞税が発生するので注意してください。

全国の税務署(国税庁)

10カ月以内:相続税の申告と納税

相続税申告と納税は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内が期限です。準確定申告と同じく、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署へ申告しますが、期限を過ぎると延滞税が加算されます。また、正当な理由なく期限を過ぎたときは無申告加算税も発生し、悪質な税逃れがあった場合は重加算税も発生するので注意してください。

相続税申告までには財産の調査と評価、遺産分割協議や申告書作成などの作業が必要となり、10カ月とはいえ期限ぎりぎりになるケースがほとんどです。財産評価や相続税の計算は専門知識が必要なので、自分で対応しきれないときは早めに税理士へ相談しましょう。

1年以内:遺留分侵害額請求

遺留分の侵害があったときは、相続開始と遺留分侵害を知った日から1年以内に返還請求しなければなりません。請求方法は口頭でも構いませんが、スムーズに返還してもらえるケースは少なく、相手が「請求された覚えがない」と主張する可能性も考えられます。

しかし、催告(督促)した証拠があれば時効は中断されるので、返還請求するときは配達証明付きの内容証明郵便を使うようにしてください。配達証明付きの内容証明郵便を送ると、相手に届いていることを郵便局が証明してくれるため、請求権の行使があったことを証拠として残せます。

2年以内:葬儀代や埋葬料の受給手続き

相続財産の承継ではありませんが、健康保険に加入している人が亡くなると、葬儀代や埋葬料が支給されるので、忘れないように注意してください。被相続人が国民健康保険の加入者だったときは各自治体の担当窓口、社会保険であれば勤め先の会社に問い合わせましょう。

3年以内:死亡保険金の受け取り

死亡保険金(生命保険)は相続発生日から3年以内が請求期限です。請求から支払いまでの期間は1週間~10日程度なので、早めに請求すれば葬儀費用に充てることもできます。死亡保険金は高額になるケースが多く、当面の生活資金にもなるため、忘れないうちに請求しておきましょう。

3年以内:相続登記(2024年4月1日以降)

相続登記は2024年4月1日から義務化されるので、不動産を相続したときはできるだけ早めに登記申請してください。義務化が施行されると、不動産相続から3年以内に登記申請が必要となり、期限を過ぎると10万円以下の過料が発生するので要注意です。

また、法改正以降の相続登記だけが対象ではなく、すでに相続登記が放置されている不動産もペナルティの対象になります。相続登記の放置が疑われる土地や建物があれば、法務局に登記事項証明書を請求して所有者を確認しましょう。

5年以内:相続回復請求権

相続権の侵害があったときは、侵害されていることを知った日から5年以内に財産を返還請求してください。侵害されていることを知らなくても、20年経過すると請求権が消滅します。

被相続人に対する著しい非行があればその相続人は廃除や相続欠格によって相続権を失いますが、相続権があるように偽って遺産分割に参加するケースがあります。気付かずに遺産分割すると、相続の権利を失った人に遺産を侵害されてしまうため、相続人全員の戸籍は必ず確認してください。

相続の廃除や欠格は戸籍の全部事項証明書に記載されるので、各自が取得して遺産分割協議に参加するように連絡しておきましょう。

まとめ

相続手続きをしなかった場合、財産の取得時期が遅れるだけではなく、権利そのものが消滅してしまう可能性があります。高額な借金の返済義務を負う可能性もあるため、いつまでに何をするか、期限日から逆算して確実に手続きを進める必要があるでしょう。

しかし、仕事が忙しくて相続手続きに時間を割けない、または必要書類の作成方法がわからず作業が停滞するケースも少なくありません。相続手続きにハードルの高さを感じたときは、税理士や司法書士などの専門家にも相談しておきましょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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