遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、遺産分割協議の成立内容を記載した書類です。遺産の分け方が決まっていなければ相続手続きができないため、相続人全員で遺産分割協議を行い、最終的な決定内容を遺産分割協議書へ記載します。また、各相続人が遺産分割協議に合意したことの証明として、相続人全員の署名捺印も必要です。
遺産分割協議書は金融機関などに提出するので、第三者が見ても相続人や相続財産が特定できるように作成してください。
遺産分割協議書の提出先5ヶ所
遺産分割協議書の提出先は以下の5ヶ所です。
-
金融機関
-
証券会社または非上場株式の発行会社
-
法務局
-
税務署
-
運輸支局
代表的な相続財産には預貯金や不動産、自動車があるので、金融機関や法務局、運輸支局に遺産分割協議書を提出するケースが多いでしょう。高額な相続財産や株式があるときは、以下のような相続手続きも発生します。
金融機関
金融機関では亡くなった方の預貯金解約や一部払い戻し、定期預金などの名義変更手続きに遺産分割協議書を提出します。各金融機関には指定用紙もありますが、複数の金融機関に口座があると何枚も作成することになるため、自分で作成した遺産分割協議書の提出が効率的です。窓口に提出するとコピーを取って原本を返却してくれるので、金融機関ごとに遺産分割協議書を作成する必要はありません。
ただし、金融機関に名義人の死亡を伝えると口座凍結となるため、公共料金などの引落しができなくなってしまいます。電気やガス、水道や電話を引き続き利用するときは、引落し口座も変更しておきましょう。
証券会社または非上場株式の発行会社
遺産分割協議書は株式の相続にも必要になるので、上場株式を相続するときは証券会社、非上場株式の場合は発行会社が提出先になります。上場株式は相続人名義の証券口座へ移管するため、基本的には同じ証券会社に口座開設しておく必要があります。ただし、亡くなった方が受け取っていない配当金があった場合、株式とは別の手続きが必要になり、かつ3~5年程度で受け取り期限が到来するので注意してください。
また、非上場株式の相続では遺産分割協議書を発行会社へ直接提出しますが、評価額の計算が複雑になっているので、事前に税理士へ相談した方がよいでしょう。
法務局
不動産を相続するときは所有権の移転が必要になるため、土地・建物の所在地を管轄する法務局へ遺産分割協議書を提出します。相続登記と呼ばれることが多い手続きですが、不動産の名義変更だと理解しておけばよいでしょう。
相続登記は2024年4月1日から義務化されるので、不動産相続の決定から3年以内に登記申請をしなかったときは、10万円以下の過料になる可能性があります。また、相続登記が完了していない場合、売却や不動産を担保とした借入れ、土地活用などができなくなるので注意してください。
税務署
相続税申告が発生する場合、亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署へ遺産分割協議書を提出します。相続税は以下の基礎控除を超えた部分に課税されるので、相続人や遺産の総額をよく確認しておきましょう。
-
計算式
-
相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続人が3人いる場合、基礎控除は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)になります。なお、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用した結果、非課税になった場合でも相続税申告だけは必要です。不動産や非上場株式は評価額の計算を間違えるケースが多く、相続税の申告ミスにつながりやすいので注意してください。
運輸支局
自動車を相続するときは、各都道府県の運輸支局へ遺産分割協議書を提出します。査定額が100万円以下の普通自動車は運輸局指定の「遺産分割協議成立申立書」を使用できるので、自動車を相続する人の署名捺印だけで手続きできます。ただし、遺産分割協議の成立が要件になっているので注意してください。また、軽自動車の名義変更は軽自動車検査協会で手続きを行います。
自動車の相続手続きを放置すると車検切れになったときや、交通事故を起こしたときに自動車保険が適用されないことがあるので、手続きは早めに済ませておきましょう。
遺産分割協議書の提出が不要なケース
相続の状況によっては遺産分割協議書の提出が不要になります。ただし、遺産分割協議書の作成だけは必要になる場合があるので、以下を参考にしてください。
遺言書があるとき
亡くなった方が遺言書を作成していたときは、原則として遺言どおりに遺産分割しなくてはなりません。 相続手続きにも遺言書を提出するので、遺産分割協議を行う必要がなく、遺産分割協議書の作成も不要です。
ただし、遺言書が法的な有効性を欠いているときは、遺産分割協議によって財産の分け方を決めるので、遺産分割協議書を作成することになります。自筆証書遺言は開封前に家庭裁判所の検認が必要となり、検認前に開封すると5万円以下の過料になる可能性があるので注意しましょう。
相続人が1人しかいないとき
相続人が1人の場合は遺産分割協議する相手がいないため、相続手続きに遺産分割協議書を提出することもありません。ただし、代襲相続人や養子には相続権があるので、法定相続人の範囲を間違えないように注意してください。
亡くなった方の子供が相続発生時に死亡しており、孫が相続人に繰り上がる仕組みを代襲相続といいます。また、養子と養親に血縁はありませんが、養子縁組によって法定血族となるため、家庭内の立場は養親の実子と変わりません。代襲相続人や養子は第1順位の法定相続人になるので、必ず遺産分割協議に参加してもらいましょう。
法定相続分どおりに遺産分割するとき
法定相続分どおりに遺産分割する場合、遺産分割協議書を提出しなくても相続手続きに応じてもらえます。法定相続分は遺産分割割合の目安になっており、民法で以下のように定められています。
-
配偶者と子供が相続する場合:配偶者1/2、子供1/2
-
配偶者と亡くなった方の父母が相続する場合:配偶者2/3、父母1/3
-
配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹が相続する場合:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
相続財産が現金や預貯金、株式などの金融資産のみであれば、法定相続分どおりの遺産分割が可能になります。ただし、後日に「言った」「言わない」のトラブルが発生する可能性もあるので、遺産分割協議書は作成しておいた方がよいでしょう。
遺産分割協議書を提出するときの注意点
遺産分割協議書の提出には以下の注意点があるので、1通のみの作成では相続手続きに対応できないかもしれません。一部の相続手続きには期限が設定されているため、遺産分割協議書の提出が間に合うようにしてください。
遺産分割協議書は原本提出が基本
相続手続きは遺産分割協議書の原本提出が基本となりますが、法務局・運輸支局・税務署では以下のように扱いが異なっています。
【法務局の場合】
遺産分割協議書や印鑑証明書の原本とコピーを提出すると、どちらもその場で原本を返還してもらえます。ただし、コピーには「原本と相違ありません ○○○○(氏名)」と記載し、認印または実印を押印してください。
【運輸支局の場合】
内部規定により、遺産分割協議書と印鑑証明書の原本は返還されません。
【税務署の場合】
法務局と同じ扱いですが、印鑑証明書だけは原本が返還されないので注意してください。
運輸支局に遺産分割協議書を提出するときは、控えのコピーを手元に残しておきましょう。
遺産分割協議書は相続人の人数分を作成する
相続手続きは各相続人が個別に行うため、遺産分割協議書も人数分の作成が必用です。手書きの作成は手間と時間がかかるので、表題や遺産分割内容はパソコン作成でも構いませんが、署名だけは自書をおすすめします。
また、相続人や相続財産が多く、遺産分割協議書が複数枚に分かれるときは、製本テープを使った綴じ合わせや各ページにまたがる割印や契印も必要になります。すべて実印を押印することになり、漏れがあると金融機関などから差し戻されるので注意しておきましょう。
相続税の申告期限までに提出する
相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」になっており、相続税申告書や遺産分割協議書などの書類を提出します。期限後に提出すると延滞税や無申告加算税が発生し、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例も適用できなくなるので注意してください。
ただし、何らかの事情で申告期限までに遺産分割協議が成立していなかったときは、申告期限までに未分割の申告をすることで追徴課税のペナルティを回避できます。ひとまず法定相続分どおりの分配で申告を行い、3年以内に遺産分割協議を成立させると、過去に遡って特例を適用できます。
作成が難しいときは専門家に依頼する
遺産分割協議書は相続人や相続財産が多くなるほど作成ミスが発生しやすく、各機関から差し戻される可能性が高いので注意が必要です。特に株式や不動産は書き方を間違えやすいので、登記事項証明書や取引残高報告書などの項目を正確に遺産分割協議書へ転記してください。
また、書き損じた部分を訂正するときは相続人全員の訂正印も必要です。各相続人の住所が離れているときは郵送で訂正印をもらうことになるため、相続手続きの期限に間に合わなくなる可能性もあるでしょう。遺産分割協議書の作成ミスは相続人同士のトラブルも引き起こしかねないので、作成に不安がある方や、時間に余裕がない方は専門家への依頼をおすすめします。
まとめ
相続手続きには遺産分割協議書を提出するケースが多いので、遺言書がないときは早めに遺産分割協議を行い、相続財産の承継者を確定させておきましょう。ただし、遺産分割協議書は第三者が見ても相続人や相続財産を特定できる必要があるため、身内だけにわかるような書き方では相続手続きに使えません。遺産分割協議書は原本が返還されないケースもあるので、必要部数の把握も重要となります。
ミスのない遺産分割協議書を作成したい方や、相続手続きを急ぎたい方は、税理士や司法書士などの専門家に作成依頼してみましょう。



