空き家の相続時に確認しておきたいポイント
空き家を相続する場合、まず資産価値や権利関係、維持コストなどを確認してください。以下のようなポイントを確認しておくと、空き家をどのように利用するとよいか判断しやすくなります。
資産価値の有無
空き家の資産価値は、売却や賃貸するときの判断基準になります。資産価値の高い空き家は買主が見つかりやすく、売主の希望価格で売却できるケースがあります。また、資産価値の高い空き家は好立地などの条件を満たしていることが多いので、貸物件として活用しやすいでしょう。
空き家と土地をセットで考える必要があるので、固定資産税の課税明細書に記載されている固定資産税評価額や、土地の公示地価などが参考になります。
空き家の権利関係
相続人が複数いる場合、各自に空き家を相続する権利があります。被相続人(亡くなった人)が遺言書を作成していなかったときは、遺産分割協議で空き家の相続人を決定し、権利関係を明確にしておきましょう。
なお、相続する空き家が共有名義だった場合、権利関係が複雑になっている可能性が高いので、注意が必要です。
空き家の維持・管理コスト
空き家を相続するときは、維持・管理コストも確認してください。玄関や窓を閉め切った建物はカビが発生しやすいので、定期的に換気や掃除をしなくてはなりません。この場合は、往復の交通費がかかります。築年数の古い空き家であれば、所有している間に修繕工事が必要になるケースもあるでしょう。
また、空き家にも固定資産税や都市計画税がかかるので、年間の納税額も維持コストにカウントしておく必要があります。維持・管理コストが高額になるときは、売却や賃貸を検討した方がよいかもしれません。
空き家に資産価値があるときの対処法
空き家に資産価値があるときは、売却や賃貸によって利益を得られます。遺産分割協議がまとまらない場合、空き家の売却が解決手段になるケースもあるので、以下を参考にしてください。
自分が居住する
空き家を相続した場合、以下の状況であれば自分が居住してもよいでしょう。
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現在の住まいが賃貸物件の場合
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自宅よりも相続した空き家の方が好立地な場合
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すぐに売却や賃貸する予定がない場合
相続した空き家が会社や学校、病院や商業施設などに近いときは、居住するメリットを十分に活かせます。すでに戸建て住宅やマンションを購入している場合、売却して住宅ローンを完済できるようであれば、空き家への転居も検討してみましょう。また、家屋に人が住んでいると固定資産税等の住宅用地特例が適用されるので、土地にかかる固定資産税が減額されます。
賃貸物件として活用する
資産価値が高い空き家であれば、賃貸物件として活用できます。戸建ての賃貸住宅は賃借人の入れ替わりも少ないので、安定的な賃料収入を得られるでしょう。
ただし、大家としての管理責任が生じるため、補償の大きな火災保険に加入する、または建物を耐震補強するなど、ある程度のコストもかかります。空室リスクや家賃の滞納リスクなども発生するので、10年後や20年後でも賃貸事業を継続できるかどうか、十分なシミュレーションも必要です。
売却する
空き家の資産価値が高ければ、売却によって十分な利益を得られます。売り出し価格を高めに設定しても買主が見つかりやすいので、短期間で売却できる可能性もあります。一般的には不動産仲介で売却しますが、現金化を急ぎたいときは、買い取り専門の不動産会社に売却してもよいでしょう。
なお、不動産仲介の場合は仲介手数料などの諸経費がかかり、不動産買取りは一般的な売却価格の6~8割程度になるケースがあります。売却益が発生したときは譲渡所得税もかかるので、後述する3,000万円の特別控除の活用も検討しましょう。
換価分割する
主な相続財産が空き家しかなく、遺産分割協議がまとまらないときは、空き家の換価分割も検討してみましょう。換価分割は空き家の売却代金を分け合う方法なので、全員が納得できる遺産分割が可能になります。
空き家に資産価値がないときの対処法
空き家の資産価値が低く、売却や賃貸が難しいときは、以下のように対処してください。長期間の所有はデメリットが大きくなるので、解体や寄付などは早めに検討しておきましょう。
解体する
築年数が古い空き家は劣化も早いので、解体した方がよいケースもあります。
特定空き家に指定されると、固定資産税等の住宅用地特例が適用されなくなり、固定資産税が6倍になる可能性があるでしょう。また、行政代執行が実施されると空き家が強制撤去となり、撤去費用は所有者に請求されるので要注意です。
なお、木造住宅の解体費用は坪単価が3~5万円、鉄骨造は4~6万円程度かかりますが、更地にすると買主が見つかりやすくなる場合もあります。解体を検討するときは、不動産会社にも相談してみましょう。
寄付する
一部のNPO法人や自治体では、不動産の寄付を受け付けている場合があります。隣地のオーナーなど、個人が寄付を受け付けてくれるケースもあるので、売却や賃貸が難しいときは検討してみましょう。
ただし、ある程度の利用価値があることや、更地が条件になっている場合もあるので注意してください。また、自治体への寄付に税金はかかりませんが、個人や法人への寄付はみなし譲渡となり、譲渡所得税が課税される可能性があります。空き家に一定額以上の価値があると、個人や法人への寄付は贈与税がかかるケースもあるでしょう。
相続放棄する
空き家を相続するメリットがないときは、相続放棄も選択肢になります。相続放棄するとすべての財産を相続できなくなりますが、空き家を管理する必要がなくなり、固定資産税などの納税義務からも解放されます。
ただし、相続放棄は家庭裁判所へ申述する必要があり、相続開始から3ヶ月以内が期限になるので、手続きを急がなければなりません。空き家を自分の名義に変更する、またはリフォームなどを行うと、相続する意思があるものとみなされ、相続放棄が認められなくなるので注意してください。
空き家を相続するときの手続き
空き家を相続するときは、以下の手順で手続きを進めてください。相続した空き家に自分が住む、または売却・賃貸するときも、自分の名義に変更しておかなければならないので、必ず相続登記しておきましょう。
遺産分割協議を行う
被相続人が遺言書を作成していないときは、話し合いによって遺産の分け方を決定します。この話し合いを遺産分割協議といい、法定相続人全員の参加が必要になるので、被相続人の戸籍を出生まで辿り、誰が法定相続人になるか確認してください。
空き家の相続人が決まったら遺産分割協議書を作成しますが、全員が協議内容に同意した証明として、各自の署名捺印が必要になります。捺印するときは実印を使い、印鑑証明書も添付しておきましょう。
なお、土地や建物は記載方法が難しいので、遺産分割協議書の作成に不安があるときは、弁護士や司法書士、相続に詳しい税理士などへ依頼してください。
相続登記を行う
空き家の相続人が決まったら、法務局に相続登記を申請してください。申請先は空き家の住所地を管轄する法務局になり、登記申請書や遺産分割協議書などを提出します。相続登記するときは土地・建物の登録免許税が発生するので、以下のように税額を計算し、申請時に現金納付します。
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計算式
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相続した不動産の登録免許税:固定資産税評価額×税率0.4%
登録免許税が3万円以下であれば、収入印紙を登記申請書に貼付して納付できます。なお、相続登記は2024年4月1日から義務化されるので、相続開始を知った日、または空き家の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です。相続登記を怠ると、10万円以下の過料になる可能性があるので注意してください。
空き家を相続するときの注意点
空き家を含めた相続財産が一定額を超えた場合、または売却によって利益が発生したときは、相続税や譲渡所得税がかかります。ただし、一定要件を満たすと空き家の相続税評価額が下がり、売却時の譲渡所得税も軽減されるので、以下の注意点を参考にしてください。
小規模宅地等の特例を利用する
空き家の相続に小規模宅地等の特例を適用すると、敷地面積330㎡までの相続税評価額が80%減額されます。小規模宅地等の特例は被相続人の配偶者、または同居していた親族に適用できますが、別居中だった親族に適用するときは、以下の要件を満たさなければなりません。
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被相続人に配偶者や同居親族がいないこと
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相続した宅地を相続開始から10ヶ月間所有すること
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相続開始前の3年間に本人や配偶者、3親等以内の親族、特別な関係のある法人の持ち家に住んでいないこと
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相続開始時に住んでいた家屋を過去に所有していないこと
節税効果の大きな制度なので、要件を満たすかどうか確認したいときは、相続専門の税理士に相談してみましょう。
売却時の3,000万円特別控除を利用する
空き家の売却益(譲渡所得)には譲渡所得税が課税されますが、以下の要件を満たしている場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
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売却代金が1億円以下であること
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1981年5月31日以前に建築された建物であること
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区分所有登記の建物ではないこと(分譲マンションは不可)
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被相続人が1人で居住していたこと
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相続開始から売却までに居住用・事業用・賃貸用に使っていないこと
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空き家が一定の耐震基準を満たしていること、または解体して売却すること
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相続開始日から3年後の12月31日までに売却すること
空き家を解体せずに売却する場合、耐震補強が必要になるケースがあるので注意してください。
相続土地国庫帰属制度を利用する
相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地を国に引き取ってもらえる制度です。ただし、以下のような土地は制度の対象外となります。
【申請が却下される土地】
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建物がある土地
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担保権や使用収益権が設定されている土地
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第三者の利用が予定されている土地
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土壌汚染のある土地
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境界が不明確な土地や所有権などに争いがある土地
【承認が受けられない土地】
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一定の勾配や崖があり、管理コストがかかる土地
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土地の管理や処分を阻害する有体物が地上にある、または除去を必要とする有体物が地下にある土地
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隣地オーナー等と争訟しなければ管理や処分ができない土地
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その他、通常の管理や処分に高額な費用や労力がかかる土地
基本的には、争いの対象になっていない単独名義の土地に限定されます。
全員が相続放棄しても空き家の管理義務が残る
全員が相続放棄した場合、空き家は最終的に国庫帰属となりますが、それまでの管理者が不在になってしまうため、相続財産管理人の選任が必要になります。相続財産管理人は家庭裁判所が選任するので、申立書や戸籍謄本などの書類を揃え、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立ててください。
相続財産管理人が選任されると、被相続人の債務の清算や、土地を国庫に納める手続きに対応してくれます。なお、相続財産管理人には月1万~5万円程度の報酬金を支払う必要があり、家庭裁判所へ申し立てる際には20万~100万円程度の予納金も納めることになります。
予納金は申立人が支払いますが、報酬金は基本的に相続財産から支払います。
空き家のトラブルは損害賠償請求されるケースがある
相続した空き家が離れた場所にあると、管理が行き届かなくなり、以下のようなトラブルが発生するかもしれません。
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ブロック塀の倒壊や瓦の落下で歩行者に被害が生じる
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雑草の種子が飛散する、または害獣や害虫が住み着き近隣住民に迷惑がかかる
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犯罪組織などに空き家が悪用される
空き家がトラブルの原因となった場合、所有者に損害賠償責任が生じるため、被害の状況によっては数百万円や数千万円を請求される可能性があります。相続した空き家に住む予定がないときは、売却や賃貸、相続放棄などを早めに検討した方がよいでしょう。
まとめ
マイホームを購入している方や、賃貸であっても生活拠点が実家と離れている場合、空き家が負の財産になる可能性が高いでしょう。売却や賃貸、寄付をする場合でも相続登記が必要になり、登録免許税も納めなければなりません。また、空き家を所有し続けると固定資産税や都市計画税がかかり、維持・管理コストも高額になるので注意が必要です。
ただし、一定要件を満たすと小規模宅地等の特例や、売却時の3,000万円特別控除を適用できるため、相続時や売却時の税負担が軽くなります。どちらも適用要件が複雑になっているので、特例を利用できるかどうか確認したい方や、空き家の扱いに困っている方は、相続専門の税理士に相談してみましょう。



