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最終更新日:2023.08.31

実婚の夫・妻に相続権はない!
財産を渡す方法・対策を解説

事実婚の夫・妻に相続権はない!財産を渡す方法・対策を解説

このコンテンツでわかること

  • ■ 事実婚の夫や妻に相続権がない理由
  • ■ 事実婚の夫や妻が財産を相続する方法と対策
  • ■ 事実婚の夫や妻が財産を相続するときの注意点

結婚に対する考え方は多様化が進んでおり、夫婦同然の関係であっても、婚姻を選択しないケースが増えているようです。ただし、事実婚の場合はお互いが法定相続人になれないため、相続財産を渡したいときには何らかの対策が必要になるでしょう。

民法では法定相続人の範囲を定めており、法定相続人は亡くなった人の配偶者と一定範囲の血縁者に限られるので、生前に対策しなかった場合、パートナーは財産をもらえません。

そこで今回は、事実婚の夫や妻が財産を相続する方法や、相続時の注意点をわかりやすく解説します。

事実婚の夫・妻に相続権はない

遺産の相続権は配偶者と一定範囲の血族だけに認められるため、事実婚の夫や妻に相続権はありません。 相続権のある人を法定相続人といい、夫や妻がお互いの法定相続人になるときは、法律上の夫婦関係になっている必要があります

また、民法では法定相続人の相続順位を定めており、被相続人(亡くなった人)の配偶者は必ず相続人になりますが、配偶者以外は以下の順序になっています。

  • 第1順位の法定相続人:被相続人の子供

  • 第2順位の法定相続人:被相続人の父母

  • 第3順位の法定相続人:被相続人の兄弟姉妹

事実婚の夫や妻はどこにも該当しないので、財産を相続してほしいときは、生前の対策が重要になるでしょう。

事実婚の夫・妻が財産を相続する方法と対策

事実婚の夫や妻に相続権はありませんが、以下のように対策すると財産の承継が可能になります。生前の対策が不十分だった場合は、特別縁故者の申立ても検討してください。

遺言書を作成する

遺言書では、法定相続人以外の人も受遺者(遺言で財産を受け取る人)に指定できるので、事実婚の妻や夫に財産を渡せます。法的な有効性を担保しておきたいときは、専門家に遺言書を作成してもらう、または公正証書遺言にするとよいでしょう。

なお、自分で作成した遺言書は無効になるリスクが高く、法定相続人の遺留分を侵害する可能性もあるので注意してください。

生前贈与する

生前贈与は受け取る相手が限定されていないので、事実婚の妻や夫へ贈与しておけば、遺産の前渡しができるでしょう。年間110万円までの贈与には贈与税がかからず、贈与税申告も必要ありません。

ただし、贈与者が手元に財産を残したまま亡くなった場合、その財産は相続財産になってしまうことから、事実婚の妻や夫は相続できなくなります。年間110万円以内の贈与で財産を渡し切れないときは、遺言書も作成しておきましょう。

死亡保険金の受取人に指定する

事実婚の夫や妻に財産を残したいときは、死亡保険金の受取人に指定しましょう。死亡保険金の受取人は配偶者と2親等以内の血族になっているケースが一般的ですが、保険会社によっては事実婚の夫や妻を受取人に指定できます。ただし、以下の要件を満たさなければなりません。

  • 事実婚の夫や妻に戸籍上の配偶者がいないこと

  • 一定期間以上、生計を共にしていること

  • 一定期間以上、同居していること

生計を共にしている期間や、同居期間は保険会社によって条件が異なり、同居の事実は住民票で証明することになります。事実婚の夫や妻を死亡保険金の受取人にするときは、保険金の支払い要件をよく確認しておきましょう。

特別縁故者を申し立てる

事実婚の夫や妻が亡くなった場合、以下の要件を満たして特別縁故者になると、相続財産を取得できます

  • 被相続人に法定相続人がいないこと

  • 被相続人が遺言書を作成していないこと

  • 被相続人と特別な縁故があったこと

  • 被相続人の療養看護に努めていたこと

特別縁故者は家庭裁判所に申し立てるので、必ずしも認められるとは限りません。また、業務として療養看護を行う医師やヘルパーの場合、特別縁故者の申立ては認められないので注意してください。

事実婚の夫や妻が遺族年金を受け取る

事実婚の夫や妻であっても、遺族年金の受給は可能です。被相続人と事実婚の関係にあったことや、生計を維持されていたことなどを証明できれば、受給の要件を満たせる可能性があるでしょう。

なお、遺族年金を受給する場合、死亡診断書の写しや被相続人の戸籍謄本などを年金事務所に提出しなければなりません。請求者が事実婚の夫や妻であれば、そもそも戸籍謄本を交付してくれない役場もあるので要注意です。

事実婚の夫・妻が財産を相続するときの注意点

遺言書や生前贈与を活用すると、事実婚の夫や妻に財産を渡せますが、相続税がかかるときには注意が必要です。法定相続人以外の人には特例措置が使えないため、相続税の負担が重くなるでしょう。また、被相続人の借金はマイナスの相続財産になるので、以下の点にも注意してください。

事実婚の夫や妻は配偶者の税額軽減を使えない

配偶者が遺産を相続する場合、配偶者の税額軽減を適用すると、1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い方まで相続しても、相続税がかかりません。ただし、事実婚の夫や妻には適用できないため、相続財産が以下の基礎控除を超えているときは、取得額に応じた相続税を納めなければなりません

  • 計算式

  • 相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人以外の人には相続税の軽減措置がないので、生前贈与で財産を減らしておくなど、早めの対策が必要になるでしょう。

事実婚の夫や妻は小規模宅地等の特例を使えない

小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅などを相続した場合、敷地部分の相続税評価額が80%まで減額される制度です。1億円の土地でも2,000万円まで相続税評価額が下がるので、主な相続財産が不動産のみだったときは、相続税が非課税になる可能性もあります。

ただし、小規模宅地等の特例は被相続人の配偶者や同居親族、または一定要件を満たした別居親族しか適用できません。事実婚の夫や妻に自宅を残す場合、地価の高いエリアであれば、相続税を払えるかどうかも考えておく必要があるでしょう。

事実婚の夫や妻は相続税の障害者控除を使えない

障害者に相続税がかかる場合、障害者控除を適用すると、以下のように一定額を相続税から控除できます。

  • 計算式

  • 一般障害者の控除額:(85歳-相続開始時の年齢)×10万円

  • 計算式

  • 特別障害者の控除額:(85歳-相続開始時の年齢)×20万円

相続財産からの控除ではなく、相続税からの控除になるため、高額な財産を相続しても非課税になる可能性が高いでしょう。しかし、障害者控除は法定相続人しか使えないので、事実婚の夫や妻が障害者であっても、相続税は減額できません

事実婚の夫や妻は相続税の2割加算が適用される

事実婚の夫や妻が財産を相続した場合、相続税の2割加算が適用されるので注意が必要です。法定相続人以外の相続は「偶然性が高い」という考え方があるため、税額を1.2倍にすることで、一般的な相続税との区別が図られています。

法定相続人の遺留分を侵害する恐れ

遺言書で事実婚の夫や妻に財産を渡すときは、法定相続人の遺留分に注意してください。遺留分は法定相続人の最低保障になっているので、法定相続分の1/2または1/3を下回ると、遺留分の侵害が発生します。

また、遺留分の侵害額を返還請求された場合、原則として現金で返還しなければなりません。不動産の遺贈(遺言書で財産を渡すこと)で遺留分の侵害が発生したときは、返還金を用意するために、土地・建物を売却しなければならないケースもあります。

高額な借金があるときは遺贈の放棄も必要

相続財産には借金も含まれるので、事実婚の夫や妻に全財産を遺贈する場合、住宅ローンなどの返済義務も引き継がれます。全財産の遺贈、または取得割合を指定した遺贈を包括遺贈といいますが、高額な借金が相続財産に含まれているときは、包括遺贈の放棄も選択肢になるでしょう。

包括遺贈の放棄は家庭裁判所に申し立てる必要があり、事実婚の夫や妻の死亡を知った日から3カ月以内が期限となっています。また、包括遺贈を放棄する場合、被相続人の住民票除票や戸籍の附票などを家庭裁判所に提出するので、すべて3カ月以内に準備しておく必要があります。高額な借金があるときは、早めに債務整理した方がよいでしょう。

まとめ

事実婚の夫や妻には相続権がないので、財産を渡したいときは、遺言書や生前贈与を活用してみましょう。遺言書には法的効力があり、生前贈与は受贈者の制限がないため、事実婚の夫や妻へ確実に財産を渡せます。

ただし、自分で作成した遺言書は無効になりやすく、遺留分を侵害する可能性もあるので注意が必要です。法定相続人や一部の親族以外は、贈与税や相続税の特例措置が使えないため、税負担も考えておかなければなりません。事実婚の夫や妻に財産を渡したいときは、相続専門の税理士に相談してみましょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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