一人っ子と兄弟がいる人の相続に大きな違いはない
一人っ子の相続と兄弟姉妹がいる相続を比べると、実は大きな違いがありません。相続人の構成や人数が異なっているだけなので、単独で相続手続きを進める、または兄弟の同意・協力を得るかどうかの違いです。
兄弟がいる場合は遺産分割協議を行うことになり、相続手続きにも協力体制が必要になるため、お互いの考え方や足並みが揃わないケースもあります。一人っ子だけの相続はスムーズに意思決定できるので、相続手続きは進めやすいでしょう。
一人っ子が財産を相続するメリット・デメリット
一人っ子が財産を相続する場合、以下のようなメリット・デメリットが生じます。相続税が発生するときは税負担が重くなるので、高額な財産があるときには注意が必要です。
一人っ子が財産を相続するメリット
一人っ子が財産を相続するときは、以下のメリットがあります。
-
相続トラブルが起きにくい
-
相続手続きがスムーズに進む
たとえば、父親が亡くなり、母親と一人っ子が相続する場合、相続人が2人しかいないため、遺産分割協議がまとまりやすいでしょう。母親が亡くなったときは一人っ子だけが相続人になるので、遺産分割協議も必要なく、相続手続きも自分のペースで進められます。一人っ子が相続人になるときは相続手続きの必要書類も少なく、他の相続人の意向を気にしなくてもよいので、預金解約などの手続きもスムーズになります。
一人っ子が財産を相続するデメリット
一人っ子の相続には以下のデメリットがあります。
-
1人で相続手続きに対応しなくてはならない
-
親と争いになったときは解決が難しい
-
相続税が高額になりやすい
一人っ子だけが相続人になると、相続財産の調査などに1人で対応する必要があります。遺産の分け方をめぐって残された親と争いになった場合、感情的な問題もあることから、当事者同士の解決は難しくなるでしょう。また、相続税には以下の基礎控除があり、法定相続人が少ないときは控除額が低くなります。
-
計算式
-
相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
一人っ子の基礎控除は3,600万円ですが、2人兄弟の場合は4,200万円になるので、兄弟がいることで税負担が軽くなるケースもあるでしょう。
一人っ子が相続手続きを行う流れ・必要書類
一人っ子が親の遺産を相続するときは、以下のように相続手続きを進めてください。すべて1人で対応しなくてはならないので、相続税申告の期限などに注意しましょう。
遺言書の有無を確認する
相続が発生したときは、まず遺言書の確認を優先的に行ってください。
遺言書では法定相続人以外の人を受遺者(遺言で財産を渡される人)に指定できるので、必ずしも一人っ子がすべて相続するとは限りません。遺言書には以下の種類があり、保管場所も異なっています。
-
自筆証書遺言:自宅や法務局
-
公正証書遺言:自宅や公証役場
-
秘密証書遺言:自宅や公証役場
第三者が受遺者になっているときは自分の財産が減ることになり、遺言書で相続人の廃除や子供の認知があった場合、遺言執行者を選任しなければなりません。また、自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所の検認が必要なので、検認前に開封すると、5万円以下の過料になる恐れもあります。
相続人を調査する
相続人の調査は相続手続きの下準備になるので、以下の戸籍謄本を取得してください。
-
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍や除籍謄本
-
自分の現在の戸籍謄本
ほとんどの相続手続きには戸籍謄本を提出するので、一人っ子の相続でも必ずすべての戸籍謄本を取得します。
相続財産を調査する
相続財産を調査すると、相続税がかかるかどうかを判断できます。相続税の課税価格(税金がかかる部分の金額)は以下のように計算するので、預貯金や不動産だけではなく、借金や葬儀費用も正確に把握しておきましょう。
-
計算式
-
相続税の課税価格:遺産総額-(基礎控除+負債+葬儀費用)
相続財産は金庫や机の引き出し、貸金庫などを調べるとわかりますが、通帳がないネット口座を開設しているケースもあります。高額な借金があるときは相続放棄も選択できますが、相続開始から3カ月以内が期限になっているので注意してください。
他の相続人がいるときは遺産分割協議を行う
相続人の調査で自分以外の相続人が判明したときは、本人を交えて遺産分割協議を行います。遺産分割協議がまとまった後は、全員の署名捺印がある遺産分割協議書を作成してください。印鑑は実印を使用し、印鑑証明書も添付しておきましょう。
相続税を申告・納税する
相続税が発生するときは、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に申告・納税を済ませてください。相続税は現金一括納付が原則になっており、期限を過ぎると延滞税などの追徴課税があるので注意しましょう。また、相続税は税務署や金融機関で納付できますが、現金を持ち運ぶ必要がないので、銀行や郵便局の窓口で納付すると安全です。
預金解約や相続登記を行う
預金解約や不動産の相続登記を行うときは、金融機関や法務局へ以下の書類を提出します。
【預金解約】
-
遺言書または遺産分割協議書
-
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍謄本
-
相続人全員の現在戸籍
-
相続人全員の印鑑証明書
【相続登記】
-
遺言書または遺産分割協議書
-
登記申請書
-
不動産の登記事項証明書
-
不動産の固定資産評価証明書
-
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍謄本
-
被相続人の住民票の除票
-
不動産を相続する人の住民票
-
相続人全員の現在戸籍
-
相続人全員の印鑑証明書
相続登記は2024年4月1日から義務化されるので、早めに手続きしましょう。
一人っ子が相続人のときにすべき相続対策
一人っ子が相続人になる場合、相続税が発生するときは以下の相続対策を検討しておきましょう。相続発生後にできることは限られるので、生前の対策が重要です。
生前贈与を活用する
生前贈与した財産は相続税の課税対象になりません。
年間110万円の基礎控除以下で贈与すると、贈与税も非課税になります。ただし、相続開始前3年以内に行われた贈与については、贈与額を相続財産に加算しなければならないので注意してください。
贈与税の特例措置を活用する
贈与税には以下の特例措置があるので、非課税または税負担の軽い贈与が可能です。
-
教育資金の一括贈与の特例:最大1,500万円まで非課税(2026年3月31日まで)
-
住宅取得資金等の贈与の特例:最大1,000万円まで非課税(2023年12月31日まで)
-
結婚、子育て資金の一括贈与の特例:最大1,000万円まで非課税(2025年3月31日まで)
それぞれ期間が限定されており、適用要件もあるので、詳しくは税理士に問い合わせてみましょう。
一人っ子が財産を相続するときの注意点
一人っ子の相続には以下の注意点があるので、遺産分割は二次相続まで考慮しておく必要があります。子供は親の離婚歴などを知らなかった場合、相続トラブルに発展する可能性もあるでしょう。
二次相続の相続税が高額になる
父母のどちらかが亡くる相続を一次相続といい、配偶者と一人っ子が相続人になる場合、相続税の計算に4,200万円(3,000万円+600万円×2人)の基礎控除を適用できます。配偶者の税額軽減も適用すると、配偶者は1億6,000万円、または法定相続分のどちらか多い方まで相続税が非課税になります。
しかし、母親も亡くなる二次相続では一人っ子だけが法定相続人となり、配偶者の税額軽減も使えません。一次相続で配偶者の取り分を多くすると、二次相続では一人っ子の納税負担が重くなるので、注意しましょう。
異母や異父の兄弟姉妹がいるケース
被相続人の戸籍を調査すると、異母や異父の兄弟姉妹や、認知された婚外子などが判明するケースがあります。いずれも父親または母親の法定相続人になるため、自分だけが相続人だと思っていた一人っ子は大きなショックを受けるでしょう、離婚歴がある人は決して少なくないので、本当に一人っ子なのかどうか、親が生きているうちに確認しておく必要があります。
まとめ
一人っ子の相続は遺産分割を考える必要がなく、親の財産をすべて取得できるので、一見するとメリットが大きいように思えるかもしれません。ただし、相続手続きを1人だけで進めることになり、相続税も高額になりやすいので、デメリットもよく理解しておかなければならないでしょう。
一人っ子の家庭は積極的な相続対策が必要なので、生前贈与の活用など、二次相続対策を十分に検討してください。自分1人だけで相続手続きに対応できないときや、高額な相続税が発生するときは、相続専門の税理士に相談してみましょう。



