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相続手続き

最終更新日:2023.10.31

地を相続する
メリット・デメリットと手続き|
相続したくないときの対処法も

農地を相続するメリット・デメリットと手続き|相続したくないときの対処法も

このコンテンツでわかること

  • ■ 農地を相続するメリット・デメリット
  • ■ 農地の相続手続き・必要書類
  • ■ 農地の納税猶予の特例の適用要件と手続き
  • ■ 農地を相続しない方法四つ

相続財産に農地がある場合、親が亡くなった後も農業を続けるかどうか、大きな選択を迫られます。都市部の生活が長い方は農業経験がほとんどないため、地元に戻っても作物の育て方がわからず、農地の管理や整備方法にも迷ってしまうでしょう。

大規模農地は機械化や効率化が進んでおり、収益事業として相続できるメリットはありますが、Uターン帰省が前提になるため、家族の理解も必要です。また、一般的な宅地は自由に売却・活用できますが、農地は農地法によって規制されており、農業しか選択肢がないケースもあります。

今回は、農地相続のメリットやデメリット、相続したくないときの対処法をわかりやすく解説しますので、相続財産に農地がある方はぜひ参考にしてください。

農地を相続するメリット・デメリット

農地を相続するときは、まずメリット・デメリットを理解しておきましょう。農家は農業収入を得られるメリットがありますが、農業を続けられなくなったときは以下のようなデメリットもあります。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

農地を相続するメリット

農地を相続すると以下のメリットがあります。

  • 農業収入を得られる

  • 農地の貸し出しや売却も可能

  • 農地転用で収益化できる可能性がある

  • 固定資産税が低い

  • 相続税の納税猶予がある

農業をビジネスとして捉えた場合、やり方次第では大きな農業収入を得られる可能性があります。農地は農地法の規制を受けますが、貸し出しや売却は可能なので、賃料収入や売却益も見込めるでしょう

また、農地転用が許可されると、賃貸アパートや駐車場経営も可能になるため、安定的な収入を得られます。一定要件を満たすと相続税の納税も猶予されるので、税負担の軽さもメリットといえます。

農地を相続するデメリット

農地を相続するときは、以下のデメリットも理解しておきましょう。

  • 維持や管理に時間と労力がかかる

  • 機械や設備の維持コストが高い

  • 物価高騰や天候リスクがある

  • 収益化に失敗する可能性がある

  • 後継者が少ない

農地管理を怠ると雑草や害虫の発生原因となり、近隣農家の作物が被害を受けるケースがあります。農業に従事する場合には、農業用の機械は価格が高く、ガソリンや農薬などの価格が高騰すると赤字経営になる可能性もあるでしょう

異常気象の影響を受けると作物が育たなくなり、賃貸事業などに転用しても、収益性が低ければ投資額の回収に時間がかかります。後継者不足は全国的な問題なので、デメリットが大きければ農地を相続しない方法も検討することをおすすめします。

農地の相続手続き・必要書類

農地を相続する場合、法務局で相続登記を行い、次に農業委員会へ届け出るので、相続手続きは2段階になります。

手続きの流れや必要書類は以下を参考にしてください。

法務局で相続登記を行う

農地を相続すると所有者の変更が必要になるので、法務局に以下の書類を提出して相続登記を行います。

  • 所有権移転登記申請書

  • 遺言書または遺産分割協議書

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票

  • 相続人の住民票または戸籍の附票

  • 相続人全員の現在の戸籍謄本

  • 相続人全員の印鑑証明(遺産分割協議書を提出する場合)

  • 固定資産評価証明書

親の自宅も相続するときは、建物と敷地の固定資産評価証明書も取り寄せておきましょう。所有権移転登記申請書は法務局の窓口、または法務局ホームページで入手できます。

不動産登記の申請書様式(法務局):https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html

農業委員会に相続を届け出る

相続登記が完了した後は、各市町村の農業委員会に相続した旨を届け出ます。農業委員会の所在地や連絡先は自治体のホームページに掲載されていますが、役場の庁舎内に設置されているケースが多いでしょう。また、農業委員会に農地相続を届け出るときは、以下の書類を提出します。

  • 農地の登記事項証明書

  • 農地法第3条の3第1項の規定による届出書

多くの自治体では、農地法の規定による届出書もホームページからダウンロードできるようになっています。

なお、相続開始日から10カ月以内に届け出なかった場合、10万円以下の過料になる可能性があります。法定相続人以外が農地を相続するときは、農業委員会の許可が必要になるので注意してください。

相続人が農業を続けるなら「農地の納税猶予の特例」を利用する

相続した農地で農業を続ける場合、農地の納税猶予の特例を利用できます。市街地の農地は相続税評価額が高いので、納税資金を準備できないときは検討してみましょう

特例の適用要件や、手続きの方法は以下を参考にしてください。

農地の納税猶予の特例の適用要件

農地の納税猶予の特例は農地を相続した人、または贈与で農地を取得した人に対して、相続税や贈与税の納税を猶予し、最終的には納税免除となる制度です。

利用するときは被相続人・相続人・農地の要件を満たす必要があり、具体的な内容は以下のようになっています。

被相続人の要件

農地の納税猶予の特例を利用する場合、被相続人(亡くなった人)が以下の要件のいずれかを満たしている必要があります

  • 農地を一括して相続人に生前贈与していること

  • 死亡日まで農業を営んでいたこと

  • 死亡日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人、または農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、農業継続が困難な状況で営農困難時貸付をし、税務署長に届出をした人

  • 死亡日まで特定貸付等を行っていた人

被相続人が障害や病気で農業を続けられなくなった場合、営農困難時の貸付けを受けているかもしれません。また、被相続人が納税猶予を受けた農地を貸し出している場合は、特定貸付けを利用しているケースもあります。

農地を相続する人の要件

農地の納税猶予の特例を利用するときは、農地の相続人が以下の要件のいずれかを満たさなければなりません。

  • 被相続人から農地の生前一括贈与を受け、贈与税の特例が適用されていること

  • 相続税の申告期限までに農業経営をスタートし、その後も継続して農業経営すると認められること

  • 相続税の申告期限までに相続した農地を特定貸付していること

相続人になると推定される人が農地の生前一括贈与を受けている場合、贈与者が亡くなった後も農業経営を継続している必要があります。

農地の要件

相続する農地が以下のいずれかの要件を満たすと、農地の納税猶予の特例を利用できます。

  • 農地の生前一括贈与において、贈与税の特例が適用されていること

  • 相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立していること

  • 相続が発生した年に相続人へ一括生前贈与されていること

農地の生前一括贈与を受けた場合、贈与税の特例は翌年の贈与税申告時に適用しますが、相続開始と同じ年の贈与であれば、特例の要件を満たしたことになります

農地の納税猶予の特例の手続き方法

農地の納税猶予の特例を利用するときは、被相続人の住所地を管轄する税務署に以下の書類を提出します。必要書類は農業委員会や市町村役場で入手してください。

  • 相続税の納税猶予に関する適格者証明書:農業委員会

  • 特例適用農地の明細書:農業委員会

  • 納税猶予の特例適用の農地の該当証明書:市町村役場

  • 抵当権設定登記申請書:法務局

  • 相続税申告書:税務署

  • 担保提供書:税務署

関係書類の提出期限は相続開始日の翌日から10カ月以内になっており、3年ごとに農業を継続している届出も必要です。農業をやめたときは猶予されていた相続税と利子税が発生し、納税猶予額と利子税に見合う担保提供も必要なので、利用するかどうかを十分に検討してください。

農地を相続しない方法四つ

農地は特殊な土地のため、相続したくないときは以下の方法があります。農業委員会の許可が必要なケースや、地域によっては不向きな方法もあるので、農地の利用価値も十分に考慮しておきましょう。

農地の転用

農業委員会の許可があると農地を宅地などに転用できるので、駐車場や賃貸アパートなどの経営が可能になります。賃貸している土地は相続税評価額が低くなるため、相続発生前に転用すると、相続税が非課税になる可能性もあるでしょう。

ただし、高額な初期投資が必要になり、一般的には金融機関から事業資金を借り入れます。借入金の返済には賃料収入を充てるので、安定経営を維持できるかどうか、十分な検討も必要です。

農地は地盤の表層改良や杭打ち工事が必要になるケースが多く、想像以上にコストがかかる場合もあります。また、農地が建築基準法上の道路に面していない場合、賃貸アパートなどの建築はできないので注意してください。

農地の売却

農地を相続したくないときは、売却も選択肢になります。売却するときも農業委員会の許可が必要となり、農地のまま売却する、または宅地などに地目変更して売却することになります。

農地のまま売却する場合、売却先は農業従事者や農業法人、農業委員会に許可された認定農業者に限定されます。買い手の農家が見つからないときは、役場や農業委員会に相談してみましょう。

地目変更した農地は売却価格を高く設定できますが、転用後の用途が決まっていなければ農業委員会の許可が下りないので、先に買い手を探す必要があります。農地の形状や道路との高低差など、売却には様々な条件が考慮されるため、買い手が見つからないケースもあるでしょう。

相続土地国庫帰属制度の利用

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地を国に引き取ってもらう制度です。制度利用の申請先は法務局ですが、農地が以下の要件を満たしていないときは申請を却下されます。

  • 建物がないこと

  • 土壌汚染がないこと

  • 担保権や使用収益権が設定されていないこと

  • 境界トラブルなどの争いがないこと

  • 第三者の利用が予定されていないこと

却下事由に該当しない農地でも、崖地に隣接している場合や、管理・処分に高額な費用がかかる農地の場合、不承認になる可能性があるので注意してください。また、相続土地国庫帰属制度を利用する場合、10年分の管理費用に相当する負担金も必要なので、農地によっては100万円以上を支払うケースもあります。

相続放棄

農地の売却や転用、国庫帰属制度の利用が難しいときは、相続放棄も検討してみましょう。相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになるため、農地を相続する必要はなくなります。

ただし、相続放棄によって相続権が消滅すると、被相続人の預貯金や株式、自宅なども相続できなくなるので注意してください。

相続放棄は家庭裁判所に申述する必要があり、申述期限は相続開始を知った日から3カ月以内です。申述期限を過ぎたときや、申述までに被相続人の預貯金などを使ってしまったときは、原則として相続放棄を認めてもらえません。

相続放棄は申述期限が短いので、手続きに対応できないときは弁護士に相談しましょう。

農地を相続して最低限の管理を続ける

農地売却や相続放棄などもできないときは、農地の相続しか選択肢はありません。維持や管理は大変ですが、定期的な草刈りと水路の整備さえできていれば、近隣農家に迷惑がかかることはないでしょう。

また、有料で草刈りを代行してくれる地域団体などもあるので、自分で管理できないときは役場の担当部署や農業委員会に相談してください。トラクターやコンバインなどの機械があれば、業者による買い取りや、ネットオークションで売却できるケースもあります。

まとめ

農業を引き継ぐ予定があれば、農地は魅力的な相続財産になりますが、農家になる予定がない方は、農地が負の財産になってしまうでしょう。農地は農地法によって用途が制限されており、売却や転用には農業委員会の許可も必要です。

また、市街地の農地は相続税評価額が高く、固定資産税も周辺の宅地とあまり変わらないため、相続税だけではなく、毎年の税負担も重くなります。

農地は特殊な性質の土地なので、相続するかどうか迷ったときや、売却や転用を検討しているときは、相続の専門家に相談することをおすすめします。農地相続の選択肢は限られてしますが、専門家のアドバイスがあれば、ベストな方法が見つかるでしょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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