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相続手続き

最終更新日:2023.11.30

続廃除とは?
制度の概要や要件・手続きの流れを解説

相続廃除とは?制度の概要や要件・手続きの流れを解説

このコンテンツでわかること

  • ■ 相続廃除の概要
  • ■ 相続廃除の要件
  • ■ 相続廃除時の相続の取り扱い
  • ■ 相続廃除の手続きをする流れ・必要書類
  • ■ 相続廃除は取消すこともできる

遺産相続が発生すると、亡くなった方の子供は第1順位の法定相続人になるため、一定割合の財産を取得できます。しかし、親の財産を無断で使い込む、または親に暴力を振るうような子供であれば、財産の承継者に相応しいとは言い難いでしょう。

財産を渡したくない子供がいる場合、一定要件を満たすと相続廃除が認められるので、相続人から除外できます。相続廃除は民法で保障された相続権のはく奪になるため、簡単に認められるわけではありませんが、相続人に著しい非行があるときは検討する余地があるでしょう。

今回は、相続廃除の要件や、手続きの流れなどをわかりやすく解説します。

相続廃除とは

相続廃除とは、一定範囲の相続人から相続権をはく奪する制度です。親を虐待している子供や不貞行為を働いている配偶者など、相続財産を渡したくない親族がいるときは、相続廃除が有効な解決手段になるでしょう。

ただし、相続権は民法で保障されているため、「相続廃除する」という宣言だけでは効力がなく、家庭裁判所に申し立てる必要があります。

相続廃除の要件や手続きは後述しますが、相続廃除は「相続欠格」と混同しやすいので、まず両者の違いを理解しておきましょう。

相続欠格との違い

相続欠格の場合、以下の欠格事由に該当すると相続権を失います

  • 故意に被相続人や先順位や同順位の相続人を死亡に至らせ、または至らせようとしたために刑に処された者

  • 被相続人が殺害されたことを知っても告発や告訴をしなかった者。ただし、その者に是非の弁別がない、または殺害者が自己の配偶者や直系血族であったときを除く

  • 詐欺や強迫によって被相続人が遺言すること、または撤回・取り消し・変更することを妨げた者

  • 詐欺や強迫によって被相続人に遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者

  • 被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者

つまり、相続欠格は被相続人の意思とは無関係に成立します。この点が、相続廃除が被相続人の意思でのみ行われることとの決定的な違いです。

引用元:民法891条

相続廃除の要件

相続廃除しなければならない相続人がいる場合、家庭裁判所に申し立てできる人、廃除の対象になる人など、いくつかの要件があります。相続廃除が認められないケースもあるので、以下を参考にしてください。

相続廃除の申立人の要件

相続廃除の申立ては被相続人しか認められていないため、配偶者や子供などの親族は申立人になれません。なお、被相続人が認知症になっており、法律行為を制限されている場合でも本人が申し立てできるので、法定代理人の選任は不要です。

相続廃除の対象となる相続人

相続廃除の対象者は遺留分を有する者と定められており、以下の推定相続人が該当します。なお、推定相続人とは、現時点で相続が発生したときに法定相続人になるはずの親族です。

【相続廃除の対象者】

  • 被相続人の配偶者

  • 被相続人の直系卑属となる子供や孫など

  • 被相続人の直系尊属となる父母や祖父母など

遺留分は必ず取得できる相続財産の割合になっており、遺言書でも侵害はできないので、財産を渡したくないときは相続廃除が必要になるでしょう。

ただし、被相続人の兄弟姉妹は遺留分を有しておらず、財産を渡したくないときは遺言書で指定すればよいため、相続廃除の対象にはなっていません。

相続廃除できる要件

相続廃除できる要件は民法に定められており、具体的には以下のような状況が該当します。

  • 特定の相続人から暴言などの重大な侮辱を受けていた

  • 特定の相続人に著しい非行があった

  • 特定の相続人から長年にわたって暴力や虐待を受けていた

  • 特定の相続人が犯罪によって有罪判決を受けている

  • 特定の相続人が被相続人の財産を無断で売却・処分した

  • 被相続人の配偶者に浮気などの不貞行為がある

  • ギャンブル依存が原因の高額な借金を被相続人に払わせた

いずれも相続廃除を申し立てる理由になりますが、家庭裁判所によって客観的に判断されるため、著しい非行などを証明できるかどうかが重要になるでしょう。

相続廃除が認められないケース

推定相続人に暴言や暴力などの非行があっても、その原因が被相続人にもある場合、家庭裁判所が相続廃除を認めないケースがあります。

たとえば、夫が妻に虐待を繰り返しており、その子供が母親を守るために父親に暴行を加えたのであれば、子供の相続廃除を申し立てても認めてもらえないでしょう。

また、推定相続人が被相続人にケガを負わせても、双方が共同で築く相続関係に影響がないとみなされた場合、相続廃除は認めてもらえません。

相続廃除は遺留分の請求もできなくなるため、家庭裁判所が「財産を与えてはならない」と判断するだけの理由が必要です。

相続廃除時の相続の取り扱い

相続廃除されると相続権を失いますが、あくまでも廃除された当人の問題であり、子孫に影響することはありません。ただし、遺留分については以下のように厳しい措置があるので、相続廃除したい相続人がいる場合、相続の取り扱いにどう影響するのか理解しておく必要があります。

相続廃除されると遺留分を請求できない

相続廃除によって相続権をはく奪された場合、民法で保障された遺留分を失います。被相続人の兄弟姉妹に遺留分はありませんが、配偶者と子供は法定相続分の1/2、父母は1/3を必ず取得できます。

遺留分は遺言書でも侵害できないため、特定の相続人や第三者に相続財産をすべて渡しても、侵害されている部分は返還請求によって取り戻し可能です。

しかし、相続廃除されると民法上の最低保障すら失うので、遺留分をはく奪するほどの事情かどうか、家庭裁判所でも慎重な審理が行われます。

相続廃除されても代襲相続は可能

前述したように、相続廃除は当人だけに適用されるので、代襲相続には影響を与えません。代襲相続とは、被相続人よりも先に子供が亡くなっている、または子供を相続廃除したとき、孫(子供の子)が子供の相続権を引き継ぐ仕組みです。

ただし、子供と孫から虐待を受けているようなケースであれば、子供は相続廃除できても、孫は推定相続人ではないことから、相続廃除の対象になりません。

代襲相続人となる孫にも著しい非行があり、相続財産を渡したくないときは、遺言書で孫以外の相続人に財産を集中させる方法も検討してみるとよいでしょう。

なお、代襲相続人には遺留分があるので、最低限の取得分を侵害しないように注意が必要です。

相続廃除の手続きをする流れ・必要書類

相続廃除の手続きは、生前廃除と遺言廃除の2パターンに分かれています。生前廃除は被相続人が自分で家庭裁判所へ申し立てますが、遺言廃除の場合は遺言執行者が申立人になります。

では、手続きの流れや必要書類について見ていきましょう。

生前廃除するときの手続きと必要書類

被相続人が申立人となって生前に相続廃除するときは、以下の流れで家庭裁判所の手続きなどを進めます。家庭裁判所が相続廃除を認めた場合、市区町村役場への届出も必要になるので注意しておきましょう。

必要書類の準備

生前に相続廃除を申し立てるときは、以下の書類を準備してください。

  • 推定相続人廃除の審判申立書(家庭裁判所の窓口で入手)

  • 被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)

  • 相続廃除したい推定相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)

  • 800円分の収入印紙

  • 郵便切手(金額は家庭裁判所によって異なります)

相続人廃除の申立書には専用書式がないので、家庭裁判所の窓口に申し出ると「家事審判申立書」の書式と記載例が手渡されます。家事審判申立書を使用するときは、事件名に「推定相続人廃除」と記載します。

また、相続廃除の申し立て理由によっては、推定相続人の非行を証明する書類を求められるので、事前に家庭裁判所で確認しておくとよいでしょう。

家庭裁判所へ相続廃除を申し立てる

生前廃除の必要書類がすべて揃ったら、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に提出し、相続廃除を申し立てます。相続廃除は郵送扱いの申立てもできるので、家庭裁判所が遠い方や、窓口に出向く時間がない方は利用してみましょう。

各地の裁判所の所在地・電話番号等一覧(裁判所)

相続廃除の審判の確定

相続人の生前廃除を申し立てた後は、家庭裁判所によって相続廃除が妥当かどうか審理されます。相続廃除の審判が確定すると、確定証明書と審判書謄本が申立人あてに郵送されるので、ここで家庭裁判所の手続きは終了です。

市町村役場へ相続廃除を届け出る

家庭裁判所が相続廃除を認めた場合、審判確定日から10日以内に市町村役場へ届け出を行い、戸籍の身分事項に相続廃除を記載してもらいます。

届け出先は相続廃除された人の本籍地、または届出人の住所地の役場になるので、以下の書類を提出しましょう。

  • 推定相続人廃除届(役場の窓口または自治体ホームページで入手可能)

  • 相続廃除の確定証明書と審判書謄本

  • 届出人の印鑑

届出人は特に指定されていませんが、相続廃除した本人以外が届け出るときは、必ず委任状を作成してください。

遺言廃除するときの手続きと必要書類

遺言書で相続廃除する場合、家庭裁判所への申立ては遺言執行者が行います。申立後の流れは生前廃除と特に変わりませんが、廃除理由を遺言執行者に立証してもらう必要があるので、以下のように対応するとよいでしょう。

遺言書の作成と遺言執行者の指定

遺言書で相続廃除するときは、廃除する相続人と、具体的な廃除理由を遺言書に記載します。遺言執行者も遺言書で指定できますが、事前に本人へ連絡して承諾を得た方がよいでしょう。

未成年者と破産者以外は誰でも遺言執行者になれますが、相続廃除だけではなく、相続手続き全般に対応してもらう必要があります。親族や知人に適任者がいないときは、弁護士や司法書士に遺言執行者を依頼してください。

遺言執行者による相続廃除の準備

被相続人が亡くなると、遺言執行者は以下の書類を揃えて相続廃除の申し立てを準備します。

  • 相続廃除の申立書

  • 被相続人の死亡がわかる戸籍謄本(全部事項証明書)

  • 相続廃除したい相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)

  • 遺言書または検認調書謄本の写し

  • 遺言執行者選任の審判書謄本(家庭裁判所で遺言執行者を選任した場合)

  • 800円分の収入印紙

  • 郵便切手(金額は家庭裁判所によって異なります)

自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要になっており、検認前に開封すると5万円以下の過料になる可能性があるので注意してください。

相続廃除の申し立てから市町村役場へ届け出する流れ

遺言廃除を家庭裁判所に申し立てた後は、生前廃除と同じ流れで手続きを進めます。相続廃除の審判が確定したら、審判確定日から10日以内に以下の書類を市町村役場へ提出しましょう。

  • 推定相続人廃除届

  • 相続廃除の確定証明書と審判書謄本

  • 届出人の印鑑

相続廃除された人の本籍地、または届出人の住所地の役場に必要書類を提出すると、戸籍の身分事項に相続廃除が記載されます。

相続廃除は取消すこともできる

相続廃除は取り消しできるので、廃除した相続人が改心したときは、家庭裁判所に廃除の審判の取り消しを申し立てることが可能です

申立ての手順は相続廃除と同じになっており、被相続人が申し立てる生前の取り消し、または遺言書による取り消しのどちらでも構いません。

推定相続人が虐待や暴行などを反省し、被相続人との関係が修復されたときは、早めに相続廃除を取り消しておきましょう。

まとめ

相続廃除は家庭裁判所の審判によって決まるため、暴力や虐待などの非行を立証しなければなりません。しかし、相続廃除は最低保障の遺留分を奪ってしまうので、よほど悪質なケースでなければ家庭裁判所も認めてはくれないでしょう。

また、相続廃除の対象者にも説明の機会が与えられるため、事実と異なる主張で廃除を免れようとする可能性もあります。

相続廃除が認められる確率はかなり低いので、財産を渡したくない相続人がいるときは、まず弁護士に相談してみましょう。弁護士は著しい非行などの証拠を収集し、相続廃除の妥当性を立証してくれることが期待できます。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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