寄与分とは
寄与分とは、被相続人の財産維持や増加に貢献した場合、貢献度に応じた金銭を相続財産に加算する制度です。
相続人が被相続人を介護したことで介護士に支払う費用が不要になったときや、事業への貢献で被相続人の財産が増加した場合に寄与分を認めてもらえる可能性があります。
ただし、寄与分を認めると他の相続人の取得分が減ってしまうため、簡単には請求に応じてもらえないでしょう。また、寄与分は相続人だけに認められた制度になるため、相続人以外の人の特別な寄与があったときは、特別寄与料の主張・請求が必要です。
寄与分の適用要件などは後述しますが、まず寄与分と特別寄与料の違いを理解しておきましょう。
寄与分と特別寄与料の違い
特別寄与料(特別寄与分)は相続人以外が対象になっており、以下の親族に主張・請求が認められています。
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法定相続人ではないこと
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被相続人の親族であること(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)
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相続放棄していないこと、または相続廃除や欠格になっていないこと
相続人以外の親族が被相続人の療養看護に専念していたときや、被相続人の事業に無償で貢献していたときは、特別寄与料の請求を認めてもらえる可能性があります。
ただし、特別な寄与が被相続人の財産維持や増加につながったかどうか、因果関係を証明しなくてはなりません。
特別寄与料を主張するときは、介護状況などがわかる資料を必ず提示しましょう。
寄与分の適用要件
寄与分を主張・請求するときは、以下の適用要件にすべて該当している必要があります。
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寄与者が相続人であること
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特別な寄与であったこと
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寄与行為が無償であったこと
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継続性や専従性があったこと
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寄与行為が被相続人の財産維持や増加につながったこと
特別な寄与とは、通常期待される程度を超えた貢献になるため、片手間の家事分担では寄与分を認めてもらえないでしょう。被相続人の介護で寄与分を主張する場合、少なくとも1年以上の期間が必要になり、付きっきりで専従的に介護していたかどうかも問われます。
また、寄与行為によって被相続人の財産を維持できたこと、または増加につながったことも証明しなければなりません。
寄与分は5パターンに分類される
寄与分には以下の5パターンがあるので、財産管理などが特別な寄与になる場合もあります。
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療養看護型:長期にわたって被相続人を介護していた場合
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家業従事型:被相続人の事業に無償で従事していた場合
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扶養型:被相続人の生活費などを負担していた場合
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財産管理型:被相続人が所有する賃貸物件などの清掃や手入れを行っていた場合
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金銭出資型:被相続人の不動産購入資金などを支援した場合
家業従事型の場合、被相続人の農業経営を無償で手伝っていたケースも該当します。
病気で働けなくなった被相続人の生活費を全額負担するなど、親族として当然といえる扶養・扶助の範囲を超えていれば、寄与分が認められる可能性があるでしょう。
寄与分が認められやすいケース
寄与分が認められやすいケースは療養看護型や家業従事型が多く、以下のように適用要件を満たしている場合です。介護用品を購入したときの領収書や、勤怠記録がわかる資料などを残しておくと、特別な寄与を証明しやすくなります。
被相続人の配偶者が介護に貢献していた場合
夫婦にはお互いに扶助・扶養の義務があるため、配偶者の介護に専念しても寄与分の対象にはなりません。ただし、要介護状態の被相続人を10年以上にわたって付添介護するなど、通常期待される扶助の範囲を超えていたときは、寄与分が認められる場合があります。
配偶者の療養看護により、病院や介護施設に支払う費用が不要になった場合、被相続人の財産を維持できたことになるので、寄与分の要件を満たせるでしょう。
子供の配偶者が被相続人の事業に貢献した場合
子供の配偶者に特別な寄与があり、結果的に子供が受け取る相続財産が増えたときは、子供に寄与分が認められる可能性があります。
たとえば、長男の妻が義父や義母の事業経営に貢献したことにより、義父や義母の財産が減少しなかった、または増加したケースが考えられます。
長男の妻は義父や義母の相続人になれませんが、相続人である夫の履行補助者としての寄与行為であったときは、夫(長男)が寄与分を主張・請求できる可能性があります。
被相続人の孫が介護に専念していた場合
被相続人の孫が親の代わりに祖父母を介護していた場合、親(被相続人の子供)に寄与分が認められる場合もあります。
孫の介護によって、親が取得できる祖父母の相続財産の維持や増加につながったときは、孫が親の履行補助者として寄与行為を行ったものとして、親が寄与分を主張・請求できる可能性があります。
ただし、介護期間が長期にわたっており、専従的であったことも寄与分の要件になります。「週末だけ介護のために立ち寄っていた」というケースでは、特別な寄与とはいえないでしょう。また、寄与分を主張・請求するときは、要介護認定通知書などの証拠を提示する必要もあります。
【具体例付】寄与分の計算方法
寄与分が認められたときは、遺産総額から寄与分を差し引いた「みなし相続財産」を分割するので、計算方法は以下のようになります。
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計算式
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みなし相続財産:遺産総額-寄与分
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計算式
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寄与分がある人の相続分:(みなし相続財産×法定相続分)+寄与分
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計算式
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寄与分がない人の相続分:みなし相続財産×法定相続分
では、具体例で寄与分の計算方法をみていきましょう。
寄与分がある人の相続分の計算例
寄与分がある人は相続財産をいくら取得できるのか、以下の条件で計算してみます。
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遺産総額:1億円
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相続人:被相続人の配偶者および長男・長女
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法定相続分:配偶者は遺産総額の1/2、長男と長女はそれぞれ1/4ずつ
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寄与者:長女
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寄与分:1,000万円
寄与分を考慮して長女の相続分を計算すると、以下のようになります。
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計算式
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みなし相続財産:1億円-寄与分1,000万円=9,000万円
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計算式
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長女の相続分:(9,000万円×1/4)+寄与分1,000万円=3,250万円
法定相続分どおりに遺産分割すると、長女の相続分は2,500万円ですが、寄与分が認められた場合は750万円が加算されます(長女の相続分は2,500万円+750万円=3,250万円)。
では次に、寄与分がない配偶者と長男の相続分を計算してみましょう。
寄与分がない人の相続分の計算例
寄与分がない配偶者と長男の場合、相続分は以下のように計算します。
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計算式
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みなし相続財産:1億円-寄与分1,000万円=9,000万円
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計算式
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配偶者の相続分:9,000万円×1/2=4,500万円
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計算式
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長男の相続分:9,000万円×1/4=2,250万円
法定相続分どおりの遺産分割では、配偶者が5,000万円(1億円×1/2)、長男が2,500万円(1億円×1/4)を取得します。
ただし、寄与分を考慮すると配偶者は500万円、長男は250万円の減額になり、合計750万円の減額分が長女に加算される仕組みです。
寄与分を主張する方法
寄与分は遺産分割協議で主張することになりますが、他の相続人の理解を得られるとは限りません。遺産分割協議がまとまらないときは調停も必要になるので、以下の方法で寄与分を主張してください。
遺産分割協議で寄与分を主張する
被相続人に対する特別な寄与があったときは、まず遺産分割協議で寄与分を主張してみましょう。遺産分割協議は相続人全員が参加するので、寄与分の計算方法や寄与行為について理解を得られると、その場で寄与分の請求に合意してもらえる可能性があります。
ただし、寄与分を認めると、寄与者以外の相続人は取得財産が減少するため、全員が納得するだけの証拠や資料が必要です。遺産分割協議は全員の合意がなければ成立しないので、寄与分を認めない相続人が1人でもいるときは、以下の調停も検討してください。
家庭裁判所に調停を申し立てる
遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所に「寄与分を定める処分調停」を申し立ててみましょう。調停は話し合いによる解決方法になり、調停委員が当事者の間に入るので、申立人の主張に合理性があれば、寄与分を認めるように他の相続人を説得してくれます。
ただし、調停案に納得しない相続人が1人でもいると、調停は不成立のまま終了するため、以下の審判に移行します。
調停が不成立になると審判へ移行する
家庭裁判所の調停が不成立になると、自動的に審判の手続きに移行します。審判では寄与分を認めるかどうか、寄与料をいくらにするかなどを裁判官が決定するので、資料や証拠が重要になるでしょう。
調停から審判へ移行した場合、遺産分割の最終決定までに1年以上かかるケースもあります。裁判所は平日しか開庁していないので、調停や審判の手続きに自分で対応できないときは、弁護士に代理人を依頼してください。
まとめ
寄与分は相続人に認められた制度になっており、被相続人への貢献がお金に換算されるので、公平な遺産分割を実現できます。被相続人の介護や事業経営などに貢献したときは、遺産分割協議で寄与分を主張してみましょう。
ただし、寄与分が認められる要件はかなり厳しいため、十分な証拠や資料がなければ他の相続人の理解は得られません。寄与分の計算方法はあまり複雑ではありませんが、他の相続人の取得分を減額することになるので、対立関係になってしまう可能性もあります。
寄与分の主張を認めてもらいたいときや、調停の申立てが必要になるときは、まず弁護士に相談してみましょう。



