寄与分とは
寄与分とは、被相続人の財産維持や増加に寄与(貢献)した相続人がいる場合、寄与行為に応じた金額を相続財産に加算する制度です。
相続人による被相続人の介護で病院や介護施設に支払う費用が不要になれば、相続財産の維持に寄与したことになり、寄与分が認められるケースがあります。
ただし、寄与分を考慮して遺産分割すると、寄与者の相続分は増えますが、その他の親族の相続分は減少するので、簡単には認めてもらえないことが予測されます。寄与分を主張するときは、相続財産の維持や増加に寄与したことを証明するための根拠となる資料が必要になります。
寄与分の相場はいくら?
寄与分が認められるかどうかは相続人同士の話し合いによるため、特に決まった相場はありません。一般的には、相続財産の2~3割程度、多くても5割程度が、他の相続人により認められる寄与分の相場といえるでしょう。
ただし、相続人全員が寄与行為に理解を示している場合、請求どおりの寄与分が認められるケースや、寄与者が全財産を相続できるケースもあります。
なお、民法では親族同士の扶養や扶助を義務付けているので、「扶養の範囲内だ」と反論された場合、寄与分をまったく認めてもらえない可能性もあるでしょう。
寄与分を主張し認められるまでの流れ
寄与分は基本的に遺産分割協議で主張しますが、認められなかった場合は家庭裁判所に調停を申し立てるケースもあるので、以下の流れを参考に対応してください。
1)遺産分割協議で寄与分を主張する
介護などの寄与分を認めてもらいたいときは、まず遺産分割協議で特別な寄与があったことを主張しましょう。寄与分は各相続人の取得財産に影響するので、全員参加の遺産分割協議が寄与分を主張する場に適しています。
ただし、寄与分を認めると、他の相続人は自分の相続分が減ってしまうため、反対意見も想定しておく必要があるでしょう。
遺産分割協議は全員の合意がなければ成立しないので、1人でも反対者がいる限り、いつまで経っても寄与分の問題が解決しません。
寄与分を認めるかどうかで遺産分割協議が難航したときは、次の調停も検討してください。
2)家庭裁判所に調停を申し立てる
遺産分割協議で寄与分の主張を認めてもらえなかったときは、家庭裁判所に「寄与分を定める処分調停」と「遺産分割調停」を申し立ててみましょう。調停は裁判の手続きと異なり、調停委員を交えた話し合いになるため、裁判官の判決に従う解決方法ではありません。
調停委員が寄与分の主張を妥当だと認めた場合、相手にも寄与分を認めるように説得してくれるので、双方の和解を目指せます。
ただし、調停委員は中立的な立場になるので、要介護認定通知書や介護用品を購入したときの領収書など、証拠がなければ寄与分の妥当性を認めてもらえません。
また、遺産分割調停も申し立てておくと、寄与分の調停が不成立になったときに以下の審判へ移行します。
3)調停が不成立になったときは審判に移行する
遺産分割調停を申し立てている場合、寄与分の調停がまとまらなかったときは審判へ移行します。審判では寄与分の扱いを裁判官が判断するので、証拠の提示がもっとも重要になってくるでしょう。
十分な証拠を準備できず、納得できない審判結果が確定したときは、以下の即時抗告で寄与分を主張する方法もあります。
4)審判結果に不服があるときは即時抗告を申し立てる
寄与分の審判結果に不服があるときは、家庭裁判所を管轄する高等裁判所へ即時抗告を申立てできます。裁判所の判断は必ずしも画一的ではなく、裁判官が変わると寄与分を認めてもらえる可能性があるので、最期まで諦めないようにしましょう。
ただし、審判確定日の翌日から2週間以内が申立ての期限になっており、調停や審判のときと同じ主張では寄与分を認めてもらえない確率が高いでしょう。即時抗告する場合、追加できる証拠の準備や、寄与分を妥当とする理論構成も必要になるので、対応に不安がある方は弁護士のサポートを受けてください。
寄与分を主張するときの注意点
寄与分の主張には以下のような注意点があるので、寄与行為に応じた証拠の種類や、請求可能な範囲を理解しておきましょう。寄与分の内容によっては、各相続人の最低保障となる遺留分の侵害が認められるケースもあります。
寄与分は主張しなければ認められない
寄与分を認めてもらいたいときは、自分で主張しなければなりません。他の相続人が寄与行為をチェックしているわけではないので、寄与分を主張しなかった場合、法定相続分を基準とした遺産分割協議になるでしょう。
なお、遺産分割協議がまとまりかけたタイミングで寄与分を主張すると、最初から協議をやり直すことになるため、他の相続人に反発される場合があります。寄与分はできるだけ早めの段階で主張しておきましょう。
寄与分を主張するときは証拠が必要
寄与分を主張する場合、以下の寄与行為に応じた証拠が必要です。
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療養看護型:医師の診断書やカルテ、要介護認定通知書など
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家業従事型:勤怠記録や給与明細書、被相続人の確定申告書など
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扶養型:被相続人と寄与者の預金通帳、クレジットカードの利用明細など
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財産管理型:賃貸物件を管理・処分した記録など
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金銭等出資型:不動産の売買契約書や登記事項証明書、被相続人と寄与者の預金通帳など
証拠があると寄与分を認められやすいので、少しでも多く集めるようにしてください。介護の状況を記録した日記やノートなどがあれば、寄与分の証拠として遺産分割協議の際に提示しておきましょう。
遺言書では寄与分を指定できない
遺言書では寄与分を指定できないため、「寄与分として相続人○○に不動産をすべて渡す」などの遺言書があったとしても、寄与分を確定させる効力はありません。寄与分を考慮して相続財産を渡したいときは、一般的な遺贈(遺言書による財産承継)にしておくべきでしょう。
なお、「長女には財産の1/2および、寄与分として財産の3割を渡す」といった割合の指定があれば、有効な遺贈になる可能性があります。
寄与分よりも遺贈や死因贈与が優先される
遺言書による財産承継を遺贈といい、贈与者の死亡後に財産が渡される贈与契約を死因贈与といいますが、どちらも寄与分に優先されます。つまり、寄与分を主張しても、遺贈や死因贈与で取得した財産までは侵害できないことになります。
たとえば、相続財産1億円のうち、遺贈や死因贈与が決まっている財産が8,000万円あるとした場合、寄与分は残りの2,000万円までしか請求できないということです。寄与分を主張するときは、まず遺言書や贈与契約書の内容をよく確認しておくべきでしょう。
状況によっては遺留分を侵害する寄与分が認められる
法定相続人には遺留分が保障されており、以下のように割合が決められています。
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配偶者や子供が相続人になるときは法定相続分の1/2
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親のみが相続人の場合は法定相続分の1/3
遺留分は民法で保障された最低限の取得割合ですが、法律上は、遺留分を侵害する寄与分の主張が認められないとはされていません。しかし、過去の裁判例に照らすと、遺留分を侵害するような高額の寄与分の主張は認められない可能性が高いといえます。
ただし、遺留分を侵害する寄与分を主張しても、状況によっては寄与分が認められる可能性もあります。たとえば、要介護状態の被相続人が暮らしやすいよう、バリアフリー化された住宅を寄与者が購入していたケースなどが考えられます。
主な相続財産がその住宅だけだった場合、寄与者が相続することで遺留分の侵害が発生しても、寄与分の主張に無理があるとはいえないでしょう。
寄与分の加算は納税額に影響する
寄与分の主張が認められたときは、相続税や登録免許税の納税に注意してください。相続税は累進課税方式になっているため、寄与分の加算によって相続財産が増加すると、相続税の税率が上がってしまう可能性があります。
法定相続分どおりの遺産分割では相続税がかからなかったところ、寄与分が認められたことで課税されるケースもあるでしょう。
また、寄与分の主張によって不動産を取得した場合、土地・建物それぞれに登録免許税も課税されます。相続税や登録免許税は現金納付が原則になっているので、税額計算がわからないときは、税理士にも相談しておくことをおすすめします。
まとめ
寄与分には相場がないので、証拠を提示して特別な寄与を立証できるかどうか、他の相続人の理解を得られるかどうかで寄与料が決まります。
他の相続人が積極的に寄与分を認めてくれる可能性はほぼないため、被相続人の介護などに貢献したときは、必ず自分で寄与分を主張しなければなりません。
また、寄与分が認められた場合でも、寄与行為を裏付ける証拠が不十分であれば、寄与料を減額されてしまうでしょう。
寄与分を主張すると、他の相続人と対立関係が生じるケースもあるので、どのように話を切り出してよいかわからないときは、まず弁護士に相談してください。遺産相続に詳しい弁護士であれば、寄与分の証拠収集や、調停の申立てもサポートしてくれるでしょう。



