代表相続人とは
代表相続人とは、相続人が複数いる場合に、相続人を代表して遺産相続における納税や預貯金の払い戻しなどの手続きをする人のことです。
相続手続きにおいて、代表相続人の選任は必須ではありません。しかし、代表相続人を選任しない場合、手続き窓口などに相続人全員で行かなければならず不便です。
代表相続人は、遺産相続におけるさまざまな手続きをスムーズに進めるために重要な役割を果たします。複数の相続人がいるときには、代表相続人を選ぶことをおすすめします。
代表相続人の決め方
代表相続人の決め方に形式的な決まりはありません。相続人全員による話し合いで、相続人の中から、相続人全員の同意により代表者を決めるとよいでしょう。
代表相続人は、相続人全員を代表して行動します。そのため、相続人の中に代表相続人の選任に反対する人がいる場合には、代表相続人を決めることはできません。
代表相続人の法律上の地位・権利
代表相続人は、法律に規定されたものではなく、役所や金融機関などでの手続きにおける実務上の代表権を持つだけです。そのため、法律上の権利はなく、選任後でも一部の相続人が反対すれば、すぐに代表相続人としての地位を失います。
従って、代表相続人であることを理由に、相続できる割合が優先されることはありません。代表相続人は、あくまで相続手続きを進めるうえでの代表者で、遺産分割の内容を決める遺産分割協議とは別問題です。当然のことながら、代表相続人は他の相続人に、代表者として手続きを進めることに対する報酬を請求することもできません。
なお、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議の結果として代表相続人の相続分を多くしたり、代表相続人の手続き負担に対する報酬を支払ったりすることは可能です。
代表相続人が行う手続き
代表相続人が中心として行うべき手続きとしては、次の四つが挙げられます。
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被相続人名義の不動産の固定資産税の納税通知書の受け取り
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金融機関での預貯金の払い戻しや名義変更などの手続き
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相続税申告・所得税の準確定申告の手続き
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不動産の相続登記手続き
代表相続人は法律上の地位ではないため、役割も決まりきったものではありません。上記の手続きのうち一部のみを担うケースや、これら以外の手続きを行うケースもあります。相続手続きを税理士や弁護士などの専門家に依頼するときには、代表相続人が専門家とのやり取りの窓口になることが多いでしょう。
被相続人名義の不動産における固定資産税の納税通知書の受け取り
被相続人(亡くなった人)が不動産を所有していたときは、亡くなった年の固定資産税が発生します。固定資産税の納付義務者は、毎年1月1日時点での所有者です。従って、年の途中に所有者が亡くなっても、固定資産税の納付義務がなくなることはありません。
代表相続人は、年の途中で亡くなった被相続人に代わって、固定資産税の納税通知書を受け取ります。代表相続人が固定資産税の納税通知書を受け取るためには、不動産の所在地の市区町村役場に「相続人代表者指定届」を提出する必要があります。役所へ届け出を行うと、不動産の次の所有者(相続人)が決まって相続登記を行うまで、代表相続人宛に固定資産税の納税通知書が届きます。
なお、代表相続人は、固定資産税の納税通知書を受け取るだけの立場であって、固定資産税全額の支払い義務を負うことはありません。固定資産税は、相続人全員で話し合って相続人のうち1人が代表して立て替え払いをし、相続の割合に応じて各相続人が負担するのが一般的です。
金融機関での預貯金の払い戻しや名義変更などの手続き
被相続人が亡くなると、預貯金口座は凍結されます。凍結された口座の払い戻しを受けるには、原則として相続人全員での手続きが必要です。しかし、常に相続人全員での手続きが求められると、相続人の中に遠方の人や高齢で動けない人がいる場合などに手続きを進めることができません。
代表相続人を選ぶと、代表相続人が相続人全員を代表して預貯金の払い戻し手続きを進められるようになります。代表相続人が行う手続きは、被相続人のすべての預貯金を受け取って、各相続人に分配することです。
代表相続人が金融機関から払い戻しを受けるには、遺産分割協議書や被相続人の戸籍謄本、法定相続人全員の印鑑証明書などの書類を取りまとめる必要があります。必要書類を金融機関に提示すると、代表相続人1人の手続きで預貯金の払い戻しを受けられます。
代表相続人は、払い戻しを受けた被相続人の預貯金と代表相続人の預貯金とが混同しないよう注意しなければなりません。預貯金を混同してしまうと、他の相続人から使い込みを疑われて手続きを進められなくなったり、横領罪が成立してしまったりする可能性があります。預貯金の混同を避けるためには、代表相続人として業務を行うための専用口座を開設するのがおすすめです。
相続税の申告手続き
相続税の申告は、各相続人が個別に行うこともできますが、一般的には相続人全員の連名で行います。代表相続人は、相続人全員での申告手続きを進める際に、中心となって行動します。
相続税の申告書を作成するには、さまざまな書類が必要で、専門家である税理士の協力も不可欠です。代表相続人は、各相続人から書類を集めたり、税理士とのやり取りの窓口になったりして手続きを進めます。
相続税の申告には、相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内という期限があります。スムーズに手続きを進めて、期限内に申告を終えるには、代表相続人の役割が重要となるでしょう。
不動産の相続登記手続き
相続登記の手続きは、不動産を相続した相続人が中心となって進めるケースが多いでしょう。一方、不動産を相続人の共有状態で相続する場合や、換価分割する場合には、代表相続人が中心となって手続きが進められるケースもあります。
換価分割とは、不動産を売却して得られたお金を相続人で分ける遺産分割の方法です。相続登記が未了の状態で換価分割が進められないときは、不動産の名義を代表相続人の名義にしたうえで売却手続きを進めることもあります。
不動産の売却を進めるための不動産会社とのやり取りや、登記手続きのための司法書士とのやり取りについても、代表相続人が窓口となって進めるケースが多いでしょう。
代表相続人を選ぶ際のポイント
代表相続人を選ぶのに法律上の決まりはありませんが、次の四つポイントはおさえておきましょう。
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信頼できる人、時間に融通が利く人を選ぶ
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手続きごとに異なる代表相続人を選んでもよい
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相続放棄した人は代表相続人にはなれない
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遺産分割協議書に代表相続人を記載する
代表相続人を選ぶ目的は、相続手続きをスムーズに進めるためです。これらのポイントを押さえておかなければ、逆に手続きを遅らせてしまう可能性もあるので注意してください。
信頼できる人、時間に融通が利く人を選ぶ
代表相続人は、金融機関から預貯金の払い戻しを受ける際に、他の相続人の相続分も一括して受け取ることになります。代表相続人が金銭面で信頼できる人でなければ、払い戻しを受けたお金を使い込んでしまったり、代表相続人の預貯金との区別がつかなくなってしまったりする可能性があります。
代表相続人がお金を使い込んだとしても、金融機関に責任を追及することはできません。そのため、代表相続人を選ぶ際は、受け取ったお金を確実に分配してくれる信頼できる人を選ぶようにしてください。
代表相続人は、役所や金融機関に出向いてさまざまな手続きを進めることになります。役所や金融機関の窓口が開いている時間は限られているため、平日の日中に対応できるなど時間に融通が利く人でなければ、円滑に手続きを進められません。日中フルタイムで働いている人や、高齢で動き回るのが難しい人は、代表相続人には向いていないでしょう。
代表相続人を選ぶ際は、日中でも時間に融通が利く人を選ぶようにしてください。
手続きごとに異なる代表相続人を選んでもよい
代表相続人の役割はひとつだけではありません。手続きごとにふさわしい代表者がいるのなら、手続きごとに異なる代表相続人を選んでも問題ありません。
たとえば、妻が納税通知書の受け取りについての代表相続人、長女が預貯金の払い戻しについての代表相続人という形で、各相続人が代表相続人の役割を分担することもできます。
預貯金の払い戻しについては、金融機関の窓口が開いている平日に対応できる人、不動産の相続登記については、不動産の近くに住んでいる人を代表相続人にすると、手続きをスムーズに進められるでしょう。
すべての手続きを1人の相続人が負担すると、代表相続人が不満を感じる可能性もあります。遺産相続を円満かつスムーズに進めるには、代表相続人を分けることも検討してみるとよいでしょう。
相続放棄した人は代表相続人にはなれない
代表相続人は、「相続人」の代表者です。相続放棄して相続人でなくなった人や、そもそも相続人ではなかった人を代表相続人とすることはできません。
相続放棄した人は、相続開始のときから相続人ではなかったことになります。万が一、代表相続人に選ばれた人が相続放棄してしまったときには、すぐに他の相続人を代表相続人に選び直してください。役所に代表相続人としての届け出をしている場合には、役所への報告も忘れないようにしましょう。
遺産分割協議書に代表相続人を記載する
遺産分割協議書を作成する際には、誰が代表相続人になるのかを記載しておきましょう。遺産分割協議書は、相続財産の分け方や割合について相続人全員が同意した内容を記載した書面です。
金融機関で預貯金の払い戻しを受ける際には、遺産分割協議書や戸籍謄本などを金融機関に提出する必要があります。遺産分割協議書に代表相続人の名前を記載しておくことで、代表相続人が金融機関の窓口で払い戻しの手続きをする際に、円滑に進めることができます。
相続税の申告手続きにおいても、遺産分割協議書に代表相続人の記載があれば、金融機関から払い戻しを受けた金額に他の相続人の預かり金も含まれていることを説明しやすいでしょう。金融機関からの払戻金を代表相続人として受け取ったものと証明できない場合、全額を代表相続人が相続したものとして扱われたり、他の相続人への分配が代表相続人からの贈与とみなされたりする危険性もあります。
まとめ
代表相続人の選任は、必須の手続きではありませんが、相続手続きをスムーズに進めるには代表相続人を上手く活用するとよいでしょう。
なお、代表相続人は、手続きをスムーズに進めるために選ぶもので、代表相続人が他の相続人より立場が上になったり、遺産を多くもらえたりするわけではないことを、相続人全員が認識しておきましょう。
遺産相続の手続きを進めるうえでは、専門家のサポートを必要とされる場面が多くあります。代表相続人の選任を含め、遺産相続の手続きに不安があるときは、相続を専門とする税理士に相談するのがおすすめです。
税理士に相談することで、提携する弁護士や司法書士など他の専門家を紹介してもらうこともできますので、遺産相続の手続きでお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。



