感染症対策の基本を思い出して

私たちは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の経験を、今後どのように生かしていったらいいのでしょうか。
手洗いや手指消毒、マスクなど、最近はどうしていますか。換気を忘れていませんか。具合が悪いときに、出勤などしていないでしょうか。こうした基本的なことを、いま一度思い返してみてください。
手洗いや手指消毒の目的は、汚れや付着菌などの要因を取り除くことです。目に見えて手が汚れているときは、流水石けんで洗う。目に見えて汚れていない場合は、アルコール手指消毒を行うというガイドラインがあります。
流水石けんによる手洗いは、しっかり15秒くらいこすり合わせてください。洗い流して拭き取るまで30~40秒くらいかけるのが正しい方法です。アルコールは、たっぷり手に取って乾くまで擦り込みます。液体は指の間からこぼれ落ちるくらいの量、ジェルタイプでは500円玉大と言われています。
マスクや換気の習慣も忘れずに

次にマスクです。マスク着用の目的を振り返ってみてください。自分が何らかのウイルスを持っている場合、それを会話や咳で飛ばさないため。もう一つは、周囲に飛んでいるかもしれないウイルスを吸い込まないためでした。
マスクを着用している人の場合、着用していない人と比べて、新型コロナにかかる確率は0.84倍であり、マスク着用の有効性が認められます。感染ピーク時、あるいは感染者数が増え始めたときは、積極的にマスクを使ってください。特に、医療機関に行く際や、混み合う電車に乗る際は注意が必要です。
換気も大切です。窓を開閉できる施設では、定期的に窓を開ける習慣が必要です。空気中に浮遊する微粒子の中には、長い間生き続けるウイルスがいて、大きさは0.1~1ミクロン。新型コロナで話題になったエアロゾルが少し大きくて1~5ミクロン。これも一定時間漂います。咳やくしゃみで飛び出した飛沫は5ミクロン以上で、空気中を浮遊することなくすぐに落ちてしまいます。
呼吸器感染症の多くが、飛沫感染や接触感染によって発症します。飛沫よりも細かい粒子に対して有効となるのが換気です。換気の習慣化は、未知の感染症対策にも有効だと思っています。
釜萢先生からも「封じ込めが重要」というお話がありました。具合が悪いときに出勤や登校をしないことが感染拡大を防ぐ第一歩になるのです。
可能な方は積極的なワクチン接種を

日本赤十字社の献血ルームで行われた新型コロナウイルスの抗体保有割合の調査データ*1があります。2022年の第1回調査では28.7%と低い数字でしたが、徐々に大きくなり、第8回調査で64.5%に達しました。およそ3人に2人が新型コロナに感染した経験があるということになります。
年齢別に見ると、16~29歳の4人に3人ほどが抗体を持っている。つまり若い人がコロナにかかっていることを表しています。高齢者は死亡に至るリスクが高い一方、若い人の大半はかかっても重症化することが少ないせいか、気楽に捉えている方が多いように感じられます。
厚生労働省によるワクチン接種回数調査*2によると、21年4月以降の初回接種では、全世代で80.4%の接種率でした。65歳以上で見ると93.1%。ところが、2回目以降は、特に総接種率が大きく減少しています。
23年9月に開始されたオミクロン株対応ワクチンに限って見ると、総接種率は22.7%、65歳以上は53.7%に低下。重症化や入院者数の増加は、ワクチンを接種しなくなったことが関係していると指摘する声もあります。
オミクロン株以降、ウイルスは変異を繰り返し、2023年10月からは「JN.1」、そして24年4月からは「KP.3」が現れました。65歳以上の方や重い基礎疾患のある60〜64歳の方を対象に、24年10月1日から新型コロナワクチンの定期接種が始まります。接種するのはJN.1対応のワクチンですが、従来のワクチンよりKP.3系統にも有効性が期待できるとされています。
新型コロナワクチンの接種は、インフルエンザや肺炎球菌ワクチンと並んでB群疾病の定期接種となりました。新型コロナワクチン接種は交付金で5割程度カバーされ、自己負担は最大7,000円。補助金は自治体によって違いますが、自己負担額は2,000円程度となる見込みです。
ワクチン接種はあくまで本人の意思に基づくものですが、可能な方はぜひ受けていただきたいと思います。
*1 厚生労働省「第8回献血時の検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有割合実態調査」(令和6年3月調査)
*2 厚生労働省「新型コロナワクチンの接種回数について」(令和6年4月公表)
すがわら・えりさ/1983年日本赤十字社医療センター入局。2001年感染管理認定看護師取得。09年より日本環境感染学会評議員。16年より東京医療保健大学大学院教授。
