パネル討論
青い地球の物語をつないでいくために
島村 琢哉
AGC取締役兼会長
旭硝子財団理事長
まだ大丈夫。私たちが漠然とそう思い目をそらしているうちに、地球環境は後戻りができないほど損なわれようとしている。どうすれば時計の針を戻せるのか。それを話し合うパネル討論が「朝日地球会議2021」で行われた。

旭硝子財団が、世界の有識者への調査をもとに毎年公表している「環境危機時計」。その針が示す時刻は、今年も大きな改善は見られなかった。それに加えて、島村琢哉理事長は、一般の日本人の危機意識は「かなり不安」の領域にあるものの、専門家のそれとは隔たりがあることに懸念を示す。「コロナパンデミックのような身に迫る変化がなければ切実な問題とは捉えにくいのだろう。情報の伝え方ももっと工夫する必要がある」濱川明日香さんは、自身がバリ島で営むエコホテルを例に挙げ、「ここでは何かを我慢しなくても、普段の暮らしがエコにつながる。そのように構造や仕組みを変えることが大切では」と提起し、伊沢拓司さんは「問題を知るというだけでも最初の一歩。踏み出さないよりは、小さくても動くことが重要だと思う」と語った。
「今の環境をつくり出したものは人間のエゴ。しかし、遅ればせながらこのままでは自分たちの社会そのものが持続できないと気付く人が増え、変化の兆しは現れている。次世代の主役である若い人たちに、考えるヒントやきっかけを与えることが私たち世代の責任だと思う」。島村理事長の言葉は、参加者とこの討論を視聴した人たちすべての思いだろう。
- 【環境危機時計とは】
- 旭硝子財団が、世界の研究機関、政府・自治体、民間などの環境問題に関する有識者を対象とするアンケートの中で、環境問題に関して抱く危機意識を時刻に例えてもらったもの。深夜0時は、もう今までと同様な生活ができなくなる時を意味している。
2021年の結果から
調査を開始した1992年時点では8時前だったものが、近年は「極めて不安」を示す9時台後半を指し続けている。今年は米国のパリ協定復帰などの影響か8年ぶりに前年より5分ほど改善したものの、依然として深刻な状況は変わらない。
昨年からは日本の一般生活者にも同様のアンケートを行っているが、一般生活者も「かなり不安」に感じているものの、有識者に比べると危機感は小さい。若い世代の危機意識が大人世代より低いことが気になるが、島村理事長は「SDGsに関する回答を見ると社会課題に対する感性は鋭い。彼らに期待したい」と語っている。
青い地球の物語をつないでいくために

私たちはコロナパンデミックを通じて、社会の課題は単一に存在するのでなく、経済や人権など多くの問題とつながっていることを痛感しました。地球環境問題においてもそれは同じです。大切なのは、私たち一人ひとりが普段の生活のなかで感度を上げ、問題の存在に気づくこと。そして、共感の輪を広げ一緒に取り組む仲間を見つけることです。コロナ禍は私たちに「当たり前」の大切さを気づかせてくれました。環境への意識や行動にも変化が現れた人が多いという旭硝子財団の調査結果は、この状況下でのわずかな希望だと考えています。
環境危機時計の示す時刻を見ると、一般の方々の危機意識はまだそれほど高くはありませんが、世界ではすでに国土が水没しようとしている国もあります。一人ひとりにできることはわずかでも、みんなで一緒に取り組むことで、この地球の物語を次世代へつないでいけたらと願っています。
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