特別講演
脱炭素社会実現に向けての取り組み
北村 暢康
サントリーホールディングス
サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ推進部長
企業理念の追求そのものがサステナビリティ経営

サントリーの創業者・鳥井信治郎の言葉や考え方は、今でも当社のDNAとして引き継がれています。「やってみなはれ」は、お客様や社会に新たな価値を提供するため、新しいことに積極果敢に挑戦しようという行動基準です。そしてもう一つが「利益三分主義」という価値基準です。事業で得た利益を、自社の成長への再投資に充てるだけでなく、取引先に還元し、社会への貢献にも役立て、広く世の中とも分かち合う。そうすることで共に繁栄したいという思いが込められています。
創業の精神を受け継ぎながら制定したのが、企業理念「人と自然と響きあう」です。私どもは、水や農作物という自然の恵みを、清涼飲料やお酒などの商品という価値に変え、人々の生活や社会と接点を持っています。自然と人・社会を単につなぐだけでなく、共に成長して響きあう存在でありたいと願っています。当社にとっては、企業理念の本質の追求そのものがサステナビリティ経営であると考えています。
自然環境や社会と一体となって企業経営を進めるためには、企業理念に基づくマテリアリティ(重要課題)を特定したうえで、中期あるいは単年度の目標を設定し、その実行に向けた施策を立案し、その投資額を経営の予算の中に盛り込む。そして、実行、進捗評価、改善・継続実施などのPDCAを回していく。こうした社内のマネジメントシステムが、世の動きに連鎖した形で必要になります。
当社でも、2019年にサステナビリティに関する7つの重要テーマを定めました。
2030年までに自社拠点での温室効果ガス排出量を50%削減

7つのテーマの中で目下精力的に取り組んでいるのが、気候変動対策です。2030年には、自社工場や事業所などで熱・蒸気や電力の使用による直接排出は50%削減、バリューチェーン(開発や調達、製造、販売などを含めた一連の活動)全体からの排出は30%削減と、いずれも2019年起点での目標を設定しています。そして2050年には、バリューチェーン全体での排出実質ゼロとすることをビジョンとして掲げています。
まずはエネルギー使用量の削減、いわゆる省エネに日々の現場改善などで地道にしっかり取り組みつつ、使用するエネルギーそのものについては、温室効果ガスを排出しないエネルギーへの転換を図ります。具体的には、燃料については化石由来のものからバイオマス等の利用へと移行を進めています。再生可能エネルギー由来の電力については、日本・米州・欧州の自社生産研究拠点で2022年中に100%再生可能エネルギーに切り替えていきます。これらを含め、環境負荷の少ない製造プロセスの開発やエネルギー転換など、2030年までに設備投資含め1000億円規模の取り組みを進めます。
今年5月には、長野県大町市に「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」が稼働しました。工場内に再生可能エネルギーで発電する設備を導入するなどして、“CO2排出量実質ゼロ工場”を実現しています。
サントリーグループでは、自社拠点排出については事業単位で削減計画のロードマップを策定し、中期そして年度単位で投資を計画して、グループ単位でマネジメントする枠組みを進めています。また、炭素税の本格的導入を見越して、社内炭素価格(ICP)を導入しました。今後は削減量を金額換算のうえ議論するなど、温室効果ガス削減推進の一環として活用していく予定です。
連携と共創で「人と自然と響きあう」社会へ
バリューチェーン全体での取り組み事例として、ペットボトルリサイクルを挙げさせていただきます。我々は2019年に「プラスチック基本方針」を定めました。昨今、世界的な環境課題となっているプラスチックですが、我々の生活に多大な貢献をしている貴重な資源と位置付け、リサイクルを中心に省資源化を図っていくことが大事だと思います。2030年までには、サントリーグループが使用する全てのペットボトルの原料を、リサイクル素材あるいは植物由来素材のみにして、化石由来原料の使用をゼロにするという目標を掲げています。
リサイクルを推進する技術では、2018年に「FtoPダイレクトリサイクル」という世界初の技術を開発しました。より効率的なリサイクル工程を実現し、化石由来原料100%で作った材料と比べて60%以上のCO2排出の削減が可能になりました。
また、リサイクル訴求をメインにしたテレビCMを制作・オンエアしました。飲んだ後にフォーカスし、手軽にリサイクルして頂きたいというメッセージを発信したものです。
脱炭素の社会の実現には、様々な場面で連携と共創が必要です。行政とは社会インフラ・法制度の整備を推進し、生活者の皆さんとは商品を通じて活動の輪を大きくして、お取引先様などの企業とは志を共有していく。国境や組織の垣根を越え、知恵を出し合い共に創る共創と、力を合わせて共に汗をかく連携や協働が必要になります。
「水と生きる」を社会と約束し、「人と自然と響きあう」を理念に掲げる企業として、私どもサントリーは持続可能な社会の実現に向け、これからも共に創り共に行動すべく、率先して挑戦を続けてまいります。
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