英語の楽しさ伝える准教授の出前授業
「Let me go over today’s agenda The first topic is PPAP!」
今年6月中旬、大阪市天王寺区にある府立夕陽丘高校のヴィオーラホール。大阪教育大学・箱﨑雄子准教授による英語の講義が始まった。
ジャズボーカリストの経験がある箱﨑准教授。開始早々、世界的にヒットしたピコ太郎の曲「PPAP」の歌詞を音読すると、聴いていた高校1年生320人は一気に引き込まれた。
これは「発音の基礎 これだけで英語らしく聞こえる」と題した同大の出前授業での一コマ。39の府立高校と連携する「府立高校教職コンソーシアム」事業の一環だ。
歌ったり、手拍子を打ったり。箱﨑准教授は、英語のフレーズを音楽に乗せた学習法「チャンツ」を使いながら、文中のどの語を強く読むかを示す「文強勢」の原則や、リズムの大切さを説いていく。
「平坦な日本語と違って、英語はアクセントの強弱が規則的に繰り返されているのがわかるかな?」
「ピコ太郎の曲は、『裏拍』を上手に使って、英語らしいリズムになっています。これが世界ではやった理由だと思う」
英語音声学の専門的内容にもかかわらず、快活な語り口で、生徒たちの理解を深めていく。45分の講義が終わると、みな、「楽しく学べた」と口々に話した。「高校生でも飽きないように工夫しました。文強勢やリズムを学ぶことは、スピーキング力だけでなくリスニング力の向上にもつながります」と、箱﨑准教授は言う。講義の後、夕陽丘高校の教員たちの間では、「これから英語の授業の冒頭で、1分間の音読を取り入れたらどうか」などの意見が交わされた。
教員志望の高校生 夢膨らませる交流
大阪府教育長を4年務めた経歴を持つ中西正人理事
「府立高校教職コンソーシアム」は、将来の優れた教員を育てるために、大阪教育大学が旗を振り、2014年に発足した。同大は、戦前から教員養成において高い評価を得てきた歴史を持つ。前述の出前授業のほかに、キャンパス体験ツアーや、作文コンクールなど、加盟校とさまざまな交流プログラムを展開している。
「これまで高校教育と大学の学びには距離があり、とくに教員志望の高校生は、大学との接点がほとんどありませんでした。交流プログラムを通して、『教員になること』を具体的にイメージしてもらえれば」と、構想から深く関わった同大の中西正人理事は話す。
最も力を注ぐのが、教員を志す高校生向けの育成プログラム「教師にまっすぐ」だ。4カ月間にわたって、参加生徒約60人に、大学の模擬授業や、「理想の先生像」についてのグループワークを実施。教育をテーマにした研究発表会も高校生自身が行う。中西理事によると、「昨年のプログラムに参加した高校生の約8割が、『教師になりたい気持ちが強くなった』と答えてくれました」
また、交流プログラムを支える現役学生たちの存在も大きい。コンソーシアム加盟高校から同大に進んだ約100人が「大教大キューピッド」を結成。母校を訪問して大学生活を紹介したり、オープンキャンパスに後輩を招き案内したりする。「大学生と触れ合えてうれしかった」といった高校生の感想が多く寄せられているという。
高校教員も交流プログラムを歓迎する。天王寺キャンパスでは、定期的に、若手教員向けに生徒指導や授業力向上をテーマにした教師塾を開いている。
未来を担う人材 今こそ育成
出前授業に積極的に参加する高校生たち
約100人の学生からなる「大教大キューピッド」
教員志望の高校生を、大学で立派に育てて、高校の教育現場へ送り返す――。大阪教育大学を中心に生まれるこの循環を、中西理事は「学びの架け橋」と呼ぶ。
「少子化や教員の長時間労働の問題などで、教員志望者が減っている今こそ、我々は次世代の教育を担う人材を育てなくてはなりません。高校生のみなさんには、自分の生き方が次の時代を作っていくという気概を持ってほしい。架け橋を強靭にしていくのは、高校生のみなさんの力なのです」

