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遺産分割

最終更新日:2024.10.31

別受益とは?
該当するケースや
生前贈与の持ち戻し計算方法、
相続対策を解説

特別受益とは?該当するケースや生前贈与の持ち戻し計算方法、相続対策を解説

このコンテンツでわかること

  • ■ 特別受益の概要
  • ■ 特別受益に該当するケース・該当しないケース
  • ■ 特別受益の持ち戻しの計算方法
  • ■ 特別受益が相続トラブルに発展しないための対策

被相続人(亡くなった人)に複数の相続人がいる場合は、不満が出ないよう公平に遺産分割したいところです。

しかし、相続人の中に私立大学の医学部への進学や海外留学など、高額な教育費を1人だけ特別に負担してもらっていたり、マイホーム購入時に援助を受けていたりするなど、実質的に被相続人から生前に財産をもらっている人がいる場合もあります。

このような特別な利益に繋がる贈与を「特別受益」といい、「遺産の先もらい」にあたるため、援助を受けていない相続人は不利益となります。そのため、相続人同士の公平性を図るために特別受益があるときは、特別受益を相続財産に持ち戻して遺産分割を行うことができます。

今回は、特別受益にあたる生前贈与について解説します。どのようなケースが特別受益にあたるのか、生前贈与を検討している方だけでなく、すでに生前贈与を受けた方もぜひ参考にしてください。

特別受益とは

特別受益とは、生前贈与や遺贈(遺言によって財産を渡すこと)、死因贈与(自身の死亡を条件に他の人へ財産を渡すこと)によって、一部の相続人だけが受けた特別な利益のことをいいます。特別受益は、遺産分割において必ず考慮しなければならないものではないものの、特別受益を受けていない相続人から「不公平だ」と不満が出た場合には、相続財産に持ち戻して遺産分割する必要があります。

たとえば、相続人が子供A・B・Cの3人で、遺産が1億2,000万円、子供Aが住宅購入資金の援助として3,000万円を被相続人から生前に受け取っていた場合、3,000万円を遺産に持ち戻して、1億5,000万円を相続人3人で等分します。

このケースでは、1人あたり5,000万円を取得する計算になりますが、子供Aは生前に3,000万円を受け取っているため、相続のときに受け取る遺産は子供Aが2,000万円、子供Bと子供Cは5,000万円ずつとなります。

では、どのようなケースが特別受益にあたるのか、具体例を挙げて解説します。

特別受益に該当するケース

特別受益に該当するケースは、被相続人から相続人が婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた場合です。

相続人に対する高額な生前贈与や援助

特別受益は、被相続人と相続人の間で行われた贈与が対象となります。たとえば、祖父母から法定相続人ではない孫に対する生前贈与は特別受益に該当しません。

結婚資金

一般的に、結婚持参金や支度金などは特別受益にあたると考えられますが、結納金や挙式費用は儀礼的なものであることから、特別受益には該当しません。

また、婚姻後の生活を営むにあたり、子供が親から家具、寝具、家電製品などの日常生活を営むのに必要な日用家具の贈与を受けた場合や、それらを購入するための金銭の贈与を受けて、実際に贈与された資金を購入に充てた場合であれば扶養義務の範囲内と考えられ、特別受益には該当しません。

大学などの学費

一般的に、大学や大学院などの高額な学費は、特別受益に該当するとされていますが、被相続人の生前の資産状況や所得、社会的地位、一家の教育水準によっては特別受益に該当しないとされるケースもあります。特別受益にあたる金額の明確な線引きはありませんが、私立大学の医学部や海外留学など、高額な学費は特別受益にあたると考えてよいでしょう。

居住用建物の生前贈与・遺贈

自宅の敷地または建物を生前贈与や遺贈した場合も、生計の資本としての贈与であるため、特別受益に該当します。

しかし、2018年の民法改正により、配偶者に居住用不動産を生前贈与した場合には、特別受益の持ち戻し免除の意思表示があったものと推定され、特別受益の対象外となりました。

特別受益の持ち戻し免除とは、被相続人が遺言書などに「生前贈与した財産の特別受益の持ち戻しについては免除する」旨を明記して意思表示をし、遺産分割の対象から特別受益を外して遺産分割するように相続人に依頼することです。

なお、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用財産または居住用不動産を取得するための資金の贈与を受けた場合に、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで贈与税を非課税とする「贈与税の配偶者控除」がありますが、これは贈与のみに適用され、遺贈には適用されません。

事業のための資金

被相続人の子供が新たに事業を開始するときの資金援助や、事業の後継者である子供への自社株式の生前贈与や低額譲渡なども特別受益になります。

たとえば、非上場会社の株式は経営権と直結するため、生前に贈与しておくことは安定した経営のために重要ですが、自社株式や事業用資産の贈与は特別受益に該当するため、持ち戻しの対象となります。たとえ特別受益の持ち戻し免除の意思表示をしたとしても、相続人に保障されている最低限の取り分である遺留分の計算においては特別受益も含まれるため、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

事業承継では、遺留分を有する相続人全員との合意の上、遺留分の計算から後継者に贈与等をした自社株式や事業用資産を除外する「遺留分に関する民法の特例」も活用できるので、贈与する前に税理士を交えて検討するとよいでしょう。

法定相続人以外に対する贈与

原則として、法定相続人以外の第三者への贈与は、特別受益に該当しませんが、相続人以外への贈与が実質的に相続人への贈与と同様の利益を相続人にもたらしている場合には、特別受益に該当するとみなされることがあります。

たとえば、相続人の配偶者に多額の贈与をしていた場合や、孫(相続人の子供)に対して多額の学費を援助していた場合などです。相続人の配偶者への贈与は実質的に相続人も利得するものであり、孫への学費の援助も、学費は本来であれば親が負担すべきものであることから、実質的に親である相続人の利益となっているためです。

生命保険の死亡保険金は特別受益に該当しない

死亡保険金(保険金請求権)は民法上、受取人固有の権利として扱われ、遺贈や贈与にあたらないとされているため、特別受益には該当しません。

ただし、死亡保険金がかなり多額で、その他の相続人の財産取得額と極端な差がある場合は、例外的に特別受益であると裁判所が判断を下した判例もあるので注意が必要です。

特別受益の持ち戻しを考慮した取得割合の計算方法

遺留分の侵害がある場合の持ち戻しの計算

一定の相続人には、必ず財産を取得できる遺留分が保障されています。遺言書や贈与契約書などによって、特別受益の持ち戻し免除の意思表示がされている場合でも、遺留分を侵害されているときは、遺留分侵害額請求をすることが可能です。なお、原則として持ち戻しの対象となる特別受益は相続開始前10年以内のものに限られます。

  • 相続財産:2,000万円

  • 相続人:被相続人の子供(長男、長女)

  • 特別受益:相続開始5年前、長男に1億円

  • 分割割合:1/2ずつ

  • 計算式

  • 分割の基礎となる相続財産額:2,000万円+1億円=1億2,000万円

  • 計算式

  • 各相続人の取得額:1億2,000万円×1/2=6,000万円

  • 計算式

  • 長男の取得額:6,000万円-1億円=▲4,000万円

長男は、被相続人から生前にもらっていた額が大きいため、相続で財産を取得できません。

  • 計算式

  • 長女の遺留分:1億2,000万円×1/2×1/2=3,000万円

長女の遺留分は3,000万円であるため、相続財産2,000万円を取得し、さらに長男に対して1,000万円を請求する権利があります。

※これは遺留分に関するものであり、遺留分を侵害しない限度で法定相続分以上の特別受益を受けた場合には(これを超過特別受益といいます)、超過分を請求することは出来ないとされているため注意が必要です。

特別受益が相続トラブルに発展しないための対策

一部の相続人だけが利益を得るような状況になると、相続開始後にトラブルが発生する可能性があります。将来、受贈者(贈与された人)が不利な立場にならないように、生前贈与するときは次の3点に注意しましょう。

家族の理解を得て贈与する

生前贈与するときは、受贈者以外の家族にも贈与する目的や理由を伝え、同意を得ることで、遺産分割でのトラブルを減らすことができます。

たとえば、配偶者の老後の世話をしてもらう対価として自宅購入資金を贈与する、長男に自宅を相続させる代わりに次男には開業資金を贈与するなど、生前贈与をする理由を明確に伝えることで、他の相続人も納得しやすいでしょう。

遺言書を作成する

遺言書には、特別受益を相続財産に加算せずに遺産分割をするように、「特別受益の持ち戻し免除」を記載しておくことができます。この意思表示があると、他の相続人は特別受益に不満があったとしても持ち戻しを主張できません。なお、生前贈与する理由を家族に話していない場合は、遺言書の付言事項に理由を記載しておくとよいでしょう。

ただし、遺言書に特別受益の持ち戻し免除の意思表示をしたとしても、遺留分の侵害があれば、贈与を受けた相続人は遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。遺留分は遺言よりも強い相続人の権利であるため、贈与をするときは遺留分も考慮に入れておくべきでしょう。

生命保険を活用する

生前贈与の内容から遺留分の侵害が避けられない場合は、生命保険の活用を検討するとよいでしょう。死亡保険金の受取人に特別受益者を指定しておけば、遺留分侵害額請求があったときに、死亡保険金を遺留分の返還に充てることができます。

死亡保険金における保険金請求権は受取人固有の権利で、死亡保険金は遺産分割の対象外であるためです。なお、あくまでも遺留分侵害額請求への対策であるため、極端に高額な保険金額にならないよう注意してください。

まとめ

特別受益は、遺産分割協議において、持ち戻さなくてもよいと相続人全員が合意していれば持ち戻す必要はありません。

特別受益を受けていない相続人が、相続財産に持ち戻して遺産分割して欲しいと考えていたとしても、遺言書に「特別受益の持ち戻し免除」の意思表示が記載されている場合は相続財産に含めずに遺産分割されます。

なお、特別受益の持ち戻し免除の意思表示があっても、特別受益を受けていない相続人は遺留分を主張できます。ただし、相続開始前10年よりも前の贈与については遺留分を主張することはできません。

特別受益は遺産の先もらいであるため、遺産分割の対象となりますが、特別受益は必ずしも相続税の計算対象になるとは限りません。相続税の計算対象になるのは、相続開始前7年以内の贈与や相続時精算課税制度による贈与など、相続税法で定められたものです。遺産分割と相続税の計算を混同しないように注意しましょう。

生前贈与を受けたものの特別受益に該当するかどうか判断できない場合や、高額な贈与を検討している場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

税理士 桑原 弾
  • この記事の監修者

  • 税理士 桑原 弾

昭和55年生まれ、兵庫県出身。
大学卒業後、税務署に就職し国税専門官として税務調査に従事。税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した知識」と「元国税調査官としての経験」の両輪を活かして相続税申告を実践している。

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