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遺産分割

最終更新日:2023.11.30

当利得返還請求とは?
使い込まれた財産の請求方法と
時効・注意点について

不当利得返還請求とは?使い込まれた財産の請求方法と時効・注意点について

このコンテンツでわかること

  • ■ 不当利得返還請求の概要
  • ■ 不当利得返還請求の要件
  • ■ 不当利得返還請求できるケース・具体例
  • ■ 不当利得返還請求のやり方・必要書類
  • ■ 不当利得返還請求の消滅時効
  • ■ 不当利得返還請求を行うときの注意点

親の相続財産が想定よりも少なかった場合、一部の相続人が使い込んでいる可能性があります。たとえば、親が歩行困難な介護状態だったにも関わらず、銀行のATMで高額な預金を引き出しているようであれば、相続人による使い込みが疑われるでしょう。

親の介護費用や治療費などの支払いではなく、私的に使い込まれた財産は取り戻す必要があるので、不当利得返還請求で解決することができます。

今回は、不当利得返還請求のやり方や必要書類、不当利得返還請求できる具体例などをわかりやすく解説します。使い込まれた財産は確実に取り戻し、全員が納得できる遺産分割を実現しましょう。

不当利得返還請求とは

不当利得返還請求とは、法律上の原因がなく、不当に利益を得た人に対し、損失を被った人が返還請求する手続きです

たとえば、子供が親の預金100万円を無断で引き出し、自分の買い物に使い込んだ場合、親の同意(法律上の原因)がないことから、不当に利益を得た状況になります。親には損失が発生するので、不当利得返還請求によって子供から100万円を取り戻せます。

また、親が100万円を回収しないまま亡くなった場合、100万円分の相続財産が減少しているため、使い込んだ本人以外の相続人に損失が発生します。

本来得られるはずの財産が使い込まれていたときは、不当利得返還請求が可能かどうか、以下の要件をチェックするようにしましょう。

不当利得返還請求の要件

不当利得返還請求には以下の要件があり、すべて満たすと使い込まれた財産の取り戻しが可能になります。

  • 財産の使い込みに法律上の原因がないこと

  • 財産を使い込んだ人が利益を得ていること

  • 財産の使い込みで請求者に損失が出ていること

  • 利益と損失に因果関係があること

では、各要件の具体的な内容をみていきましょう。

財産の使い込みに法律上の原因がないこと

親の相続財産が使い込まれていた場合、まず法律上の原因を確認する必要あります。たとえば、生前贈与は法律上の原因になるため、贈与する人・贈与を受ける人の間で贈与契約があれば、不当利得には該当しません。

ただし、生前贈与は贈与契約書の作成を必要としないので注意が必要です。実際には親の財産を無断で使い込んでいる場合でも、贈与されたものだと主張される可能性があるでしょう。

財産を使い込んだ人が利益を得ていること

不当利得返還請求をするときは、財産を使い込んだ相手が利益を得ていることも要件になります。親の財産を移転させて自分の預金を増やす、または車などの購入費に充てた場合は、自分の財産を使わずに得をしている状況なので、不当利得に該当します。

一方、親の介護費用や治療費などに充てている場合、相手の利益にはなっていないため、不当利得返還請求はできません。

財産の使い込みで請求者に損失が出ていること

不当利得返還請求で使い込んだ財産を取り戻す場合、請求者に損失が出ていることも要件です。損失がなければ請求する理由もないので、財産の使い込みにより、本来であれば相続できたはずの財産が減少し、損失が出ていることを証明しなければなりません。

相手に損失の発生を主張するときは、具体的な金額の提示も必要です。

利益と損失に因果関係があること

不当利得返還請求するときは、利益と損失の因果関係が必要です。相手が利益を得ている場合でも、請求者の損失と無関係であれば不当利得返還請求はできません

不当利得返還請求できるケース・具体例

不当利得返還請求は四つの要件をすべて満たすことが条件なので、具体例として以下のようなケースが対象になります。

ただし、相手が返還に応じる財産は現存利益が原則となっています。不当利得がそのまま残っていればすべて返還請求できますが、半分を使い切っているようなケースでは、残りの半分しか請求できないので注意してください。

被相続人が自宅保管していた現金を無断で使っている

被相続人が自宅保管していた現金を無断で持ち出し、自分の借金返済などに使ったときは不当利得返還請求の対象になります。

現金持ち出しの証明は難しいかもしれませんが、金庫保管だった場合は保管額や入出金記録を付けている可能性があるので、帳簿類やメモなどを調べてみましょう。

被相続人の預金を無断で引き出している

被相続人の預金を無断で引き出し、私的に使っていたときは不当利得返還請求ができます。親が介護状態や認知症になっている場合、同居親族に通帳やキャッシュカードを預けているケースが多いので、使い込みされる可能性があります。

相手が親の介護費用に充てたと主張するときは、介護用品を購入した際の領収証や、介護記録などを見せてもらいましょう。

被相続人の生命保険を無断で解約している

被相続人の実印を使える状況であれば、委任状を偽造して生命保険を解約し、解約返戻金を受け取るケースがあります

保険会社は必ず契約者の意思表示を確認しますが、同居親族から「もっとよい保険に乗り換えるため」などの理由で納得させられている可能性も考えられます。

被相続人の株式を無断で売却している

株式はネット上で取り引きできるため、親に無断で売却すると不当利得返還請求の対象になります。親が病院に入院していた時期や、介護施設に入居していた時期に株式の売却があれば、不当利得が疑われるでしょう。

賃貸物件の家賃を無断で使い込む

賃貸物件の家賃などを親に無断で使い込んだ場合も、不当利得返還請求の対象になります。

親が高齢になると、家賃管理用の預金通帳を同居親族などに預けているケースがあるので、高額または頻繁な出金があれば、不当利得の可能性があります。

被相続人名義の不動産を無断で売却する

親の実印を使える状況であれば、不動産の無断売却も不可能ではありません。不当利得返還請求をするときは、売買契約書などの証拠を必ず調べてください

被相続人のゴルフ会員権を無断で売却する

ゴルフ会員権の無断売却も不当利得返還請求の対象になります。親がゴルフクラブの会員だったかどうかわからないときは、会員規約や定期送付される会報などを調べてください

不当利得返還請求のやり方・必要書類

不当利得返還請求のやり方は以下の流れになっており、まず証拠収集からスタートします。訴訟で解決するケースもあるので、必要書類も漏れなく準備しておきましょう。

不当利得の証拠集めと損失額の計算

不当利得返還請求するときは、使い込みの証拠を集めて損失額を計算します。以下の書類などがあれば不当利得を証明できるので、可能な限り多くの証拠を集めましょう

  • 預金口座:預金通帳や口座の取引履歴、解約請求書の控え

  • 不動産:売買契約書や登記事項証明書

  • 生命保険:解約や保険契約変更の通知など

  • 株式などの有価証券:取引残高報告書

  • ゴルフクラブの会員権:退会通知など

相手が利益を得ていたかどうかや、法律上の原因も調べる必要があるので、病院の診断書や介護日誌、贈与契約書などの有無も確認しましょう。

証拠がすべて揃ったら、具体的な損失額を計算しておきましょう

内容証明郵便の送付

不当利得返還請求の準備が整ったら、相手に内容証明郵便を送付します。内容証明郵便に法的効力はありませんが、不当利得返還請求の内容や相手が受け取ったことを郵便局が証明してくれます。

また、内容証明郵便の送付は相手への催告になるので、消滅時効のカウントを中断させる効果もあります。文面の書き方に迷ったときは、弁護士にサポートしてもらうとよいでしょう。

請求相手との協議

内容証明郵便で催告し、相手から連絡があったときは、不当利得返還請求について当事者間で協議します。相手が不当利得を認めたときは、返還額や返還方法などを決めた合意書を作成します。

合意書どおりに不当利得が返還された場合は、遺産分割協議をやり直します。

不当利得返還請求訴訟の提起

相手が不当利得の返還に応じないときは、不当利得返還請求訴訟を提起してみましょう。

訴訟を起こすときは訴状や登記事項証明書などの証拠、発行から3カ月以内の戸籍謄本などが必要になるので、自分で準備できないときは弁護士に依頼することをおすすめします。

不当利得を立証できれば裁判所が相手に対して返還命令を出し、判決に従わなかったときは強制執行による財産差し押さえも可能になります。

不当利得返還請求には消滅時効がある

不当利得返還請求には以下の時効があるため、一定期間を過ぎると請求権が消滅します。

  • 財産の使い込みを知ったときから5年

  • 財産が使い込まれたときから10年

財産の使い込みがあったときは、まず時効の起算点を明確にする必要があります。内容証明郵便を送付すると時効の完成を6カ月間延長できますが、適切な文面で催告しなければなりません。不当利得返還請求の時効が迫っているときは、弁護士に対処を任せた方がよいでしょう。

不当利得返還請求を行うときの注意点

不当利得返還請求には以下の注意点があるため、個人対応には限界を感じるかもしれません。使い込みの立証はかなり難しいので、困ったときは弁護士にサポートしてもらいましょう。

相手の悪意を証明しにくい

不当利得返還請求で使い込まれた財産を取り戻す場合、まず相手の悪意を証明しなければなりません。「贈与されたと思っていた」「自分の財産だと思い込んでいた」などの主張があれば、証拠のない反論は聞き入れてもらえないでしょう

証拠の入手が難しい

同居親族が親の財産を使い込んでいる場合、同居家族が重要な証拠を隠す可能性があります。証拠がなければ訴訟も難しくなるので、相手が情報開示に応じないときは、弁護士の職権調査となる弁護士照会制度を利用してもらいましょう。

また、不当利得返還請求訴訟を起こす場合は、職権調査嘱託の申立てにより、相手の預金口座も調査してもらえます。

相続税の申告期限に間に合わない可能性がある

相続財産の使い込みがあると、本来あるべき財産で遺産分割できないため、相続税申告に間に合わない可能性があります。相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10カ月以内」になっており、間に合わなかったときは税額軽減などの特例・控除も使えません。

申告期限に間に合わない場合、法定相続分どおりに分割したとみなす仮申告もできますが、修正申告の手間も増えます。期限後申告には加算税のペナルティもあるので、不当利得返還請求は少しでも早く解決するべきでしょう。

まとめ

相続財産の使い込みを法的手段で解決したいときは、不当利得返還請求を検討してみましょう。ただし、私的な使い込みではなく、被相続人の医療費や介護費用に充てているケースもあるため、思い込みで相手を追求すると親族関係が悪化します。

不当利得返還請求は相手の悪意や利益を立証しなければならないので、個人対応に限界があるときは、必ず弁護士に相談してください。使い込まれた財産が返還された結果、相続税が発生するようであれば、相続専門の税理士にも相談しておくとよいでしょう。

税理士 桑原 弾
  • この記事の監修者

  • 税理士 桑原 弾

昭和55年生まれ、兵庫県出身。
大学卒業後、税務署に就職し国税専門官として税務調査に従事。税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した知識」と「元国税調査官としての経験」の両輪を活かして相続税申告を実践している。

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