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遺産分割

最終更新日:2024.03.29

割相続とは?
分割方法ごとのメリット・デメリットと
トラブル例を紹介

分割相続とは?分割方法ごとのメリット・デメリットとトラブル例を紹介

このコンテンツでわかること

  • ■ 分割相続の概要
  • ■ 分割相続を決める方法
  • ■ 分割相続で発生しやすいトラブル
  • ■ 分割相続を行う際の注意点

被相続人(亡くなられた方)に複数の相続人がいる場合、「分割相続」で財産を分け合います。分割相続の考え方は鎌倉時代にルーツがあり、当時も一定範囲の親族が相続財産を分け合っていたので、現在の遺産相続とほぼ同じ方式です。しかし、農地の相続をめぐって複数の相続人が対立し、相続争いに発展するケースも多かったようです。

現代においても、不動産は相続争いの原因になりやすいので、主な相続財産が土地や家屋であれば、トラブルの回避策を考えておく必要があるでしょう。そこで今回は、公平に分割相続する方法や、分割相続の注意点などをわかりやすく解説します。

分割相続とは

分割相続とは、相続人全員の話し合いで特定財産の承継者、または相続割合を決める相続方式です。相続人が複数いる場合、被相続人の死亡と同時に相続財産が共有状態になるため、分割相続でそれぞれの相続分を決めなければ財産を自由に処分できません。

分割相続は基本的に法定相続分を目安としますが、相続財産が不動産に偏っているときは、以下の方法を検討してみましょう。

  • 現物分割

  • 換価分割

  • 代償分割

具体的な分割方法や、メリット・デメリットは以下を参考にしてください。

現物分割

現物分割とは、相続財産をそのままの状態で分け合う方法です。

たとえば、現預金を配偶者が相続し、長男が土地、長女が車を相続するようなケースが現物分割です。財産の性質を変えずに相続する方法なので、土地を分筆して複数の相続人が分け合う場合も、現物分割に該当します。

相続財産を現物分割するときは、以下のメリット・デメリットを考慮しておきましょう。

現物分割のメリット

現物分割によって相続財産を分けると、以下のメリットがあります。

  • 他の分割相続に比べて手続きがシンプル

  • 厳密な財産評価が不要

  • 財産の所有権が複雑化しない

財産を現物のまま相続すると、売却による換金や代償金の支払いが不要になるため、手続きがシンプルです。評価額が異なる財産を分割するケースでも、相続人全員が合意していれば、厳密な評価額計算は必要ないでしょう。

また、現物分割した財産は単独名義になり、土地や建物の権利が複雑化しないため、次回の相続が発生した際も、遺産分割協議がまとまりやすくなります。

現物分割のデメリット

相続財産を現物分割する場合には、以下のデメリットを考慮する必要があります。

  • 不公平な分割相続になる

  • 土地の分筆には高額な費用がかかる

  • 分筆した土地は評価額が下がる可能性がある

  • 土地を分筆できないケースがある

財産の評価額に大きな差がある場合、現物分割すると不公平が生じます。たとえば、不動産1億円と現金1,000万円では評価額に10倍の差があるため、公平な分割相続は困難です。

また、土地の分筆には少なくとも10万円程度の費用がかかり、分筆後は接道状況などが変わってしまうので、評価額が下がる可能性もあるでしょう。境界トラブルが発生している土地であれば、隣地オーナーと和解しない限り分筆はできません。

換価分割

換価分割とは、相続財産の土地や家屋などを売却し、売却代金を分割する方法です。現物ではなく現金の分割になるため、換価分割には以下のメリットやデメリットがあります。

換価分割のメリット

相続財産を換価分割する場合、以下のメリットがあります。

  • 公平に分割相続できる

  • 相続税の納税資金を確保できる

換価分割は現金を分配するため、法定相続分通りの公平な分割相続が可能になり、相続税の納税資金も確保できます。相続税には延納や物納の制度もありますが、要件が厳しくなっている上に納税額も高くなるので、現金一括納付できるメリットは大きいでしょう

換価分割のデメリット

換価分割には以下のデメリットがあるので、十分な検討が必要です。

  • 土地や家屋を失う

  • 売却コストがかかる

  • 売却価格が相場より低くなる可能性がある

  • 相続登記が必要

  • 譲渡所得税が発生する

換価分割は土地や家屋を失うので、被相続人の自宅を売却する場合、同居親族は新たな住居を探さなければなりません。不動産会社の仲介によって売却すると、仲介手数料などの売却コストもかかります。「相続税の申告期限までに売却したい」などの早く売りたい事情があるときは、相場以下の売却価格になる可能性もあるでしょう。

また、被相続人名義の不動産は売却できないため、換価分割するときは相続登記も必要です。不動産の売却によって利益が発生すると、譲渡所得税もかかるので注意しましょう。

代償分割

代償分割とは、代償金の支払いによって分割相続の不公平感を解消する方法です。

たとえば、長男が5,000万円の不動産を相続し、次男が現金1,000万円を相続した場合、長男が次男へ代償金2,000万円を支払うと、どちらも3,000万円ずつ相続したことになります。

代償分割するときは、以下のメリット・デメリットを理解しておきましょう。

代償分割のメリット

代償分割によって分割相続すると、以下のメリットがあります。

  • 公平に分割相続できる

  • 相続税を節税できる

  • 不動産を単独名義で相続できる

代償分割は各相続人の取得額が公平になるため、相続争いを防止できます。また、被相続人の自宅相続に小規模宅地等の特例を適用すると、敷地330㎡までの評価額を80%減額できるので、相続税の節税も可能です。

代償金を支払った相続人は不動産を単独名義にできるため、売却時に他の相続人の同意を得る必要もありません

代償分割のデメリット

代償分割には以下のデメリットがあるため、場合によっては相続税以外の税金も発生します。

  • 代償金の準備が必要

  • 代償金の額が決まりにくい

  • 贈与税や所得税が発生するケースがある

不動産などを取得する人が代償金を準備できなければ、代償分割は不可能です。また、代償金の額を決める際、不動産などの評価額を相続発生時と代償分割時のどちらにするか、相続人同士でもめてしまう場合もあるでしょう。

代償金の支払いは財産の移転になるため、遺産分割協議書に代償分割する旨を記載していなかった場合、税務署が贈与とみなす可能性もあります

元々自己所有していた不動産で代償した場合も、譲渡にみなされると譲渡所得税がかかるケースがあるため、遺産分割協議書の書き方に注意が必要です。

分割相続を決める方法

分割相続を決める方法は遺言書による遺贈、または相続人全員が参加した遺産分割協議です。それぞれ以下のような違いがあるので、相続が発生したときは必ず遺言書を探してください

遺言書による遺贈

遺言書による財産承継を遺贈(いぞう)といい、必ず遺言通りに分割相続しなくてはなりません。相続が発生したときは、以下の遺言書があるかどうか確認してみましょう。

  • 公正証書遺言:自宅や貸金庫などに正本や謄本が保管されている可能性あり

  • 自筆証書遺言:自宅や法務局に保管されている可能性あり

  • 秘密証書遺言:自宅に保管されている可能性あり

公正証書遺言は公証役場に原本が保管されており、相続人は検索サービスで閲覧できます。自筆証書遺言(法務局保管していない場合)と秘密証書遺言は検認が必要になるため、発見したときは開封せずに家庭裁判所へ提出してください

遺産分割協議による分割相続

遺言書がないときは相続人全員で遺産分割協議を行い、分割相続の内容を決定します。協議がまとまったら、全員の署名捺印がある遺産分割協協議書を作成しておきましょう。

なお、遺産分割協議がまとまらないときは、調停の申立ても検討することをおすすめします。家庭裁判所へ調停を申し立てると、調停委員を介して話し合いを進められるので、対立している相手と和解できる可能性があります

また、調停が不成立になると自動的に審判へ移行し、裁判官が一定の判断を下すため、分割相続を終結できるでしょう。

分割相続で発生しやすいトラブル

分割相続は以下のようなトラブルが発生しやすいので、相続全般のルールを理解しておく必要があります。被相続人に高額な借金がある場合でも、状況によっては相続放棄が認められなくなるでしょう。

遺産分割協議を開始できない

分割相続には複数の相続人が関係するため、以下のような理由で遺産分割協議を開始できない場合があります。

  • 相続人が全国に分散しており、遺産分割協議の日程が決まらない

  • 住所や連絡先がわからない相続人がいる

  • 海外在住の相続人がいる

  • 認知症の相続人がいる

全国各地に相続人がいると、遺産分割協議の日程調整が難しいでしょう。住所や連絡先がわからない相続人がいる場合、戸籍謄本と辿って現住所を調べるなど、膨大な時間がかかってしまうケースもあります。

また、海外在住の相続人は日本領事館に出向き、署名証明や在留証明などを取得しなければなりません。認知症の相続人が参加した遺産分割協議は無効になるため、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらう必要があります。

遺産分割協議が難航する

相続財産が不動産に偏っていると、遺産分割協議が難航する場合もあります。

たとえば、換価分割するために被相続人の自宅を売却したくても、高齢の配偶者が住んでいると同意してもらえない可能性があるでしょう。土地や家屋への思い入れは相続人ごとに異なるので、意見の対立から相続トラブルになってしまうケースも少なくありません。

特別受益や寄与分の主張がある

特別受益は高額な生前贈与などを指しており、相続財産の前渡しとみなされます。他の相続人が特別受益を主張すると、受益者の相続分を減らされてしまう可能性があるので、高確率で相続トラブルに発展するでしょう。

一方、相続財産の維持や、増加に貢献した相続人は寄与分を主張できるため、相続財産を多めに取得できます。ただし、寄与者以外の相続人は相続分が減ってしまうので、寄与分を認めてもらえるケースは滅多にありません

特別受益や寄与分の主張はトラブルになりやすいため、調停を申し立てなければ解決できない場合もあります。

資金不足で代償分割できない

代償分割で不公平な相続を解消したくても、代償金を準備できなければ実現不可能です。十分な資金があると思っていたところ、土地の評価額が想像以上に高くなっているケースは珍しくないので、周辺開発が進んでいる場合は要注意です。

土地の評価額は周辺環境に影響されやすいため、被相続人が購入したときは1,000万円程度でも、相続時には5~10倍程度になっている場合があります。代償分割するときは、まず不動産の評価額を正確に計算しておきましょう

不動産を無断で売却される

不動産の分割方法でもめてしまった場合、一部の相続人が自分の法定相続分だけを登記し、無断で売却するケースもあります。法定相続分の登記は権利の保存行為になるため、特に違法性はありません。

また、共有持分を買い取る業者もいるので、不動産を共有名義にした場合でも、一部の相続人が自分の持分だけを売却する可能性があるでしょう。

分割相続を行う際の注意点

被相続人の財産を分割相続するときは、以下の注意点を理解しておく必要があります。遺産分割協議がまとまらない場合は相続税が高くなり、不動産が凍結状態になる可能性もあるので要注意です

分割相続しなければ相続手続きを開始できない

分割相続をしなかった場合、相続手続きを開始できません。遺産分割協議書がなければ金融機関や法務局は相続手続きに応じてくれないため、相続人全員で話し合い、分割方法を決めておく必要があります。

相続財産が被相続人名義のままになっていると、第三者にも権利を主張できないので注意してください。

共有財産の売却には相続人全員の同意が必要

共有財産を売却したいときは、相続人全員の同意が必要です。分割相続が決まっていない場合、相続財産はすべて共有状態になるため、全員の同意がなければ家屋の解体や土地活用もできません

預貯金を無断で使い込む、または株式を売却すると、他の相続人から損害賠償請求される恐れもあります。

共有財産の維持コストが発生する

不動産には以下の維持コストがかかるため、共有状態になると、誰がいくら負担するかでもめてしまう場合があります。

  • 固定資産税

  • 都市計画税

  • 建物の修繕費 など

固定資産税と都市計画税は共有者全員に連帯納付義務があり、共有持分に応じた税額を負担しなければなりません。しかし、納税通知書は代表相続人だけに送付されるので、1人で税金を納めているケースも少なくはないでしょう。

代表相続人が固定資産税や都市計画税を滞納すると、他の共有者に請求されるので注意してください。建物の修繕費や雑草の除去費用についても、基本的には全員で負担する必要があります。

数次相続が発生すると権利関係が複雑になる

数次相続とは、分割相続がまとまらないうちに次回の相続が発生する状況です。

たとえば、遺産分割協議中に被相続人の子供が亡くなり、3人の孫に相続権が引き継がれると、権利関係者が2人増えてしまいます。

権利関係者が多くなるほど分割相続がまとまりにくくなり、さらに次の相続が発生すると、誰が何を相続するのかまったく決まらない状況になるでしょう。

相続税の特例や控除を適用できない

分割相続がまとまらない場合、以下の特例や控除を適用できないため、相続税が高額になります

  • 配偶者の税額軽減:配偶者のみ1億6,000万円、または法定相続分まで非課税になる制度

  • 小規模宅地等の特例:宅地の相続税評価額を最大80%減額できる特例

どちらも分割相続の確定と相続税申告が要件になっており、申告期限は相続開始を知った日から10カ月以内です。相続人が決まらないときは法定相続分で分割したとみなし、未分割の状態で申告できますが、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は適用できません。

なお、未分割の申告から3年以内に分割相続をまとめ、修正申告すると相続時に遡って特例・控除を適用できるので、納め過ぎた税金を還付してもらえます。

相続放棄や限定承認を認めてもらえないケース

相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになるため、土地や預貯金などをもらえなくなりますが、借金の相続も免除されます。ただし、遺産分割協議に参加したときや、相続財産を処分したときは単純承認が成立するので、家庭裁判所が相続放棄を受理してくれません

また、限定承認はプラスの財産の範囲内で借金を返済し、残りの返済を免除してもらう制度ですが、被相続人の預貯金などを使ってしまうと単純承認が成立します

単純承認の成立要件はあまり知られていないので、相続放棄や限定承認を検討するときは十分に注意しておきましょう。

日頃から相続人同士で連絡を取り合っておく

疎遠になっている相続人は分割相続に協力してくれない場合があるので、日頃から連絡を取り合っておきましょう。

ほとんど面識がない人との関わりは誰もが抵抗を感じるため、相続発生を伝えても、遺産分割協議に参加してくれない可能性があります。相続人が1人でも欠けていると、遺産分割協議は成立しないので注意してください。

遺産分割協議では譲歩も必要

相続財産には限りがあるので、遺産分割協議では譲歩も必要です。たとえば、被相続人の配偶者が高齢であれば、自宅を優先的に相続してもらうべきでしょう。また、被相続人を献身的に介護していた相続人がいる場合、寄与分を考慮しないわけにはいきません。

相続財産が不動産に偏っていると、分割相続がまとまりにくいので、意見が対立したときは譲歩を検討してください

まとめ

相続が発生すると親族同士が利害関係者になってしまうため、分割相続が難航するケースがあります。主な相続財産が不動産であれば、高確率で相続トラブルに発展するので、換価分割や代償分割を検討してください。

ただし、換価分割や代償分割は贈与税などがかかる可能性があり、大前提として不動産の評価額を正確に計算しておかなければなりません。分割相続がまとまらず、争いに発展しそうなときは、相続の専門家に相談してみましょう。

税理士 桑原 弾
  • この記事の監修者

  • 税理士 桑原 弾

昭和55年生まれ、兵庫県出身。
大学卒業後、税務署に就職し国税専門官として税務調査に従事。税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した知識」と「元国税調査官としての経験」の両輪を活かして相続税申告を実践している。

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