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遺産分割

最終更新日:2024.12.18

続人申告登記とは?
必要書類やデメリット、
注意点について解説

相続人申告登記とは?必要書類やデメリット、注意点について解説

このコンテンツでわかること

  • ■ 相続人申告登記とは
  • ■ 相続人申告登記の申出方法
  • ■ 相続人申告登記のデメリット

2024年4月1日から、相続した不動産の名義変更を行う相続登記が義務化され、それに伴って、相続人申告登記という新たな制度が創設されました。遺産分割協議がまとまらない場合や、不動産の所有者の相続人が非常に多く、相続登記に必要な戸籍謄本などの収集に時間を要する場合など、定められた履行期間内の相続登記が難しいときは、相続人申告登記の制度を利用することで、簡易な手続きで相続登記の義務を履行したものとみなされます。ただし、利用するにあたっては注意しなければならない点もあります。

今回は、相続登記や相続人申告登記について、制度のしくみや申出方法、デメリット、注意点などをわかりやすく解説します。

相続人申告登記とは

相続人申告登記は、相続登記の義務化に伴って新たに設けられた制度です。相続人申告登記の前提となる相続登記の義務化や、相続人申告登記のしくみをくわしく解説します。

相続登記の義務化の概要

相続登記とはどのような手続きで、相続登記の義務化によって私たちにどのような影響があるのでしょうか。

相続登記とは相続した不動産の名義を変更する登記手続き

土地や建物などの不動産には、所有権などの権利の保全や、不動産取引の安全と円滑化のために、不動産登記の制度が設けられています。これは、不動産登記簿に不動産の基本的な情報(所在や面積など)と権利に関する情報(所有者の氏名や住所など)を記録して、その登記記録を公開する制度です。不動産登記によって、不動産登記簿に権利に関する事項を登記することで、「この不動産は自分のものだ」と第三者に主張できるようになります。

「相続登記」とは、不動産を所有していた人が亡くなったときに、その不動産の登記名義人(登記簿上の所有者)を亡くなった人の名義から不動産を相続した人の名義に変更する登記手続きのことです。

これまで、相続登記は法律上義務付けられておらず、相続人の任意とされていました。また、登記手続きには手間と費用がかかることから、相続した不動産の登記をせずに長年放置されるケースも多くありました。相続登記がされないと登記簿謄本の所有者は亡くなった人のままとなり、不動産の現在の所有者がわからない事態が生じます。近年では、このような所有者不明の土地や建物が全国的に増え、周辺環境の悪化や公共事業の妨げなどさまざまな面で社会問題が発生しています。

相続登記の義務化により一定の期間内に申請しないと罰則の対象に

所有者不明の土地や建物の問題を解消するために、これまで任意であった相続登記が2024年4月1日から義務化されました。

これに伴い、2024年4月1日以降に相続が発生した場合、相続により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、法務局に所有権移転の登記(相続登記)を申請しなければなりません。通常、遺産分割協議が成立した日から3年以内となります。正当な理由がなく、この義務に違反した場合には、罰則として10万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。

なお、2024年4月1日より前に相続した不動産も、相続登記がされていないものは義務化の対象になります。この場合には、不動産を取得したことを知った日または2024年4月1日のいずれか遅い日から3年以内に相続登記をしなければなりません。

相続登記の義務化に伴い新設された制度

相続登記をするには遺産の分割方法を決める必要がありますが、相続登記の履行期間内に遺産分割協議がまとまらないこともあります。

そこで、相続登記の履行期間内に遺産分割協議を成立させることが難しい場合などに、相続人が簡易な手続きで相続登記の申請義務を履行できるしくみとして、「相続人申告登記」が新たに設けられました。相続人申告登記は義務ではありませんが、相続人は、遺産分割協議が成立していない段階でも、先に相続人申告登記をしておくことによって、履行期間内に相続登記の申請義務を果たしたことになります。

ただし、相続人申告登記をした後に遺産分割により所有権を取得したときには、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、改めて相続による所有権移転の登記(相続登記)を申請しなければなりません。

簡易に相続登記の申請義務を履行できる

このように、相続人申告登記とは、相続登記の義務化に伴って、相続登記の申請義務の履行期限が迫っている場合などに、その義務を簡易な手続きで果たすことができるように新設された制度です。

具体的には、相続人申告登記は、「登記簿上の所有者(所有権の登記名義人)が亡くなって相続が開始したこと」と「自らがその相続人であること」の二つを、相続登記の申請義務の履行期間内(不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内)に法務局に対して申し出ることで、申出を行った相続人は相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。

ただし、相続人申告登記をしたからといって、遺産分割協議が成立した場合の相続登記の申請義務を免れるわけではありませんので、注意してください。

相続人申告登記の利用が想定されるケース

ここで、2024年4月1日以降に相続が発生した場合に、相続人申告登記の利用が想定されるケースを確認しておきましょう。

3年以内に遺産分割協議が成立しないケース

相続登記の履行期限である3年以内に遺産分割協議が成立しない場合、相続登記の履行期間内に相続人申告登記の申出を行います(または法定相続分での相続登記を申請します)。そして、その後に遺産分割協議が成立したときは、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容に基づいて相続登記の申請を行います。

なお、相続人申告登記の後に遺産分割協議が成立しなければ、それ以上の登記申請は必要ありません。

過去の相続で登記をしていないケース

先祖代々の土地を相続登記しておらず、権利者が増えて権利関係が複雑となり、権利を有する人の調査をすぐには行えない場合には、相続人申告登記をしておくことで、過料を科されることを免れることができます。

相続人申告登記の申出方法

相続人申告登記をするには、不動産の所有者の法定相続人が、相続登記の履行期間内に、必要な戸籍の証明書(戸除籍謄本など)を添付して、自らが登記記録上の所有者の相続人であることなどを不動産を管轄する法務局に申出を行う必要があります。

相続人申告登記の手続きの特徴

相続人申告登記の手続きには、以下のような特徴があります。

  • 相続人が複数いる場合でも、特定の相続人が単独で申出を行うことができます。なお、他の相続人の分も含めた代理申出を行うこともできます。

  • 相続人申告登記は、相続人であることを登記するだけで、持ち分の割合までは登記されないため、必ずしも法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定する必要はありません。従って、申出においては申出をする相続人自身が被相続人の相続人であることがわかる相続人の戸籍謄本を提出することで足り、書類収集の負担が軽減されます。

  • 申出の手続きにおいて、押印や電子署名は不要です。

  • 相続人申告登記には登録免許税はかかりません。

相続人申告登記の必要書類と費用

相続人申告登記は、相続登記と比べて必要となる書類やかかる費用が少ないため、簡易に手続きできます。

必要な書類

相続人申告登記の申出に必要となる基本的な提出書類は、以下のとおりとなります。

  • 申出書(様式などは法務省ホームページに掲載)

  • 申出人が登記記録上の所有者の相続人であることがわかる戸籍の証明書(戸除籍謄本など)

  • 申出人の住所を証する情報(住民票など)※申出書に住民票上の申出人の氏名のふりがな(外国籍の方にあってはローマ字氏名)と生年月日を記載した場合は提出を省略できます。

  • 委任状(代理人が手続きを行う場合)

費用

相続人申告登記は、相続登記の申請と異なり、法務局への申出において登録免許税はかかりません。ただし、申出に必要となる書類を取得するには、発行手数料(戸籍謄本は1通450円、除籍謄本は1通750円、住民票の写しは1通300円程度)がかかります。

相続人申告登記にはデメリットもある

相続人申告登記のメリットは、こうした簡易な手続きで相続登記の申請義務を果たせることです。その一方で、相続人申告登記には次のようなデメリットもあります。

誰でも閲覧できる登記簿謄本に個人情報が記載される

相続人申告登記をすると、不動産登記簿に申出をした相続人の氏名や住所などが記録されます。登記簿謄本は誰でも法務局で閲覧できるため、登記簿謄本を見ることで相続人の氏名や住所などの個人情報を容易に把握することが可能になります。

つまり、相続人申告登記によって、登記簿謄本から相続の対象となった不動産や将来その不動産の所有者になることが想定される相続人を調べることができるため、登記簿謄本を閲覧した不動産業者などによる問い合わせや営業活動などが行われる可能性があります。

相続人申告登記だけでは不動産の売却などができない

相続人申告登記では、相続の対象である不動産について所有者の相続人であることが表示されますが、不動産の所有権を取得したことを登記するものではありません。従って、不動産を売却するには、遺産分割協議が成立した後に、相続登記によって不動産を取得した相続人の名義に変更する必要があります。

まとめ

2024年4月1日から相続登記が義務化されたことに伴い、相続人申告登記も新設されました。不動産の所有者の相続人は、この制度を利用することで、相続人の確定や遺産分割協議などの相続手続きを進めている途中でも、簡易な手続きで履行期間内に相続登記の申請義務を果たしたとみなされ、罰則の対象から外れることができます。

相続登記の義務化は、2024年4月1日より前に相続した不動産についても適用され、長年にわたって不動産の相続登記がされていなかったために、相続が数次におよび、相続人の調査などに相当な時間がかかるなど、3年間の猶予期間内に相続登記を行うことができない状況にある場合にも、この相続人申告登記制度を利用できます。

ただし、相続人申告登記は、履行期間内に遺産分割協議を成立が難しい場合などに、ひとまず相続登記の申請義務を果たすために利用するもので、相続による所有権の移転の登記である相続登記の代わりにはなりません。従って、相続人申告登記の後に遺産分割協議が成立した場合には、不動産を取得することになった相続人が、遺産分割協議が成立した日から3年以内に改めて相続登記をする必要があります。相続人申告登記だけでは所有権を第三者に主張することはできないため、相続によって取得した自己の権利を保全するためにも、相続登記を行うことが大切です。

司法書士 田中 千尋
  • この記事の監修者

  • 司法書士 田中 千尋

VSG司法書士法人
代表 司法書士

昭和62年生まれ、香川県出身。
相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

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