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相続手続き

最終更新日:2022.01.31

定承認は相続人一人だけでもできる?
手続きの流れ・必要書類と共に解説

限定承認は相続人一人だけでもできる?手続きの流れ・必要書類と共に解説

このコンテンツでわかること

  • ■ 限定承認の仕組み
  • ■ 限定承認のメリットやデメリット
  • ■ 限定承認が1人で手続きできない理由
  • ■ 限定承認の手続きの流れや必要書類

相続を承認すると預貯金や不動産などを取得できますが、負債や未払金も引き継ぐことになります。亡くなった方に高額な借金がある場合は相続放棄もできますが、プラスの財産ももらえなくなるため、状況によっては自宅も手放すことになるでしょう。

しかし、相続を限定承認すると一定の財産は手元に残せるため、自宅や思い入れのある遺品は手放さずに済む可能性があります。単純承認や相続放棄の中間的な仕組みですが、人によっては限定承認がベストな選択になる場合もあります。

今回は限定承認について詳しく解説します。手続きがとても複雑でデメリットもあるため、制度概要を十分に理解してから選択する一助にしてください。

限定承認とは

相続財産に借金がある場合、プラスの財産の範囲内で返済義務を負う方法が限定承認です。具体的には、借金500万円と預金200万円を相続した場合、預金200万円を返済に充てれば、残り300万円の返済義務が免除されるという仕組みです。また、借金よりもプラスの財産が多い場合は、借金の返済後に残った財産を相続することになります。

自宅などを残したい場合に有効ですが、まずメリット・デメリットの双方を理解しておく必要があるでしょう。

【関連リンク】

限定承認を行うメリット・デメリット

限定承認を選択するケースはそれほど多くないため、メリットやデメリットもあまり知られてはいないようです。限定承認には次のようなメリット・デメリットがあるので、単純承認や相続放棄と比較しながら検討されることをおすすめします。

限定承認のメリット

限定承認最大のメリットは、プラス財産の範囲内で借金を弁済できることです。また、相続財産の全容が把握できず、借金がどれだけあるかわからない場合にも、ひとまず限定承認しておけば安心できるでしょう。限定承認を選択すると「先買権」を使えるため、競売にかけた自宅も優先的に買い戻しできます

限定承認のデメリット

限定承認には以下のようなデメリットがあります。

  • 手続きが特殊で時間もかかる

  • 譲渡所得税が発生する可能性もある

  • 相続人全員の連携が必要

限定承認の手続きはとても特殊であり、限定承認が認められてもそこで完了というわけではありません。

また、自宅を残す場合、購入時よりも価値が上がっていると譲渡所得税が発生します。

ここまではある程度の資力や専門家への依頼で解決できますが、最大のデメリットは相続人全員の同意が必要になる点です。

限定承認の手続きの流れ・必要書類

画像

限定承認には、「相続開始を知った日から3カ月以内」という期限があります。手続きは被相続人の死亡時の住所地を管轄する家庭裁判所で行いますが、必要書類が多く期限も短いため、弁護士や司法書士への依頼を前提に検討するべきでしょう。

では、手続きの流れや必要書類を解説しますので、まず限定承認の全体像を掴んでおきましょう。

① 相続財産の調査と相続人の確定

限定承認の手続きには以下の書類を提出するため、相続財産の調査や相続人の確定が必要となります。

借金も含めた財産調査が必要なので、被相続人あての郵便物や遺品は徹底的に調べてください。

また、戸籍の収集は複数の役所に跨るケースが多く、すべて揃うまでに1カ月以上かかる場合もあります。

  • 家事審判申立書

  • 財産目録

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍、改製原戸籍など)

  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票

  • 相続人全員の戸籍謄本(除籍、改製原戸籍など)

  • 被相続人に死亡した子がいる場合、その子の出生から死亡までの連続した戸籍など

申立書や財産目録は裁判所ホームページから入手できますが、その他の書類収集は専門家への依頼も検討しておきましょう。

相続の限定承認の申述書(裁判所)

② 相続人全員の同意を得る

相続財産の調査結果から相続放棄を選択した場合、次は相続人全員の同意が必要となります。

家事審判申立書の申立人欄には相続人全員の署名押印が必要なので、限定承認の選択に至った理由などを説明し、同意を得るようにしましょう。

なお、押印は認印を使用しても構いません。

③ 家庭裁判所へ申述する

相続人全員の同意があれば、家庭裁判所に限定承認を申述します。

申述の際には収入印紙や郵便切手も必要ですが、家庭裁判所内で購入できる場合もあるので、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

  • 手数料:800円の収入印紙

  • 郵便切手代:数百円程度

家庭裁判所への申述までが限定承認の第一段階であり、ここから先が少し特殊な手続きとなります。

④ 家庭裁判所からの照会書へ回答

家庭裁判所へ限定承認の申述を行った後、1カ月程度で照会書が送付されてきます。

基本的にチェック式の回答方法ですが、一部記述式の部分もあるため、どう書いてよいかわからない場合は弁護士などに相談すると安心です。

照会書を返送すると限定承認の申述を受理するかを判断され、受理された場合は限定承認受理の通知書が送付されます。

⑤ 相続財産管理人の選任

自宅を残すために限定承認を選択した場合、相続財産管理人を選任して清算手続きを行います。

相続財産管理人は相続人の中から選任しますが、相続人が1人の場合はその人が相続財産管理人となります。

また、家庭裁判所で申述する際に上申書を提出する、または照会書への回答により、第三者を相続財産管理人に推薦することも可能です。

⑥ 請求申出の官報公告

限定承認が受理された場合は債権者への周知が必要であり、限定承認者は5日以内、相続財産管理人であれば10日以内に官報公告を出します。

公告期間は2カ月以上になっています。ネット上から自分で手続きできますが、初めての経験になる方がほとんどなので、不安がある場合は弁護士などに相談してください。

官報公告(全国官報販売協同組合)

⑦ 請求申出の催告

官報公告と同時進行になりますが、事前に判明している債権者には個別に催告(負債の相続が発生していることを通知すること)します。

通知方法は特に決まっていませんが、一般的には配達証明付きの内容証明郵便で催告書を送ります。

⑧ 先買権の行使による自宅の買い戻し

限定承認を選択した場合、原則として相続財産は換金(売却)し、債権者等への弁済に充てます。

土地や建物は競売にかけられますが、相続人は優先的に買い取りできる先買権を行使できるため、競売前に自宅を買い戻すことができます。

住み慣れた自宅は取り戻せますが、ある程度の資金力が必要になるので、他の相続財産や自己資金も考慮しながら限定承認を検討するべきでしょう。

⑨ 債権者や受遺者への弁済

限定承認した場合は、プラスの財産の範囲内で借金などを返済しますが、返済(弁済)する順位は以下のように決まっています。

  1. 不動産などの抵当権者になっている債権者
  2. 請求申出の期間中に判明した債権者
  3. 受遺者(遺言によって財産を取得する人)

⑩ 遺産分割協議を行う

財産を換金して弁済に充てた後、残金があれば遺産分割の対象になります。

したがって、相続人が複数いる場合は遺産分割協議を行いますが、もし公告期間経過後に債権者等から弁済の申し出があった場合は、残金から弁済しなくてはなりません。

限定承認にかかる費用

限定承認にかかる費用は自分で手続きを進める場合と、専門家に依頼する場合とで大きく異なります。

自分で手続きすると費用は抑えられますが、十分な時間の確保や、相続全般の専門知識が必要です。

一方、専門家には限定承認に必要な手続きをすべて依頼できるので、どれだけの費用対効果があるか、以下を参考に検討してください。

限定承認を自分でやる場合にかかる費用

限定承認を自分で手続きする場合、費用のほとんどは以下のような書類の取得費です。

  • 戸籍謄本:1通450円

  • 住民票の除票:1通300円程度

  • 預金の残高証明書:1通800~1,200円程度

  • 不動産の登記事項証明書:オンライン請求・窓口受取の場合は1通480円

  • 不動産の固定資産評価証明書:1通300円程度

  • 家庭裁判所へ申述する際の収入印紙800円分、および郵便切手代

相続人の数や相続財産の種類にもよりますが、自分で限定承認するときは、数千円~1万円前後の費用になるでしょう。

すべて相続開始から3カ月以内に取得できるかどうか、十分に検討してください。

限定承認を専門家に依頼した場合の費用

限定承認を弁護士などの専門家に依頼すると、一般的には30~100万円程度の費用がかかるでしょう。

ただし、相続財産の調査や裁判所関係の手続き、不動産の評価額計算など、限定承認に必要な手続き・作業にはほとんど対応してもらえます。

不動産などの評価額が自己評価よりも高く、売却代金で借金を完済できるようであれば、限定承認しなくても自宅を残せる可能性があります。

弁護士や司法書士などの専門家に限定承認を依頼するときは、高額な借金があり、相続財産をすべて弁済に充てても不足するケースに限られるでしょう。

限定承認を行うときの注意点

限定承認は相続人全員の理解が必要になるため、自分1人だけでは手続きができません。

家庭裁判所が申述を受け付けるまでの期限も短く、単純承認が成立したときは限定承認が認められなくなります。

限定承認には以下のような注意点があるので、申述期限や制度概要を相続人全員が理解しておく必要があるでしょう。

限定承認は相続人一人だけでは行えない

相続の単純承認は一定期間の経過、または相続財産を処分した時点で成立し、相続放棄については単独手続きが可能です。

しかし、限定承認には相続人全員の同意が必要であり、家庭裁判所の手続きも相続人全員で行なうため、1人でも反対している人がいれば限定承認はできません。

また、誰か1人でも単純承認が成立すると限定承認は不可能になるため、財産を処分しないよう事前の話し合いも必要になります。

相続人が3人以上いる場合や相続人同士の関係が希薄である場合は、相続人全員の同意を得て手続きを行うことに苦労することが予想されます。

さらに、限定承認の手続き後に残金があれば譲渡所得税の手続きがあるなど、思いのほか労力を要するのが限定承認です。

ただし、相続放棄した人は相続人から外れるため、相続人2人のうち1人が相続放棄すれば、自分だけで限定承認の手続きを進められます。

限定承認の期限は3カ月

限定承認を選択する場合、相続開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。

申述期限までに以下の対応ができるかどうか、スピーディな判断が求められるでしょう。

  • 法定相続人の確定(被相続人の戸籍調査)

  • 借金も含めた相続財産の調査

  • 不動産や非上場株式などの評価額計算

  • 相続人全員の協力体制

  • 限定承認と相続放棄の選択

限定承認の申述期限に間に合わないときは、家庭裁判所に期限の伸長を申し立ててください。

申述期限の伸長を申し立てるときは、弁護士などの専門家に相談しておくとよいでしょう。

手続き完了前に相続財産を処分しない

限定承認で遺産相続する場合、手続き完了前に相続財産を処分すると、単純承認が成立するので注意してください。

単純承認が成立すると、プラスの財産もマイナスの財産も相続する意思があるものとみなされ、限定承認が認められなくなります。

たとえば、被相続人の預金を払い出す、または解約して私的な用途に使うと、単純承認が成立するでしょう。

また、不動産の名義を変更したときや、建物を増改築したときも、単純承認が成立するので要注意です。

限定承認するときは、何をしたら単純承認になるのか、相続人全員が理解しておかなければなりません。

まとめ

限定承認では返せる範囲内の借金しか相続しなくてよいため、後から別の借金が発覚した場合のリスクも回避できます。

ただし、他の相続人が同意してくれるとは限らず、単純承認が成立しないよう事前連絡も必要になります。

相続人同士の関係が円満でなければ、スムーズな限定承認は難しいでしょう。

また、財産調査や戸籍収集の期間が短く、家庭裁判所への申述後も様々な手続きが連続するため、多忙な人ほど限定承認のハードルは高くなってしまいます

「借金はあるが自宅は残したい」という場合、限定承認以外の手段も検討する必要があるため、まずは相続に強い弁護士や司法書士に相談するとよいでしょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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