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相続放棄

最終更新日:2021.04.20

定承認とは?
相続放棄との違いや
メリット・デメリットを解説

このコンテンツでわかること

  • ■ 限定承認とはどのような制度で相続放棄とどう違うのかがわかる
  • ■ 限定承認をした場合のメリットとデメリットについて知ることができる
  • ■ 限定承認を行う場合の流れや手続きに必要な書類がわかる

限定承認という制度をご存知でしょうか。亡くなった人の財産や債務を引き継ぐ際に選択することのできる方法の1つで、債務がある場合に利用されることがあります。

亡くなった人が多額の債務を残していた場合には、相続放棄ができることはよく知られていますが、限定承認とはどのような違いがあるのでしょうか。また、限定承認はどのような流れで行い、どんな書類が必要なのでしょうか。

このコンテンツを通して、それぞれについて確認しておきましょう。

限定承認とは

限定承認とは、被相続人が残した債務について相続財産の範囲内で引き継ぐために行う手続きです。債務の額の方が大きい場合には、財産の額相当分のみ債務を負担し、それを超える金額については債務を負担しなくてもよいのです。

限定承認が利用されるのには、おもに2つの理由があります。1つは、被相続人が財産も債務も残しており、その額がそれぞれどれくらいあるかわからない場合です。そしてもう1つは、財産より債務の方が大きいとわかっているが、どうしても相続したい財産がある場合です。

相続放棄してしまうと、一切の財産を相続することができなくなってしまいます。そこで、財産を相続できるのであれば相続したいという場合に利用されるのです。

限定承認と相続放棄の違い

限定承認を検討するうえで混同しやすいのが、相続放棄の制度です。どちらも被相続人が債務を有しており、そのまま相続すると、相続人がその債務を引き継ぐ場合に利用されます。ただ、限定承認と相続放棄には違いがあるため、その違いを知っておきましょう。

限定承認は相続財産の範囲内で債務を引き継ぎますが、相続放棄は財産も債務も一切引き継ぎません。また、限定承認はすべての相続人で行いますが、相続放棄は相続人ごとに利用するかどうかを決めることができます。このような違いがあるため、限定承認を利用するか相続放棄を行うか、慎重に判断する必要があります。

その一方で、両者とも家庭裁判所での手続きとなる点は共通しています。また、相続開始を知ってから3ヶ月以内が申立ての期限となっている点も一緒です。

ともに申立てできる期間が短いため、利用するかどうかを早急に決断しなければなりません。中でも限定承認の場合は、相続人全員の意思が一致しなければ、申立てをすることはできないため、早めに決断する必要があります。

限定承認のメリット・デメリット

限定承認には、どのような特徴があるのでしょうか。そのまま相続した場合や相続放棄した場合と比較して、どういったメリット・デメリットがあるのか確認しておきましょう。

限定承認のメリット

限定承認を行う最大のメリットは、巨額な債務を相続しなくてよくなることです。債務の額が財産の額を超える場合には、その財産の額以上に債務を引き継ぐことはなくなります。そのため、債務の額が財産の額を超えるかどうかわからない場合、限定承認をすれば、実質的な不利益を被ることはなくなります。また、債務の額がいくらあるかわからない場合にも、限定承認を行うことで、債務をすべて引き継ぐ必要はなくなるのです。

また、限定承認を行えば、自宅など特定の財産を残すことができます。限定承認を行う際、裁判所の手続きにおいて、債務をプラスの財産で清算します。このとき、プラスの財産が不動産である場合に、不動産に相当する金額を支払えば、不動産を手放す必要はなくなるのです。

また、限定承認を行うと、不動産が競売にかけられた場合でも、限定承認をした相続人に優先的に購入する権利が認められます。あくまでも相続人に支払うことができる資力があることが前提となりますが、いずれも相続放棄では認められないことです。

限定承認のデメリット

限定承認を利用するうえで最大のネックとなるのが、相続人全員の同意を得ることが難しい点です。相続人が複数人いる場合には、たとえ1人でも限定承認に反対の人がいると、限定承認を行うことはできないのです。

また、限定承認の場合は、家庭裁判所に申述を行えば終わりではありません。相続した財産の範囲内で債務の弁済を行う必要があるため、財産を換価し、債権者に対して清算を行う必要があります。そのため、手続きが複雑となり、すべてを終えるまで時間もかかります。これに対して相続放棄の場合は、家庭裁判所での申述を終えれば、相続放棄の手続きは終了します。財産の換価を相続人で行う必要もないため、比較的手続きを早く終えることができるのです。

また、限定承認では財産を換価するため、被相続人に譲渡所得が発生する可能性があります。仮に譲渡所得が発生する場合には、相続人が被相続人に発生した譲渡所得について、準確定申告を行う必要があります。ただ、譲渡所得が発生するかどうかは、売却したときの財産の価格や債務の状況によっても異なります。そのため、準確定申告を行う必要があるかどうかを確認しなければなりません。

限定承認が向いているケース

限定承認を行うことが向いているのは、どのようなケースがあるのでしょうか。限定承認のメリットとデメリットを考えると、いくつかのパターンがあることがわかります。

まずは、相続により引き継ぐ財産と債務のどちらが多いのかがわからないケースがあります。とくに、債務の額がどれくらいあるかわからない場合には、限定承認が向いています。債務を引き継ぎたくない場合には、限定承認のほか、相続放棄を行うことも考えられます。しかし、相続放棄の場合は、債務の額の方が少なかったとしても、すべての財産を相続することができなくなります。これに対して、限定承認の場合は、債務の額の方が少なくなれば、一部の財産を相続することが可能になるのです。

また、債務の額が上回る場合でも、絶対に相続したい財産があるケースには限定承認を利用できます。自宅や先祖代々の家宝があるため、相続放棄はしたくないと考える場合、その財産に相当する現預金があれば、財産を相続できるのです。

ただしお金がなければ、たとえ限定承認を行っても財産を残すことはできません。そのため、資金を準備することができるか、よく検討してから限定承認を行う必要があります。

限定承認を行うときの流れ・必要書類

それでは、実際に限定承認を行うこととした場合、どのような流れで手続きを進めることとなるのでしょうか。また、どのような書類が必要になるのでしょうか。

手続きを始めてから迷うことのないように、あらかじめその流れを確認しておきましょう。

限定承認の申述

限定承認の申述には次の書類が必要です。

  • 申述書

  • 財産目録

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と住民票の除票または戸籍附票

  • 相続人全員の戸籍謄本

書類を準備したら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述を行います。このとき、相続人1人につき800円の収入印紙と、1,000円程度の切手代が必要となります。また、相続人が複数いる場合には、相続財産管理人を家庭裁判所が選任します。

なお、必要に応じて、家庭裁判所から照会がある場合や、追加資料の提出が求められることがあります。

限定承認受理通知書の受領

限定承認が受理されると、家庭裁判所から限定承認受理通知書が郵送されてきます。ここからは清算の手続きに入りますが、相続人が複数いる場合は、家庭裁判所が選任した相続財産管理人だけで手続きを進めます。

官報公告と請求申出の催告

限定承認したことを公表するとともに、債権者や受遺者に弁済の請求を申し出るように伝える必要があります。そこで、官報により公告が行われます

相続人が1人の場合は申述受理後5日以内、相続財産管理人が選任された場合は10日以内に公告手続きを行わなければなりません。なお、官報の公告期間は2ヶ月以上必要であるとされています。

また、連絡先がわかっている債権者に対しては、公告のほかに個別に催告を行う必要があります。

鑑定人選任の申立てと先買権の行使

相続財産の換価手続きを進める前に、相続人が相続したいと考える財産については、買い受ける手続きをしなければなりません。そのためには、家庭裁判所に鑑定人の選任の申立てを行い、鑑定された金額で買い受けることとなります。

相続財産の換価と債権者および受遺者への弁済

競売手続きにより、相続財産の換価が行われます。売却により得た現預金は、債権者や受遺者に対する弁済のために使われます。相続財産より債務の方が多い場合は、債務の額で按分して、債権者に弁済されることとなります。

残余財産の遺産分割と相続財産の取得

債権者や受遺者に対して弁済を行った後に残った財産がある場合、その財産は相続人が取得します。相続人が複数いるのであれば、遺産分割を行う必要があります。

限定承認を行うときの注意点

限定承認を利用するためには、様々な要件をクリアしなければなりません。また、その手続きはすべて裁判所で行われるため、決められた手順にしたがって進められることとなります。

そのため、実際に利用する場合には、注意すべき点がいくつかあります。

本当に限定承認を利用した方がよいのか考える

まずは、限定承認を利用する前に、本当に限定承認した方がよいのか、よく考える必要があります。

限定承認が向いている場合として、財産と債務のいずれが大きいかわからない場合と、絶対に相続したい財産がある場合を紹介しました。しかし、この2つのケースに該当すると思っていても、絶対に限定承認した方がよいというわけではありません。たとえば、相続したい財産があっても、その分の支払いをすることができなければ、結局は財産を手放すしかないのです。

また、財産と債務の状況をよく調べずに、とりあえず限定承認しておくというのも得策ではありません。債務の額の方が大きいのであれば、手続きとしては限定承認より相続放棄の方が早く完結します。また、債務の額の方が少ないのであれば、そのまま相続した方が楽に手続きを終えることができます。

そもそも、限定承認は相続人全員の同意がなければできません。本当は限定承認したくなかったという相続人も、しぶしぶ同意するということも考えられます。そのため、限定承認したことについて後から不協和音の原因とならないよう、事前によく検討するようにしましょう。

手続き上の期限は必ず守る

限定承認をするかどうかの判断は、慎重に行う必要があります。ただし、慎重になりすぎて手続き上の期限を過ぎてしまうと、限定承認することができなくなってしまうため注意が必要です。

限定承認の場合、利用することを決定しても、相続人全員で手続きしなければならないため、どうしても時間がかかります。限定承認を行うための期限は、相続開始から3ヶ月以内であるため、方針を決めたら早めに手続きを行うべきです。それでも、もし判断に迷う場合には、期間の伸長の申立てを行うことで、従来3ヶ月とされている熟慮期間を延長することができます。

また、限定承認を行った場合には、準確定申告をしなければならない場合があります。この準確定申告は、相続開始から4ヶ月以内に行う必要があります。もし期限に間に合わなかった場合には、延滞税などのペナルティが科されて、さらに負担が増える結果となってしまいます。

限定承認の申述が終わっても手続きは続く

相続放棄を行う場合は、相続放棄の申述を行えば、その後の手続きはほぼありません。家庭裁判所からの照会や申述の受理通知を待つだけとなり、その後も特に手続きは必要ないのです。

しかし、限定承認の場合は、限定承認の申述を行った後も、公告を行い、財産の売却に関する手続きをしなければなりません。また、公告手続きを行うための期限も定められているため、その期限を過ぎてしまうことのないように注意しなければなりません。

まとめ

限定承認という制度は、相続放棄に比べてなじみがないと思います。それは、制度の中身がわかりにくいことに加えて、相続人全員で行うなど利用しにくい制度であることも関係しているかと思います。しかし、限定承認がどのような制度なのかをわかっていれば、利用することが効果的なケースがあります。

被相続人が債務を有しているのか、あるいはその金額がどれくらいあるのか、わからないことも珍しくありません。相続が発生した際には、ぜひ、相続放棄だけでなく限定承認を行うべきかどうかも検討するようにしましょう。

税理士 桑原 弾
  • この記事の監修者

  • 税理士 桑原 弾

昭和55年生まれ、兵庫県出身。
大学卒業後、税務署に就職し国税専門官として税務調査に従事。税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した知識」と「元国税調査官としての経験」の両輪を活かして相続税申告を実践している。

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