生活保護受給者が死亡したときの相続手続き
被相続人(亡くなった方)が生活保護受給者であっても、相続手続きの内容が変わることはありません。ただし、生活保護費を過剰に受け取っていた場合や、死亡後に生活保護費が支給されたときは、相続人に返還義務が生じます。また、生活保護の受給権は相続対象にならないため、権利として相続できると思っていた方は注意してください。
具体的には以下のような考え方になるので、一般的な相続との違いを理解しておきましょう。
預貯金の相続は一般的な相続手続きと同じ
生活保護受給者の預貯金口座は相続財産となるため、一般的な相続手続きによって相続人が取得します。預金者の死亡を伝えると、相続手続きが完了するまで口座凍結されるため、公共料金などの引き落としがあれば別口座に変更しておきましょう。
なお、相続放棄を予定している場合は出金に注意が必要になります。被相続人の葬儀代として出金する場合は問題ありませんが、私的な用途だった場合は相続を承諾したとみなされるため、相続放棄が認められなくなります。
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葬祭扶助を受ける場合には担当者に連絡する
被相続人と相続人がどちらも生活保護を受けており、葬儀費用を準備できないときは、以下の葬祭扶助を受けられます。
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大人の葬儀:20万円程度
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子供の葬儀:16万5,000円程度
金額は地域によって若干異なり、一般的には火葬による葬儀になります。
葬祭扶助を受けるときは、喪主となる相続人の住民票がある自治体へ申請してください。
生活保護受給権は相続対象にならない
生活保護受給権は受給者だけに帰属する権利のため、本人が亡くなっても相続はできません。このような権利を一身専属権といい、相続や移転の対象ではなく、差し押さえもできないことになっています。あくまでも本人だけに認められた権利なので、相続対象と勘違いしないように注意してください。
相続人が保護費の返還義務を負う場合がある
生活保護を受ける際には財産調査も行われますが、受給要件を満たすように財産を隠してしまうケースがあります。過剰に受給した保護費を返還しないまま、あるいは当月分の生活保護費が支給された後に本人が亡くなったときは、相続人が返還義務を引き継ぐこととなるので注意が必要です。
生活保護費の返還義務は引き継ぐ?
生活保護費の受給状況によっては、相続人が返還義務を引き継ぐケースがあります。
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十分な資力があるのに保護費を受給していた場合
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収入や財産内容を偽って保護費を受給していた場合
2020年度の不正受給額は1人平均39万4,000円ですが、人によっては100万円超の可能性もあるため、受給状況は入念に調査しなければなりません。具体的には以下のようなケースになるため、返還義務の有無を福祉事務所にも確認しておきましょう。
十分な資力があるのに保護費を受給していた場合
生活保護の申請時には困窮状態であっても、その後に状況が変わり、資力がありながら保護費を受給し続けていたときは、過剰な受給額を返還しなくてはなりません。具体的には、以下の場合が考えられます。
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収入を得るようになった、または収入が増加した
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もらい忘れの年金をさかのぼって受給した
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医療給付金を受け取った
本人(受給者)が亡くなっていれば返還義務は相続人に引き継がれますが、いつまでさかのぼるか、いくら返還するか、といった問題も生じます。過剰な受給状況が判明したときは、まず福祉事務所に問い合わせてください。
収入や財産内容を偽って保護費を受給していた場合
生活するために支障のない収入や十分な財産がありながら、虚偽申請によって生活保護を受給していたときも、過剰に受け取った保護費は返還しなければなりません。例として以下の場合が考えられます。
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住んでいない土地や株などの有価証券、車を所有している
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申告していない収入がある
受給者が亡くなっていれば相続人に返還義務が生じるため、返還額や返還期限についても理解しておく必要があります。
過剰に受給していたときの返還額
被相続人が過剰に受給していた保護費を相続人が返還する場合、一般的には100/100の返還額(徴収額)となります。ただし、不正受給の内容が悪質であれば、返還額の40%(40/100)を上限とした加算があるので注意が必要です。
「黙っていればわからない」と考えてしまう相続人もいるかもしれませんが、受給者の税務申告と福祉事務所への収入申告は、年に1回照合されています。相続発生からしばらく経って返還請求の連絡が入るケースもあるので、被相続人の財産や受給状況は必ずチェックしておきましょう。
過剰に受給していたときの返還期限
生活保護費の返還は5年後に時効となりますが、できるだけ早めに返還に応じましょう。返還義務は受給者が十分な収入を得たときや、不正受給を始めた時点で発生しますが、悪質性がないと認められたときは払込書による納付となります。
払込書には納付期限が記載されていますが、期限内に支払わなかったときは督促手数料が加算されます。督促を無視すると強制執行となり、財産を差し押さえられる可能性もあるので注意しましょう。また、悪質な不正受給だった場合は、口座引き落としによる強制徴収となります。
保護費は返還免除してもらえる?
生活保護法第80条では返還免除について定めており、「やむを得ない事由があると認めるときは、これを返還させないことができる」としています。やむを得ない事由は福祉事務所や自治体の判断となりますが、実際に免除されるケースはほとんどなく、一括払いができないときは分割払いで返還します。
相続人が生活困窮者であるなど、どうしても返還に応じられない事情があれば、相続放棄も検討してみましょう。
生活保護受給者の相続を放棄する方法・期限
生活保護受給者に保護費の返還義務や借金があり、相続することのデメリットの方が大きい場合は、相続放棄も検討しましょう。相続放棄は家庭裁判所に申述する必要がありますが、認められた場合は最初から相続人ではなかったことになるため、保護費の返還義務も免除されます。
相続放棄は以下のように手続きを進めますが、申立ての期限日や、相続放棄が認められなくなる条件には十分な注意が必要です。
相続放棄の選択と申立ての期限
相続放棄を選択するときは、相続開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。期限後の相続放棄は原則として認められないので、被相続人の財産は早めにしっかり調査しておきましょう。
家庭裁判所への申述
相続放棄を選択する場合、申述先は被相続人の最後の住所地の管轄家庭裁判所になります。申述の際の必要書類は被相続人との続柄によって異なりますが、世帯分離した子供が相続放棄する場合は、以下の書類が必要です。
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相続放棄申述書
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被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
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被相続人の住民票除票または戸籍附票
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被相続人と申述人の関係がわかる戸籍謄本
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800円分の収入印紙
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連絡用の郵便切手(家庭裁判所によって異なる)
申述書の様式は家庭裁判所で交付してもらえますが、裁判所ホームページにも掲載されているので、記載例と一緒にダウンロードしておくとよいでしょう。申述後には照会書が送付されるので、回答から1週間~10日程度で相続放棄が完了します。
相続の放棄の申述書・成人用(裁判所)
相続の放棄の申述書・未成年者用(裁判所)
相続放棄が認められなくなるケース
被相続人の口座が凍結される前に預金を引き出した場合、相続放棄が認められなくなる可能性があります。葬儀代を支払うための引き出しであれば問題ありませんが、私的な用途だったときは相続を承諾したことになります。相続の承諾を単純承認といい、相続発生から3カ月を経過したときも自動的に成立します。
生活保護受給者の葬儀代は本来最低限の葬儀費用と規定されています。そのため、必要とする葬儀費用は相殺扶助に準じたものであることが求められます。しかし、不相応な額を引き出した場合も相続人の私的な用途を疑われる可能性があります。葬儀代を支払ったときは、必ず領収書や請求書を保管しておきましょう。
相続放棄しても支払わなければならない費用
相続放棄した場合、被相続人の遺産に関わることはありませんが、遺品の整理費用や賃貸アパートの退去費用は遺族が支払わなければなりません。
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【補足】生活保護受給者が相続人になった時の取り扱い
相続人が生活保護を受けている場合、預貯金などを相続したことで生活保護が打ち切られる可能性があります。打ち切りのタイミングは遺産分割が決着したとき、または実際に相続財産を取得したときです。
生活保護を受け続けるために相続放棄を選択するケースもありますが、基本的には財産をもらうように指導されるため、相続放棄できない可能性が高いでしょう。ただし、相続財産が少額である場合や、資産価値が低い不動産だった場合は相続放棄できる可能性もあるので、まずケースワーカーに相談してください。
まとめ
生活保護受給者が亡くなったときは、まず相続財産の調査を優先的に行いましょう。十分な収入や資産価値の高い財産があれば、生活保護費の返還義務が生じる可能性もありますが、逆のケースであれば相続放棄を検討する必要もあります。
相続放棄は3カ月以内に手続きしなければならないため、対応が遅れると、借金の返済や保護費の返還を相続人が負担しなければなりません。財産調査には時間がかかるケースが多く、相続放棄も慎重に検討する必要があるため、多忙な方や相続に不安のある方は、専門家にも相談しておきましょう。



