相続した土地は「相続税評価額」で評価する
土地などの財産を相続すると、相続税がかかります。はじめに、相続税の計算のしくみについて簡単に確認しておきましょう。
相続税の計算方法
相続税は、相続により取得した財産の課税価格の合計額から相続税の基礎控除である遺産にかかる基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))を差し引いた課税遺産総額を各法定相続人が法定相続分に従って取得したものと仮定し、相続税の税率(10%~55%)をかけて相続税の総額を計算します。
相続財産の評価
この相続税の計算においては、相続により取得した財産は、原則として相続開始日の「時価」を基準にして評価することとされています。現金や預貯金であれば相続開始日の残高がそのまま評価額となり、価値が変動する財産は、その財産の価値を評価する必要があります。
相続した土地については、宅地、田、畑、山林などの地目ごとに、定められた評価方法に基づいて計算した「相続税評価額」により評価することとされています。なお、宅地の価額は、1筆単位で評価するのではなく、利用の単位となっている1画地の宅地ごとに評価します。
土地の相続税評価額の二つの評価方法
土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。土地を評価する場合は、原則として、市街地的形態を形成する地域にある土地は「路線価方式」により、それ以外の地域の土地は「倍率方式」により評価します。
路線価方式の計算方法
路線価方式は、おもに市街地などの路線価が定められている地域の土地の評価方法です。路線価方式では、基本的に、その土地が面している道路の「路線価」にその土地の面積をかけて計算した価額により評価します。ただし、その土地の形状などによっては、路線価に一定の補正率をかけて価額の調整をする必要があります。
路線価とは
路線価とは、道路(路線)に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額のことで、千円単位で表示されます。なお、路線価は、所有者がその土地を自由に使用できる「自用地」であるときの価額です。
路線価は、その年の1月1日時点の価額が基準となっており、国税庁が毎年7月頃に公表します。
路線価の調べ方
路線価は国税庁により「路線価図」として地図にまとめられていて、路線価図には1本1本の道路に路線価が記載されています。
具体的には、土地が面している道路に、「400C」「500D」などのように数字とアルファベットが記載されており、数字が「路線価」、アルファベットは「借地権割合」を表しています。また、路線価の前後の矢印(← →)は、路線価が適用される範囲を表しています。なお、借地権割合は、他人に貸している土地を評価する場合に使用します(後ほど解説します)。
路線価を調べるには、国税庁ホームページ「路線価図・評価倍率表」から確認できます。路線価図で土地の所在地を検索すると、その土地が面している道路に設定された路線価を確認できます。また、路線価は、全国の国税局や税務署でも閲覧できます。ただし、相続税を計算するときの路線価は、相続が発生した年度の路線価を用いることとされていますので、注意してください。
基本となる計算方法
路線価方式では、土地の相続税評価額は、基本的に、その土地が面している道路の路線価に地積(土地の面積)をかけて計算します。地積は、固定資産税課税明細書や登記簿謄本に記載されています。
基本となる計算式は、「土地の相続税評価額=路線価×地積(㎡)」となり、この計算式によって土地の相続税評価額を概算できます。
補正率とは
路線価は、あくまで標準的な宅地を想定した価額です。実際には、路線価が同じ土地でも、土地の形状などによって利用のしやすさに違いがあります。形がいびつで使いにくい土地や、逆に角地(正面と側面に道路が接する土地)で利便性が高い土地などがあり、評価額の減額や増額による評価額の調整が必要になる場合があります。
このような利用価値の違いを評価額に反映するのが補正率で、土地の形状や周囲の状況などに応じて、路線価に一定の補正率をかけて調整します。この補正率によって、土地の正確な相続税評価額を計算できます。
補正による計算式
路線価方式における正確な土地の相続税評価額は、路線価をその土地の形状や周囲の状況などに応じたさまざまな補正率で補正した後に、その土地の面積をかけて計算します。
計算式としては、「土地の相続税評価額=路線価×各種画地補正率×地積(㎡)」となります。
倍率方式の計算方法
倍率方式は、郊外地や山間部などの路線価が定められていない地域の土地の評価方法です。倍率方式では、その土地の固定資産税評価額に国税局長が定める「評価倍率」をかけて計算した価額により評価します。
固定資産税評価額の確認方法
固定資産税評価額は、その土地の所有者にかかる固定資産税や不動産取得税などを計算するときに使われるもので、3年に1度評価替えが行われます。所有している土地の固定資産税評価額は、毎年4月から6月頃に送付される固定資産税の納税通知書の課税明細書で確認することができます。また、都税事務所や市(区)役所、町村役場でも確認できます。
評価倍率の調べ方
評価倍率を調べるには、路線価と同じく、国税庁ホームページ「路線価図・評価倍率表」から確認することができます。
計算方法
倍率方式では、土地の相続税評価額は、その土地の固定資産税評価額に評価倍率をかけて計算します。
計算式は、「土地の相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率」となります。
なお、倍率方式で評価するときには、土地の形状による価値の増減は固定資産税評価額に反映されているため、路線価方式のように土地の形状などに応じた補正を行う必要はありません。
ただし、地積規模の大きな宅地、セットバックがある宅地、都市計画道路予定地の区域内にある宅地については、土地の評価額を減額できます。
評価額を下げて相続税を抑えるポイント
土地の相続税評価額は高額となることが多く、相続税も多額になります。そこで、土地の評価額を低く抑えることができれば、相続税を節税できます。
相続税の計算において評価額を減額できる方法がいくつかありますので、順を追って紹介します。
適用できる減額補正がないか確認する
路線価方式による土地の評価については路線価を基準に評価しますが、土地の形状などによって利便性が低い場合には、以下のようなさまざまな減額が認められています。まず、相続した土地に適用できる減額補正がないかを確認しましょう。土地の状況によっては、複数の減額補正を組み合わせることができる場合もあります。
不整形地補正
不整形地補正とは、土地の形が四角形ではなく、いびつな形状の土地に適用される補正です。台形など形状が不整形の土地は、正方形や長方形の整形地に比べると宅地として使いにくいため、利用価値は低くなります。そこで、その不整形の程度や位置などに応じて、路線価に不整形地補正率をかけて評価額を減額できます。
奥行価格補正
奥行価格補正とは、土地の奥行が標準的な土地に比べて長い(または短い)土地に適用される補正です。同じ面積の土地でも、道路に接している部分(間口)が短くて奥行が長いと、利用価値は低くなります。そこで、奥行の距離に応じて、路線価に奥行価格補正率をかけて評価額を減額できます。
間口狭小補正
間口狭小補正とは、道路に接している間口が狭い土地に適用される補正です。間口が狭い土地では、道路への出入りに支障があり、利用価値は低くなります。そこで、道路に接する間口が狭い宅地は、路線価に奥行価格補正率および間口狭小補正率をかけて評価額を減額できます。
奥行長大補正
奥行長大補正とは、道路に接している間口の幅に対して奥行の距離が長い、接する道路から見て縦長の土地に適用される補正です。奥行長大補正は、奥行の長さが間口の幅の2倍以上になる場合に適用でき、路線価に奥行長大補正率をかけて評価額を減額できます。
がけ地補正
がけ地補正とは、急傾斜地(がけ地)が含まれている土地に適用される補正です。がけ地の部分は通常の用途には利用できないため、がけ地がある土地の利用価値は低くなります。そこで、総地積に対するがけ地部分の割合に応じて、がけ地補正率を路線価にかけて評価額を減額できます。
規模格差補正
規模格差補正とは、路線価地域であれば普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区に所在する地積規模が大きな宅地(三大都市圏では500㎡以上、その他の地域では1,000㎡以上)に適用される補正です。面積が広い宅地を戸建住宅分譲用地として開発行為を行う場合には、道路などの公共公益的施設用地の負担が必要となります。そこで、路線価に奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率をかけて評価額を減額できます。
なお、倍率地域についても地積規模が大きな宅地に該当する宅地であれば減額対象となります。
特別警戒区域補正
特別警戒区域補正は、土砂災害特別警戒区域が含まれている土地に適用される補正です。この区域については土地の活用が制限されるため、土地の利用価値は低くなります。そこで、特別警戒区域が占める面積の割合に応じて、特別警戒区域補正率をかけて評価額を減額できます。
土地の利用状況を確認する
土地の相続税評価額は、その土地をどのように利用していたかによって、計算方法が異なります。他人に賃貸している土地については、権利関係に応じて評価額の調整が必要となるため、相続した土地の利用状況を確認しましょう。
たとえば、貸宅地(借地権が設定されている土地)や貸家建付地(賃貸マンションなどの敷地になっている土地)の場合は、土地の所有者が自由に使用できないという制限があるため、自用地よりも利用価値が低くなり、路線価方式や倍率方式で計算した評価額を減額できます。
貸宅地の評価
貸宅地とは、他人が建物を建てるために他人に有償で貸している土地のことをいいます。貸宅地の評価額は、自用地としての相続税評価額から借主の借地権の評価額分が減額されます。ただし、無償で貸している場合には、借地権は生じないため、自用地の価額となります。計算式は、「相続税評価額=自用地の評価額×(1-借地権割合)」となります。
なお、借地権割合は、路線価とあわせて、国税庁ホームページ「路線価図・評価倍率表」から確認でき、路線価図にアルファベット(A:90%~G:30%)で記載されています。
貸家建付地の評価
貸家建付地とは、所有する土地に賃貸マンションなどの賃貸目的の建物を建てている土地のことをいいます。貸家建付地は、土地の所有者は建物も所有していますが、建物の借主が住んでいて使用に制限があるため、その評価額は自用地としての評価額よりも低くなります。計算式は、「相続税評価額=自用地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」となります。
なお、借家権割合は、貸している建物の評価額に対する借家権価額の割合のことで、全国一律30%とされています。また、賃貸割合は、貸家の床面積のうち入居者がいる貸家の割合のことで、全室を賃貸している場合が100%で、空室があればその床面積の分を差し引きます。
小規模宅地等の特例を適用する
相続した土地が宅地として特定の用途に使われている場合には、小規模宅地等の特例を適用することによって、評価額を大幅に減額でき、節税効果が見込めます。そこで、土地を相続したときは、この特例を適用できるかを必ず確認しましょう。
小規模宅地等の特例の概要
小規模宅地等の特例とは、相続税の計算において、相続した宅地が居住の用や事業の用として使われている場合に、一定の要件を満たせば、限度面積までの部分について、その評価額の一定割合を減額できる制度です。
なお、この特例の適用を受けるには、申告期限までに相続税の申告書を提出しなければなりません。特例の適用を受けることで相続税が0円になった場合でも、申告は必要となりますので、注意してください。
小規模宅地等の特例の対象となる土地
この特例の対象となる宅地等は、被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族が、居住に利用していた「特定居住用宅地等」、事業用として利用していた「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」に区分されています。そして、この利用区分ごとに、適用要件や適用対象となる限度面積、減額割合が定められています。
土地の取得者が適用する宅地ごとに定められている要件を満たせば、特定居住用宅地等は330㎡までの部分の評価額を80%、特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等は400㎡までの部分の評価額を80%、また貸付事業用宅地等は200㎡までの部分の評価額を50%減額できます。
相続専門の税理士に評価を依頼する
このような方法により土地の評価額を減額できますが、土地の相続税評価額の計算方法はとても複雑なため、土地を正確に評価するには、専門的な知識が必要になります。そこで、税理士に土地の評価を依頼することによって、適正な評価額を算定してもらうことができます。
土地の評価に慣れていない税理士もいる
土地の評価を税理士に依頼するとしても、すべての税理士が土地を正しく評価できるとは限りません。相続税の土地評価は税理士でも難しいとされ、また、税理士にはそれぞれ専門としている分野があり、相続税の申告や土地の評価に慣れていない税理士もいます。
土地を正しく評価するには経験が必要
土地には同じものはなく、それぞれの土地の状況などによって評価額は変わります。そのため、専門的な知識とともに土地の評価の経験の積み重ねがないと、適正な評価額を算定が難しい場合があります。そこで、土地の評価の経験が豊富な相続専門の税理士に評価を依頼することをおすすめします。
まとめ
相続税は超過累進課税方式で税率も高く設定されているため、相続財産の価額が大きくなるほど相続税の負担が増えるしくみになっています。相続財産のなかでも土地は最も大きな金額を占めることが多く、土地の評価額が少し変わるだけで相続税の税額が大きく変わります。
このように、相続税の申告においては、土地をどう評価するかが重要になります。そこで、土地の評価方法や相続税評価額の計算方法、評価の減額ポイントを理解しておくことで、土地を適正に評価でき、相続税の節税につながります。ただし、土地の評価方法は複雑で、小規模宅地等の特例などの適用要件を満たしているかどうかの判断も必要になります。
土地は形状や周囲の状況などによって評価額が変わるため、相続した土地をどのように評価するかによって土地の相続税評価額が変わってきます。土地の評価方法がわからないなどお困りのときは、相続専門の税理士に依頼すると、土地の状況に応じて適正に評価してもらうことができます。



