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相続税

最終更新日:2021.04.20

続税の障害者控除とは?
利用要件や控除額の計算方法
・必要書類を解説

このコンテンツでわかること

  • ■ 相続税の障害者控除を適用する際の要件を知ることができる
  • ■ 相続税の障害者控除を計算する方法について知ることができる
  • ■ 相続税の障害者控除の適用を受ける際の必要書類や注意点がわかる

亡くなった人の財産を相続した人には、相続税が課されます。ただ、相続人の状況によっては、一律に相続税を課すことが適切ではないと判断される場合もあります。そのようなケースには、様々な控除制度を適用して、相続税がかからないようにしたり、相続税額を軽減したりすることができます。

相続税の障害者控除も、そのような控除を受けられる制度の1つです。はたして、相続税の障害者控除とはどのような制度なのでしょうか。

相続税の障害者控除とは

相続税の障害者控除とは、相続人の中に85歳未満の障害者がいる場合に適用を受けることができる制度です。被相続人が障害者である場合ではないため、勘違いしないようにしましょう。

障害者控除の適用を受けられると、計算された控除額は、相続税の額からマイナスすることができます。そのため、障害者控除が適用できると、相続税の額を大幅に減額することができます。中には、障害者控除の対象となった相続人が納めるべき相続税額がゼロになることもあるのです。

この点は、相続税の基礎控除などが、相続財産の評価額から控除するのとは計算の仕組みが異なります。障害者控除については、税額控除と呼ばれる制度であることを覚えておくとよいでしょう。

相続税の障害者控除の利用要件

それでは、実際に相続税の障害者控除の適用を受けるためには、どのような要件をクリアする必要があるのでしょうか。大きく4つの要件があるため、そのすべてをクリアしていることを確認しましょう。

相続または遺贈により被相続人の財産を取得したこと

相続税の障害者控除の制度であるため、相続税の対象となる行為を行った人が対象となります。相続人の中に障害者控除の対象となり得る方がいても、相続や遺贈で財産を取得していない場合は、障害者控除は適用できません

財産を取得した相続人が障害者であること

相続税の障害者控除の対象となる障害者は明確な要件が設けられており、その要件に該当しない人は障害者控除の対象になりません。障害者かどうかは相続開始時において判定されるものであり、実際に相続したときや申告するときに判定するものではありません。

障害者控除の対象となる障害者には、一般障害者と特別障害者の区分があります。一般障害者となるのは、以下のような条件に該当する方です。

  1. 知的障害者とされた一定の者のうち重度の知的障害者とされた者以外の者
  2. 精神障害者保健福祉手帳に記載されている障害等級が2級または3級の者
  3. 身体障害者手帳に記載されている身体上の障害の程度が3級から6級までの者
  4. 寝たきりで複雑な介護が必要な者のうち、障害の程度が(1)または(3)に準ずると認定を受けている者
  5. 年齢65歳以上の障害のある者で、障害の程度が(1)または(3)に準ずると認定を受けている者

このほか、戦傷病者手帳の交付を受けている方についての規定があります。

特別障害者となるのは、以下のような条件に該当する方です。

  1. 精神上の障害でものの善悪の区別ができない者や区別できても相応の行動ができない者など一定の者で、重度の知的障害者とされた者
  2. 精神障害者保健福祉手帳に記載されている障害等級が1級の者
  3. 身体障害者手帳に記載されている身体上の障害の程度が1級または2級の者
  4. 寝たきりで複雑な介護が必要な者のうち、障害の程度が(1)または(3)に準ずると認定を受けている者
  5. 年齢65歳以上の障害のある者で、障害の程度が(1)または(3)に準ずると認定を受けている者

このほか、戦傷病者手帳の交付を受けている者や原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の認定を受けている者の規定があります。

財産を取得する障害者が法定相続人であること

相続財産を遺贈により取得する人は、法定相続人とは限りません。むしろ、法定相続人でない人に財産を渡すために、遺言が利用されるといってもよいくらいです。しかし、法定相続人でない人が相続財産を取得した場合は、たとえ障害者に該当しても障害者控除の適用は認められません

財産を取得したときに日本国内に住所があること

国外に居住するような非居住者の相続人については、たとえ障害者に該当しても、障害者控除の適用を受けることはできません。障害者控除の対象となるのは、相続や遺贈により財産を取得した時点で日本国内に住所がある人だけです。

相続税の障害者控除を計算する方法

障害者に該当する方が財産を相続するなど、相続税の障害者控除の対象になることが確認できたら、その金額を求める必要があります。相続税の障害者控除の金額をどのように求めるのか、確認しておきましょう。

障害者控除額の計算式

障害者控除の金額は、一般障害者に該当する場合と特別障害者に該当する場合で異なります。それは、控除額の計算式が以下のように一般の場合と特別の場合とで異なるためです。

  1. 一般障害者の場合
    (85歳-相続開始時点の年齢)×10万円
  2. 特別障害者の場合
    (85歳-相続開始時点の年齢)×20万円

この算式で求めた金額を、相続人別に求めた相続税額から控除し、最終的な納付税額を計算するのです。

障害者の場合、生活するうえで健常者よりお金がかかる場合があり、また親の財産を頼りにせざるを得ないケースがあります。そのため、障害者を配偶者や子に持つ人は、相続人のためにより多くの財産を残しておこうと考えるでしょう。

そのような特別な事情があるにもかかわらず、相続人のために残した財産に通常通りに相続税が課されるのはおかしなことです。そこで、相続人が障害者であるなど一定の場合には、相続税額を控除する制度が設けられているのです。

85歳までの年数の数え方

障害者控除額の計算式の中で、1つポイントになるのは、85歳までの年数の数え方です。この年数を間違えて数えてしまうと、納付する相続税額を誤ってしまうこととなるためです。

85歳になるまでの年数の計算方法は、相続開始時の満年齢を85歳から引くという考え方になります。たとえば、相続人の年齢が56歳4ヶ月であった場合、その人の年齢は満年齢である56歳と考えます。そして、85歳-56歳=29年の計算を行います。この人が一般障害者である場合は、29年×10万円=290万円が障害者控除額となります。また、特別障害者に該当する場合は、29年×20万円=580万円が障害者控除額です。

障害者控除額が相続税額より大きい場合

障害者控除の計算を行うと、かなり大きな金額を相続税額から控除できることが、おわかりいただけるかと思います。実際、障害者控除の金額を計算すると、相続税額より障害者控除額の方が大きくなることもあります。

相続税額より控除税額の方が大きくなると、本来であれば控除できたはずの相続税額が控除しきれず、損をしてしまいます。しかし、余った控除税額がある場合には、その障害者の扶養義務者である他の相続人に発生した相続税から控除することができます

これは、その扶養義務者が相続した財産は、障害者である相続人を扶養するために使われるものと考えられるためです。つまり、障害者本人が相続しても、その扶養義務者が相続しても、障害者のために使われるものであると考えているのです。

また、障害者の扶養義務者が複数人おり、それぞれに相続税が発生している場合があります。この場合は、扶養義務者全員による話し合いにより控除額を決めるか、あるいは相続税額に応じて按分することとなります。

計算例

それでは、実際に障害者控除の適用を受ける場合の計算例を確認しておきましょう。

被相続人と相続人の状況は以下のとおりです。

  • 被相続人は父親であり、母親はすでに他界している

  • 相続人は子供3人であり、そのうち一番下の子供(52歳)が一般障害者である

  • 3人の子供は相続財産を均等に相続し、それぞれ250万円の相続税が発生する

このような状況で、まずは障害者控除の額を計算します。一般障害者の場合の計算式にあてはめると、障害者控除の額は次のようになります。

  • 計算式

  • (85歳-52歳)× 10万円=330万円

次に、障害者である相続人の相続税から障害者控除の額を差し引いて、納付税額を計算します。すると、相続税額250万円に対して障害者控除額は330万円であり、全額が引き切れません。この場合、まずは障害者本人の相続税額はゼロとなります。

ついで、この障害者である相続人の扶養義務者が相続人にいないかを確認します。すると、2人の兄弟はいずれも扶養義務者に該当します。そこで、障害者本人の相続税額から引ききれなかった80万円については、この2人について発生する相続税額から控除できます。2人の間での配分はどのようにしても問題はありませんが、話し合いで決まらない場合は相続税額で按分します。相続税額は2人とも同額であるため、80万円の控除額も均等に40万円ずつに分けたとします。その結果、それぞれの納付税額は250万円-40万円=210万円となります。

相続税の障害者控除を利用する際の必要書類

相続税の障害者控除の適用を受けるためには、相続税申告書の第6表「未成年者控除・障害者控除額の計算書」を作成し、提出します。また、相続税申告書の添付書類として、障害者手帳のコピーなど、その障害の程度を証明する書類が必要となります。

なお、障害者控除の適用を受けることで、すべての相続人について相続税が発生しない場合があります。障害者控除の適用を受けるために、相続税申告書の提出を行うことは要件ではないこととされます。そのため、この場合には、相続税の申告を行う必要はありません。

相続税の障害者控除を利用するときの注意点

最後に、相続税の障害者控除の適用を受ける際に注意すべき点をまとめました。誤って控除を受けることのないように、以下の点をよく確認してから適用を受けるようにしましょう。

以前に障害者控除の適用を受けている場合

以前に相続税の障害者控除の適用を受けたことがある場合、何度も障害者控除の適用を受けることはできません

一般障害者の場合、次の2つの算式のいずれか少ない方の金額が控除額となります。

  1. (85歳-今回の相続開始の年齢)×10万円
  2. (85歳-最初の控除を受けた年齢)×10万円-控除額の合計

特別障害者の場合は、それぞれの算式の10万円の部分を20万円として計算してください。

たとえば、45歳で最初の相続が発生し200万円の障害者控除の適用を受けた人が、50歳で2回目の相続を迎えた場合で考えてみます。この場合、それぞれの算式に数字をあてはめて計算していきます。

  1. (85歳-50歳)×10万円=350万円
  2. (85歳-45歳)×10万円-200万円=200万円

この両者を比較して、より少ない200万円が障害者控除の額となります。

相続開始時に障害者であることが必要

相続税の障害者控除の適用を受けるためには、相続開始時に障害者の要件を満たす必要があります。障害者であることを証明するためには、通常、障害者手帳などを証明書として用いることとなります。ただし、障害者に該当するのに、障害者手帳の申請中の場合は、医師の診断書などを証明書類として用いることもできます。相続開始時に障害者に該当することを必ず確認しておきましょう。

まとめ

相続税の障害者控除は、相続税額から直接控除することができるため、大変大きな節税効果があります

ただし、障害者控除の適用を受けるためには、厳格な要件を満たす必要があります。障害者の要件を満たすことを必ず確認し、そのための書類も準備しておきましょう。

また、申告書を提出する必要がある場合には、障害者控除の計算書類も忘れないように提出しましょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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