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相続税

最終更新日:2023.03.31

続税の基礎控除改正で
なにが変わった?
改正理由や影響も解説

相続税の基礎控除改正でなにが変わった?改正理由や影響も解説

このコンテンツでわかること

  • ■ 相続税の基礎控除が平成27年にどう改正されたかわかる
  • ■ 相続税の基礎控除が改正された理由・背景がわかる
  • ■ 相続税の基礎控除が改正されたことによる影響がわかる
  • ■ 2022年以降も基礎控除改正の可能性があることがわかる

相続税は高額なイメージのある税金ですが、相続財産が以下の基礎控除を超えない限り課税されません。

  • 計算式

  • 相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人の最低人数は1人なので、相続財産が3,600万円(3,000万円+600万円×1人)以下のときは非課税になるということですね。しかし、相続税の基礎控除は過去に何度か改正されており、最低額が6,000万円だった期間もあります。税金の制度改正(税制改正)は今後も続くので、基礎控除がさらに引き下げられる可能性もあるでしょう。

今回は、過去の基礎控除をおさらいしつつ、法改正によってどれだけ相続税に影響が出るか検証してみます。ある程度の資産がある方や、有効な節税対策を検討しておられる方はぜひ参考にしてください。

相続税の基礎控除は平成27年以降に改正された

相続税の基礎控除改正は直近が平成27年1月1日となっており、改正前後で以下のような違いがあります。

  • 計算式

  • 改正前の基礎控除:5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)

  • 計算式

  • 改正後の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

改正前の最低額は6,000万円、改正後は3,600万円になるため、基礎控除の下限に2,400万円もの差が出ています。ちなみに、税制改正はいきなり実施されるわけではなく、まず改正の大枠となる税制改正大綱が公表され、段階的に制度化されていきます。当時の税制改正大綱は平成25年1月24日に公表されているので、情報をキャッチしていれば2年間で相続税対策を行い、改正後も非課税になるよう調整できたでしょう。

相続税の基礎控除が改正された理由・背景

相続税は創設から100年以上経過していますが、もともとは日露戦争の戦費調達が目的でした。現在は「富の再配分」という名目に変わり、貧富の格差を解消する税金という位置づけになっています。また、基礎控除は社会情勢に合わせた調整弁になっており、平成27年の改正には以下の要素が考慮されています。

  • 地価の下落

  • 少子高齢化

  • 消費税の増税

かつての基礎控除はバブル期の地価高騰を反映していましたが、バブル崩壊後の地価下落に合わせて水準を引き下げる必要がありました。また、少子高齢化による財政赤字の解消や、消費税増税(税率5%から8%へ)で国民の不満も高まったため、富裕層への課税強化をアピールする目的もあったようです。

相続税の基礎控除が改正されたことによる影響

相続税の基礎控除は「相続税がかかるかどうかのボーダーライン」になるため、水準が下がると納税額が上がり、課税対象者も増加します。

平成27年の基礎控除引き下げは「相続税の大増税」といわれましたが、納税額と課税対象者にどのような影響があったか、具体的な内容をみていきましょう。

相続税の納税額が増えた

相続財産や相続人の条件が同じでも、基礎控除の水準が下がると納税額は増加します。では、1億円を3人で相続すると相続税がいくらになるか、基礎控除の改正前後を比較してみます。

【改正前】

  • 計算式

  • 基礎控除:5,000万円+(1,000万円×3人)=8,000万円

  • 計算式

  • 相続税の課税価格:1億円-8,000万円=2,000万円

  • 計算式

  • 相続税:2,000万円×税率15%-控除額50万円=250万円

【改正後】

  • 計算式

  • 基礎控除:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

  • 計算式

  • 相続税の課税価格:1億円-4,800万円=5,200万円

  • 計算式

  • 相続税:5,200万円×税率30%-控除額700万円=860万円

同じ条件でも課税価格(相続税がかかる部分の金額)と税率が変わるため、基礎控除改正で相続税は3.44倍に増えています。なお、税率と控除額は国税庁ホームページを参照してください。

相続税の税率(国税庁)

相続税の課税対象者が増えた

平成27年の基礎控除引き下げにより、課税対象者(相続税申告の対象となった死亡者)は約2倍に増加しています。

  • 平成26年度:4.4%

  • 平成27年度:8.0%

国税庁が公表する「令和2年分 相続税の申告実績の概要」によると、令和2年分の課税割合(課税対象者の割合)は8.8%になっています。つまり、約11.3人に1人は相続税の課税対象になっているということですね。

かつて相続税は資産家だけの税金というイメージもありましたが、夫婦共働きで貯蓄を行い、退職金も満額支給されていれば、預金だけで数千万円になるケースがあります。不動産(自宅)や株式なども合わせると、一般的なサラリーマン家庭に相続税が発生する可能性も十分に考えられます。

令和2年分 相続税の申告実績の概要(国税庁)

2022年以降も相続税の基礎控除が改正される可能性がある

過去の税制改正をみると、相続税の基礎控除には景気と地価が大きく影響しています。バブル経済期は不動産価格が異常なまでに高騰したため、先祖代々の土地に高額な相続税がかかり、納税資金を準備するために土地を売却するケースもありました。

現在は土地所有者を救済する必要性がバブル期よりも低くなったため、以下のように「抜本改正前に戻るのでは?」という予測もあるようです。

相続税の基礎控除が抜本改正前に戻る可能性

相続税の基礎控除には以下のような変遷があり、もともとは2,400万円(抜本改正前)が最低額でした。

  • 抜本改正前:2,000万円+(400万円×法定相続人の数)

  • 昭和63年1月1日以降:4,000万円+(800万円×法定相続人の数)

  • 平成4年1月1日以降:4,800万円+(950万円×法定相続人の数)

  • 平成6年1月1日以降:5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)

  • 平成27年1月1日以降:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

かつては高水準だった相続税の基礎控除ですが、バブル景気用だったとみるべきでしょう。地価が急激に高騰する可能性が低くなった現在、基礎控除が抜本改正前の水準に戻ることも十分に想定されます。

政府が目指す課税方式は相続税と贈与税の一体化

一般的な生前贈与(暦年贈与)を行った場合、相続開始前3年以内の贈与分は相続財産に加算しなくてはなりません。相続税を意図的に逃れる行為(租税回避行為)を防止するためですが、諸外国では生前贈与加算の対象期間を以下のように設定しています。

  • イギリス:7年

  • ドイツ:10年

  • フランス:15年

  • アメリカ:一生涯

令和5年度税制改正大綱では、生前贈与加算の対象期間を3年から7年に延長しているため、相続税と贈与税の一体化に向けた具体的な動きとみてよいでしょう。税制改正は段階的に施行されるケースが多いので、今後は10年や15年に延長となり、最終的にはアメリカの課税方式になるかもしれません。

まとめ

相続税の基礎控除に適用要件はないため、誰もが相続財産から一定額を差し引くことができます。ただし、水準を引き下げれば課税対象者が一気に増加するため、「我が家の財産は3,600万円以下だから安心」というわけにはいかないでしょう。生前贈与で財産を減らせば相続税も低くなりますが、生前贈与加算の対象期間が延長されると、7年経過しなければ節税効果を得られないことになります。

税制改正は贈与税対策や相続税対策に影響するので、ある程度の資産がある方は今後の動向に注目し、改正内容に応じて軌道修正する必要があるでしょう。2023年は税制の大きな転換期になる可能性が高いので、効果的な相続税対策を行いたい方は税理士にも相談することをおすすめします。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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