相続税の申告・納付期限
相続税の申告・納付は同一期限日になっており、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内です。
たとえば、1月1日に被相続人が亡くなり、翌日の1月2日に相続開始を知ったときは、1月3日から数えて10カ月後の11月2日が申告・納付の期限日です。
ただし、申告・納付期限日が土日や祝日、年末年始と重なった場合は、税務署が開庁する次の平日に期限が移ります。また、相続税は現金一括納付が原則になっているため、申告・納付期限までに納税資金を準備しなくてはなりません。
相続税を滞納するとどうなる?
相続税を滞納すると、延滞税や加算税というペナルティが課せられます。
延滞税は遅延利息にあたるため、滞納期間が長くなるほど納税額も高くなってしまいます。また、相続税の軽減措置も適用できないので、以下のような影響が発生するでしょう。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できない
相続税を期限内に申告・納付しなかった場合、以下の特例措置を適用できなくなる可能性があります。
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配偶者の税額軽減
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小規模宅地等の特例
配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者に限り1億6,000万円まで、または法定相続分の範囲内までは相続しても相続税がかからない特例です。
また、被相続人の自宅を配偶者や同居親族などが相続する場合、小規模宅地等の特例を適用すると、敷地面積330㎡までの相続税評価額を80%減額できます。
どちらも節税効果の大きな特例ですが、遺産分割協議で相続人が確定していることや、相続税の申告・納付が要件です。なお、遺産分割協議が難航している場合、ひとまず法定相続分どおりの分割で仮申告を行い、後で修正申告すると、相続発生時に遡って特例を適用できます。
延滞税
相続税を滞納すると、納期限の翌日から延滞税が発生します。延滞税は相続税の本税とは別に納付する必要があり、2022年1月1日から2024年12月31日までは以下の延滞割合が設定されています。
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納期限の翌日から2カ月以内の場合:年2.4%(原則的な延滞割合は年7.3%)
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納期限の翌日から2カ月を超えた場合:年8.7%(原則的な延滞割合は年14.6%)
延滞割合はかなり高く設定されており、納期限の翌日から2カ月を超えると約3.6倍の年率になるため、速やかな納付が必要です。また、相続税の申告期限後に修正申告したときや、税務調査で更正・決定処分を受けた場合も、延滞税が発生するので注意しましょう。
過少申告加算税
相続税を本来の税額より少なく申告していた場合、以下の税率で過少申告加算税が発生します。
【追加納付額が当初の相続税額、または50万円のいずれか多い方になり、以下の場合】
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税務調査の事前通知を受け、調査実施前に修正申告した場合:5%
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税務調査の実施後に修正申告または更正を受けた場合:10%
【追加納付額が当初の相続税額、または50万円のいずれか多い方を超える部分】
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税務調査の事前通知を受け、調査実施前に修正申告した場合:10%
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税務調査の実施後に修正申告または更正を受けた場合:15%
ただし、税務調査の事前通知を受ける前であれば、自主的に修正申告すると過少申告加算税は発生しません。
無申告加算税
相続税を申告しなかった場合、以下の税率で無申告加算税も発生します。
【相続税額のうち50万円以下の部分】
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税務調査の事前通知前に自主申告した場合:5%
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税務調査の事前通知を受け、調査実施までに申告した場合:10%
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税務調査後に申告した場合:15%
【相続税額のうち50万円を超え300万円以下の部分】
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税務調査の事前通知前に自主申告した場合:5%
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税務調査の事前通知を受け、調査実施までに申告した場合:15%
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税務調査後に申告した場合:20%
【相続税額300万円を超える部分】
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税務調査の事前通知前に自主申告した場合:5%
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税務調査の事前通知を受け、調査実施までに申告した場合:25%
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税務調査後に申告した場合:30%
なお、災害などの影響で申告できなかった場合など、やむを得ない事情に限り、無申告加算税がかからないケースもあります。
重加算税
相続税を免れるために財産や帳簿類を隠すなど、悪質なケースでは以下の重加算税が発生します。
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過少申告の重加算税:35%
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無申告の重加算税:40%
過去5年以内に相続税の無申告加算税や重加算税が課されたときや、前年度や前々年度の国税に無申告加算税などが課された場合、さらに税率が10%上がります。
また、延滞税の計算は通常納期限から1年間のみですが、重加算税になると、1年経過後も延滞税がかかるので注意しましょう。
財産の差押さえ
相続税の滞納が続くと、国税庁に財産を差し押さえられる可能性があります。差押さえの対象は不動産や預貯金、給与などの財産になっており、徴収職員が決定するため、「土地は残しておきたい」などの希望は聞き入れてもらえません。
不動産は競売にかけられて換金処分され、相続税や延滞税に充てられます。給与は一定額差し押さえられ、勤め先に差押通知書が送付されます。
他の相続人が税務署から督促される
相続税には連帯納付義務があるため、滞納を続けると税務署は他の相続人に督促します。自分の相続税を期限内に払っていても、連帯納付義務者は他の相続人の滞納分を負担しなくてはなりません。ただし、連帯納付義務者の負担額は、相続した財産の額が上限です。
相続税を払えないときの対処法
相続税を納期限までに払えないときは、以下の対処法を検討してください。
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リースバックによる納税資金の準備
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売却物件のつなぎ融資
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延納
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物納
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相続放棄
それぞれ以下のような仕組みになっており、相続財産を手放すケースもあるので、自分に合った方法を選んでおきましょう。
リースバックによる納税資金の準備
リースバックとは、被相続人の自宅を不動産会社などに売却し、売却後に賃貸物件として住み続ける仕組みです。自宅の所有権は不動産会社などに移りますが、まとまった売却代金が手に入るので、相続税の納税資金を準備できます。
また、自宅が賃貸物件になるため、家賃を払わなければなりませんが、固定資産税や都市計画税の納税が不要となり、修繕費などの維持コストもかかりません。リースバックは分譲マンションでも利用できるので、修繕積立金や管理費などの支払いもなくなります。
ただし、売却価格が相場よりも低くなるケースが多く、定期借家契約の場合は契約更新できない可能性があります。建物の築年数が浅く、立地条件もよければ家賃が高くなるため、リースバックは十分な検討が必要です。
売却物件のつなぎ融資
売却物件のつなぎ融資とは、売却予定の土地・建物を担保にお金を借り入れ、不動産の売却代金で返済する融資です。「不動産売却つなぎローン」や「不動産売却前提ローン」とも呼ばれており、売却が完了するまでの間は利息のみ返済する仕組みになっています。
対象不動産を失ってしまいますが、特に売り急ぐ必要はないため、希望価格で売却できれば相続税の納税資金を準備できるでしょう。
ただし、被相続人の自宅を担保にした場合、同居親族は引っ越しが必要になり、融資期間内に売却できなかったときは遅延損害金を請求されるケースがあります。つなぎ融資を扱っていない金融機関もあるので、あらかじめ取引銀行などに確認してください。
延納
相続税の現金一括納付が難しいときは、税務署に延納を申請してみましょう。相続税の延納は5~20年間の分割納付になっており、以下の要件をすべて満たす必要があります。
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相続税の現金一括納付が困難であること
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相続税額が10万円を超えていること
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延納申請書と担保提供関係書類を申告期限までに提出すること
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「相続税+利子税」に相当する額の担保を提供すること
担保は相続人や共同相続人の個人財産、または第三者の財産でも構いませんが、以下の種類に限定されています。
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国債や地方債
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税務署長が確実と認める社債などの有価証券
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土地
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建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
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鉄道や工場などの財団
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税務署長が確実と認める保証人の保証
なお、延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合、担保提供は不要です。
物納
相続税の延納も困難な場合、物納を認めてもらえるケースもあります。物納できる財産には以下の優先順位があり、日本国内にある財産に限られます。
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第1順位:不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式など
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第2順位:非上場株式など、または非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
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第3順位:動産
第1順位の物納財産には社債や株式などの有価証券のうち、金融商品取引所に上場されているものも含まれます。
なお、権利を争っている不動産や、担保設定されている不動産、境界が不明確な土地は物納できません。違法建築の建物や、譲渡制限付きの株式なども物納できないので注意しましょう。
相続放棄
相続税をどうしても払えないときは、相続放棄を検討してみましょう。相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになり、預貯金などの財産や借金を相続できなくなるため、相続税の申告・納税を考える必要がありません。
ただし、相続放棄は家庭裁判所に申し立てる必要があり、期限は相続開始を知った日から3カ月以内です。期限後の相続放棄は原則として認められないので、3カ月の熟慮期間で相続財産をすべて把握する必要があります。
また、熟慮期間中に相続財産を処分した場合、相続を承諾したものとみなされる単純承認が成立するため、相続放棄を受理してもらえなくなります。家庭裁判所が相続放棄を受理した場合は撤回できないので、後で相続税の納税資金になる財産が見つかっても、相続はできません。
まとめ
相続税は滞納処分が厳しくなっており、延滞税や加算税が課せられると、かなり割高な税金を納めることになります。また、相続税などの税金は非免責債権になっているため、自己破産しても納税義務を免除してもらえません。
税務署の督促に応じなかった場合、他の相続人が税負担する可能性もあるので、親族同士の人間関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。相続税を現金一括納付できない場合や、申告期限に間に合わないときは、相続の専門家に相談してみましょう。



