死亡退職金とは
死亡退職金とは、本来であれば労働者が生前に退職金を受け取るはずだったところ、本人が死亡したため、遺族が代わりに受け取る金銭であるため、被相続人の財産とみなして相続税の課税対象とされています。
退職金を受け取った後に亡くなったが、退職金を使い切らずに預金口座に残額があるという場合は、それは死亡退職金ではなく、預貯金として相続財産と扱われます。亡くなったことで支給されたものが死亡退職金です。
死亡退職金を受け取れる人
被相続人(亡くなられた方)の勤め先に退職給付制度がある場合、基本的には遺族に対して死亡退職金が支払われますが、受取人が指定されていることもあります。
死亡退職金は高額になるケースが多く、遺族の生活保障にもなるので、誰がいつ受け取れるのか確認しておくとよいでしょう。
死亡退職金は請求から7日以内に支払われる
死亡退職金の扱いは労働基準法23条に規定されており、原則として請求日から7日以内(土日や祝日含む)に支払われます。
死亡退職金に相続税が課税される理由
死亡退職金はみなし相続財産になるため、相続税の課税対象です。
死亡退職金は被相続人が保有していた財産とはいえないため、民法上の相続財産ではありませんが、税法上は「相続財産とみなす」という扱いになっています。
なお、相続税の課税対象は死亡後3年以内に支給額が確定した退職金のみとなっており、3年経過後は支給を受けた者の一時所得として、所得税が課税されます。
死亡退職金にかかる相続税の計算方法
死亡退職金を受け取ったときは、以下のように相続税を計算します。
死亡退職金の非課税限度額
死亡退職金には以下の非課税限度額があるため、限度額を超えた部分のみ相続税がかかります。
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計算式
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死亡退職金の非課税限度額:500万円×法定相続人の数
法定相続人が配偶者と子供2人の場合、非課税限度額は「500万円×3人=1,500万円」になるため、死亡退職金が1,500万円以下であれば退職金を受け取ることによって相続税負担は増えません。
一方、法定相続人が1人しかいない場合、非課税限度額が500万円になるので、死亡退職金が3,000万円だったときは超過部分の2,500万円に相続税がかかります。
なお、非課税限度額の適用は法定相続人のみとなっており、相続権のない人が死亡退職金を受け取ると、全額が相続税の課税対象になるので注意してください。
死亡退職保険金の課税額の計算
死亡退職金が非課税限度額を超えており、複数の相続人が受け取るときは、以下のようにそれぞれの相続税の課税額を計算します。
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計算式
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(1)非課税限度額×(各自が受け取る死亡退職金÷死亡退職金の総額)
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計算式
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(2)各自が受け取る死亡退職金-(1)
仮に死亡退職金が4,000万円あり、配偶者2,000万円、子供2人が1,000万円ずつ受け取る場合、各自の課税額は以下のようになります。
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計算式
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死亡退職金の非課税限度額:500万円×3人=1,500万円
【配偶者の課税額】
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計算式
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(1)1,500万円×(2,000万円÷4,000万円)=750万円
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計算式
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(2)2,000万円-750万円=1,250万円
【子供1人あたりの課税額】
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計算式
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(1)1,500万円×(1,000万円÷4,000万円)=375万円
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計算式
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(2)1,000万円-375万円=625万円
死亡退職金の課税額合計は「1,250万円+(625万円×2人)=2,500万円」ですが、相続税がかかるかどうかは以下のように正味の遺産額が基礎控除を超えるかどうかで判定します。
正味の遺産額よりも基礎控除が小さいと相続税がかかる
死亡退職金の課税額が2,500万円あり、その他の課税財産が2,000万円ある場合、合計4,500万円が正味の遺産額になります。
正味の遺産額から基礎控除を差し引いた金額に税率を掛けて相続税を計算します。
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計算式
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相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人が3人の場合は基礎控除が「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」になり、正味の遺産額が基礎控除を下回るので相続税は非課税です。ここでの法定相続人の数は、民法上の法定相続人と異なりますので注意してください(後記にて詳述あり)。
死亡退職金を受け取ったときの注意点
死亡退職金を受け取ったときは、以下の点に注意が必要です。遺族が弔慰金を受け取るケースもあるので、相続税が課税される条件もよく理解しておきましょう。
弔慰金も相続税の対象になる
家族が亡くなると、本人が勤めていた会社から弔慰金(葬祭料や花輪代)を受け取る場合があります。
弔慰金には故人の弔いや遺族を慰める目的があり、基本的には非課税ですが、この非課税であることを利用した租税回避を防ぐために、以下の非課税限度額を超える部分には相続税がかかります。
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業務上の死亡の場合:死亡当時の給与3年分に相当する額
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業務外の死亡の場合:死亡当時の給与半年分に相当する額
給与には扶養手当や勤務地手当などを含めますが、賞与は含めないので注意しましょう。
死亡退職金は相続放棄しても受け取れる
相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになり、現金や預貯金、不動産や借金などの権利義務を承継することができなくなりますが、死亡退職金は本来の相続財産ではないため、相続放棄しても受取人に指定されている場合、問題なく受け取れます。
死亡退職金は受取人の固有財産になるため、相続人であるかどうかは関係なく、受け取った後に遺産分割の対象にもなりません。
死亡退職金の非課税限度額は養子も含めて計算する
養子は養親の法定相続人になるため、死亡退職金の非課税限度額や、相続税の基礎控除を計算するときは、必ず人数に含めて計算しましょう。ただし、養親に実子がいるかどうかにより、計算に含める人数が以下のように変わります。
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実子がいる場合:養子の人数は1人まで
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実子がいない場合:養子の人数は2人まで
なお、相続放棄した人がいる場合、放棄がなかったものとして非課税限度額や基礎控除の計算に含めます。
死亡退職金の分割には贈与税がかかる可能性あり
死亡退職金を受け取った後に他の相続人と分割した場合、贈与税がかかる可能性があります。たとえば、退職給与規定で配偶者が死亡退職金の受取人に指定されていたものを、遺産分割のつもりで配偶者が子供に一部を渡すケースが考えられるでしょう。
しかし、死亡退職金は配偶者の固有財産になるため、一部を子供に渡すと、遺産分割ではなく贈与に該当するため注意しなくてはなりません。
贈与(暦年贈与)の基礎控除は年間110万円になっており、控除額を超えた部分には贈与税がかかるため、子供に申告・納税義務が発生します。
なお、例えば不動産を相続し、代償金の支払いに死亡退職金を使ったときは贈与に該当しません。ただし、支給される代償金の額が代償金を支払う人が相続により取得した財産(この例だと不動産)の額を超えていない必要があります。
相続税の申告期限は10カ月以内
非課税限度額を超えた死亡退職金とその他の財産が基礎控除を超えている場合、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に相続税を申告・納税しなければなりません。申告期限を過ぎると延滞税や無申告加算税が発生し、納税額が割高になるため注意しましょう。
遺産分割協議がまとまらず、相続税の申告期限に間に合わないときは、ひとまず法定相続分どおりに財産を取得したとみなし、未分割の状態で申告を行い、「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に税務署に提出します。
申告期限後3年以内に遺産分割協議が成立した場合、修正申告や更生の請求により、本来納めるべき相続税の額に調整できます。
死亡退職金と特別受益の関係性
特別受益とは、生前贈与や死因贈与、遺贈(遺言書による財産承継)により、一部の相続人のみが受けた特別な利益です。
たとえば、生前にマイホームの購入資金などを贈与された親族がいる場合、相続時には他の相続人から特別受益を主張される可能性があるでしょう。
一方、死亡退職金は贈与や遺産分割の対象ではないため、原則として特別受益に該当するかどうかを考慮する必要はありません。ただし、少数ながら死亡退職金を特別受益として認めた判例があるので、個別事情によっては遺産分割に影響します。
死亡退職金と特別受益の関係性で親族間の意見が分かれたときは、まず弁護士に相談してください。
死亡退職金は遺留分請求の対象にならない
法定相続人(兄弟姉妹を除く)は民法によって遺留分が保障されているため、法定相続分の1/2や1/3を必ず取得できるようになっています。
遺言書で遺留分を侵害されたときは、侵害している相手に現金返還を請求できますが、死亡退職金は対象外になるため注意が必要です。
まとめ
死亡退職金の扱いを整理すると、退職金規定で受取人の指定がない場合は相続財産となり、指定されているときは受取人の固有財産になります。相続財産は遺産分割の対象ですが、受取人の固有財産は分割不要になるため、死亡退職金の性質を理解していなかった場合、相続争いになる可能性があるでしょう。
また、死亡退職金は相続税の課税対象になっており、受取人の指定の有無に関わらず、一定額を超えた場合は期限内に申告・納税しなければなりません。死亡退職金の扱いや相続税申告などに困ったときは、遺産相続の専門家に相談しましょう。



