夫婦間の贈与でも贈与税がかかる
夫婦間の贈与であっても、贈与税の基礎控除を超えたときは贈与税がかかります。基礎控除は年間110万円となっており、同じ年の1月1日~12月31日までに受け取った財産が110万円を超えると、超過部分に贈与税がかかります。
たとえば、1年間に200万円の贈与があった場合、90万円(200万円-基礎控除110万円)が贈与税の対象となり、贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日までに申告・納税が必要です。
夫婦間の贈与も税務署に申告を
国税庁が公表する「令和4事務年度における相続税の調査等状況」によると、調査件数2,907件のうち2,732件に非違(違法行為)があったと発表されており、非違件数の割合は約94%でした。
さらに、非違件数2,732件のうち82.8%(2,263件)が無申告という結果になっています。現金をもらって申告をしなかった場合はもちろん、自分が保険料を負担していない個人年金を受給したり、不動産を購入したりしたときに自分の出資額を超えた持ち分を登記した場合も、贈与税の申告をしていないと無申告として扱われます。
このように税務署の捜査能力は非常に高いのですが、財産ごとに調査を受けやすいタイミングがある程度決まっています。
現預金の場合は相続です。相続が発生すると税務署は被相続人と相続人の過去数年の通帳の履歴をさかのぼり、不明な入出金を調査します。被相続人の口座から多額の出金があった時期に、相続人の口座残高が増えていると、贈与があったと推測し、贈与税申告がされていなければ、実態を確認します。
不動産の場合は購入時です。不動産を購入した場合、税務署から購入資金はどのように用意したのかを確認する手紙が届きます。「その不動産を購入できるだけの所得がある」「親から相続した資金がある」「贈与された資金がある」などの理由を尋ね、無申告の購入資金の援助がなかったか調べます。
さらに、個人年金保険で保険会社が年金を支払うと、契約者と年金受取人が別人の場合、保険会社は税務署に支払調書を提出する義務が設けられています。
夫婦間贈与で贈与税がかからないケース
夫婦間の贈与に贈与税がかからないケースをみていきましょう。
夫婦間で生活費や治療費などを渡した場合
夫婦の一方が働いていなかったり、自身の収入だけでは生活できなかったりする場合、もう一方が扶養義務者となります。そのため、生活費や医療費などを負担してもらっていても、贈与税はかかりません。
ただし、贈与税がかからないのは、通常の生活に必要と認められる範囲に限られるため、高価な財産を購入してもらった場合、贈与税がかかる可能性があります。
1年間の贈与が110万円以下だった場合
日常の生活に不必要な金品であっても、1年間の贈与が110万円以下の場合、基礎控除を超えないため贈与税はかかりません。
しかし、基礎控除は贈与者につき110万円ではなく、贈与を受けた受贈者が1年間に受け取った財産額につき110万円のため、ひとりの人が110万円を超えて贈与を受けると贈与税がかかります。
たとえば、同じ年に配偶者から50万円、自分の親から100万円の贈与があったときは、受け取った財産の合計額が150万円であり、基礎控除110万円を超えるため、贈与税の申告と納付の義務が発生します。
夫婦間贈与で贈与税がかかるケース
夫婦間で贈与したつもりがなくても、贈与税がかかるケースがあります。
具体的には、夫婦間で以下のような財産や権利の移転があった場合です。
生活資金を投資に使った場合
夫婦間で生活費として受け渡した金銭の一部または全額を投資に使うと贈与税の課税対象になります。
たとえば、夫が妻に生活費を渡しており、その一部で妻が株式や投資信託などを購入すると、生活費ではないお金を受け取ったことになるため、贈与とみなされます。
また、就労していない妻が夫から生活費を受け取っており、一部を妻名義の預金口座で管理している場合(いわゆる「へそくり」)、夫が亡くなったときは夫の相続財産として相続税が課税されます。
高額なプレゼントを贈った場合
結婚記念日に夫婦間で高額なプレゼントを贈った場合、110万円を超えると贈与税がかかります。
また、夫の全額負担で車を購入し、妻名義にしたときも贈与とみなされます。出資者と名義人が一致しない場合、価格が110万円を超えると贈与税がかかるため注意が必要です。
不動産の取得費と持分の割合が異なる場合
夫婦で不動産を購入した場合、取得費の負担割合と所有権の持分割合が異なっていると、贈与税がかかるケースがあります。
たとえば、夫が5,000万円支払って不動産を購入し、夫婦の持分割合を1/2ずつで登記した場合、夫が妻へ2,500万円分の所有権を贈与したことになります。
また、夫婦が半分ずつ負担して不動産を購入し、それぞれ1/2の持分割合にした場合でも、後で夫2/5、妻3/5などに変更すると、1/5が夫から妻への贈与とみなされます。
生命保険の契約者・被保険者・受取人がすべて異なる場合
生命保険は、保険料の負担者と被保険者、保険金の受取人が一致しない場合、保険金の受取人に贈与税がかかります。
【契約形態の一例】
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保険契約者(保険料の負担者):夫
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被保険者:子供
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保険金の受取人:妻
被保険者である子供が亡くなり、妻が死亡保険金を受け取った場合、夫から妻への贈与とみなされます。また、夫から妻に保険契約者を変更するケースでも、一度保険契約を解約して妻が解約返戻金を受け取ると、夫が妻へ贈与したことになります。
死亡保険金には相続税や所得税がかかるケースもあり、それぞれ税負担が異なるため、契約段階でしっかり確認しましょう。
贈与税の配偶者控除の適用要件と申告に必要な書類を
一定の要件を満たした夫婦には贈与税の配偶者控除(通称、おしどり贈与)という控除が認められています。贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が長い夫婦間で、居住用不動産またはその取得費を贈与した際に2,000万円まで非課税で贈与できる制度です。
夫婦間での居住用財産の贈与は、自身が亡くなった後の配偶者の生活を保障するために行われるケースが多いため、この非課税措置が設けられました。配偶者控除は基礎控除とは別枠のため、合わせて2,110万円まで非課税で贈与できます。
配偶者控除を使わずに2,110万円を贈与すると、贈与税が750万円もかかるため、適用できれば大きな節税効果が期待できます。
配偶者控除を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
適用要件
贈与税の配偶者控除を適用するには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。
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婚姻期間が20年以上あること
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国内の居住用不動産、または国内の居住用不動産の購入資金であること
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贈与で取得した居住用不動産に翌年3月15日まで居住し、その後も居住の見込みがあること
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過去同じ配偶者との間で贈与税の配偶者控除を適用していないこと
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贈与税の申告すること
贈与税の配偶者控除が適用できるのは同じ配偶者間では1回になっています。配偶者控除の適用によって納税額が0円になる場合でも、贈与税申告は必要です。
申告に必要な書類
配偶者控除を適用するときは、贈与税申告の際に以下の書類を提出します。
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贈与税申告書
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受贈者の戸籍謄本または抄本
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受贈者の戸籍の附票の写し
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居住用不動産の登記事項証明書
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居住用不動産の固定資産評価証明書(金銭贈与の場合、売買(工事請負)契約書、領収書等の写し)
贈与税申告書は最寄りの税務署窓口、または国税庁のホームページで入手してください。ただし、申告先は受贈者の住所地を管轄する税務署です。
受贈者の戸籍謄本などは本籍地の市町村役場で取得できますが、贈与日から10日経過後に作成されたものである必要があるので注意しましょう。
注意点
贈与税の配偶者控除を適用すると、最大2,110万円を非課税贈与できます。ただし、居住用不動産を贈与した場合、不動産取得税と登録免許税がかかります。
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不動産取得税:固定資産税評価額×税率3%
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登録免許税:固定資産税評価額×税率2%
配偶者控除を利用して居住用不動産を贈与するときは、不動産取得税や登録免許税の負担も考慮しておきましょう。
また、配偶者控除を知らずに通常の贈与として申告・納税したときは、「更正の請求」という手続きをすることで配偶者控除を適用できるため、納め過ぎの税金を還付してもらえます。更正の請求には期限があり、贈与税の法定納期限から6年以内の手続きが必要です。
まとめ
夫婦間の贈与であっても、一定額を超えると贈与税がかかります。生活費の受け渡しは非課税ですが、株式投資や投資信託の購入に使うと、贈与税が発生する可能性もあります。
不動産の所有権移転にも贈与税がかかるケースがあるため、登記のときに出資額と持分割合は必ず一致させましょう。相続で不動産を取得すると不動産取得税は非課税となり、登録免許税の税率も0.4%に軽減されます。
また、生前に贈与していなくても配偶者が相続する場合、1億6,000万円または法定相続分の範囲内まで相続税がかからない「相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)」が適用できます。そのため、生前贈与する場合と相続で取得する場合の税負担額の比較検討も必要です。
夫婦間で贈与すべきかどうか迷ったときは、相続専門の税理士に相談してみましょう。



