税務調査の連絡を受けてから当日までに準備すること
相続税の税務調査は、事前に税務署から連絡があり、日程を調整した上で行われます(相続税申告を自分で行っている場合は納税者に、税理士に依頼している場合は申告を担当した税理士へ連絡があります)。
調査を受けるかどうかは任意とされていますが、正当な理由なく調査に協力しないと懲罰の対象となる可能性があるため、連絡があったら調査に協力するようにしましょう。
日程を調整したら当日までに以下の内容を確認しておきましょう。
申告書に記載した内容
まず、相続税申告書の控えで申告した内容を確認しておきましょう。相続税の申告書は様式や記入項目が多いため、計算ミスや記入漏れなどがないかチェックしましょう。
相続税申告を税理士に依頼していた場合は、担当税理士と共に確認をすることをおすすめします。各種控除や小規模宅地等の特例などの適用を受けている場合、特例の要件を満たしていたかどうかのチェックも必要です。
相続財産の洗い直し
相続税申告では、財産調査が不十分なまま申告してしまっているケースも考えられるため、税務調査の前に以下のような相続財産を洗い直しておきましょう。
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被相続人の預貯金口座や証券口座
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被相続人が入金していた家族名義の預金口座
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被相続人の自宅に保管されていた現金
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相続の際に受け取った死亡保険金
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貴金属や骨董品など
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被相続人の所有していた不動産
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相続または遺贈により財産を取得した人への相続開始前7年以内の贈与財産
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相続時精算課税適用の贈与財産
相続税申告の際に見落としていた口座や申告するべき財産がないか慎重に調べましょう。
また、死亡時に被相続人の名義でなくても相続税の計算に含めなければいけない財産もあり、被相続人が家族名義で積み立てていた財産や死亡保険金、相続または遺贈により財産を取得した人が生前に受けた贈与財産、相続時精算課税制度を適用した贈与財産が該当します。このような財産も見落としていないか確認しましょう。
相続財産の証明資料を揃える
税務調査の当日は相続財産の状況を聴取されるため、以下の証明資料を揃えてください。
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相続税申告書に添付した資料の原本
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被相続人および相続人の預金通帳(過去の通帳も含む)
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不動産の売買契約書や登記識別情報、登記事項証明書など
古い通帳を処分している場合は、金融機関に取引明細証明書を請求して、高額な引き出しについては使途も調べておきましょう。
お金の動きを把握しておけば、税務調査官から「何を目的とした出金なのか?」などの質問があっても、スムーズに回答できます。
相続税の税務調査当日の流れ
相続税の税務調査当日は以下のような流れになっています。
- 税務調査開始
- 午前中の税務調査
- 昼休憩
- 午後の税務調査
- 調査終了
税務調査は午前10時から1日がかりで行われることが一般的です。1日で調査が終わらない場合は日をあらためて調査が行われます。
相続税申告を税理士に依頼している場合は、税務調査の連絡があった段階で相談し、調査当日の立ち会いを依頼しておくとよいでしょう。
税務調査開始
相続税の税務調査は午前10時からスタートすることが多いため、税理士に立ち会いをしてもらえる場合は10時までに調査についての打ち合わせをしておきましょう。打ち合わせでは税理士が想定問答や注意点を教えてくれるはずです。
また、税務調査官から資料の提示を求められる場合に備え、預金通帳や銀行印、不動産の登記識別情報や保険証券などの保管場所を確認しておきましょう。
午前の税務調査
税務調査官2人が自宅に到着すると、最初は雑談からスタートします。雑談は10分程度のことが多く、続けて被相続人に関するヒアリングがはじまります。
被相続人の生い立ちや職歴、交友関係や趣味、蓄財の方法や収入の状況などが聞かれます。このヒアリングをしているうちに午前の税務調査が完了します。税務調査の質問には基本的に自分で答えなければなりませんが、想定外の質問があったときは、税理士に尋ねても大丈夫です。
お昼になると税務調査官はいったん家を離れるため、昼食を用意する必要はありません。
昼休憩
午後の税務調査は13時頃に再開します。午後のヒアリングに備え、わからないことがあれば休憩中に税理士に確認しましょう。
午後の税務調査
午後の税務調査は資料のチェックがメインになり、以下の書類の提示を求められます。
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被相続人と相続人の預金通帳
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印鑑および印影
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その他の資料
調査官は金融機関などに照会をかけて、事前に被相続人と相続人の資金移動を確認してきますが、税務調査当日は通帳のメモ書きなどをチェックします。
たとえば、通帳の出金欄に「長男へ」などのメモ書きがあるのに、贈与税の申告がなされていない場合、無申告を指摘される可能性があります。
調査終了
相続税の税務調査が終了すると、調査官から「質問応答記録書」への署名押印を求められます。署名押印は任意ですが、拒否すると「何か隠しているのでは?」と疑われる可能性があるため、内容に誤りがなければ快く応じたほうがいいでしょう。
また、「相続財産以外の所有財産」という様式の書類を渡された場合は、相続とは無関係の財産を記載し、後で税務署に提出しておきましょう。
ここまでが税務調査の一般的な流れになっており、おおむね15時頃に終了します。
税務調査でよく聞かれること
相続税の税務調査では、被相続人や相続人に関する情報、預金などの情報をよく聞かれます。いずれも申告漏れや過少申告などの判断材料になるため、不用意な回答をしないように注意してください。
被相続人の経歴
相続税の税務調査が実施されると、被相続人の経歴に関して以下のような質問がよく聞かれます。
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被相続人の最終学歴
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職業や職制上のポジション
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住所移転の履歴
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退職時の職業と退職金
最終学歴や職業は被相続人の資産形成に大きく関わるため、ほぼ確実に聞かれる項目です。転勤に伴って住所が変わると、現地の金融機関で預金口座を開設しているケースもあるため、住所移転の履歴も聞かれるでしょう。
退職金については、生前にいくら受け取っており、その後どのように使ったかを聞かれる場合があります。
被相続人の晩年の状況
被相続人の死亡原因や晩年の状況を聞かれた場合、税務調査官は本人が認知症であったかどうかを確認しています。
具体的には、以下の内容が聞かれます。
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死亡原因
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亡くなった病院またはかかりつけの病院
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死亡前の判断能力
判断能力が低下してからの生前贈与は無効となる可能性があります。贈与契約が無効と判断された場合、贈与財産は相続財産として相続税の計算に加算しなければいけません。生命保険の加入や不動産売買についても同様に、判断能力があるうちに契約したかどうかが聞かれます。
被相続人の趣味や交友関係
相続税の税務調査では、被相続人の趣味や交友関係についてもよく聞かれます。たとえば、被相続人の趣味がゴルフだった場合、ゴルフ会員権を購入していたかどうかを確認されます。
被相続人がギャンブルや交際に散財するタイプであれば、預金の引き出しが多くても不自然ではないため、税務調査官も納得しやすいようです。
相続人に関する情報
相続人については、税務調査官から以下の質問を受けるケースがあります。
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職歴や年収
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氏名や年齢
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被相続人との関係
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相続人の固有財産
年収500万円程度の相続人が1億円の預貯金を保有しているなど、入手経路が不明確な財産がある場合、どのように入手したのか、宝くじに当選したのか、今回以外の相続があったのか、贈与を受けた場合、贈与者は誰なのかなどをヒアリングされます。資産状況の確認は法定相続人以外も対象となり、被相続人の孫や兄弟姉妹にヒアリングする場合もあります。
不動産に関する情報
不動産については、購入資金や小規模宅地等の特例に関して以下の質問がされます。
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自宅の購入時期や購入代金の原資
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被相続人の自宅に同居していたかどうか
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被相続人が老人ホームに入居していたかどうか
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自宅や収益物件の評価額
相続人が自宅を購入している場合、購入資金を生前贈与で受け取っていないかなども確認されます。被相続人の自宅を相続し、小規模宅地等の特例を適用した場合は、適用要件を満たしているかの確認のために、相続開始前から同居していたかどうかなどが聞かれます。
また、賃貸アパートなどの収益物件は、貸家建付地として評価額の減額を受けられるため、賃貸借契約の実態を確認されます。
預金に関する情報
相続税の税務調査では「名義預金」があるかチェックするために、相続人の預金口座について以下のような質問がよくなされます。
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預金通帳や印鑑、キャッシュカードを誰が管理していたか
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遠方の金融機関で口座開設した目的
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預金口座の主な使途は何か
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生前贈与で取得した口座があるか
名義預金とは、口座の名義人と管理・出資者が異なる口座のことです。預金通帳を被相続人が管理しており、預金の原資も被相続人のお金であれば、相続人名義の口座であっても被相続人の財産として相続税の課税対象となります。
相続税の税務調査の対象とならないための対策
相続税の税務調査の対象となってしまうと、追加の税金が発生してしまう可能性があるだけでなく、事前準備から調査終了までの間、多大な時間と労力を要します。調査の対象とならないためには申告の段階から以下のように対策が必要です。
相続財産を正確に把握する
被相続人の預貯金や不動産などの相続財産を正確に把握して申告を行うことで、税務調査を受ける可能性を抑えることができます。
そもそも税務調査の目的は財産隠しや申告漏れの是正であり、申告内容に問題がなければ調査に入る必要がなくなるためです。財産調査に不安がある場合は、税理士などの専門家に財産調査を依頼することも検討してください。
相続税申告を税理士に依頼する
相続税申告を自分でするより、税理士に依頼した方が税務調査を受ける可能性を抑えられます。
相続税申告には、財産の評価額や相続税額など非常に複雑な計算が求められるため、慣れていない人が行うとミスが起きやすいのが実情です。その点は税務署も把握しており、税理士の署名のない申告書は重点的に確認されるため、税務調査の対象となりやすくなってしまいます。
また、税理士にも専門分野があり、相続を専門としていない税理士もいるので、依頼する際は相続を専門としている事務所かどうかも確認しましょう。
まとめ
相続税の税務調査が実施される場合、税務署は相続人ですら知らない財産を把握している可能性があります。調査官の質問に答えられなかったり、虚偽の回答があったりすると、申告漏れなどをさらに厳しく追及されることになります。税務調査対策は申告段階から始まっているという認識で、不安な場合は税理士に相談するようにしましょう。
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