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相続税

最終更新日:2021.04.20

なき子特例とは?
小規模宅地等の特例が使える
適用要件や必要書類について解説

家なき子特例とは?小規模宅地等の特例が使える適用要件や必要書類について解説

このコンテンツでわかること

  • ■ 家なき子特例の仕組み
  • ■ 家なき子特例の適用要件
  • ■ 家なき子特例の適用を受けるための必要書類

家なき子特例とは、被相続人と同居していない親族でも一定の要件を満たす場合に、相続税の計算において、被相続人が居住していた宅地の評価額を330㎡まで8割減額できる小規模宅地等の特例の適用を受けられるケースを指す通称です。

この記事では、小規模宅地等の特例の適用を受けられるケースの一つである「家なき子特例」について、制度の概要や手続きに必要な書類などを解説します。

特に注意したい2018年の税制改正についても、事例をもとにわかりやすく解説します。

家なき子特例とは?

被相続人に配偶者も同居人もいない場合は、相続開始前3年以内に自己または配偶者が所有する家屋に居住したことがない親族が一定の要件を満たすと、小規模宅地等の特例の適用を受けられます。

家なき子特例とは制度の特徴を捉えた通称で、税理士などの間で使われ始めた言葉です。持ち家がない、あるいは持ち家に住んでいない人が小規模宅地等の特例の適用を受けられることを指しています。

家なき子特例の趣旨

小規模宅地等の特例は、被相続人の配偶者や同居親族が自宅を相続する場合に、相続税を納めるために配偶者や同居親族にとって生活の基盤となる自宅を売ることになる状況を避ける目的で作られた制度です。

しかし、親と同居していた子供が会社都合で転勤になったり、実家から離れた場所で、借家で生活したりするケースで、別居中に親が亡くなることは珍しくありません。

やむを得ない事情での別居にもかかわらず、別居中の親族が小規模宅地等の特例の適用を受けられないと、いずれ実家に転居する予定だった親族にとっては納得いかないでしょう。

家なき子特例はこのような状況を考慮し、別居中の親族でも同居親族と同じように小規模宅地等の特例の適用を受けられるように規定されたものになります。

家なき子特例の適用要件

下記の(1)から(5)すべてに当てはまる場合、「家なき子」に該当します。

【家なき子特例の適用要件】

  1. 被相続人に配偶者がいない
  2. 被相続人の自宅に同居していた法定相続人がいない
  3. 自宅を取得する別居親族は、相続開始前3年以内に、自己またはその配偶者、3親等内の親族、特別の関係がある一定の法人が所有する家屋に住んだことがない
  4. 自宅を取得する別居親族は、相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがない
  5. 自宅を取得する別居親族は、相続税の申告期限まで相続した宅地を所有する

被相続人の配偶者と同居親族がいない

家なき子特例を適用できる要件は、被相続人の配偶者がいないことであるため、被相続人が生前に婚姻していた場合は、被相続人の相続が2次相続のとき、上記(1)の要件に当てはまります。

同居親族がいても適用できるケース

被相続人の孫など、法定相続人以外の「親族」が被相続人と同居している場合、自宅を取得する別居親族は上記(2)の要件に当てはまります。

相続開始前3年以内に持ち家に住んだことがない

自宅を取得する別居親族が、自分や自分の配偶者などの持ち家に相続開始前3年以内に住んだことがなければ、別居親族は上記(3)の要件に当てはまります。

相続開始前3年よりも前に、持ち家に住んでいた時期があったとしても、その持ち家を賃貸に出すなどして相続開始前3年以内に住んでいなければ、家なき子特例の適用を受けられます。

相続開始時に住んでいる家を過去に所有していたことがない

自宅を取得する別居親族が相続開始時に住んでいる家は、他人が所有する賃貸物件などに限ります。つまり、その家を別居親族が過去に所有していないことが上記(4)の要件を満たすことになります。

たとえば、別居親族が相続開始時に住んでいる家を過去に所有し、その家を4親等の親族などに売却して住んでいる場合、相続開始時に住んでいる家を所有していないものの上記(4)の要件には当てはまりません。

特例を適用する宅地を相続税の申告期限まで所有し続ける

自宅を取得する別居親族には、居住要件はありません。相続税の申告期限まで被相続人が居住していた自宅敷地を売却せずに所有し続けることで、上記(5)の要件に当てはまります。

2018年の税制改正で適用要件がより厳格に

かつての家なき子特例は、本来の趣旨から逸脱した作為的な相続税逃れとしての利用が横行したため、2018年度税制改正で見直され、改正前よりも家なき子特例の適用要件が厳しくなりました。

【改正前の家なき子特例の適用要件】

  1. 被相続人に配偶者および同居法定相続人がいない
  2. 相続開始前3年以内に日本国内に別居親族または別居親族の配偶者の所有する家屋に居住したことがない
  3. 相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有していること

たとえば、別居親族である子供がすでにマイホームを所有している場合、本来であれば小規模宅地等の特例の適用は受けられません。

しかし、相続税の負担を避けるために相続人の子供(被相続人の孫)へ遺贈することで、「家なき子」である状態を作り出すケース(孫は親の持ち家に住んでいるため「家なき子」に該当)や、別居親族のマイホームを親族や同族会社などに売却して「家なき子」である状態を作り出すケースなどの手法がはやりました。

家なき子特例は、やむを得ず実家を離れていたケースの救済を目的としています。そのような制度趣旨と合致しない適用を防止するため、上記(2)の要件に「3親等内の親族」と「特別の関係にある法人」の持ち家が追加されました。

また、たとえば別居親族のマイホームを4親等の親族(3親等内の親族に該当しない親族)などに売却し、その売却した家を借りて3年超住み続けると、上記(2)の要件を満たしてしまうため、それを封じるべく、「相続開始時に住んでいる家を過去に所有したことがない」という要件も追加されています。

家なき子特例の必要書類

家なき子特例の適用を受けるには、被相続人と同居していないことや賃貸物件に居住していることを証明するため、登記事項証明書や賃貸借契約書なども必要となります。

  • 相続税の申告書

  • 被相続人の戸籍謄本(相続開始日から10日を経過した日以後に作成されたもの)

  • 図形式の法定相続情報一覧図の写し

  • 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し

  • 相続人全員の印鑑証明書

  • 相続開始前3年以内における住所または居所を明らかにする書類(戸籍の附表の写しなど。特例の適用を受ける人がマイナンバー(個人番号)を有する場合には提出不要)

  • 相続開始前3年以内に居住していた家屋が、自己、自己の配偶者、3親等内の親族または特別の関係がある一定の法人の所有する家屋以外の家屋である旨を証する書類(賃貸借契約書など)

  • 相続開始時において自己の居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないことを証する書類(登記事項証明書など)

国税庁(相続税の申告の際に提出していただく主な書類)

家なき子特例の適用を受けるときの注意点

家なき子特例を適用できれば、自宅の敷地の評価額は8割減額となるため、十分な節税効果を期待できます。主な相続財産が被相続人の自宅だけの場合は、家なき子特例によって納税額が0円となる可能性もあります。

ただし、以下の注意点があります。

家なき子特例の適用を受けるには相続税申告が必要

家なき子特例(小規模宅地等の特例)は、相続税の申告をすることで適用できる特例措置であるため、必ず相続税の申告書を税務署へ提出しなければなりません。

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内であり、申告期限を過ぎると、相続税の本税に延滞税などが加算されるため注意しましょう。

相続税の申告先は、被相続人の住所地を所轄する税務署となり、窓口へ直接提出、郵送提出、e-Tax(電子申告)のいずれかの方法で提出します。なお、申告期限が土日や祝日、年末年始に当たるときは、税務署の翌開庁日が期限となります。

家なき子特例はマンションにも適用できる

小規模宅地等の特例は、一戸建て住宅に適用するものというイメージがあるかもしれませんが、マンションを相続した場合にも適用することができます。

被相続人が居住していたマンションの敷地権を所有していた場合、相続人が家なき子特例の要件に該当すれば、被相続人が所有するマンションの敷地について評価額の減額を受けられます。

まとめ

土地は現預金のように納税資金として直接的に使えないため、さまざまな種類がある相続財産の中でもっとも税負担感の大きい財産といわれています。しかし、小規模宅地等の特例を適用できれば、相続税の負担感も変わってきます。

家なき子特例の適用を受けることで、被相続人の自宅を取得する人が同居親族ではなくても、土地の評価額を8割減額することができるため、将来的に転居を予定している家を手放さずにすみます。親の自宅を引き継ぐ場合には、家なき子特例の適用を受けるとよいでしょう。

ただし、家なき子特例の適用要件には十分注意しましょう。家なき子特例の適用を受けられるかどうか判断に迷う場合は、相続を専門とする税理士への相談をおすすめします。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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【出典元】
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