不動産を生前贈与するメリット・デメリット
相続財産の中でも不動産は高額になるケースが多く、相続税額に大きく影響します。生前贈与できれば相続財産から外せるため、相続の際にはかなり大きなメリットになりますが、次に解説するデメリットもよく理解しておいてください。
不動産を生前贈与するメリット
土地や家屋などの不動産を生前贈与する場合、以下のようなメリットがあります。
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贈与する相手やタイミングを自分で選べる
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計画的かつ確実な財産承継ができる
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相続財産が減少することで相続税の軽減に繋がる
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収益物件の場合は家賃収入を受贈者に移転できる
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贈与税の配偶者控除の特例が使える
生前贈与は本人が生きているうちに行うため、所有者が意図したとおりの財産移転が可能になります。相続は1回限りですが、生前贈与に回数制限はないので、長期にわたる相続税対策もできるでしょう。
不動産を生前贈与するデメリット
現金や預貯金などの贈与と異なり、不動産贈与には以下のデメリットもあります。
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相続税よりも高い税率が適用される
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相続よりも名義変更などの費用が高い
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相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算される
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小規模宅地等の特例が使えない場合がある
贈与の時期や相続時に使える特例も考慮しておくとよいでしょう。
不動産を生前贈与するときの手続き・必要書類
贈与の場合「あげる」「もらう」の意思疎通ができていれば、法的には口約束でも贈与が成立します。しかし高額な財産だけに、後日のトラブルに発展しないよう必要書類はしっかり揃えておきましょう。では、具体的な手続きの流れや必要書類について解説します。
登記事項証明書などの取得
贈与契約を取り交わす前に、手続きに必要な以下の書類を集めておきましょう。
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登記事項証明書
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登記済証(不動産の権利書)
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固定資産評価証明書
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贈与者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
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受贈者の住民票
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固定資産評価証明書
登記事項証明書には不動産の詳細情報が記載されているため、贈与契約書を作成する際に必要となります。取得方法は法務局窓口・郵送・オンライン請求の3パターンがあり、料金がもっとも安いのはオンライン請求です。ただし、土地の場合は地番、建物であれば家屋番号が必要になるので、不明な場合は固定資産税納税通知書の明細書や権利書、または法務局窓口で調べてください。
贈与契約書等の作成
不動産の名義を変更する場合「登記原因証明情報」を法務局へ提出する必要があります。売買の際に作成するケースもありますが、贈与であれば贈与契約書が登記原因証明情報にあたります。贈与契約書には「誰から」「誰へ」「いつ」「何を」贈与するのか明確に記載し、贈与者と受贈者それぞれが署名し、印鑑も押印してください。印鑑は認印でも構いませんが、できれば実印を使った方がよいでしょう。
なお、不動産の名義変更には「所有権移転登記申請書」も必要になるので、あらかじめ法務局窓口やホームページから入手し、記載例をもとに作成しておきましょう。
所有権の移転登記
不動産の名義変更を「所有権の移転登記申請」といい、対象不動産の住所地を管轄する法務局で手続きします。ここまでに準備した書類をすべて提出しますが、どの法務局になるのか不明な場合は以下のリンクから調べてください。
不動産を生前贈与したときにかかる税金・計算方法
贈与が行われた際の税金は贈与税だけと思われがちですが、不動産の生前贈与にはその他の税金も発生します。納付義務は受贈者(財産をもらった人)にあるため、あらかじめ税金の種類を把握し、大まかな税額を計算しておくとよいでしょう。では不動産の生前贈与で発生する税金と、それぞれの計算方法を解説します。
不動産取得税の計算方法
生前贈与によって不動産を取得した場合は、都道府県税となる「不動産取得税」が発生します。不動産取得税は土地・建物ともに3%の税率で、以下のように固定資産税評価額(課税標準)に乗じて計算します。
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計算式
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不動産取得税:固定資産税評価額×3%
固定資産税評価額が1,000万円の場合、不動産取得税は以下のようになります。
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計算式
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不動産取得税:1,000万円×3%=30万円
ただし、居住用の建物以外は税率4%になるので注意してください。なお、建物が建築された年や床面積など一定条件を満たした場合には税額控除を受けることもできます。
登録免許税の計算方法
贈与で取得した不動産には国税となる登録免許税が発生し、税率2%で計算します。
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計算式
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登録免許税:固定資産税評価額×2%
固定資産税評価額が1,000万円であれば、登録免許税は以下のようになります。
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計算式
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登録免許税:1,000万円×2%=20万円
贈与税の計算方法
年間(1月1日~12月31日)の贈与額が110万円の基礎控除を超える場合は、贈与額に対して贈与税が課税されます。税率には一般税率と特例税率があり、兄弟姉妹への贈与や夫婦間贈与は一般税率となりますが、親や祖父母から直系の子や孫へ贈与するときは特例税率を適用します。
では親から子供へ1,500万円の不動産を生前贈与したと仮定し、特例税率を使って贈与税を計算してみましょう。
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計算式
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贈与税:(1,500万円-110万円)×40%-190万円=366万円
贈与税を計算する場合は基礎控除を忘れないように注意してください。また、税率および控除額は以下の国税庁ホームページを参照してください。
不動産の生前贈与が向いているケース
相続と贈与のどちらが有利になるかは条件次第といえますが、所有する不動産が以下の条件に当てはまる場合は、生前贈与を検討してもよいでしょう。
将来の価値が確実に上がる土地
贈与税は、贈与が行われたときの評価額に対して課税されますが、相続税は所有者が亡くなった時点での評価額が基準になります。現在は評価額の低い土地であっても、周辺の宅地開発や道路建設などが予定されていれば、将来の価値は高確率で上がります。また、新型コロナウイルスの影響により評価額が下がっている土地もありますが、原因が解消されると元の価値以上になる可能性もあります。将来の値上がりが確実な場合は、評価額が低いうちに贈与した方が得になるでしょう。
賃貸マンションなどの収益物件
家賃収入が入り続けると相続時の財産が増えてしまうため、賃貸マンションなどの物件は早めに贈与した方が相続税対策として有効です。特に中古マンションの場合は、贈与税や不動産取得税、登録免許税に軽減措置があるため、建物だけの贈与でも有効な相続税対策になります。
婚姻期間が20年以上の夫婦
結婚してから20年以上経つ夫婦の場合、居住用不動産(自宅)の贈与には「贈与税の配偶者控除」が適用できます。贈与額から2,000万円を控除でき、さらに年間110万円の基礎控除も加算できるので、最高2,110万円までの非課税贈与が可能になります。自宅の評価額が2,000万円前後であれば、ぜひ検討しておくべきでしょう。
相続税が発生しない場合
相続税には基礎控除があり、以下のように計算します。
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計算式
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相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続人の最低人数は1人なので、3,600万円以下の財産であれば相続税はかかりません。一方、生前贈与には「相続時精算課税制度」が使えるため、一定条件を満たせば2,500万円までの贈与が非課税になります。
相続時精算課税制度を使って贈与した額は、将来的に相続財産へ算入しますが、相続財産に組み入れても基礎控除内に収まる場合は生前贈与が有利になります。
不動産を生前贈与するときの注意点
相続税対策には大きな効果のある不動産贈与ですが、実際に贈与する場合は次の注意点があります。手法を間違えると相続税対策どころか税額が増えてしまうため、贈与の仕組みや性質を十分に理解しておく必要があるでしょう。
相続開始前3年以内の贈与に注意
不動産所有者の死期が近づいたため、慌てて生前贈与を行うケースがありますが、このような贈与はあからさまな相続税逃れと捉えられます。相続開始前3年以内に贈与した場合、贈与した財産は相続財産に加算されるので注意してください。
分割贈与にはリスクがある
不動産は持ち分(所有権)を分けて少しずつ贈与することも可能です。年間110万円の基礎控除内であれば、10年かけて1,100万円分の持ち分を非課税贈与できますが、贈与者が途中で死亡するリスクも考えられます。贈与者の年齢や健康状態によっては、年数のかかる分割贈与は避けるべきでしょう。
登録免許税の税率に注意
不動産を贈与したときの登録免許税は2%ですが、相続で取得した場合は0.4%になります。税率が5倍違うため、同じ1,000万円の評価額でも贈与と相続では納税額も5倍の差になります。
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計算式
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贈与の登録免許税:1,000万円×2%=20万円
相続の登録免許税:1,000万円×0.4%=4万円
不動産を生前贈与するときは、相続した場合の税額と比較しながら検討するようにしてください。また、登録免許税は現金納付が原則なので、高額な不動産を贈与する場合は相続時精算課税制度を利用する、または十分な納税資金対策も必要になります。
親子間の贈与でも必ず贈与契約書は作成する
不動産に限らず、生前贈与する場合は必ず贈与契約書を作成し、あげる側ともらう側の合意を明らかにしてください。もらう側が合意していない贈与や、もらう側があずかり知らないところで行われた贈与は基本的に成立しません。贈与が認められないなどの事態とならないよう、たとえ親子間であってもきちんと契約書は取り交わしておきましょう。
まとめ
税率だけで相続税と贈与税を比べると、生前贈与は不利に感じられるかもしれません。しかし、高額な不動産は生前贈与した方が有利になることが多く、戸籍などを用意しなくて済むため、相続に比べて手続きの負担も軽くなります。相続税対策として生前贈与する場合はシミュレーションも重要となり、相続時に使える特例なども考慮して、数種類のパターンを計算してみるとよいでしょう。
ただし、生前贈与の有利性やメリットだけに着目すると、相続のときにデメリットが生じる場合もあります。不動産を生前贈与するときは、まず相続に強い税理士へ相談するようにしてください。



