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相続税

最終更新日:2021.11.22

続時精算課税制度を
土地の贈与に利用する
メリット・デメリット

このコンテンツでわかること

  • ■ 相続時精算課税制度の仕組みがわかる
  • ■ 土地贈与に相続時精算課税制度を使う場合のメリットやデメリットがわかる
  • ■ 相続時精算課税制度が向いている7つのケースがわかる
  • ■ 小規模宅地等の特例との関連性がわかる
  • ■ 相続時精算課税制度を利用する流れや必要書類がわかる

元気なうちにできる相続税対策として一般的なものに生前贈与があります。子育てやマイホーム購入など、多くの資金を必要とする世代にとって親からの生前贈与は何よりの助けになるでしょう。しかし財産が現金や預貯金ではなく、土地の占める割合が高いこともあります。評価額の高い土地には高額な相続税がかかってしまうため、できれば生きているうちに贈与したいところですが、「相続時精算課税制度」を使うとどうなるでしょうか?

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母が18歳以上の子どもや孫へ贈与するときに使える制度であり、名称の通り、相続時に精算されて課税される制度です。相続時精算課税制度を適用した贈与財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産へ加算されます。

贈与財産の累計2,500万円までは、贈与税はかからず、2,500万円を超えた部分に一律20%の贈与税がかかります。このとき納めた贈与税は、相続税の納税額から控除でき、贈与税額の方が多かった場合は還付されます。つまり、贈与時の贈与税は仮に納税したものであり、相続が発生したタイミングで精算されます。

相続時精算課税制度は課税のタイミングの先送りであるため、一見すると、相続税対策の効果はなさそうに思えますが、相続時精算課税制度を利用することで有利になるケースがあります。一方、不利になるケースもあるので、相続時精算課税制度のメリット・デメリットの両方を理解しておきましょう。

相続時精算課税制度を土地の贈与に利用するメリット・デメリット

土地の贈与に相続時精算課税制度を利用する場合は、最終的に、相続が発生したときにどのようになるかを念頭において検討しましょう。メリット・デメリットがわかれば、相続時精算課税制度を利用して土地を贈与するか、それとも相続で財産を引き継ぐ方がよいのか判断できるようになります。

相続時精算課税制度を土地の贈与に利用するメリット

土地などの分割しにくい相続財産は揉め事の原因になりやすいため、生前贈与をすることで、相続トラブルの防止にも繋がります。生前贈与は、誰が引き継ぐのかを事前に決めておけるため、遺産分割で揉める心配がありません。

相続が発生した場合、相続時精算課税制度で贈与した財産の評価額は、贈与時点の価額で相続財産に加算されます。近年、マンション価格が高騰していますが、今後さらに値上がりしそうな物件を相続時精算課税制度で贈与することで相続時の負担を抑えることができます。

相続時精算課税制度には非課税枠が2,500万円あり、超過した部分の税率は一律20%です。暦年贈与の場合の税率は、金額が高くなるほど税率も上がる累進課税方式であるため、相続時精算課税制度を利用することで贈与時の納税額を抑えることができます。贈与者が生前に生命保険に加入し、土地の贈与を受けた人を受取人にするといったように生命保険と組み合わせれば、相続時の納税資金の準備も可能です。

贈与税には、相続時精算課税制度の他に、暦年課税と呼ばれる贈与に対する課税方式があります。暦年課税には年間110万円までの非課税枠があり、この非課税枠を利用して贈与することを暦年贈与と呼んでいます。

暦年課税による贈与では、贈与者が亡くなる前3年以内(令和6年からは段階的に7年へ延長)に贈与された財産は相続財産として持ち戻されます。これによって相続税が課税された場合、すでに納めた贈与税額が相続税額を超えるとしても、暦年課税で贈与したときの贈与税額は還付されません。

一方、相続時精算課税制度による贈与では、贈与時に納めた贈与税額が、納付すべき相続税額を超える場合は差額が還付されるため、相続税額が発生しない、あるいは発生しても少額と思われるケースでは相続時精算課税制度の方が有利となります。

相続時精算課税制度を土地の贈与に利用するデメリット

相続税精算課税制度を選択すると、贈与者は暦年贈与の非課税枠を今後一切使えなくなります。また、相続時精算課税制度を利用して贈与をした土地は、相続時に、小規模宅地等の特例の適用もできません。

土地の所有者を変更する場合は、名義変更の登記が必要となり、登録免許税がかかります。このときの登録免許税の税率は、相続よりも贈与の方が高くなります。相続によって土地を取得した場合、不動産取得税は課税されませんが、贈与では不動産取得税が課税されるため、これらも踏まえて十分な検討が必要です。

相続時精算課税制度の利用が向いているケース

以下のようなケースには相続時精算課税制度の利用が向いています。

  • 相続財産が基礎控除内に収まる人

  • 自身の寿命を平均くらいと予想する人

  • 将来的に価値の上がりそうな財産を所有している人

  • 一時的に評価額の下がっている財産を所有している人

  • アパートなどの収益物件を所有している人

  • 事業承継を予定している人

相続財産が基礎控除内に収まる人

相続税には基礎控除があり、以下のように計算します。

  • 計算式

  • 相続税の基礎控除額:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

たとえば法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円になります。土地の評価額と他の財産を合わせて4,800万円以下であれば相続税の基礎控除内に収まっているため、相続税はかかりません。

2,500万円を贈与する場合、暦年課税による贈与税率(一般税率)は50%ですが、相続時精算課税制度を利用すると贈与税もかかりません。相続時精算課税制度を利用して贈与した方が有利になります。

自身の寿命を平均くらいと予想する人

現在、暦年課税による年間110万円以下の贈与は非課税となりますが、贈与者が亡くなる前3年以内の暦年課税の贈与は相続財産に持ち戻されます(令和6年からは段階的に7年に延長)。

相続時精算課税制度においても令和6年(1月1日)から非課税枠が創設されましたが、暦年課税と異なり、年間110万円以下の贈与は相続時に相続財産に加算する必要はありません。相続が発生する心配のある人は、相続時精算課税制度によって年間110万円までの贈与をすることで、相続が発生したときに相続財産へ持ち戻しとなることを避けられます。

将来的に価値の上がりそうな財産を所有している人

土地や株式など、将来的な値上がりを期待できる財産があれば、相続時精算課税制度を利用した贈与が有利になるケースもあります。現時点では評価額の低い土地でも、公共事業などによる開発計画があれば評価額は将来的に上がることが多いようです。

相続時精算課税制度では、すでに贈与した財産も相続財産に加算しますが、評価額は贈与した時点の額で相続財産に加算します。つまり、財産の価値が高くなる前に贈与すれば、納める税金も安くなります。

一時的に評価額の下がっている財産を所有している人

土地や株式などの評価額は様々な情勢に左右されるので、一時的に評価額が下がってしまう場合もあります。たとえば、カリスマ創業者の死亡によって一時的に株価が下がったり、コロナ禍の影響で観光地などの地価が下がったりするケースもあります。

しかし、本来の実績や価値がしっかりしていれば、やがて株価や地価は持ち直すため、従来または従来以上の評価額になることも想定されます。高額な財産の評価額が一時的に下がっている場合は、相続時精算課税制度を利用して贈与する絶好の機会になるでしょう。ただし、状況によっては財産価値がさらに下がる可能性もあるため、贈与が「勇み足」にならないように、ある程度の将来予測も必要となります。

アパートなどの収益物件を所有している人

賃貸アパートを建築すると土地の評価額が下がるため相続税対策になります。しかし、毎月の家賃収入は所有者の所得税負担を増やす原因となり、現預金として溜まれば相続財産の増加に繋がります。

一方で、このような収益物件は、贈与することで贈与者の所得税の負担軽減につながり、受贈者は収益物件から生じる家賃収入によって相続税の納税資金を準備することができます。不動産は高額なため、相続時精算課税制度を利用した方が税負担を抑えられることが多いでしょう。

不動産の贈与における評価額は相続税評価額となりますが、借入金の返済がまだ終わっていない収益物件を贈与する場合、時価評価となるため注意が必要です。不動産を贈与する場合には、事前に税理士へ相談した方がよいでしょう。

事業承継を予定している人

会社を経営している場合、会社の株式は相続の対象となります。社長に子どもが複数人いる状況で、生前に会社の後継者を決めて、その後継者へ株式を譲っておきたい場合は、会社が赤字経営となったときなど、自社株の評価額が下がったタイミングで相続時精算課税制度を活用し、会社の株式を贈与することで、相続トラブル対策と相続税対策の両方が可能となります。

相続時精算課税制度による贈与財産には「小規模宅地等の特例」を適用できない

自宅の敷地や事業用の土地などを相続する場合、一定条件を満たせば小規模宅地等の特例が使えます。土地の相続にはかなり有利な特例ですが、相続時精算課税制度により贈与を受けた宅地等には適用ができないため、どちらが有利なのか慎重に検討する必要があります。不動産の贈与や相続をする場合は、事前に税理士に相談する方がよいでしょう。

相続時精算課税制度を利用する際の流れ・必要書類

相続時精算課税制度を利用する場合は税務署での手続きが必要になります。手続きの流れや必要書類を解説しますので、土地を贈与する際の参考にしてください。

必要書類の準備

相続時精算課税制度を利用する場合、以下の書類を揃えて税務署に提出します。

  1. 贈与税の申告書(第1表および第2表)
  2. 相続時精算課税選択届出書
  3. 受贈者や特定贈与者の戸籍の謄本または抄本その他の書類で、次の内容を証する書類

    (1)受贈者の氏名、生年月日
    (2)受贈者が特定贈与者の直系卑属である推定相続人または孫であること

1と2については国税庁のホームページ、または税務署窓口で入手できます。

贈与税の申告および納税

必要書類が準備できたら、贈与税の申告書や相続時精算課税選択届出書に必要事項を記入してください。贈与税の申告は、贈与があった翌年の2月1日から3月15日までに行います。申告期限内に申告できない場合は、相続時精算課税制度を利用できないため注意しましょう。

まとめ

相続時精算課税制度は一度選択すると暦年贈与の非課税枠は使えなくなります。また、相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は、小規模宅地等の特例も適用できないため、利用を敬遠される方も多い制度ですが、上手く活用することで相続問題の解決の糸口となることもあります。

相続時精算課税制度を活用するべきかどうかの判断には税理士のノウハウが必要となります。相続を専門的に扱う税理士であれば、財産の状況や相続人同士の関係も考慮し、最善の相続税対策を提案してくれるでしょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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